概要
『動物のお医者さん』とは、「佐々木倫子」による動物・獣医の学生生活を題材としたコメディ漫画。
花とゆめ(白泉社)において1988年1号(1987年12月5日発売号)から1993年24号(1993年11月20日発売号)にかけて連載された。
全119話、単行本は全12巻。
表紙の雰囲気や絵柄、タイトルなどから感動系のストーリー漫画と誤認される事も多いが、内容は純然たるコメディである。
また掲載誌的に少女漫画の分類ではあるが、作中で男女の恋愛描写やそれを元にしたストーリーは極めて限定的にしか存在しない。
その淡々とした独特の空気感と掛け合いから現在でも多くのファンを獲得している。
作中では動物にも書き文字でセリフが与えられているが、それが人間に通じているかは微妙なところといった世界観。
連載当時の現代劇として描かれており、1992年に開催されたアルベールビルオリンピックが作中のテレビで放送されている。
2003年にはテレビドラマ化された。同年4月から6月にかけて、テレビ朝日系列局ほかにて放送されている。
2024年1月から小学館のビッグコミックスのレーベルで新装版の単行本が発売。
1ヶ月に1巻のペースで刊行されており、12月に完結予定。
あらすじ
主人公西根公輝(ハムテル)は、H大学獣医学部に通う獣医の卵。
個性的な教授や先輩、家族、動物に囲まれて、巻き込まれたり巻き込まれたり巻き込まれたりの大変な日々を送っている。
そんなハムテル達の日常を描いた、獣医学部生コメディ。
医学系、理系の学生時代を過ごした人ならニヤリとしてしまうような、「ワガママ教授」「研究室内の苦労」などの描写も多々ユーモラスに描かれている。
主な登場キャラクター
※演者及び動物の声優はドラマ版。
西根家
演:吉沢悠
本名は「まさき」、因みに祖母からは「キミテル」と呼ばれる。H大学獣医学部の学生。
高校生の時から老人の漆原に「じじくさい」と称されるほどの落ち着いた性格で、作中で感情を露にするシーンは殆どない。
音楽家の両親を持ちピアニストとしての才能があるが、本人の音感が狂っており、素人でもわかるてんで調律されていないピアノを弾いても全く気づけないという致命的欠陥がある。その両親は世界中を飛びまわっているため、家には不在な事が多い。帰ってくると家族麻雀をする。
母の名は「絹代」(演:真矢みき)で父は「祥平」(演:小木茂光)。
声:柊瑠美
ハムテルが飼っているシベリアンハスキーの女の子。
般若のような恐ろしい顔をしており、初見の人間には必ず驚かれる。しかし性格は温厚で大人しく、とにかくおっとりしている(犬ぞりレースに参加する他のハスキーが誤ってハムテルの手を噛んでしまった時は流石に怒って噛みついた)。
怪しい初老の男性から逃げ出したときにハムテルと出会い、そのまま押しつけられるのが第1話。
漆原教授の知り合いの家の軒下で生まれ、母犬及び兄弟は死んでしまったため、教授が引き取って育て始める。温和な性格は育ての親が多すぎるという背景もあるのだろう。
中盤からハスキー仲間と共に真駒内公園で行われる犬ぞりレースに出場するようになる。
西根タカ
演 :岸田今日子(少女時代:吉野きみか)
ハムテルの祖母。豪快で押しが強くちゃっかりしており、ハムテルとは正反対の性格。
札幌近郊(発寒?)の屋敷にハムテルと2人で暮らしている。
声:山本圭子
安直な名前のタカの飼い猫。何故か関西弁でしゃべる。ハムテルを「ハムやん」と呼ぶ。三毛猫。
プライドが高く姉御気質で、近辺の猫社会の女ボス的存在のため、西根家の庭には近所の猫がよく顔を見せてくる。
犬が嫌いだが姉代わりとして面倒を見させられたためチョビとの仲は良好。
声:大塚明夫
安直な名前のハムテルの飼い鶏。凶暴な雄のニワトリ。西根家最強の動物といわれる。庭に放されている際はあらゆる侵入者を撃退する。
元はハムテルが小学生の頃に買ったヒヨコで、当時鷹匠に憧れていたハムテルがトレーニングを施した+近所の犬と喧嘩した事で元気に成長し今に至っている。
ネズミとは別の意味で二階堂の天敵。
漆原教授から「どちらもオスだから増えないよ」と言われたので2匹貰ったら増えた。普通に片方メスだったらしい。
なんとなくオスっぽい方に「おとうさん」、メスっぽい方に「おかあさん」と名前をつけたが、後に「おとうさん」がメスで「おかあさん」がオスだった事が判明する。また酒を飲む個体も存在する。
動物の心情描写が豊かな本作だが、基本的にスナネズミたちは何も考えていない。いつも幸せそう。
H大学関係
演:要潤
ハムテルの親友。西根家とは家族ぐるみで付き合いがある。4人兄弟の長男で、沖縄に親戚一家がいる。
ネズミが大の苦手で、西根家で飼われているスナネズミでも絶叫、野生のドブネズミを見ると気絶するほど(ウサギ、モモンガ等は大丈夫)。喜怒哀楽が激しく、冷静なハムテルより感情表現がストレート。
動物をとりあえず「チョビ」と呼ぶ癖があり、ハムテルのチョビはそれを自分の名前だと認識してしまった事からやむなく名付けられたため、彼女の事実上の名付け親である。
高校時代からハムテルと行動している事が多く、学部のみでなく博士課程にもハムテルに流されて進む。自立するべく色々奮闘してみた事もあったが、最終的にはハムテルとは2人で開業医を開く事になる(最終話では機材の調達ほか開業について目途が立ったところで終わる)。
演:和久井映見
博士課程の院生→オーバードクター。
美人でモデル体系だが非常にトロく、マイペースでかなりの変人。挙動や反応が鈍くスローモーション(彼女だけ台詞の吹き出しがぐにゃぐにゃになっている)で、体温計に表示されないレベルの低体温かつ低血圧、痛覚も異様に鈍く(流石に酷い腹痛で病院にかかった時は急性盲腸炎だった)、傷んだ食べ物を食べても1人だけ無事、感染症にも非常に強い耐性を持つかと思いきや、なんてことのないサプリメントでアトピーを起こすなど謎多き特異体質の持ち主。
回を重ねるごとに変人度が増しており、不機嫌になると静電気を発したり季節の変わり目に親知らずが伸びたりと体質もより異様となっていく。頭の回転も行動もトロいが研究者としてかなり運に恵まれており、彼女の研究成果から商品化に繋がったものもある。中盤で二階堂の代わりに大学の近隣に立地する企業に研究職として就職した。
緩慢な動作から予測不可能な挙動を見せてくるため、動物には恐れられて好かれない(一応、フクちゃんという猫を飼ってはいるのだが互いに好き勝手に過ごしている)。
一応当漫画のヒロイン(?)ポジションだが、主人公やメインキャラと恋愛描写が生じた事は一度もない。作中で一度高校生に告白されたが「札幌オリンピックを知らない」というジェネレーションギャップを理由に振っている。
実写版では初対面の際に二階堂がときめくといった描写があったものの、特にそこから進展は無かった。
演:江守徹
H大学獣医学部教授(病院担当)。病院長も務めている。
ハムテルにチョビを押し付け彼が獣医になる道を示した張本人。第1話でハムテルを見て「君は将来-獣医になる!(このカシオミニを賭けてもいい)」と宣言するシーンは作中屈指の名(迷)シーン。
数十年前に青年海外協力隊で渡航して以来重度のアフリカファン。研究室は滞在中に収集したアフリカンアートで溢れかえっており、仮装も頻繁にする。また海外研修と称するサバイバルも主宰していた。
豪快で粗雑な性格で、「漆原教授が困ると周りの人間は10倍困る」と言われるほどのトラブルメーカー。勉強嫌いだが診療は好きらしい。
本人曰く「下手」なため執刀はほとんど学生に任せきりだがいざと言うときの直感と機転は凄まじく、急患対応の際は頼りにされている。
演:高杉瑞穂
ハムテルの同級生。大柄な男性で、ちゃっかりとした性格。劇中ではハムテルや二階堂に様々なバイトを紹介する(そこから話が始まることも)。
卒業後は内地で友人たちと共に開業した。
平九郎
清原の飼い犬。犬種はゴールデンレトリバー。おっとりとした性格。
就職のために清原が上京した際、ハムテルの元で飼われる事になりそうだったが、飼育環境を入手した清原と共に東京へ上京した。
その後、猛犬という触れこみで、番犬として老夫婦の営む下宿に清原とともに転がりこむ。その後は猛犬と言われながら老夫婦に可愛がられているようである。
演:草刈正雄(友情出演)
H大学獣医学部公衆衛生学教授でイギリス紳士風の初老の男性。
馬が好き。漆原とは学生時代以来の仲。漆原とは似ても似つかぬ几帳面で繊細な人物。
初登場時はキザな印象があったが、トラブルメーカーの漆原と菱沼に振り回される繊細なメンタルの苦労人ポジションに。シャーリーという名のポインターを飼っているが、かなりのお転婆犬なよう。
嶋田小夜
公衆衛生学講座所属。学年はハムテル達の1つ先輩。
大人しく綺麗好きな性格で、菱沼らから「かわいい」と称されるなど容姿に優れる。
しかし何事もきちんと片付いていないとすまない片付け魔で潔癖症。几帳面だと自認している菅原教授以上に「きちんと」のハードルは厳しく、限界を超えると爆発する。繊細な菅原教授はそれを恐れているため彼女の前では気が休まらない。
元々は獣医学部付属の病院に所属していたが漆原教授がガサツすぎて許容できなかったため公衆衛生学講座に移ってきたという経緯がある。
小林
ハムテル達の後輩の獣医学部生。ミュージシャン志望でヴィジュアル系の格好をしている。
開業医の親に強制的に獣医学部に入れられたため尖っており、「別に獣医になりたいわけじゃない」と公言していたが、自分には音楽や才能がない事は自覚しており元々見切りはつけていた。
次第に親に職業を強制させられたのが面白くないだけで別に獣医になりたくないわけではない事に気づき、また獣医学部で飼っている馬に髪を食べられた事が最後の後押しとなりすっかり普通のビジュアルに(同時に周囲とも打ち解けた)。
後に漆原教授の講座に入りハムテル達の直接の後輩となったので、シリーズを通してちょくちょく登場する。
小泉
学年は違うが小林の幼なじみ。幼少期に猛犬に追いかけられて怪我を負ったトラウマ(小林曰く「犬は普通のサイズで、小泉は泣いていたものの全体で見るとほのぼのした光景だった。怪我というのも転んでできたタンコブ」)から犬が苦手。しかし他の動物は好きだと言う理由で獣医学部に入ってしまったどっかの誰かに似た経歴の持ち主。
高屋敷一郎
H大学病院学講座の助教授。既婚者で娘がいる。真面目かつ常識的な人物で漆原に振り回される事が多い。身なりが派手な学生を嫌っている。
口下手であり、飼っていたスナネズミが死に娘が悲しんでいた際、慰めてやるつもりで「解剖して死因を調べてやるから」と言ったら口を聞いてもらえなくなった。
ユリちゃん / 加藤〔鬼丸〕百合子
飼い猫を連れて病院にやってくる高齢の飼い主。穏やかな風貌をした未亡人で、いち飼い主とは思えないほど動物の病気について豊富な知識を持ち、全く含むところのない「無心」な発言を突き刺してくる漆原の天敵。
姓が変わり穏やかな風態になっていた事で気づかれなかったが、正体は漆原と菅原の学生時代の薬理学の助教授であった鬼丸百合子であり、「ユリちゃんの薬理」と通称される難しく厳しい授業と、怒ると黒板を投げつけてくるほどの激しさで有名だった(その割に問題児だった漆原を庇っており、日頃振り回されている学生からは「何ということをしてくれたのです!」と恨み節を向けられていた)。
社会現象
H大のモデルである北海道大学獣医学部の志望者数が増えた。
ちなみに旧帝大で獣医学部が独立して置かれているのは北大だけであり(他の大学では農学部などに含まれている事が多い)、結構レアな学部である。現在でも現役の学生から「医歯薬獣」(医学部/歯学部/薬学部/獣医学部)は一目置かれている。
また、
・「馬糞風」(獣医学部で飼育されている馬の糞の臭いが春先の風に乗ってキャンパス全体に広がること)…この他にも、第二農場で飼育されている動物の臭いが北図書館やサークル会館まで漂ってくる事がある。
・勘違いされがちなクラーク像…多くの人が思い浮かべる、右手を掲げたクラーク像は羊ヶ丘展望台に建っている物であり、北大構内にあるのは小さめな胸像。
・冬に出没するカマクラ…雪自体が珍しい地域から来た学生も多く、教養棟辺りに毎年出現する。
・ジンパ(ジンギスカンパーティー)…コロナ禍の前は5~6月頃になるとキャンパス内の至る所で行われていた。
といったように、北大の学生や関係者のあるあるネタも豊富に盛り込まれている。
チョビの可愛さから、シベリアン・ハスキーブームが起きる。
シベリアンハスキーで「チョビ」だったら、この漫画から、名前を取ったと思っても良いだろう。
ただ、犬のブームは良いことばかりではなく、無理矢理繁殖させた業者も居たため、問題も多く起きた。そのため、ドラマ版放送時にはEDで「実際の獣医学部は非常にハードな学業である」「ハスキーは簡単に飼育できる犬種ではない」旨の注意書きがテロップで表示された。
有名なセリフ
「俺はやるぜ 俺はやるぜ」…犬ぞりレースでチョビやハムテルと組むハスキー、シーザーの台詞。とにかく積極的なお祭り野郎なシーザーの性格を象徴しており、元気がいい犬を表す台詞としてよく使パロディーされる。
「そうかな…そうかも…」…西根家に預けられ、清原と一時的に別離していた平九郎とチョビの台詞。ふたば☆ちゃんねるをはじめSNSや掲示板でちょくちょく見かける。
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