解説
名称は「雪の多い地域に住む豹(に似た動物)」である事から。豹とは別の種で、遺伝的には虎に最も近い。ちなみにヒョウにもそのような地域に住む亜種が存在する(アムールヒョウなど)。
体重は平均45キログラム、体長は1~1.5メートルに達する。
体毛は淡い灰色地に、豹柄に類似した黒色の斑点があり、毛が非常に長い。また険しい岩場などでバランスをとる必要性からか、尾が長め。
体躯の割に足が太めで、雪の中でも沈まないよう足の裏にも毛が生えている。
夜行性で、基本的に単独で行動するため野生の生態も研究途上で不明な点もまだ多い。
大型の得物を襲う割合は10~15日に1度の割合と言う研究結果がある。
野生では岩場に住む動物や小動物を狙い、ブルーシープ・アルガリやアイベックス・ヒマラヤタール・マーコールといった野生のヒツジやヤギを狩って食べている模様が観察されており中には「獲物を崖から突き落とす」例もあったという。
寿命は野生では13〜15年と言われ、飼育下では15〜20年ほどだが、かつて多摩動物公園で飼育されていた野生生まれの個体「シンギズ」が推定26歳まで生存した記録がある。
繁殖期のみ、つがいになって暮らすこともたまにはあるが出産育児は雌が単独で行う。
1〜5頭(多くは2、3頭)の子供を出産し、2年ほど親と一緒に育ち独立する。
飼育下では1年半〜2年頃を目安に親子を分ける。
下動画が親小分けされた当日の子ユキヒョウ。
オスの方が性成熟が遅めな傾向にあるとも言われている。
舌骨が固定されているため、鳴き声は豹より猫に近く、「ニャーオ」という声を立てる。
人間との関わり
毛皮を目的に乱獲されるなど、絶滅の危機にある。但し、そんなユキヒョウも古くから神と結び付けられていた存在でもある。例えば3世紀頃に造られたシルクロードの遺跡がある。その中にある「キジル千仏洞」では、仏を中心に、前述の野生のヤギやヒツジ、イヌワシ等の様々な動物の壁画が描かれている。その仏の足に仕えている動物がいて、顔の部分は剥がれてはいるが、ちゃんとユキヒョウであることが分かる。遊牧民には、こんな言い伝えがある。「かつて日照りが続いていた時、天からユキヒョウが舞い降りて、長い尾で風を起こし、氷河の氷を溶かした」と述べるようにユキヒョウは、大地に恵みの水を齎し、氷河の神として崇められるようになったのである。
またインドのラダックにある寺では、ユキヒョウの毛を大事に祭っている。ラマ教では、「修業を積んだ僧侶が、ユキヒョウに姿に変えた」という言い伝えがあり、気高い精神の象徴と見なされている。
険しい山に生きるユキヒョウは、人々にとって、天空を駆ける神々しい存在となったのである。
野生種の観察は環境的に困難な点も多いため少なく、動物園でも飼育する施設は限られている。
動物園ファンにはもふもふとした見た目や行動がかわいいとしてハマる人も結構おり、日本の動物園で飼育されている個体の写真や動画は各園の常連客によりかなり頻繁にSNSにアップされている。
関連イラスト
関連タグ
ヒョウ属
黒豹:毛色でいえば反対に位置する。