概要
平成最初のドラえもん映画である。ただし、原作の大長編は映画に先駆けて1988年(昭和63年)10月から連載が開始され、1989年に劇場版が放映された。
7万年前の後期更新世日本および中国大陸を舞台にしている。
作者の藤子・F・不二雄の生前では配給収入、観客動員数ともに最高記録を誇る(現在はどちらも『のび太の宝島』が保持。ただし、収入は興行収入での計算)。
なお、同じ元号(平成)のうちに、オリジナル版とリメイク版が制作されたのは本作のみ。リメイクされた作品の中で、オリジナルとリメイクが共に高評価である数少ない例でもある。
あらすじ
いつものごとく家出を言い出したのび太は、今度は本気だと強気で出て行くが、どこの土地も所有者おり、住める土地が見つからなかった。悩んでるところにしずかちゃん、ジャイアン、スネ夫、さらにドラえもんも家出に加わる。そこでドラえもん達は人類が住むより遥か昔の日本へタイムスリップし、そこを僕らの土地にしようとを思いつく。
5人が辿り着いた先は7万年前、まだ中国大陸と繋がっていた(後に、最新の研究で九州は浅い海峡が維持されており、北海道で繋がっていたと判明したらしい)氷河期時代の日本列島。誰もいない日本で自由に開拓して家出を満喫。のび太はドラえもんのひみつ道具を使って空想動物も生み出した。しかしやはり5人はとりあえず家に戻ることに。ところが現代に戻ると、そこに原始人の格好をした少年が現れる。持っていた石器が本物だったことから、彼が本物の石器人だとわかる。
彼は大陸に暮らしていたヒカリ族のククルで、時空乱流に飲み込まれて現代にタイムスリップしていたが、それより前にヒカリ族は凶暴なクラヤミ族と彼らを率いる「精霊王ギガゾンビ」に襲われどこかに連れて行かれていた。
事情を知ったドラえもんたちはヒカリ族を助け出すためにククルに協力する。
主なゲストキャラクター
原始人の少年。ドラえもん達の力を借り、クラヤミ族から仲間を救うべく闘う。後に、日本最初の部族長に任ぜられた。その血統は奇跡的に現代まで繋がっており、チンプイのヒロインである[春日エリ]は彼の遠い末裔である。
ドラえもんのひみつ道具を使い、のび太が作ったペットたち。
それぞれ、白鳥+馬、ワシ+ライオン、ワニ+シカ+トカゲ(映画ではコウモリ)の動物の遺伝子アンプルとクローニングエッグから生まれた。本来、この二つの道具はアンプル一つで特定の動物を作り出すという効果を持っているが、のび太は掛け合わせが可能という特性を応用して彼らを生み出した。
なお、掛け合わせて生み出された動物達は体の構造や物理法則に囚われず、伝承どおりの能力を発揮できるようで、彼らは全員のび太達を乗せて飛行する事が出来た。(パーツの位置といい、ここまで緻密に再現できるひみつ道具の凄さには目を見張るものがある。いつものドラえもんのノリならばパーツの位置があべこべになっていただろう。)
ちなみに、ドラコは東洋龍がモチーフだが、背中に翼がある為、西洋のドラゴンの要素もある。(実際に幼体は西洋のドラゴンそのまま。なお、1989年版ではシカを素材に生み出された割には角がヤギのそれであり、リメイク版で角がよりシカらしいデザインになった。)
余談だが、ククルを含めた『ヒカリ族』は原作の執筆当時の考古学で新人とされたクロマニョン人であり、敵対したクラヤミ族は旧人とされたネアンデルタール人である事が示唆されている。(執筆当時は旧石器捏造事件が発覚する2001年より遥か以前のことであるので、原作の最終ページには、当時の日本に原住するとされていたネアンデルタール人の部族の存在に触れられている。捏造事件を経た現代の視点からは哀愁を誘う記述だが、執筆当時は本気で信じられていた学説である事に留意されたし)
クラヤミ族を率いる謎のまじない師。不死身の精霊王と噂され、雷や嵐を操る。
家出の理由
- ドラえもん:のび助が旅行に行った上司のペット(ハムスター)を家に連れてきた
- のび太:家でも学校でも叱られてばかり(リメイク版では0点のテストがきっかけで勉強以外の活動を当面禁止)
- しずかちゃん:ピアノのお稽古が辛い
- スネ夫:全教科に家庭教師を付けられそうになった(リメイク版では強制的に3か国語を習わされたから)
- ジャイアン:家の手伝いをさせられ過ぎてうんざりした。
このシーンでの母ちゃんの「そう言う台詞は奴隷みたいに働いてから言うことだよ!!」はよくネタにされる。詳細は以下の通り。
ジャイアン「子供にも人権があるっつーの!オレ、かーちゃんの奴隷じゃないっつーの!!」(涙目の訴えもむなしく母ちゃんによる盛大な張り手が炸裂)
母ちゃん「そう言うセリフは、奴隷みたいに働いてから言うことだよ!!」
新・のび太の日本誕生
2016年に放映された水田わさびドラによるリメイク版。ストーリー展開は同一だが、細かな差異がある。
原作との主な違い
- 中盤以降は舞台からフェードアウトしてしまうククルが、最後まで仲間として活躍し、特にククルとのび太の友情が強く描かれている。また、ククルの父を始めとするヒカリ族も終盤ではドラゾンビ救出とギガゾンビ打倒のためにクラヤミ族に立ち向かうシーンがある(2016年版)。
- ギガゾンビの下部・ツチダマの個体数が異なる(1989年作は遮光器土偶1体のみ、2016年版は5種類1体ずつ)。
- 親と子、飼い主とペットとの「自立」を強調している(2016年版)。
- ヒカリ族の復興場面で、宴会を主としたの1989年版、文明の発展の説明を主としたのが2016年版。原作では、ウタベと言う男性が見事な歌声を発揮したのを見たジャイアンが感激して「ボエ~」と歌おうとしたため、騒ぎになる一幕も。
- ドラゴン誕生には、トカゲのアンプルを使用せず、飛行可能のコウモリのアンプルを使用した(共通)。
- 時空乱流の説明にて、原作の6つの具体例を1989年版は1つ挙げられたが、2016年版ではカットされた。
- のび太が遭難した時に助けたマンモスが登場しない(2016年版)
- 原作・1989年版作では描写されなかった、主人公であるドラえもんとギガゾンビのラストバトルが描かれ、ドラミや女性タイムパトロール隊員も登場。
- 事件後、ドラえもん以外のメンバーは家出の原因に折り合いを付け、0点のテストの問題を直していくのび太、ピアノコンクールに出場するしずか、勉強に精を出すスネ夫、配達に精を出すジャイアンを描いている。また、ドラえもんはこっそりドラゾンビの姿をしているところをのび太とのび助に見られて呆れられるシーンがある。他にも成長したククルをタイムテレビで5人が見守るシーンや、空想サファリパークに行ったペガ、グリ、ドラコをのび太たちが見に行くシーンが描かれている(2016年版)。