ベリアル親子
べりあるおやこ
2017年に放送された『ウルトラマンジード』は、あのウルトラマンベリアルの息子が主人公ということでファンの間で非常に大きな話題となった(ただし詳細が判明するまではtwitterやSNS等で噂になっていた)。
その後、劇中でジード=朝倉リクは伏井出ケイの手によってベリアルの遺伝子から人工的に生み出されたデザインベビーであり、父親について何一つ知らされずに地球で育てられたことが判明。一応、リクはかつて地球を滅ぼそうとした悪の権化としてベリアルの名を知ってはいたが、当然ながら自分がその血を引く存在であるとは想像もしていなかった。
一方、ベリアルは上記の経緯ゆえに自分に息子がいてウルトラマンとして活動していることを知っており、第11話でケイから報告を受けた際に「息子はよくやっているようだ」と話していた。
第16話および第17話では遂に対面を果たすこととなり、自身と似た部分もあるジードをベリアルは改めて「息子」と呼ぶシーンが多々あり、「これからはずっと傍にいる」「臆病な地球人とは違い、お前のことを受け入れる」等と優しい言葉を投げかけるシーンもあったが、その親子関係はやはり通常の親子とはずれたものであった。そもそもジードのことを「息子」とは呼んでも「リク」や「ジード」といった固有名詞で呼ぶことは後者をゼロに追従する形でしか言ったことはなく、ジードのことをどこまで一個人として認めていたかどうかは定かではない(一応、ゼロのとやり取りを見る限りでは息子を「ジード」と認めつつも、それでも「息子」と呼んでいるようにも見える)。
そもそも、ジードはベリアルとは逆に正義の戦士(ヒーロー)として生きていくことを決意しており、度重なるベリアルからの誘いや挑発を撥ね付け、遂には「僕のことを息子って呼ぶな!!」「あなたは強い、でも間違っている!!」と完全にベリアルのことを拒絶している。
一方でベリアルもジードからの強い反発に腹を立てるでもなく、むしろ反抗期をたしなめるように穏やかな態度で一貫し、果敢に挑みかかってくるジードを正面から迎え撃っており(24話でも「どうやら反抗期のようだ」という台詞がある)、吸収が失敗した後も怒りや憎しみを向けること無く、「ベリアルの息子という運命からは逃れられない」と忠告染みた台詞を投げかけている。歪ではあるが、親と言う自覚と親子愛自体は持っている。
なお、テレビにて本格的に対面を果たす前、ジード=朝倉リク役の濱田龍臣は、ウルトラマンフェスティバル2017にゲスト出演した際に、「ベリアルと対峙した場合は『あなたには負けない!』と答える」と述べていた(本編でもロイヤルメガマスターへフュージョンライズする際に「僕はあなたを越えてみせる!!」と言うシーンがある)。
そして最終回では、時空の狭間での戦いでジードはベリアルが闇落ちした経緯を知り、今までの誰かからの評価でもない自らの手で、眼で、心で父の人生に触れる事となり、ベリアルに同情する(イメージかリクの姿でベリアルを抱きしめた)。
ベリアルは「わかったようなことを言うな!」と激昂、この時の戦いは「ヒーローと悪」の戦いではなくさながらお互いに心をむき出しにした「親子喧嘩」の様相を呈しており、レッキングバーストによって倒される際に、初めて自分から「ジィィィィィドォォォォォ―――ッ!!!」という名前を叫んだ。そして爆散したベリアルにジードは「さよなら、父さん…」と、最初で最後の親子喧嘩の決着と共に初めてベリアルを父と呼んだ。
最後の最後で、この悲しい親子は最初で最後の親子喧嘩を経て、一瞬とはいえ歩み寄れたのかもしれない……。
後の作品、『ウルトラマンZ』では、宇宙に散ったべリアルの細胞が新たな騒動の種となっており、言わば父の負の遺産を清算するが如く活動している(なお、その際に出逢ったナツカワ・ハルキにデビルスプリンターの説明したが、べリアルとの関係は「僕が決着をつけなきゃいけない相手」と、関係をぼかしている)。
セレブロに拉致されベリアル因子を取られそうになった際には「ベリアルは安らかに眠らせてやってくれ!」と述べており、ジード最終回を回想した際には「父さん…」とこぼしたり、単なる血縁故の責任感だけでなく父への鎮魂もあり、リクにとっても相当な思いを込めている様子。
親子間の感情としてベリアルは上記の様にジードには最後の親子喧嘩でトラウマたる悪に堕ちた時の回想に触れた時を除き、歪んではいるが寛容な親子愛を貫いており、リク=ジードは父に対して悪事を働く「悪の化身」としての面は拒絶しても「個人としての」ベリアルには嫌悪や侮蔑などの感情を示したことはない。
立場を分かちながらもお互いへの感情は悪くないと言う奇妙な親子関係にあり、それ故にリクは悪に堕ちながらもその苦しみを理解したことで、『Z』本編ではベリアルが発端の騒動に対して肉親の不始末の責任ではなく死後の鎮魂を動機に動いている。
ただ、第三者からの父の評価も理解しており、ナツカワ・ハルキにベリアルとの関係を答えた際は彼が知らないとは言えかっこいいと評されたが、決して喜べるものではなくかと言って弁護は出来ない複雑なものである。
『ウルトラギャラクシーファイト大いなる陰謀』ではアーリーベリアルがアブソリュートタルタロスに「自分の遺伝子から生み出された」とだけしか説明されなかったにもかかわらず最初からジードを「息子」と表現していた。
ウルサマボイスドラマ2022
ジードが暴れ回ってる怪獣たちを対処してる時疲れが見えたため休息を取っていた時、夢の中でベリアルと邂逅する。ベリアルはウルトラマンは神様なのかどうかという存在意義に対する一つの答えや自身のしたことが正義かどうかは他者が決めるという考えを示したり、自分の信じた道を進めとジードを励ますなどあくまでジードの夢の中とはいえ本編では見られなかった父親としての一種の優しさを見せており、力の使い方や選択の責任を息子に説いていた。コメント欄でもベリアルが言うと、重みが違うと言ったものが見られた。
最後に「お前はお前らしく好きに生きろ、死ぬまでな」という自分を討ったものに対する覚悟を問う言葉とも、生まれてきた子に対する祝福の言葉とも受け取れる言葉を残してベリアルは姿を消した。目を覚ましたジードは、親子の会話ってこんな感じなのかな?と夢の中とはいえ、かつて湊兄妹の元に訪れた時に見た家族との会話をしたことで、少し感慨深くなっていた。
この事からジードは決意を新たに、自分が自分らしくある為に前に進み続けるのであった。
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