SEIMEI
せいめい
「SEIMEI」とは、羽生結弦の2015-2016シーズンのフリースケーティング用プログラムの呼称である。陰陽師「安倍晴明」を演じる。その後2017-2018シーズンで再演し、平昌オリンピックで金メダルを獲得した伝説のプログラムである。
夢枕獏原作の映画版「陰陽師」のサウンドトラックより、梅林茂の楽曲を計7曲を繋ぎ合わせて編曲。編曲は羽生自ら手がけた。
映画で安倍晴明を演じる野村萬斎の所作を冒頭のポーズなどに取り入れている。
「SEIMEI」というタイトルの楽曲そのものは存在せず、羽生の命名によるものである。
ローマ字表記にしたのは「SAYURIのように外国人にも親しみやすいように、また『せいめい』という日本語の単語は複数あるため、それぞれの意味を込めたかった。」とのことである。
初演から大変な衝撃を与え、いちはやくファンアートを描くファンが続出。このため2015年10月以前にpixivに投稿されているイラストは、アイスショー用に短縮されたショートバージョンの衣装と演技を元に描かれている。
11月にカナダの初戦でプログラムの全貌が明かされるとともに、衣装も微妙に変わることとなったが、細かい装飾やキラキラが大幅に増量されることとなったため、細部まで描き込むタイプの絵師は泣くはめに陥った。
2015年11月25日に『オリジナル・サウンドトラック「陰陽師」コンプリート』がリリースされ、同サントラのジャケット画「SEIMEI」を天野喜孝が新たに描き下しているが、その制作過程で羽生をイメージしたイラストも描いておりサントラの公式サイトで公開されている。
世界記録を2度更新
2015年11月28日のNHK杯における演技で、2013年にパトリック・チャンがマークした世界歴代最高得点(196.75点)を大幅に塗り替え、前人未到の200点台を超える216.07点を叩き出した。
4回転ジャンプ3本を含む全てのジャンプを完璧に成功させ、ジャンプ・スピン・ステップと全ての要素に全てのジャッジが加点を付けるという圧倒的な演技を披露。
SEIMEIという楽曲の「音楽の解釈(Interpretation)」の項目では、ジャッジ9人中6人が10点満点をつける9.89点を獲得している。
「この記録は当分破られないだろう」と誰もが思う異次元の神演技だったが、2週間後のグランプリファイナルでも完璧に滑りきり、219.48点という未知の点数を叩き出した。もちろん世界記録更新である。
もはやわけがわからないよ。
歴史を刻んだ神演技でいいんじゃないかな。
「未知との遭遇」だよ。
ちなみにこのプログラム構成の理論上の「満点」は225.79点となる。
平昌オリンピックが開催される2017-2018シーズンの勝負プログラムとして再演を決定。
今でも世界記録を保持している究極のプログラムに、さらに新たに習得した4回転ループと4回転ルッツをぶっ込むという、完全にどうかしているジャンプ構成で五輪連覇に挑むことになった。
グランプリシリーズ初戦のスケートカナダでは4回転ルッツを成功させ、このままオリンピックに向けてピークを上げていけば…と誰もが思っていた矢先、事件は起こった…。
そう怪我である。
グランプリシリーズ2戦目のNHK杯で、練習中に跳んだ4回転ルッツの着氷に失敗し靭帯損傷。怪我の状況は深刻でその後滑ることができず、史上初の5連覇がかかっていたグランプリファイナルへの挑戦はここで消滅した。その後はカナダに戻りリハビリが続き、結局2017年の試合を全休する事態に。
2017年11月10日より、羽生結弦は完全にマスコミの前からも姿を消した…。
12月の全日本選手権も休場。現世界ランク1位、現世界王者、現世界記録保持者などの実績から平昌オリンピック代表には順当に選出されたが、復帰戦は66年ぶりの連覇がかかるオリンピック本番という、気が遠くなるようなハードモードで五輪に挑むことになった。
そして平昌オリンピックへ
団体戦も回復が間に合わずスキップし現地入り。4ヶ月ぶりの実戦が五輪本番となったが、痛み止めを服用しつつ 世界中が目を疑った完璧なショート(バラード第1番)で1位発進し、翌日のSEIMEIで連覇を成し遂げてしまった。
漫画を超えた驚愕の復活劇に石田衣良も「フィクションならボツくらうレベル」と驚きを隠せなかったが、羽生の精神力の凄まじさに世界中が度肝を抜かれることとなった。
なお平昌オリンピックの「SEIMEI」の得点は206.17。
4回転ループも封印し自己ベストからは20点近く低い点数だったが、体力がキツい後半のジャンプミスではきっちりリカバリーをはかり、最後のルッツもこらえて転倒を回避。ミスを最小限にとどめた結果、2位以下に10点以上の大差をつけての金メダル獲得となった。
本調子には程遠いコンディションでジャンプ構成も落として、なおかつオリンピックがぶっつけ本番であろうとも、誰も羽生結弦には勝てなかったのである。
何回も言うけどわけがわからないよ。
満身創痍で死力を尽くした伝説の演技でもいいんじゃないかな。マジ少年は神話になったよ…。
中国国営放送の解説の陳さんが、あまりの凄さに即興で漢詩を詠むとかいうレベルだったよ…。
「容颜如玉 身姿如松 翩若惊鸿 婉若游龙」
(その容貌は宝玉のよう、立ち姿は松のごとし、飛ぶ様子は大白鳥、美しさは龍が遊ぶごとし)
「運命は勇者に囁いた。嵐には逆らえないと。勇者は囁き返した。私が嵐だと」
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