概要
1972年生、東京都出身。
和光大学を卒業するとニトロプラスに入社し、初期からシナリオを手がけその後監修等も手がける。現在でも同社の役員を務めつつ、近年は外部の一般作仕事が増えている。
父母は俳優の和田周と瀬畑奈津子、祖父は小説家の大坪砂男、曽祖父は官営八幡製鉄所長官を務めた和田維四郎、と代を上るほど良い出自になる。
作風
いわゆる『萌え』よりも『燃え』、銃火器の濃密な描写、そして陰鬱なストーリーが主な作風で、各人が最善を尽くした結果ドツボに嵌る、作品が多い。
ただし、ラストの『なんでもない日常の素晴らしさ』を引き立たせる為にそのように描いてる事が多いので、決して陰鬱なだけではない。むしろ陰鬱さなら奈良原の方が上である。
一時期、自身のこの傾向に悩んでいた(本人曰く「本当はハッピーエンドにしたいのに、物語を突き詰めるとバッドエンドになってしまう」との事)が『Fate/Zero』の執筆により何とか立ち直った(開き直った?)様子。その後、『続・殺戮のジャンゴ』は問答無用でハッピーエンドとなった(ように見える)。
だが、2011年のTVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』に於いて再び同様の作風をいまだに保ち続けていることを、主役級ヒロインの余りにも早過ぎる惨死を以て視聴者に思い知らせることになった。
以降のストーリー展開もあまりに強烈過ぎたためか、「虚淵玄=主要キャラが必ずどこかで死ぬ」というイメージまで一人歩きする程。実際間違っていないのが何とも言えない。
加えて、作風に関しては海を越えて海外のアニメファンからもそういう目で見られているらしく、アニメで主要人物が残酷な死に方をすると「またUroButcherdか」と、そのシナリオを書いたのが虚淵でなくとも虚淵の仕業に例える、と言う話が出たりする。
2013年5月にイベント出席のためフランスに渡った時には、ファンから贈られた以下のイラストを虚淵本人がTwitterに取り上げた事が話題となった。
ちなみに、『Butcher』とは『精肉店』や『屠殺場』(家畜を肉にする場所。要するに家畜を殺す場所)、転じて「虐殺者」の事。まあ確かに本人は割烹料理店の板前みたいな面構えだけど(孤独の何とかに出てきそうではある)。
アダルトゲームから深夜の地上波アニメと順調に日の当たる場所(?)への進出を進めていたが、かねてより仮面ライダーシリーズへの参加を希望する発言もしていた。
2013年に「子供向けの作品を執筆中」と発言しておりその動向が注目されていたが、同年7月、念願通りニチアサキッズタイム初進出、初の実写作品担当となる仮面ライダー鎧武の脚本を担当する事になり、いつもの作風を日曜日の朝で遺憾なく披露している(なお、アダルトゲームライターからニチアサに進出した脚本家は既に前例があるため初ではない)。だが、時間帯と子供向けという都合上もあるためか従来ほど残虐な表現は無く、主役ライダーによる街を滅ぼす大量破壊兵器の破壊等、今まで関わって来た作品と違って勧善懲悪の要素が強いのも事実である。虚淵が手がけてきた作品にも残酷展開と同じくらい燃え展開が目立つ作品も多いため、ここにきて欝グロ以外の作風がようやく日が当たるようになったと言えなくもない。
一方で、台詞が説明的及び描写がアニメチックという指摘も多く見受けられており、初の実写ということもあるせいか不慣れな所も散見された(むしろ目立った?)。
近年では『翠星のガルガンティア』『楽園追放』のように欝描写が比較的少なめの明るいストーリーを手がけることも多い(「比較的」であり、根幹の設定はハードかつシリアスではある)。
また、脚本作業以外にもアニメ『アカネマニアックス』では、『宇宙の騎士テッカマン』のパロディである作中アニメ『時空の騎士テックメン』の主題歌「テックメンの歌」(唄:宮内タカユキ)の作詞も担当していた。
交友関係
某アウトロー漫画の作者とは、同作の小説版執筆後に開かれた会談(小説のあとがき、コミックに掲載)で、趣味がガッツリ統合して和気あいあいと話していた。特に「野郎は貧弱」「女性の方が男なんかより強い」等々、漫画家側がそういう傾向の作品を執筆していたこともあって、こうした面で意見が合致している(『バストサイズ=HP』論なんていうのも会談で出ていた)。
ちなみに、この小説版を書く事になったきっかけは「鬼哭街」を原作者側がプレイして衝撃を受けたからとのこと。
また、某スペースプラネットガンアクション漫画とその作者には非常に感銘を受けており、映画化の際パンフレットに親交が深く、且つ同じく感銘を受けている型月の奈須きのこ、武内崇と共に、暑苦しい応援コメント(武内氏は絵)を残している。
Twitterでの発言でもそれが分かる程大好きな模様。
後述するボードゲーム(アナログゲーム)を通じて、小説家の伊藤計劃とも交友があった。
趣味・趣向
好きなものにマカロニウェスタンなど往年の西部劇などの煙くさいガンマンモノがあり、またB級アクション映画も大好物で、その縁でニトロプラスに鋼屋ジンをスカウトしたりもしている。特にダークな雰囲気、ディストピアな世界観の物が好きなようで『リベリオン』を見た後にはあまりに彼好みだったせいか「このままでは俺の次回作は『リベリオン』のコピーになってしまうという危機感(本人談)」から、後述する二次創作を作ったりもしている。
ボードゲームも趣味の一つとしており、『バルバロッサ』(プレイヤーは粘土で「ある物」をこさえ、他のプレイヤーに当てさせる。正解がなかった場合、チェスの要領で自軍の駒を進めることが出来る…というドイツ製ゲーム)で謎の物体を作ったところ、誰も正解者が出ず(正解はデサートガンナー)、他のプレイヤーから総ツッコミを受けたという伝説を持つ(詳しくは"虚淵玄" "デサートガンナー"または"虚淵玄" "バルバロッサ"でぐぐるべし)。
虚淵と仮面ライダー
虚淵自身、仮面ライダー鎧武の脚本を担当する以前からのライダーファンで、仮面ライダーBLACKから本格的に興味を抱き、今に至ると語る。
それ故にバイクを用いるヒーロー(ダークヒーロー)が活躍する「吸血殲鬼ヴェドゴニア」や「ブラスレイター」、本来であれば正義の味方となる存在がバトルロイヤルを展開するFate/Zeroや魔法少女まどか☆マギカなどにその影響が強く見受けられる(ブラスレイターは監督である板野一郎の意向が強く働いた結果バイクを題材としており、Fate/Zeroは原作のFate/staynightからバトルロイヤルとして作られている。なお、まどか☆マギカの登場人物佐倉杏子は虚淵自身が浅倉威を意識していると語っている)。
因みに、仮面ライダーフォーゼ放送以前に虚淵が脚本に携わるという噂が流れたが、それが二年後に実現する事になるという奇妙なエピソードも存在している。
そして鎧武の担当プロデューサーである武部直美が、共通の知人杉田智和に仲介を頼んだことによって、同作への起用が実現した。
武部は同作によって「特撮に新しい風を吹き込みたい」と考えており、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』を見て、「彼はアニメの世界でそれを実行している」と思い、その姿勢を受けオファーをしたという。
執筆作品
ゲーム
漫画原作
アニメ
- ブラスレイター(板野一郎との共同シリーズ構成・脚本)
- Phantom 〜Requiem for the Phantom〜(脚本)
- 魔法少女まどか☆マギカ(全話・劇場版脚本)
- 楽園追放(脚本)
- PSYCHO-PASS(深見真との共同脚本・劇場版脚本)
- PSYCHO-PASS2(企画監修)
- 翠星のガルガンティア(シリーズ構成・脚本)
- アルドノア・ゼロ(原案・1期3話まで脚本)
小説
- Fate/Zero(アニメ版BD-BOX特典ドラマCD脚本も執筆)
- ブラックラグーン(小説版:シェイターネ・バーディなど)
- アイゼンフリューゲル
- 白貌の伝道師
- 金の瞳と鉄の剣
- 敵は海賊(神林長平の同名SF小説のリメイク)
特撮
- 仮面ライダー鎧武(メイン脚本)
同人
関連項目
中央東口 - 元・ニトロ所属のイラストレーター。ニトロ作品でタッグを組む事が多かった。
鋼屋ジン - 同じくニトロ所属のシナリオライター。虚淵氏の招きによりニトロプラス入社。『仮面ライダー鎧武』にて脚本を虚淵と共に執筆。
板野一郎 - アニメ業界へと引きずり込んだ恩師。この人がいなければ『まどかマギカ』は生まれていなかった可能性がある。なお、氏曰く当時の虚淵脚本は「ゲーム的」との事。
小林靖子 - ムック本にて『ブラスレイター』の脚本執筆時に「男はともかく、女が立ってないよ」と板野一郎共々指摘された事がある。何の因果か、2014年のスーパーヒーロータイムにて再び共作(靖子が『鎧武』の脚本を書くわけではない)。