概要
PS版スーパーロボット大戦F完結編の攻略本「スーパーロボット大戦F完結編パーフェクトガイド(The PlayStation BOOKS)」に載った張五飛についての一文。1999年4月発売。
多数の作品があるスーパーロボット大戦シリーズだが、中でもこのF完結編は「オールドタイプには人権がなかった」と語られるほどパイロット間の能力差が激しかった頃のものである。
敵機の高性能化により増大した被ダメージと高い被弾率。自軍ユニットの撃墜を阻止するため回避力を重視するプレイヤー達にとって、スーパー系(※1)はもとより、リアル系の中でも(高い回避補正を持つ)ニュータイプ、強化人間、聖戦士以外のキャラは、「避けず耐えず当てられず」で使い物にならない存在であった。攻撃に当たれば一撃死も当たり前の環境は、「ニュータイプにあらずんば人にあらず」という言葉に集約され、ファンの間で語り継がれている。
そして、その言葉は同作で本格的に参戦を果たした(※2)『新機動戦記ガンダムW』のキャラにも該当した。ニュータイプの概念が無いガンダムW世界(ボンボン漫画版除く)の住人である彼らも、オールドタイプに属するリアル系パイロットとして全く使い物にならないと判断され、自軍に加入しても即2軍行きという非情なまでの仕打ちを受けることになる(※3)。
そんな中、辛口な解説に定評があるスパロボの攻略本は、当時エヴァンゲリオンと肩を並べるほど人気のあったガンダムWのキャラ解説でも全く忖度することなく、容赦なく切り捨てていく。
中でも代表的な例としてごひ呼ばわりで終始ネタキャラになってしまった張五飛の以下の解説がある種の伝説になるほど一部で有名。
- 「一応仲間になる」くらいの認識でいいキャラ
- やる気がないんじゃないかと疑いたくなるほど回避力が低い。(※4-1)
- 仲間になってみるといまいちだった。(※4-2)
機体のアルトロンガンダムの性能がそれなりに優秀なこともあって「機体のポテンシャルだけ見るとかなりよい感じなのだが肝心のパイロットがどうしようもないので実戦で使うのはちょっとつらいか。」と、五飛が足手まといのように解説される始末である・・・
その辛辣な解説の数々は動画やSNSを通じて多くの人の目に触れ、実際にゲームをプレイした人からは「あるあるネタ」として、未プレイの人からも現代では凡そ見られないような切れ味鋭い内容が人気となった。
注意点
ただし、これらの評価はあくまでもゲーム発売当時のプレイヤーや攻略本のライターによる評価に過ぎない。
『スーパーロボット大戦F完結編』の実態は気力の影響が凄まじく大きい、言うなれば気力ゲー(※5)であり、ニュータイプ技能を持たないパイロット達も、攻撃を回避するのが難しいだけで攻撃を耐えられないわけではない。中でも「切り払い」「シールド防御」「バリア」等の防御手段に恵まれたガンダムW系やエルガイム系のユニットは、運用法さえ間違えなければ非常に高い耐久力を発揮する。
命中率に関しても本作では機体の運動性がダイレクトに反映されるため、(上昇値が5段階以前よりも高い)6段階以降の改造を施せば終盤の敵に攻撃を当てられないなどということはまず無い。
これらを踏まえて五飛を見ると
・回避の低さをアルトロンガンダムの装甲の高さでカバー(むしろ被弾で気力を上げやすくなる)
・防御力を高める「気合」「鉄壁」に加えて「挑発」「魂」という優秀な精神コマンド
・まずまずの命中とアルトロンガンダムの運動性で命中率を確保
・「切り払い」のレベルがゲームクリアのレベル帯で9に達する(※6)
など、乗機の性能とも噛み合ったその能力自体は決して悪いものではない。
実際上記の「やる気ないんじゃないか」の後に「鉄壁があるし機体の装甲が硬いから盾にはなれるし、挑発もあるから囮にはいい、思った通り(五飛もアルトロンも)格闘性能が高い(ので当てられる)」と有用な利用法が書いてある。(むしろ「口では偉そうなこと言う癖に精神が使い物にならない」と言われたトロワ、「シールドがあるし硬いから盾にはなれるが低命中が全てを台無しにしている」と言われたカトル、「能力は高いが命中を補正できる精神がないからイマイチ」と言われたデュオ達と比較すればかなり誉められている)
問題が有るとすれば、終盤2つあるルートのどちらを通っても自軍で使えるステージが2つほどしかないというとんでもない加入の遅さの方である。
攻略本の解説や「ニュータイプにあらずんば人にあらず」を真に受けて迂闊な発言をすると、F完に詳しいプレイヤーとの間で余計なトラブルを招く可能性もあるので注意されたし。
ライター本人の懺悔録
後年、この攻略本(PS版F完結編)のデータページを担当し、本項表題のコメントを書いたライター・だめ夫が当時のことを振り返る記事を公開した。
曰く「私が20歳の駆け出しライター時に書いたもの」であり、自身が好きだったケイブンシャのスパロボ攻略本のテイストを参考にしてみたそうなのだが(※4-1,4-2参照)、「若さゆえに知識と語彙力が足りず、さらにこき下ろせば面白くなるんだろと勘違いしてしまったがゆえに、単なる荒削りで辛辣なコメントになりさがってしまった。」とのこと。「個人的には好きな部類ではある」と懐かしみつつも、若さ故の過ちを反省している。
また、本来は出版社の監督のもとで制作される書籍用の文章であり、かつ他社製品を扱う内容なら関係各所からの審査も受けるはずなのだが、この件については出版社は一切止めず、メーカーチェックでもスルーされるという「奇跡のバランス」によって世に出ることになってしまった、とか。
脚注
※1 F完結編の終盤は宇宙が舞台なので、ゲッターロボやガンバスターといった宇宙の地形適応に優れたユニット以外は宇宙Bという十字架を背負うことになり、地上で猛威を振るっていた聖戦士も揃ってリストラなんてのもザラであった。
※2 厳密な初参戦は1996年の『新スーパーロボット大戦』だが、Wの放送中に制作されたので序盤しか再現されていない。パイロットキャラクターもヒイロとゼクスしかおらず、五飛は未登場。
※3 一応ヒイロはW系パイロットの中で唯一精神コマンド「集中」を持ち合わせており、比較的使いやすい。ウイングゼロカスタムを入手できれば自軍でトップクラスの戦力になる。
※4-1はケイブンシャ発行、山猫有限会社編集の「「スーパーロボット大戦Fを一生楽しむ本F完結編」からの抜粋(1999年5月)。
※4-2はケイブンシャ発行、山猫有限会社編集の「セガサターン必勝法スペシャル スーパーロボット大戦F完結編」からの抜粋(1998年5月)。つまり3つとも異なる本で異なる罵倒を浴びている。
※5 最大で攻撃力・防御力50%アップ。装甲の数値が高いユニットの気力を精神コマンドや被弾で上昇させると、雑魚敵の攻撃に対しては「鉄壁」を使うまでもなく余裕で対処できるようになる。
※6 「切り払い」はレベル9になるとバグによって発生率が100%になるため、最強武器がファンネルの敵や、隣接マスにビームサーベルのような武器でしか反撃できない敵に対して圧倒的に有利になる。