概要
約5億4,100万年前から4億8,500年前までを指す。古生代の一番古い地質時代。名前はウェールズのラテン語名に由来する。
この時期の動物はカナダのバージェス動物群が有名。他にも中国の澄江動物群、グリーンランドのシリウスパセット動物群などが知られている。
生物相
気候は比較的温暖で、微生物以外の全ての古生物のすみかは海の中に限定されていた。
動物的な多細胞生物はカンブリア紀直前のエディアカラ紀から多くいたが、その頃の生物はどれもこれもマットのような柔らかい体をしており、海水をこしとってプランクトンを捕食したり砂を這いまわって微生物を食べると思われるほど単調なものばかりだった。この時期の生物相は「エディアカラの楽園」と形容され、過酷な生存競争もない平和な世界であったと考えられる。
それに対してカンブリア紀の幕開けとともに、複雑な身体構造を有し、殻などの硬組織や目などの感覚器官を持つ動物が急増する。これは高い運動能力を備えた捕食者と、その捕食者から身を守る被捕食者が分化する食物連鎖の成立を示すものと考えられ、複雑な生態系が形成され生物相が爆発的に多様化したことが察せられる。
この動物多様性が爆発的に拡大する現象は「カンブリア爆発」として広く知られていて、現在知られているほぼ全ての動物門(節足動物や軟体動物、脊索動物レベルの大きな括り)がこの時期から出揃ったと考えられる。当時の海では、壮大な「進化の実験」が繰り広げられていたと考えられている。
生物の特徴
鱗の塊のようなウィワクシアや5つの目を持つオパビニアのように、カンブリア紀の動物は多くが「奇妙奇天烈動物」や「カンブリアモンスター」とも呼ばれるほど、一見では現存する分類に収まりきらなさそうな奇妙な外見を持っていた。
これらの動物の復元と分類は、研究が進んでいる度に大きく変わるものが多い。例えば、上下前後とも逆さまにされたハルキゲニア、触手が甲殻類の腹部と見間違われたアノマロカリスなどがある。
かつては、この奇妙な動物たちは現存のものとは全く異なる体の仕組みを持ち、独自の分類に属すると考えられたが、現在はその多くが現存する動物門に繋がる原始的な種類と考えられている。
例えば上記のアノマロカリスとオパビニアは複眼や腸の構造により原始的な節足動物とされ、ハルキゲニアは節足動物やカギムシの祖先に近い葉足動物であり、ウィワクシアの口には軟体動物において特徴的な歯舌を持つ。他にもピカイアやミロクンミンギアなど早期の脊索動物に属するものがいる(脊椎動物はまだ登場していない)。
一方で、刺胞動物に属するクラゲや、軟体動物に属する貝類、化石節足動物として有名な三葉虫など、比較的馴染みのある姿で、現存する動物門や綱であると容易に理解できるものもいる。
主な生物
- 恐蟹類/原始的な節足動物(アノマロカリスなどのラディオドンタ類、オパビニアなど)
- カンブリア紀のみに栄えた節足動物(メガケイラ類、ハイメノカリナ類など)
- 三葉虫
- 葉足動物(ハルキゲニア、アイシュアイアなど)
- エラヒキムシ様の蠕虫(オットイアなど)
- 原始的な軟体動物(ウィワクシア、オドントグリフスなど)
- ゴカイ類の環形動物(カナディア、パージェスソキータなど)
- 原始的な脊索動物(ピカイア、メタスプリッギナ、古虫動物など)
- イソギンチャク様・クラゲ様の柔らかい刺胞動物
- 海綿(チョイアなど)