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オメガバースの編集履歴

2023-10-23 22:03:37 バージョン

オメガバース

おめがばーす

英語圏を中心とした二次創作より発祥した世界観。

概要

英語圏の二次創作ファンフィクション)において、ファンが用いている特殊設定Omegaverse日本語表記。正式名は「 alpha / beta / omega dynamics 」で、Omegaverseは略称である。-verseは英語圏において特定のコミックキャラクターやテレビシリーズ等の架空の世界を表す接尾語。


主にBLで人気のジャンル。百合にも用いられる。


簡潔に世界観を言い表すと「 性の階級 × 両性具有ファンタジー の複合設定」。オメガバースを採用する作品の大半は、この設定が基本となっている。作品によってはここに「ケモノ」や「半獣人」等の要素が更に加わる場合もある。


見所は発情期ブロマンスからの性交結婚出産を兼ね備える、現生人類から大きく離れたロマンある生態。それらはそれらに起因するカーストなどディストピア要素と表裏一体の関係でもある。


その他の設定はかなり自由度が高いため、ハードルの低さが二次創作一次創作を問わず重宝されるようになっていった。元々は洋画海外ドラマ系ジャンル内において広がりを見せていたが、現在は日本でも、様々ジャンルで用いられている。


また、後述する「オメガ性」の設定から、男性妊娠妊夫)だけでなく「百合夫婦」や「女攻め」といったジャンルにも援用が可能である。


この辺はOmegaverse記事の方にまとめられているので、併せてどうぞ。


二次創作発祥とあるとおり、もともとは他の作品のキャラクターを上記のような世界観に落とし込む、または作品の世界観自体に上記のような設定を付加する、というのが主な使われ方だった(言うまでもなくこれはかなり過激な原作改変にあたるので、ファンとそれ以外の軋轢を避けるためにも明確なタグ付けをする必要があった。「オメガバース」という呼称もその過程で定着したものである)。しかし最近では二次創作に留まらず、オメガバース的世界観を一から創作した作品も増えている。


オメガバースが生まれた理由としては、「絶対に逆転や破綻の起きない、世界観的バックボーンに保証された(性的)関係性」を求める気持ちが発端にあったと思われるが、その後様々な発展や複雑化を経て、もはや共通する単一の動機といったものは定めがたくなっている。


特徴的な設定

「第2の性」と「階級」

オメガバースにおける特徴的な設定として「 男性 / 女性 」の他に、「 アルファ / ベータ / オメガ 」という第2の性、3種類の性別がある。オメガ性の人間は発情期になると性欲が向上して身体に力が入らなくなり、更にはフェロモンを発して社会的に有能なアルファ性の人間を誘引・興奮させてしまう体質を持っている。これが定期的にまたは不定期に一週間程続くため社会での扱いが悪い。「番」や「抑制剤」と言った回避手段もあるが完全ではないとされる。


計6種類の性別が存在しており、それぞれの体質・能力の違いから社会での評価・待遇に差別がある「階級社会」となっている。


男性女性性質
αアルファ男性アルファ女性支配階級。知能が高くなりやすいエリート体質。
βベータ男性ベータ女性中間層。数が一番多い。
Ωオメガ男性オメガ女性下位層。発情期を原因として社会的に冷遇されている。

アルファ同士による結婚も可能である。しかし、いざ結婚してみるとお互いプライドが高く、マウントの取り合いになるため、アルファ同士の結婚生活は長く続かないとされる。


設定の背景・由来

男性妊娠」の浸透

海外ドラマ『スーパーナチュラル』で狼男を題材としたエピソードが放映されたのをきっかけに二次創作が拡大したと言われるが、英語圏では昔からMPreg(男性が妊娠や出産をするジャンルを指す Male Pregnancy の略)という呼称が存在するため、同種の嗜好はさらに以前から存在していた、とする説もある。


日本の腐女子の間ではオメガバースと設定が似ている商業BL漫画『SEX PISTOLS』のタイトルと設定を借りた「セクピスパロ」がジャンルの通称として定着しかけた時期があったが、オメガバース設定の浸透により、同傾向の特殊設定を指す呼称としてこちらが定着している。


アルファ / ベータ / オメガの由来

オメガバースにおけるアルファ、ベータ、オメガという用語は、昔の研究者が使っていた用語から借用したものと言われる。

20世紀半ばの狼の研究者は、捕獲されて飼育された狼の群れを観察して研究していた。観察対象の群れは互いに血縁関係がない成体で構成され、狭い場所で飼育されていた。そのような群れの観察から、アルファ(最上位)、ベータ(第2位)、オメガ(最下位)という序列の概念が生まれた。そしてアルファの地位をめぐる争いがあると考えられていた。


しかし後年、野生の狼の群れの研究が進むと、この飼育下の群れの行動は野生のそれとは異なることが分かってきた。

野生の群れではアルファの地位をめぐる序列争いがほとんど起こらないことが判明したのである。観察対象の飼育下の群れは特殊な構成と環境だったために、通常ではない行動をしていたのだった。


野生の狼の群れ(「パック」と呼ばれる)は、一組の繁殖ペア(いわゆる番・つがい)とその子供で構成されることが多い(例外もある)。年齢による序列はあるが、序列をめぐる争いはめったにない。群れは繁殖ペアを中心とした家族であると考えられるようになった。


こうしてアルファなどの概念は否定され、近年の野生生物学者たちは狼についてアルファ、ベータ、オメガという用語を使わなくなった。


詳しくは外部記事(英語)を参照。

https://www.scientificamerican.com/article/is-the-alpha-wolf-idea-a-myth/


オメガバースのアルファ、ベータ、オメガの設定は、現実の狼の生態とは無関係である。


生態

下記のような設定はあくまでも基本とされているものであり、描き手・書き手によって細部は異なるため、実際のところはこの限りではない。


オメガバースは作者によって様々な設定が存在する、非常に自由な世界である。


アルファ性 (Alpha)

基本設定

  • 数が少なく、生まれつきエリートボス的な気質を持ち、社会的地位や職業的地位の高い者が多い。総攻めであり、特にオメガ性に対しては絶対的な攻め手である。強引で支配的だが、作品によっては「持てる者の苦悩」も受け持っている。
  • 発情中のオメガとの接触は、どんなに理性的なアルファであっても抗しきれない強烈な発情状態を引き起こし、時に暴力的なまでの性交に及びかねないため、この性質を嫌悪するアルファもいる。
  • なお、オメガの発情抑制薬に相当するものが存在しないため、一度発情したアルファを、同じく発情しているオメガが止めるのはほとんど不可能。亜人半獣人のいる世界観の場合、鋭いを持つなどより動物的な要素の強いフィジカルエリートでもある事が多く、一層顕著になる。

特殊設定

性器

アルファ女性 (Alpha Female, AF)
  • 精巣と、勃起すると陰茎状にまで変化するクリトリスを持ち、他の女性やオメガ男性を妊娠させる事ができる。鳥類の交尾のように、穴同士をすり合わせる行為からの射精で相手を妊娠させたりする等の設定も見られる。
アルファ男性 (Alpha Male, AM)
  • 狼の要素が強い設定だと、男性器の根元に亀頭球のような部位がある。亀頭球(Bulbus Glandis, 俗称 Knot)とはイヌ科のオスの性器に存在する部位で、交尾中に拳大の瘤に腫れあがり、射精が終わるまで抜けなくなることで受精の成功率が上がる。なおイヌ科動物の射精は非常に長く、10~30分ほど続く。更に詳しくは該当記事を参照のこと。
  • この場合、性器全体の形状もケモチン(完全に動物の性器として描かれる)であったり、あくまで犬科の要素は亀頭球のみで他の形状はヒトチン(人間の性器基準)であったりするなど、作者の好みによって描写には差異がある。

関連設定

ラット
  • オメガの発情期があるように、アルファにも発情期がある設定もあり、アルファの発情期は「ラット」と呼ばれている。それぞれの解釈設定で書かれており、番のオメガのヒートに誘発されると起こるものもあれば、勝手に起きて逆にオメガのヒートを誘発させるものもある。性器の形状が変わって抜けないように亀頭球が瘤状に膨れ、オメガをより妊娠させやすくするということも。
  • また、自分の番のオメガへの庇護欲が過剰なくらい増して威嚇的で攻撃的になる、抱き締めたまま離さない、誰にも見せない、近付くことさえ許さないなど、周囲への態度が急激に変わる場合もある。
ビッチング
  • アルファ同士のカップルでアルファ攻めがアルファ受けをオメガに転換することができる「ビッチング(bitching)」というものがある。
  • 性的に屈服させられたアルファがオメガになる、お互いがラットの時にアルファ受けのうなじを噛む、アルファが強い感情をフェロモンに載せ、意中の相手の五感から体内に侵入し、愛と執着を体に溶け込ませて自分だけのオメガに変えるなど様々。端的に言えば、アルファが後天的にオメガになってしまうというもの。

ベータ性 (Beta)

  • 最も人口が多く、身体的特徴や行動等も現実の人間とほぼ変わらないとされる。
  • 発情期も存在せず、オメガ性の発情に誘惑される事もあるが、アルファ性ほどの激しい反応は起こらず、自制も可能。中にはオメガ性のフェロモンがまったく効かない設定も存在し、そこでのベータ性からすれば発情オメガは「体調が悪そう」くらいにしか見えない。結婚もベータ性同士の男女でする事が当たり前と捉えており、その子供も高確率でベータ性となるので同様の家庭が再生産されてゆく。一般人」「大衆」代表。
  • ただ裏を返せばそれ以外の組み合わせや、ベータ性同士の子にもかかわらず他の性になる場合が稀にあるという事である。また、子供の時はベータとされていたものが年齢を重ねたら体質が変化する、といった設定も見られる。それらをどの程度タブー視するかでその社会が決まるところがある、重要な役割でもある。

オメガ性 (Omega)

基本設定

  • 数はアルファ性よりも少なく、絶滅危惧種のようになっている場合もしばしば。大きく育たなかったり、誘惑や妊娠に特化した成長をしたりと、身体構造自体が生存競争に不利なようになりがちという設定も見られる。女性も「男性も」ほぼ確実に総受けである。
  • そのまま絶滅する事を望むアルファやベータがいたり、アングラ世界からは「使える」存在と看做されある意味引く手あまただったりと、現実の女性やその他マイノリティーが被ってきた諸々のリスクやハンデのメタファーとして捉える向きもある。

特殊設定

性器

オメガ女性 (Omega Female, OF)
  • 女性ホルモンが通常よりも多く、アルファやベータ女性よりも卵巣が大きい。胸や臀部なども大きくなりやすく、「安産型」や「トランジスタグラマー」と呼ばれる体型になりがち。
オメガ男性 (Omega Male, OM)
  • 子宮は無いものの、直腸の奥に子宮と同じ機能を持つ生殖器を持つ事が一般的。発情期には愛液のような粘液も分泌し、それによってアルファ・ベータ男性やアルファ女性と性交し妊娠する。オメガ男性の男性器は発達しにくく、育ったとしても睾丸精巣を欠く事も多い。
  • 男ふたなり女性器を兼ね備える)」や「カントボーイ(女性器しか無い)」である場合さえあり、生殖に関してはほぼ産む側に徹しており物理的にも竿役を務める事は困難である。

関連設定

発情期
  • 10代後半から「ヒート(heat)」と呼ばれる発情期が現れるようになり、当人の意思に関係なく、約3ヶ月に1度の頻度で、1週間ほど強いフェロモンを撒き散らすようになり、期間中は手近なアルファやベータに見境なく欲情してしまい、発情と繁殖以外に何もできなくなるくらいの脱力感や性欲の増進などに悩まされるため、外出もままならなくなる。
  • オメガバース世界でオメガ性が低い地位にいるのは主にこの体質によるもの。
  • アルファ性との「番(つがい)」が成立することで発情が変質し、フェロモンを放出しなくなる、またはヒートそのものが収まる場合もある。
抑制剤
  • 発情期を抑制剤などで物理的に抑え込もうとするオメガ性も存在し、中には発情期を隠してベータ性として振る舞う者もいる。しかし、抑制剤自体も副作用があったり、品質や本人との相性で効きが悪く完全には抑えられないといった展開になる事が多い。
  • また、日本ではあまり見かけないが、この抑制剤に保険が適用されておらず高額の薬代が掛かるためアルファに屈するオメガや、お金の無い番のアルファから資産家のアルファに鞍替えするオメガ等の設定もある。
  • 抑制剤と避妊薬は基本的に別であり、抑制剤を使用していても避妊をしなければ、発情期中のオメガ性が性交した場合妊娠する。最初から避妊薬が配合されている抑制剤や、アフターピルのような性交後の避妊対策が存在する場合もあるが、もちろん価格は別設定である。
ネスティング
  • 巣作りをする「ネスティング(nesting)」という習性が設定されている事もあり、好意を抱く相手や、番となったアルファの私物を無意識にかき集めてしまい、フェロモンと同等のアピールとする。ヒートとの組み合わせによっては、「抑制剤で発情は抑えているけれど、うっかりネスティングで好きな相手にオメガだとバレてしまった」なんて事態が発生する。

オメガ性の冷遇

  • オメガ性の特性上、発情期になると周囲とのトラブルを引き起こし、本人もまともな労働力として使えなくなることから、繁殖(主に産む側)に関することのみが仕事とされていた歴史がある。
  • 実際オメガ性が自立するにも就職先は制限されがちで、多くは低賃金の単純労働か、体質を活かした夜の仕事に従事せざるを得ないのが現実である。たとえまともな職を得られても、結局は発情期が足を引っ張り、職場内で冷遇・腫れ物扱いされたり、最悪愛人枕営業要員として飼い殺しにされる事になる。
  • 差別描写については、他の性と競合すると優先的に落とされたり、「優しくか弱い家庭的な性」として補助的な仕事に集中投入されたりする「程度」の、先進国における一般女性レベルの生活は可能としている設定も少なくない。中には珍獣のように、ある意味大切に「保護」されているという設定も見られる。とはいえ、こういったケースは家の奥に軟禁され、時が来れば保護者が決めた婚約者に引き渡されるのみといった自由無き人生を意味しているものでもある。

番(つがい)

  • アルファとオメガの間にのみ発生する特別な繋がりを「番(つがい)」と呼ぶ。
  • フリーのオメガはフェロモンを発してフリーのアルファを誘い、番になったオメガは以後フェロモンを発さなくなる。番になる基準は運命的なものであったり、性行為の際にアルファがオメガのフェロモン分泌腺があるうなじ元を噛むことでフェロモンが変質し、番になったことが周囲にも判別できるようになる等々、設定は様々。なお、ベータとオメガで繁殖は出来るが、番関係にはならないと言われる。
  • この番は本能的なもので、通常の恋人関係や婚姻関係よりも強いものとされ、一旦番になるとどちらかが死ぬまで解除されないと言われる。特にオメガは、生理的にも他の相手との性交がしにくくなる側面があり、以後は番とのみ行為に及ぶようになる。
  • しかしアルファの都合によっては、オメガ側が一方的に番を解除され引き剥がされる場合もある。この状態のオメガは非常に強い精神的ストレスを負い、以後は番を作れなくなってしまう。一方で発情期が再発するため、二度と番を得られないまま発情期を抱えた一生を送ることになる。

関連作品

BLやケモノ自体の扱われ方の違いもあってか、発祥である英語圏ではファンタジーを通じて現実社会の問題提起を行う作品が多く見られ(ディストピア小説やPolitical Fic本来の文脈でもある)、日本では逆にその不憫さや不条理萌えたり、ささやかな幸せを見出したりするような作品が多く見られる傾向にある。


センシティブな作品【獣人オメガバース】小冊子WEB再録+Twitterログ

月と太陽〜運命の番〜19世紀のパブリックスクール創作BL 二章の肆(4)


社会への問題意識を持っていて、それを表現したい、あるいはより原義的な意味でのディストピア萌えを伝えたいなら、そういった切り口でオメガバースを扱うのもいいだろう。多様な設定こそが醍醐味でもあるオメガバースにおいて、あなたの作品が、オメガバースのひとつのスタンダードになるかもしれないのだから。


外部リンク

日本語

日本語での詳細な解説(個人blog)


海外fanficでしばしばみかける設定など


疑義と批判的見解の例(個人blog)


英語

fanfiction(二次創作)のための用語解説wikiの記事。歴史や概略など。


※リンク先成人向けのため注意

有志によってまとめられた設定、世界観、用語等についての詳細な解説

上記AO3内の記事の日本語訳(原文投稿者許可済)※こちらは全年齢


※生殖器の図解画像があるため閲覧注意


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