ジムⅡ
じむつー
機体データ
概要
一年戦争後に可決された『連邦軍再建計画』に基づいて開発された、地球連邦軍の汎用主力モビルスーツ。早期配備を優先して大量生産され、粗製乱造とまで揶揄されたRGM-79 ジムの改修機であり、デラーズ紛争後にハイザックと共に連邦軍の主力機として運用された。
グリプス戦役初期にティターンズ、エゥーゴ双方で運用された機体であり、特にティターンズでは組織拡大に伴うジム・クゥエルのコストパフォーマンスの問題を解消する目的で、ジム改高機動型の運用データを基にグリプスで新規生産された機体も存在する。型式番号はRGM-79R。ただし上述のティターンズが新たに生産した機体はRMS-179の型式番号となっている。なお、RGM-179とする資料もあるがこれは誤植とされており、基本的には前2つが使われている。
地球連邦軍およびティターンズでの制式カラーはジムと同じ赤と白。また、濃紺のティターンズカラーに塗装された機体もあった模様。
エゥーゴで使用された機体は赤い部分が緑色に塗られており、シールドの十字はほとんどが赤で塗り潰されている。また、ネモの配備以降はネモと同様のカラーリングに塗られた機体も存在した。
宇宙世紀0096年のトリントン基地にはサンドピンクと紺の、かつて同基地に配備されていたジム改と同様のカラーの機体も存在したとされている。
機体構造
戦後の主力機であるジム改からの転換を目的としているため、やはりコストパフォーマンスを優先した部分が大きく目立っている。
装甲材質は後期ジム系列同様のチタン合金セラミック複合材(前期ジム系はカスタム機や高級機を除き装甲材質は「チタン合金」のみである)を採用しており、頭部はリアシーカーとポールアンテナの増設で索敵能力を強化。ランドセルはジム改の生産ラインを流用しつつもバーニアの4発化によりスラスター出力が増強され、後方視点用のサブセンサーも装備される。メインジェネレーターはカセット式コックピットブロックに対応した1500kw級のものに換装しており、これに肩部と脚部に増設されたスラスターと前述のバックパックを合わせることによって機動性を大きく向上させる事に成功している。
なお、U.C.0083年に改修された初期改修型には劇中で見られた全天周囲モニター・リニアシートが導入されておらず、後にU.C.0085年の改修から追加されている。
『ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに』においてはジム改の左胸とランドセルにセンサーを増設しジムⅡ相当の近代化改修が施された「ジム改高機動型」が開発されており、『A.O.Z Re-Boot』においてはジム・スナイパーカスタム、ジム・コマンド宇宙戦仕様、ジムD型ならびにそれをベースとしたジム・キャノンなど同様の近代化改修を受けたジムシリーズの存在が示唆されている。
これらの改修の結果、ジムⅡはカタログスペック上は装甲を除きガンダムを上回る性能を手に入れたのだが実はこの改修、次世代機としての性能を満たせているものでは無かった。
と言うのも本機の改修計画が決定した時点での連邦上層部はジオン公国と言う大敵を失った状態だったこともあり、防空型サラミスやマゼラン改の様な時代錯誤な大艦巨砲主義が兵器として現実化するようなありさま(ただし艦の用途を完全に分担しようとした言う説もある)で、モビルスーツの積極的な開発に非常に消極的であった(事実、この上層部の姿勢と戦後の復興による軍縮によってRX-78の完全量産化は中止されている)。
その為この計画自体も倉庫送りとなったジムの再利用と言うよりは、軍上層部の一部と各種部品メーカーの癒着により実行された面が大きく、同時期配備のハイザックでも癒着による弊害が生じたことにより、結果として連邦軍内の技術停滞を招く事となってしまった。
これらの反省もあってか、本機に続くジムⅢの開発計画はグリプス戦役以前から始まっており、本機自体もマラサイやネモといった革新的技術が採用された第二世代モビルスーツが登場すると早々に主力機の座から退く事になった。
しかし、コストパフォーマンスに優れていた為、前線ではない輸送部隊や新型機配備が間に合わない部隊へと配備され、次々世代機のジェガンが登場したU.C.0096年においてもなお戦略的価値の無い僻地などで運用が続けられていた。
武装
頭部バルカン砲
頭部に搭載された60mm口径の機関砲。
メインセンサーと連動して、頭部そのものが一種の自律砲台として機能する。
ビーム・サーベル
斬撃用のビーム兵装。
ビームの発信ユニットは一年戦争以来使われている、標準的な量産部品の更新部材を採用。
使用しない場合は、ジムと同じくバックパック左側にマウントされる。
ビーム・ライフル
型式番号BR-S-85-C2。ボウワ社の開発で出力は1.9MW。
フォアグリップを標準装備するショートレンジタイプのビームライフルで、最大で24連射のバースト射撃が可能となっている。本機と並行してビームスプレーガンの生産ラインを転用する形で大量生産され、本機以外のジム系モビルスーツやネモ及びガンキャノン重装型等が使用しているがジムⅡの開発経緯や当時の情勢から鑑みるに「連邦規格のビーム兵器用エネルギー供給経路を有する全ての機体で扱える様に」という要求仕様で開発を命じられた可能性が高い。一方でエネルギーは本体供給式(内蔵E-CAP式と同一)から変更されていない為、リチャージ機能こそあるもの継戦能力に難を残している。また、あるパイロット曰くロングレンジでの射撃性能は「バルカン砲の方がマシ」なレベルらしい(ただし本兵装はブルパップマシンガン等と同様、ある程度のパーツ換装にも対応している為、パイロットの言い分に無理がある証言となっている)。
バリエーション
ジムⅡ(ラプターブルー隊仕様)
漫画『機動戦士ガンダムUC 星月の欠片』に登場。
WB隊メンバーであり1年戦争で戦死したスレッガー・ロウにあやかり、彼のエンブレムを象徴する「青」で胴体が塗装されたジムⅡ。
宇宙世紀0095年の軍縮が進んでいる時期で有る為か、ジムⅢへのアップデートどころか修理用の新品部品すら回してもらえず、ユーディン中尉とエンデ中尉の2機しか稼働していない。
アナハイム工専の整備実習としてエンデ機がインダストリアル7に赴くが、実習の分解整備中にジオン共和国極右団体「風の会」によるテロ攻撃を受けてしまう。
メインカメラはおろかサブセンサーの大半が使えないという絶望的な状況だったが、実習施設に展示されていたレプリカのガンダムヘッドを応急処置として装着。
機体の状態は万全とは程遠かったが、ガンダムTR-1やBガンダム等が実証した通り「ガンダム」の与える心理的影響力は大きく、かつてのガンダム伝説を再現するかの如く一方的にテロリストを撃破した。
この事件は一般人にも目撃されており、機体外観がアムロ・レイ搭乗のRX-78-2とあまりにも酷似していた事、テロリストを単独で壊滅させた大戦果から「アムロ・レイは生きており、伝説のガンダムと共に帰ってきた」という都市伝説にもなっている。
ジムⅡ・ラーⅡ・アクア
型式番号RMS-179+ARZ-124HBⅡM。
Web企画『A.O.Z Re-Boot』に登場。
ティターンズ主導のTR計画の中で考案されたバリエーション機。
水中用強化Gパーツ「ガンダムTR-6[アクア・ハンブラビⅡ]」と合体した、アクア・ジムの後継となる水中戦対応仕様。
アクア・ハンブラビⅡは「万能化換装システム」に基づく設計により肩と股間さえショルダー・ユニットとサブアームで掴めればモビルスーツを選ばず合体し水中適性を付与できるという特徴を持っており、その一例としてアクト・ザク・ラーⅡ・アクアと共に装着例が紹介された。ただMS本体の防水性や耐圧性に対する言及は無く、本機がどの程度の水深まで耐えられるかなどは不明。
ジムⅡ中距離支援型
型式番号RMS-179。
『A.O.Z Re-Boot』に登場
ジム改高機動型によって試験された中距離支援ユニットの制式採用バージョンを装備したジムⅡ。背部にキャノンパックを、腰部両脇に汎用ミサイルポッドを装着している。
中距離支援を主な任務とする性格はジム・キャノンの系譜に属するものであり、非公式に「ジム・キャノンⅢ」とも呼称された。
一定の数が量産されたようで、主にティターンズに配備されている。
ガンダム・コピータイプ
型式番号RGM-79-R。
ゲームブック『機動戦士Ζガンダム ジェリド出撃命令』に登場。
ジムⅡ系列を元に外装や仕様などをガンダムに近づけた機体と見られるが、詳細は不明。ガンダムタイプの頭部を持つほか、機体各部の形状もジムⅡやガンダムとは異なる形に変更されている。
宇宙世紀0087年に連邦軍バックランド基地を占拠した反連邦組織が運用しており、脳にアムロ・レイの戦闘パターンを植え付けた「疑似ニュータイプ」をパイロットとして、鎮圧に向かったジェリド・メサ士官候補生のハイザックと交戦している。
ジムⅡ改
型式番号RS-82B-R。
雑誌企画『TYRANT SWORD Of NEOFALIA』に登場。
辺境守備艦隊仕様としてジェネレーター出力や脚部のスラスター、索敵性能などを強化したジムⅡの派生機。白地に紺のスプリッター迷彩が施されている。
本来の任務においてサラミス級巡洋艦「ピルケニア」所属機などがアクシズの部隊と交戦しているほか、ガンダムMk-Ⅱ等の新型機の開発時にテストベースとして使用された機体も存在する。
なお、同作ではジムⅡ(型式番号RS-82B)の設定自体が独自設定に基づいて改変されており、既存のジムの改造ではない新造機とされている他、ネモとの開発順序が逆転しており、性能に問題があったネモを代替する形で連邦軍の主力機となったとされる。
サム
型式番号RX-86。
『TYRANT SWORD Of NEOFALIA』に設定のみ登場。
ジムⅡ改をテストベースとして、ティターンズの主力機とすべく開発された機体。
プロトタイプの時点で、外観はジム系機体とは大きく離れたものになっている。
なお、ウッディ大尉が考案した同名の超量産型MSとは無関係。
立体物
1/144スケールで放送当時発売の旧キットが発売。旧キット説明書には連邦カラーの塗装案内が載る一方でエゥーゴカラーも紹介されている。プロポーション・ディティールの再現度は高く、いかにも可動域が多そうな外観をしているが、実際にはMSV時代キットの関節部がポリキャップに置き換えられただけで、実際の関節可動域は内部の干渉部が多くMSV以下であった。プラモ狂四郎を読んで組んで失望した当時のファンも多いはず。
その後25年以上たってからHGUCジムⅢリデコの2011年10月発売のティターンズ・連邦カラーのものが一般販売。稼働は大幅に向上したもののごついジムⅢのプロポーションに引っ張られてかなり違和感のある外観になってしまった。HGUCではのちにプレミアムバンダイ限定でエゥーゴカラー、サンドピンクのトリントン基地仕様、セミストライカーが発売された。なお、エゥーゴカラーのシールドは十字部分が黄色のままであり、気になるなら塗装必須。
1/100スケールではプレミアムバンダイ限定でMGが発売。内部フレームはMGガンダムVer2.0の流れを組むもののため違和感は少ない。これまでにエゥーゴカラー版、細部が異なるUC版が発売され、そして2018年10月にセミストライカーが受注生産が発表された。
ガシャポンガン消しシリーズにラインナップ。バリュートパックが装備された仕様となっている。※現在、入手困難
ガシャプラシリーズにラインナップ。劇中で使用した装備が同梱している。※現在、入手困難
食玩「GUNDAM CONVERGE」シリーズにラインナップ。※現在、入手困難
ゲーム出演
設定通りと言うべきか、どのゲームにおいても大抵ジムのマイナーチェンジ程度に過ぎない。さらにネモやハイザックなどが本機より大抵強いのも再現されてしまっているので登場しても人気は低い。
Gジェネやギレンの野望などではジムⅢへ繋がるのでそういう意味では有用かもしれないが、その場合本機自体が注目されることはあまりなく、単なる通過点扱いとなってしまう。
そんな本機でも目立つ事が出来た数少ない機会が『ガンダムネットワークオペレーション2』や『機動戦士ガンダムオンライン』、『機動戦士ガンダムバトルオペレーション2』だろう。
『GNO2』はグリプス戦役直前までが舞台のゲームであり、競合しがちなハイザック等が登場しない。スペックもジム系の延長線上として高めとなっている為、量産機としては高性能である。
『ガンダムオンライン』や『バトルオペレーション2』では低コストでは貴重なビームライフルを持てる機体として有用である。どちらにおいてもコストによって同時期の機体と差別化できる為、武装や性能の面で優秀と言える。
デザインについて
『Ζガンダム』放送当時「どこが変わったのかさっぱりわからない」と言われた程ジムからほとんど外見が変わっていないが、ジムとの外見上のわかりやすい違いは、頭部右側のアンテナ、左肩口のサブセンサー、両肩アーマー側面の姿勢制御スラスター、スラスターが4つに増えたランドセル等。
これらの特徴は前任機であるジム改やジム・クゥエルといった後期型ジムが持つものと同じであり、前期型と後期型のいいとこどりをした様なデザインと言える。先述の通り本機にはジム改のデータがフィードバックされているとする資料もある。
よって、ジムⅡ、あるいはその部材を使ったジム改高機動型のみが持つ共通の記号は脛にある長方形の突起(ただし非ジム系ながら近い外観を持つネモも持つ特徴)とランドセル右側のサブセンサーなどに留まる。
デザイン自体、元は近藤和久が通常のジムのディティールアップ稿として用意したものであるが、改変点が多いため改良型扱いとなったという経緯がある。