「紘汰さんのせいだ。紘汰さんに関わるとみんなおかしくなってしまう…」
「本当に大事なのはね、誰に与え、誰から奪うのか、それを決められる立場に立つことなんだ!それが権力…僕の求めていた力!」
「仲間ってのはね、僕の思い通りになる人のことさ…」
「希望っていうのはタチの悪い病気だ。それも人に伝染する。紘汰さん、あなたはね、そうやって病原菌を撒き散らしているんですよ!」
「黙ってろよクズ」
概要
普段は穏やかな呉島光実だが、かねてより物語の所々で、垣間見せる強かさと冷徹さ、実兄が自分に甘いのを逆手に取るような行動等々から、視聴者から早くも黒化が予想されていた。
その後、視聴者の予想通り、裏切りや策略を繰り返す彼に、視聴者は元々の彼のあだ名であるミッチから付けた『黒ミッチ』のあだ名で呼ぶようになった。
尚、17話の東映公式予告ページによると撮影現場でも「悪実(わるざね)」「黒ミッチ」と呼ばれていたとあり、これもほぼ公式用語と見ていいだろう。
情報雑誌『フィギュア王』No.200にて、仮面ライダー鎧武終了に寄せられた呉島光実を演じた高杉真宙のコメント文にも『黒ミッチ』がさりげなく使用されてる。
作品中での行動
作品の序盤から、シドを相手取る黒い言動や強かな一面を見せていたが、ヘルヘイムの森の真実を知るに至り、それを公表すれば世界中が大パニックに陥ると判断した彼は、秘密を隠蔽する貴虎とユグドラシルの方針に同調して、表では「チーム鎧武」のメンバーとして振舞いつつも、裏ではユグドラシルの一員として行動する。
だが、同じく秘密を知った葛葉紘汰は青臭い正義感から、事実を暴露し状況を荒立てようとするため、次第に彼と紘汰の心の溝は深くなってゆく。
ユグドラシルサイドに入ってからは黒化がますます酷くなり、17話では自らの正体を隠して凰蓮・ピエール・アルフォンゾ達を手駒にして雇い、紘汰の姉を人質に取って脅迫し、戦極ドライバーを奪おうとする卑劣な計画を実行する。凰蓮の予想外の行動で計画は破綻しかけるが、今度は戦極凌馬に取り入って事態を収拾する策士ぶりを披露。
その行動の根幹が「チーム鎧武のメンバーと過ごす日々を守る為」であったが、その台詞や表情のあまりの黒さが話題となった。
更に第23話では、カチドキアームズでユグドラシルタワーに向かった紘汰をタワー内のモニター越しに見て、光実は「どうしてあなたは素直に僕に従ってくれないんです」と呟いていた。
第26話では遂に『ヘルヘイムの森の秘密』と『裕也の死』を知らせて舞を悲しませた紘汰に「あなたにヒーローの資格はない」と怒りを露わにするも、その直後に舞からビンタを貰ってしまう。その後、ゲネシスドライバーを手に入れたバロンと戦おうと、カチドキアームズに変身する途中の鎧武を背後から躊躇いなく撃つ行動に出た。
この一連の出来事によって黒化が決定的となり、紘汰とは完全に決別。以降は紘汰の抹殺を企むようになっていく。
それからは何かにつけては「原因は全て紘汰にある」と考えるようになり、第28話では次世代ライダー達に襲われ行方不明になった貴虎にゲネシスドライバーを託されるが、それを使って斬月・真に変身、紘汰を襲撃する。しかしバロンの乱入で逆転されるとインベスを召喚し逃走した。その後、紘汰と戒斗のやり取りを陰から冷やかに見つめていた。
第33話ではオーバーロードのデュデュオンシュと共に紘汰をおびき寄せる罠を仕掛ける。その際にデュデュオンシュに対して、上記3段目の台詞を発していた。
しかし、偽りの斬月・真の正体を助太刀に来たブラーボ(凰蓮)に「エレガンスが欠けている」と見破られる。そして極アームズに変身した鎧武に追い詰められそうになり、極アームズの必殺技を近くにいたデュデュオンシュを盾にしてその場をやり過ごす。そして極アームズの力に「どうしてあの人ばかり強くなるんだ!」と苛立ちを現すが、すぐに「それでも付け入る隙はある」と不敵の笑みを浮かべた。
そして第35話にてレデュエと(恐らく彼にいいように利用されているだけだと推測されるが)交渉し、自身が選んだ人物のみを生き残させるノアの方舟計画を実行する。
しかし、それを思い人である舞に否定されてしまい、舞と自分とを隔てている壁の正体が『希望』であると認識し、それを壊すべく遂に自身の手で紘汰を抹殺せんと行動を開始する。
紘汰の目の前で遂に本性を曝け出し、本文中の中段の台詞を叫び、斬月・真に変身し、紘汰に襲いかかる。
第36話でついに実兄である貴虎を自らの手で海に沈めてしまうが、それから貴虎の幻影が彼に付き纏い、光実の行いを非難する様になる。
これがきっかけで完全にタガが外れたのか、第38話以降その性格は完全に尊大かつ自己中心的なものとなり、紘汰、戒斗、凰蓮、城乃内、ペコ等の自分の敵対者(もとい自分の気に入らない人間)を見境なく「クズ」呼ばわりしたり、笑い声を上げながら攻撃を仕掛けたり、ラットやリカを王妃復活の生贄にしたり、いかなる物事も常に自分の都合のいい様にしか解釈しない様になる等々、その言動は明らかに狂気じみたものとなってしまい、その醜態を目の当たりにした戒斗からは「もはや強い弱いの問題ではない。ただの馬鹿だ!」と痛烈に罵倒されている。
鎧武&バロンの戦いで貴虎の幻影を打ち破り、後戻りが出来ない一線を越えてしまった状況から、これまでにない力で極アームズさえも圧倒する様になるが、その反面、心の奥底では貴虎の幻影=心の底の底に残っていた罪悪感を完全には払拭できておらず、以降も光実を挑発する様に出現し、狂乱しつつある彼の精神を更に苛んでいく。
更に第42話でDJサガラが自らの正体を明かし、一連の出来事が彼の掌の上にあった実態を知り、自身が目的を見失いかけている状態を自覚しても尚、凌馬の吹き込みにあっさりと釣られ、自身の命すら危険にさらすヨモツヘグリロックシードに手を出し、まだ紘汰と闘おうとする。
そして、続く第43話にて紘汰の身を挺した行為により、ヨモツヘグリロックシードが破壊され変身が解かれるが、それと引き換えに瀕死の重傷を負って意識を失う寸前の紘汰から「これまで光実から受けた仕打ちや裏切りを赦す」と宣言されたばかりか「命を粗末にしないでほしい、そして光実が自分を許せるようになってほしい」と労りの言葉を投げかけられ、長らく忘れていた紘汰への情や罪悪感、そして良心の呵責の念がこみ上げ、自分が最早後戻りができない域に達してしまった事実を前に、激しい葛藤に苛まれるが「せめて舞だけはこの手で救う」を最後の一握の希望を胸に彼女の下へ戻る。
だが舞の下に戻った時、光実を待っていたのは、非情にも彼を更に絶望へと落とす現実だった……
光実が紘汰との最後の決戦に挑んでいた間に、彼女は凌馬の手により黄金の果実を摘出する為だけに命を奪われており、たとえ自身が泥をかぶってでも守ろうとした最愛の人の死を目の当たりにし、やっと自身の行いの間違いに気が付く、何とも皮肉にして救いようのない結果にたどり着いてしまった……。
その後、怒り任せに凌馬に襲いかかろうとするが、逆に彼がゲネシスドライバーに仕込んでおいた安全装置『キルプロセス』によりドライバーを破壊され、自身が利用していたつもりでいた彼に「嘘吐、卑怯者。そういう悪い子供こそ、本当に悪い大人の格好の餌食になる!」とこれまで、邪道だったにしても光実なりに行った努力全てを否定し、嘲笑する皮肉を含んだ罵倒と共に散々打ちのめされてしまう。
その時、突然光り輝きだした黄金の果実から舞が出現。「こんな非情な運命を変える為に時空の彼方へと旅立つ」と別れを告げる彼女の言葉を聴きつつ、その “非情な運命” を引き起こす一因となってしまった『自分の愚かさ』を嘆き悔みただ泣きじゃくるしかない……と、惨めで悲しい結末を迎えてしまった。
その後、絶望の縁に突き落とされた彼は全てが終わった後も、罪悪感や後悔を抱え続け、かつての仲間達から手を差し伸べられても、自らが犯した罪からそれを受け入れられず、延々と自分の殻に籠もり続けていたが……(その結末は親記事を参照)
擁護
光実の行いは決して肯定出来るものではないが、100%否定出来ないのも事実である。
まず、光実は厳格な実父と実兄から、エリートたらんとする教育を受けたため、良くも悪くも堅実的な思考を元にする人間(リアリスト)として育てられた。
リアリストの観点からすれば、最初にヘルヘイムの森の真実を知れば真っ先に恐怖から混乱し、落ち着きを取り戻せば、公表した時の民衆の心理とその後の惨状=前述の自分と同じ心境の民衆が恐怖と絶望から混乱し、大規模な集団ヒステリーが発生する状況を容易く理解出来る。
更に追い打ちを掛けるようにフェムシンムの王・ロシュオの文字通り異次元の強さを目の当たりに「こんな存在に勝てる訳がない」と恐怖して心が折れるのが自然であり、「どうにか対抗する術を考える」方が不自然で「狂っている」と見られても変ではない。
寧ろ、紘汰の考えは「現実を直視すらしないで、無責任に人を煽っている子供」と、光実に見えても仕方がない。
そもそも、紘汰の言動は「主人公だから許される」ものでもあり、視聴者も「紘汰を主人公として認識」しているからこそ、一連の行動を批判せずに見られるのである。
このような状況下、誰もが聖人君子の仮面を維持出来る筈がなく、光実は次第に本当に必要なもの(=舞は絶対であり、後は自分を信頼してくれる数人の仲間)を取捨選別し、それ以外を切り捨てるのは、ある意味で当然の帰結であり、完全に非難できる人はまず居ないだろう。
闇落ちライダー
上記の通り、黒化を通り越して闇堕ちの領域に踏み込んでいる事実から、「当初は『明確な主人公の仲間』でありながら闇堕ちした仮面ライダー」と、恐らくは史上初の事例になった。
「闇堕ちライダー」の事例自体は前例がないわけではないが、元々危うい面を持っていたり、メフィストフェレス的な誘惑者にへばり付かれていたり、そもそも主人公と張り合った挙句に転落していったり等々の具合に、どの事例も光実のケースとは明確に異なる。
ちなみに彼を演じている高杉真宙氏は、このように「『当初の立ち位置から変わっていくキャラクターになる』のを、比較的初期段階から知らされていた」と答えている。
高杉氏はこうした役柄にむしろやりがいを感じており、「後々黒くなった時の変化が分かりやすいように、初期の頃は声を高めに出していた」「ここまで来たら安易に改心してほしくはない」などと語っている。
光実を機に、以降の作品でも「当初は明確に主人公の仲間とされていたキャラクターが闇堕ちする」という展開が頻繁に描かれるようになった。(令和ライダーになると特に顕著。それでも、光実とは異なり取り返しのつかない行動を取る前に闇堕ちから脱却する場合が多い。)
pixivでの反応
pixivに投稿されるイラストや小説の中にはミッチを擁護するものや、改心した姿を描いたものもあるが、
割合的には悪落ちを揶揄するものや、断罪・非難するイラストの方が多い。
中には、あのライダーや、
“希望”を体現するライダー(それも前作の主人公)に自分の意見を代弁して貰ったり、
何だか凄い状態になってるモノまである。(放送当時中の人が出ていたファブリーズのCMと絡めたネタ)
余談
尚、彼は天下分け目の戦国MOVIE大合戦でWアームズを使用しているが、ある意味では伏線であったとも取れるだろう。
龍玄の基本形態として使われていた葡萄の花言葉の1つは『酔いと狂気』である。
関連タグ
操真晴人:上記4段目の台詞は「俺が最後の希望だ!」を理念とする彼にとっては対照的なものであると同時に、自分自身を否定する最も許されない侮辱的な発言とも取れる。しかもよりによって前作の主役。
五十嵐大二:同様の精神構造から敵側に寝返ってしまった銃使いのサブライダーで兄弟ライダーの弟。更に人外から「組まないか?」と誘われているが、その人外も中の人が津田健次郎氏だったりする。因みに大二は劇場版で龍玄に変身している。