概要
20世紀及び、セル画が使用された最後のTVスペシャルとなった本作ではITバブルまっただ中のアメリカが舞台となり、ルパン自身も暗号解読に専用ソフトを利用するなど、デジタル系アイテムを利用している。
敵組織が秘密結社などではなく大手投資銀行というシリーズ上珍しいタイプの敵であるため、戦いも彼らが雇った傭兵によるものとタイトルの通り経済的な戦いが混じったものになっている。ルパンお得意の頭脳プレーではなく戦略的思考が見られる数少ない作品。
また、ヒロインが二人存在することに加え、トワイライト☆ジェミニの秘密同様にゲストヒロインよりも不二子がお色気担当を占めるなど全体的に珍しい展開のある作品。
制作会社のトムス・エンタテインメントが現社名で制作した最初のルパンアニメでもある。
2019年11月1日にはYouTubeの「TMSアニメ55周年公式チャンネル」にて本編の無料配信(21時からのプレミア配信→アーカイブ配信)が行われた。
あらすじ
ピカソの作品も出品されるオークションに1カラットにも満たない、しかも傷付きのダイヤの指輪マルケスの記念指輪が出品されていた。開催者も安物と落胆していたが、なんとそれに100万ドルの値を付ける紳士が現れる。しかし、それは電話で入札してきた大手投資銀行の女頭取シンシアに1ドル差で競り負けてしまう。
オークションを勝手に打ち切ったと憤慨する紳士だったが、銭形が登場するとルパンの正体を現し、指輪をまんまと盗み出す。しかし、逃走中にシンシアに雇われた傭兵のナビコフに指輪は奪われてしまう。
実は、二人が狙うこの指輪はかつてナポレオンやヒトラーが持っていたという世界の王となれるブローチの在り処を示すものだった。なんとか取り戻そうとルパンは次元、五ェ門と共にローテクを駆使してシンシアの銀行へ侵入し、彼女から指輪を奪い返す事に成功する。
しかし、ヘリコプターで逃走しようとする中で一瞬の隙を突いたナビコフの狙撃がルパンの心臓を貫き、ルパンはそのまま落下し地上へ叩きつけられ、ナビコフ自身によってその死が確認される。残された次元、五エ門、不二子、そして銭形の4人によるルパンの葬式が済むと次元はルパンの意志を継ぐため、ナビコフへの仇討ちを計画するが…
メインメンバー
・ルパン三世(キャラクター) CV:栗田貫一
普段はヒロインに優しいルパンだが、今回は若干ドライな一面を見せる。本作では戦闘での勝利ではなく経済的な勝利を目指す。中盤でナビコフの狙撃されたことを利用して自身の落命を偽装、後に不二子たちを救出すべく再登場する。
今作では大事なマグナムを落としてしまい、ルパンのワルサーP38やコルトパイソンを使用するが、扱いに手間取って終盤まで実力を発揮できないという事態に陥る。マグナムを取り戻したのちは本領を発揮し『B.O.W』の戦闘員たちに圧勝した。
今回はトワイライト☆ジェミニの秘密同様にお色気担当。自分から全財産を奪った『B.O.W』との戦闘にて衣服を一瞬で破壊されブラジャーとショーツのみにされただけにとどまらず、巨大磁力装置にブラジャーも剥ぎ取られノーブラ状態で脱出するなどルパンVS複製人間同様に刺激のあるお色気シーンを披露する羽目になる。(ブラジャーは磁力消失により回収成功、その後もビキニ姿をルパンから間近でチェックされるなどサービスショットを連発した。)終盤ではルパンがシンシアから奪った金を全て横取りすることに成功したが、最終的に再び詐欺に逢い全額失った模様。発売されたディスクに収録された設定資料集では不二子の剥ぎ取られたブラの模様などについて紹介されている。
今作ではカルト教団に騙された末に女性宣教師に惚れ込んだ状態で登場、彼女の浄財集めへの貢献という名目でルパン達と行動を共にする。『B.O.W』との戦闘の後、女性宣教師が資金をもって逃走、これにより自分が騙されていたと知り落胆する。
今作でもルパン達を追い回すが、ルパンが死んだと勘違いした際には酷く憔悴し職務にも投げやりになってしまうという一面も見せる。ルパンが死を偽装していたと知った際は歓喜して仕事に復帰しようとするが、ICPOには辞表を取り下げ忘れて電話したときには役立たずなどと扱き下ろされていた。
何気にゲストヒロインであるシンシアを逮捕するという重要な役割を担った。
ゲストキャラクター
- シンシア・F・クレイモフ(CV:小山茉美)
近年急成長し世界的に事業を展開する大手投資銀行「バンク・オブ・ワールド(BOW)」の頭取で、本作ヒロインの一人。赤い髪と白いビジネススーツが特徴的。
裏社会も含めた世界経済の独裁を目論み、手にした者を世界の王にするといわれる幸運のブローチを求めている。また、さらなる利潤を求めて新たな「ビジネス」を始めようと画策する。
ルパンに対しては、マルケスの記念指輪を互いに奪い合い、ブローチ入手における邪魔者としてナビコフを差し向け排除しようとする。一方で、作中ルパンを想う様子を見せるなど、ヒロインとしての一面もあわせもつ。
常に1枚の1ドルコインを持ち歩く妙な癖の持ち主であるが、その正体はとある国の独裁者だった男の娘。革命勃発で家族と共に亡命を図ったものの、父親を目の前で失うという悲劇に遭遇してしまう。幸福のブローチを手に入れ、父の遺志を継ぎ自身が独裁者になることを目指していたが、『B.O.W』は株価大暴落で破産、築き上げてきた全ての財産を失うことになった。
- アレクセイ・ナビコフ(CV:中田譲治)
BOWに雇われた元スペツナズの傭兵。黒ずくめの長髪男。
指輪の奪取とルパン一味排除のため、たびたびルパンたちと交戦する。冒頭のカーチェイスでも登場する。
雇い主のシンシアのことを女性としても気に入っており、彼女の「ビジネス」にも協力する。
- サンディ(CV:松本梨香)
ルパンが一目置くジャズシンガーで、本作ヒロインの一人。明るい色の髪のラテン系の女性。
歌唱力はルパンが認めるほどだが、ニューヨークの片隅のバーで歌っているなど、ストーリー開始時点ではまだ名が広まっていない。また、彼女もマルケスの記念指輪を求めている。
本作主題歌の "Life's a Flame" は、作中ではサンディの持ち歌として登場し、場面に合わせたバリエーションを楽しめる。
- リック・フィッシュバーン
歴史学者。作中で本人は登場せず、既に故人であると思われる。
娘の誕生祝いとして知人から幸運のブローチを譲り受けるが、歴史の知識からブローチのいわくを知っていたフィッシュバーンは、新たな独裁者を生まないためにブローチを隠し、その在り処の手掛かりをマルケスの記念指輪に刻んだ。
その娘こそ、サンディの母だった。
- ギルバート
BOWの役員。シンシアの側近にして関連するヘッジファンドの代表でもある。
その正体はシンシアによる出資詐欺の表向きの責任者。プリンス債と呼ばれるジャンク債で多額の出資を集めた後、故意に政変を起こして出資金を騙し取っている。(出資金はすべてシンシアが持ち出して逮捕を免れており、彼自身は待遇の良い刑務所で、出所後の生活も保証されている。)
シンシアの企みが失敗すれば共に大損害を被る予定の身であるにもかかわらず、豪華なプールで美女たちに囲まれた生活を楽しむなど悠々自適な模様。
余談
- 金曜ロードショーにて2000年7月23日に放送されたため、背景にかつての世界貿易センタービルがわずかに描かれている。(ルパンも当時の最新鋭デジタル機器を使用しており、制作時のアメリカが所謂ITバブルで繁栄中であったことを示唆している。)
- 本作には天井に設置された磁力装置やセンサーなど令和の時代では特に珍しくない兵器が数多く登場するが、平成という時代設定及び軍事技術史の観点から綿密な考察もなされており、平成時代の最先端軍事技術を詳細部まで描いた製作スタッフの意欲を高く評価するファンは非常に多い。 (本作の敵対キャラであるナビコフが戦闘で使用した磁力装置とセンサー※画像例として不二子の衣服が損傷しブラジャーが剥ぎ取られる。)
- ヒロインが本人の意思とは無関係にブラジャーを奪われるというシチュエーションは当時のフジテレビで放送されていた深夜バラエティ番組『足立区のたけし、世界の北野』の名物コーナーである北野まんぐり講座でもAV女優のブラジャーを磁力のパワーで強制的に外すという実験において検証されるなど注目が高く、後の時代では常識化したシチュエーションを平成時代の時点で先取りしていたとも評価されている。
- しばしば、脇役キャラで出演していた声優の峰恵研氏が最後に出演したルパン三世の作品となっている。(峰氏は2002年に逝去している)
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