フリーダム強奪事件
ふりーだむごうだつじけん
C.E.71年時(『SEED』)
C.E.71年5月5日、プラント(ザフト)で極秘開発されていたニュートロンジャマーキャンセラー(NJC)搭載の最新型モビルスーツ群「ZGMF-Xシリーズ」の1機であるZGMF-X10A フリーダムが、ラクス・クラインらクライン派の手引きによってキラ・ヤマトに強奪された事件。
同時期に発生したオペレーション・スピットブレイクにアークエンジェルが巻き込まれたことから、同戦艦とクルー達を救出したいというキラの要望を受けてフリーダムの在処を知っていたラクスが誘導。強奪の際には、キラはザフトレッドの制服を着てザフトの関係者を装ったことで成功に及んでいる。
このフリーダム強奪はラクスの独断かどうかは明らかになっていない。元々父親のシーゲル・クラインからしてザフトの過剰戦力や作戦に否定的な立場だったため、ニュートロンジャマーの一件を考えても同様の条件さえ揃えば娘と同様の行動を取っていた可能性は高い。
NJCは文字通りニュートロンジャマーの核分裂反応抑制効果を無効化して再び核兵器を使用可能とする代物であり、その設計データが地球連合へ渡ることを危惧したプラント最高評議会議長パトリック・ザラは、5月17日にフリーダムの兄弟機ZGMF-X09A ジャスティスを特務隊のアスラン・ザラへ引き渡す際、「フリーダムの奪還、不可能なら完全な破壊」及び「機体に関与した人物・施設・組織全ての抹消」を命じた。また、当事件の首謀者であるラクスに対しては父親のシーゲル諸共「オペレーション・スピットブレイクの情報流出」の冤罪をかけ国家反逆罪で指名手配し、結果シーゲルは潜伏先を突き止められ銃殺された。
パトリックが危惧したNJCのデータ流出だが、これは後に別のルートで地球連合軍に渡ってしまい、Mk5核弾頭ミサイルを解禁した連合の攻撃によってザフトの宇宙要塞ボアズが陥落し、プラントに対しても核ミサイルの脅威が迫ることに繋がった。
なお、アスランは6月15日に大西洋連邦がオーブ解放作戦を展開中のオーブ連合首長国にてフリーダムを発見するが、この時より命令より自分の意志を優先してキラの側についている。フリーダムはC.E.71年9月27日の第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦で大破したものの奪還されることはないままC.E.72年3月10日の終戦を迎えた。
終戦後もプラントへ返還されることはなく(当時の臨時議長アイリーン・カナーバがユニウス条約の邪魔になるため暗に返還を拒否したこともある)、ラクスの依頼でオーブのモルゲンレーテ・エアロテック社により修復・完全復元された(『ECLIPSE』)。アスハ家別邸の地下シェルターに非常用戦力として保管されていたフリーダムは第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦から2年後のC.E.73年12月(『DESTINY』)に再起動、同月下旬にザフトが発令したエンジェルダウン作戦において撃墜されるまでキラの手で運用され続けた。
C.E.74年時(『FREEDOM』)
『FREEDOM』本編の半年前に発生した、正体不明のテロリストによるZGMF-X20A ストライクフリーダムの強奪未遂事件。
アークエンジェルに引き渡されたストライクフリーダムがテロリストに強奪され、地上の施設を破壊して回るが、突如出現したブラックナイトスコード ルドラがストライクフリーダムを撃墜することで鎮圧に成功する。ストライクフリーダムは無事オーブに回収され、修復を兼ねて改修を受けZGMF/A-262B ストライクフリーダム弐式へと生まれ変わることになる。
推測の域を出ないものの、鮮やか過ぎる介入タイミングや、ストライクフリーダムがキラでなければまともに動かせないこと、ルドラの性能の高さなどから強奪犯は「キラに匹敵するパイロット能力を持ち、ルドラの所属先でもあるファウンデーション王国の女王親衛隊ブラックナイトスコード」と目されている。
つまるところ、事件自体がファウンデーションによる自作自演である可能性がある。
少なくともオーブ代表首長カガリ・ユラ・アスハはそう判断し、オーブ国防軍からターミナルへ出向中だったアスランとメイリン・ホークにファウンデーションの調査を依頼している。
下記の描写から背景はどうであれ公的にはオーブ国防軍か世界平和監視機構コンパス、あるいは双方の管理下にあったストライクフリーダムの強奪からの騒動は独力で解決できず、ファウンデーション王国の協力によって解決された事になっている模様。
映画劇中ではこの事件に関してはカガリの「半年前のフリーダム強奪事件では、オーブも彼らに借りがある」という発言と、ファウンデーションでは化け物が出るとヒルダ・ハーケンらからシン・アスカが聞いた際にイメージした、この事件の決着の瞬間らしきブラックナイトスコード ルドラ(スピネルことリュー・シェンチアン機)がフェムテク装甲でビームを弾いた末にストライクフリーダムの胸部を対モビルスーツ重斬刀で斬りつけるイメージ図が描写された程度となっている。
シンとシュラ・サーペンタインの決闘直前の、リデラード・トラドールの「コンパスっての、案外大したことないんじゃな〜い?」という発言に対するダニエル・ハルパーの「それはこないだ実証したし」という発言も、この事件を踏まえてのものと思われる。
余談
- 劇中での出来事の年号全てが明示されたわけではないが、少なくとも『FREEDOM』本編がC.E.75年5月中の出来事であることのみは判明しており、そこから半年前と考えると遅くともC.E.74年12月には起こった事件であるとわかる。
- 元々『FREEDOM』の前日譚として映像化予定であり脚本も完成していたが、映画完成を優先させるために見送られていた。その後、映画が公開2週間で興行収入20億円を超える大ヒットに伴い、映像化させる可能性が出てきた(監督自身がそれを示唆する発言を行っている)。
- この事件の内容を知らずに映画を見ると、上記のシンのイメージやカガリとダニエルの発言は視聴者視点では唐突感があり、テンポが速い展開や後半の怒涛の内容もあり、総じて事件に関しては印象に残らずに内容をはっきりと認識できないどころか忘れられて見終えてしまう程度の描写量だったため、コンテンツ化が期待される。
- 各種インタビューなどを見るに、監督の心情的にも脚本が既に出来上がっていた本エピソードを違和感は覚悟で盛り込みたかった様子である。
- STTS-909 ライジングフリーダムが開発された経緯として「ストライクフリーダムが破壊活動を行った事実が残ったため」という考察がされている。
- イモータルジャスティスやゲルググメナースを駆るシンやルナマリア・ホークに対してムウ・ラ・フラガが「どうだ?新型には慣れたか?」と質問していることから、コンパスが作中で運用していた機体は実戦投入されてから間もないことがうかがえ、イモータルジャスティスの兄弟機であるライジングフリーダムもまた開発・実戦投入されてから間もない可能性が高い。また、開発経緯は現在不明だが、初代フリーダムへの回帰要素が多く青主体のカラーリングになっていることについても「ストライクフリーダムのイメージから遠ざけるため」となれば辻褄が合う。
- 「アークエンジェルに引き渡されたストライクフリーダム」と記したが、元々ストライクフリーダム自体アークエンジェル(やエターナル)を母艦として活動していた機体であるためこの表現では不自然な点が残る。この点に関する考察では、コンパスでの運用を想定し「EQM-Y148 収束重核子ビーム砲ディスラプター」を増設する改造を外部で行い完了したものがアークエンジェルに引き渡されたと考えられている。
- ディスラプターにはコンパス総裁の使用許可が必要であること、にもかかわらず改修後のストライクフリーダム弐式は実戦への投入を想定せずモルゲンレーテがテスト機としてのみ使用していたことを考えるとモルゲンレーテがディスラプターを装備させるとは考えにくいことが理由として挙げられる。
- また、シンの回想シーンではルドラの少し後ろに破壊されたA-GXQ754/V2 ゼウスシルエットと思わしき物体が突き刺さっており、ゼウスシルエットもまとめて強奪された可能性が示唆されている。
- 『FREEDOM』の終盤に登場するブラックナイトスコード カルラは武装構成がストライクフリーダムと似ている箇所が多く、今回のフリーダム強奪事件から機体データを採取して開発された可能性がある。