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F4U

えふよんゆー

アメリカ、チャンスボート社の開発した艦上戦闘機。艦上戦闘機として開発されたが、「着艦が難しい」との理由で海兵隊の航空部隊に配備され、陸上基地からの運用となった。朝鮮戦争でも活躍しており、MiG-15の初撃墜はこの機である。また、1969年のホンジュラス・エルサルバドル間の紛争『サッカー戦争』で、ホンジュラスのF4UがエルサルバドルのF-51(P-51)を撃墜している。
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艦上戦闘機の本命

1938年、当時の主力機の後継としてチャンス・ボート社が開発した。
当時の常識を打ち破る2000馬力級エンジンを搭載し、当時の海軍では一番大きなプロペラを装備している。試作機は1940年5月29日に初飛行しており、最高時速も650kmを超えるなど良好な性能を記録した。通称は『コルセア』。海賊の事である。

しかし、前方視界が悪く、失速する時の挙動も危険などの欠点が指摘されると空母配備は中止。代わりに陸上基地から運用する海兵隊に配備された。着艦が容易になったF4U-1Aが1943年11月に空母への着艦が再開したが、本格的に空母に搭載されるようになったのは1944年12月にF4U-1Dからだった。空母での使い勝手に関しては、グラマンのF4FF6Fの方が便利だったのだ。そういう訳で、一部からは『空母から使うことを考えなかった艦載機』などと言われた。

当時の型番

「F4」ではあるが、F6Fとは同時期開発である。これは米海軍の命名基準が
「戦闘機のF」+「メーカー内での開発順」+「メーカーごとに割り振られたアルファベット」となっているから。似たような例は米陸軍でもあり、たとえばM3戦車が二種類いたりする。

研究開発メーカーが多数ある場合は、このように分けたほうが効率的に分類出来るのだが、戦争が本格化し、開発メーカー以外でもライセンス生産が始まると、とたんに複雑化することになった。
型番からてっとり早く理解したい時は、逆から読むとよい

ちなみにF4Uもグッドイヤー社・ブリュースター社でも生産されており、それぞれ「FG」「F3A」と命名されている。ボート社でものちに攻撃機として「AU」を生産したが、基本的にこれら全て同じ機体である。

空母配備中止の原因

このF4Uはコクピットが機体の後方寄りに配置されている。これはエンジンが大きく、そのバランスのためである。車輪も尾輪式なので、陸上/艦上では少し上を向いた状態が普通である。つまり、その状態では『機首が長すぎて前が見えない』のである。

この欠点は特にデリケートな着艦の時の不利となり、嫌われたの。また、大きな特徴である逆ガル翼も原因だった。この逆ガル翼は『折れた部分から気流が剥がれ易い』欠点があり、その事は失速特性に悪い影響を与えて、着艦の難しさに拍車をかけた。

実戦でのコルセア

特性

全体的には評価が分かれる機体である。
ベテラン以上の日本パイロットの評価だが、零戦でも十分に相手できた』と言われた。アメリカのパイロットの中にも『日本機相手ならF6Fの方がいい』と言う者も存在する。

この原因は機体の特性である。

  • 良いところ
・最高速度(馬力が良い)
・高速での補助翼の効き(旋回の切り替えし)
の2つなのに対し、
(後世には『かっこいい』も加わるが)

  • 悪いところ
・上昇力
・最適上昇速度の遅さ
・低速での補助翼の効き
・方向舵の重さ
・操縦不能になると回復が難しい
これらに加え、着艦の難しさが加わる

最初の実戦は米軍側が8機(内訳:P-38×4機・B-24×2機・F4U×2機の被撃墜、日本側は零戦1機が自爆)という大損害を受け、『聖バレンタインデーの虐殺』と呼ばれる一方的な敗北だった。まだ運用は初期であり、パイロットも機体に慣れておらず、エンジンも初期不良に見舞われていた時期とはいえ、しかも相手は『格下』のはずの零戦に。

このことからも『強くない戦闘機』というイメージが定着したようであるが、一撃離脱戦法を徹底する等、機の特性を理解すれば決して弱い戦闘機ではなく、最終的なキルレシオも11.3:1を記録している。しかし、(艦載機としては)全体的にベテランパイロットでも扱いの難しい機体であり、大変扱い易いF6Fとは対照的であった。

理解されにくかった特性

F6FF4Fを発展させ、ゼロ戦との格闘戦でおくれを取らない機に仕上がっていたが、このF4UではF4Fと違う扱い方が必要だったため、パイロットが慣れる必要があったものと思われる。

よくよく考えれば、一撃離脱専門機はこのF4Uが海軍初だったのである。

実用的解決法

高いエンジン出力からくる爆弾搭載量・高い耐久力を活かして、純粋な戦闘機としてではなく、戦闘爆撃機として運用される機会の方が多くなった。戦争後期は日本陸海軍の航空部隊もすっかり勢力を失い、替わって爆弾ロケット弾を搭載して、地上攻撃任務などで活躍した。

第二次世界大戦終結後しばらくはこういった任務のために残してあり、例えば朝鮮戦争では地上部隊の掩護に大活躍しており、MiG-15の初撃墜も当機の功績である。その後は中古機を再整備・輸出しており、ホンジュラスのF4UがP-51を撃墜した例などは一例である。

戦後のF4U

戦後の海軍機事情

なお、さらなる改良型であるF4U-4は太平洋戦争の戦況に大きな影響を及ぼすには登場が遅すぎたが、「アメリカ軍最良の戦闘機」と言われたP-51D『マスタング』をさまざまな事項において凌駕する性能を発揮した。

F6FF8Fという後継機の開発もあり、戦後は特に発展することはなかった。だがF8Fは「レシプロ戦闘機としては」圧倒的な性能を見せたものの、F4Uのような汎用性(=搭載力)はなく、特に活躍する機会は与えられずにジェット戦闘機に駆逐されていった。

グラマン戦闘機と違い、F4Uの方は太平洋戦争終結後も生産と改良は続けられ、朝鮮戦争中も現役であった。

朝鮮戦争

朝鮮戦争中は昼間戦闘機の役割を新鋭のジェット戦闘機に譲り、F4Uは主に戦闘爆撃機夜間戦闘機として運用された。MiG-15を20mm機関砲で撃墜する(1機)活躍も見せ、時としてレシプロ戦闘機ジェット戦闘機に対抗できる事を知らしめた。

低空・低速に向き、扱いやすかったレシプロ機は対地航空支援によく奔走しており、とくにF4Uは朝鮮戦争中に海兵隊機が信頼を大いに勝ち取っている。しかし低空・低速では敵の対空砲火に晒されるのは当然で、停戦時には一時の隆盛が見る影もないほどに消耗していた。

余談ながら、空軍でもP-51を戦闘爆撃機として運用したものの、水冷エンジンは被弾に弱く、F4Uほどこちらの任務に適していなかったようである。空軍ではF-86を実戦投入し、「対ミグ用心棒」として活躍させていたが、戦闘爆撃機にはF-80F-84など、MiG-15に通用しなくなった戦闘機を主に充てていた。

最後の勝利者

なお、本機は「レシプロ戦闘機最後の空中戦の勝者」でもある。 サッカー戦争(1969年)において、ホンジュラス空軍のF4Uがエルサルバドルのレシプロ機二機を撃墜している。 このときの相手はFG-1D(F4U)とP-51。

一時代の象徴だったレシプロ戦闘機の終焉が米国機同士であったのも、最後の敗者が「最優秀戦闘機」といわれたP-51だったのも、なんとも皮肉な結果である。

現在のF4U

F4Uは機体の美しさもあって、P-51とともに現在でもアメリカ国内では大変人気である。
ときにはP-51(陸軍航空隊・空軍)とF4U(海軍)と、どちらの方が高性能かで論争になることもある。映画「プレーンズ」にもスキッパー・レイリーとして登場しており、その人気を裏付ける。

ちなみに、アメリカ海軍でスキッパーとは飛行士(アビエーター)のことを指しており、これは着艦の反動で甲板の上を跳ねることから。さらに海軍では航空機搭乗員を操縦士(パイロット)とは呼ばないが、これは「パイロット」という用語が既に水先案内人という意味で使われていたからである。

ボートのその後

ボート航空機社はこの後もF7UやF8Uといった性能の良い戦闘機も輩出している。
が、それまでに生み出されたのはヘンテコを極めたような珍品揃いだったりもする。
例を挙げれば……

XF5U:愛称は『フライングパンケーキ』。原型機の性能は良かったが、開発に手間取って第二次世界大戦に間に合わなかった上、プロペラが大きいのでロケット弾を使えない
(=戦闘爆撃機に使えない)

TBU(TBY):愛称は『シーウルフ』。TBFよりも性能は良かったが、肝心の生産で都合がなかなかつけられず、ようやく本格生産が始まった頃にはTBFが普及していた。大型で空母上での取り回しも悪く、その上エンジンはF6FF4Uと共通。

F6U:愛称は『パイレート』。ボート社初のジェット戦闘機。正式採用こそ勝ち取ったものの、量産型が登場したころにはより高性能なF9Fが登場していたため、実戦部隊には配備されなかった。さりげなくアメリカで初めてアフターバーナーを実装した航空機でもあるが、使用前に30秒も余熱しなければならない実用性皆無の代物だった。

F7U:愛称は『カットラス』。高性能だったが、艦載機としては無謀この上ない無尾翼機。試作機が事故で全滅し、量産型で飛行試験をしなければならなくなるレベルで事故が多発したため、たった3年で実戦部隊から引き揚げられてしまった。現状、アメリカ海軍が実用化した無尾翼艦載機はこれとダグラスF4D「スカイレイ」のみである。

どうだろうか。まるで昔のHONDA(宗一郎時代)のようである。性能そのものは良かったのに、その他が致命的な欠点となって廃れてしまう。例えばホンダ1300みたいに。
そういうわけで、ボート航空機社は軍用機界のHONDAというべき挑戦者のメーカーと呼ばれてもよいだろう。

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