解説
雑誌ならページ数、TVや映画館で放映する映像作品には決まった時間・期間が割り当てられ、この制限の中で作品は作られることになる。
そのため、当初予定していたキャラの登場やシーンが減らされたり、展開を駆け足にせざるを得なくなる事も発生する。
下記の通り、尺の都合の種類は尺の質によって意味合いが少し異なる。
例えば、仮に原作のセリフ・物語等から4クール分の時間が取れればすべての描写を映像化できるとしても、とある場面を映像化した際の時間が40分程度だった場合に1話30分の番組へそのまま当てはめれば話数をまたいでしまうことになる。
そのためテンポの面でも演出の面でも(多くは成功しないため)セリフや物語の描写を一部カットして一話に詰め込むと判断される場合もある。
尺の都合で起こり得る事態
キャラクターの増減
漫画やアニメの場合、連載や放送が長期化するとエピソードごとにキャラを追加していく必要性が強く、特に人気の出たキャラは本来の登場エピソードが終了しても、ゲストや準レギュラーとして出続けるケースが多い。
逆に、特にアニメ原作のアニメだと、2000年以降から1クール(3ヶ月/12~13週間)区切りでアニメの放送枠が区切られるようになったため、本来なら登場すべきキャラクターを省いたり、チョイ役程度にしか出れなかったりといった事態が多発する。
ストーリーの短縮
原作があるアニメなどであれば、原作で起こった出来事が起こらなくなったり、別の事件とひとまとめにされたりする。
また分岐によって謎が解明されていく作品のアニメ化の場合、別ルートの情報をアニメオリジナルエピソードで補って、一本道のアニメに別ルートの情報を盛り込みつつも事実上の短縮を行ったりもする。
短縮とは若干異なるが、テレビで放送する際にグロシーンやエロシーンの関係でカットされるような事も稀にあり、仮面ライダーアマゾンズではテレビ放送の際に30分尺にする関係でグロシーンがカットされたりした事例も存在している。
強引なオチ
余分なエピソードの追加や、オチを引っ張り過ぎた場合に起こり得るパターン。
本来は長期間の掲載や放送を要するエピソードを、尺の関係からやむを得ず強引に締めるという手法。
たとえば、ダンジョンの中盤でいきなりボスキャラが出張ってきて決戦になったり、描写すべき交流や葛藤をすっ飛ばしてあるキャラが仲間になったり、まったく気配が無いのにいつの間にか恋愛フラグが発生してゴールインしていたり……、など。
最悪の場合は、そのまま打ち切りもあり得る。
ただしギャグ漫画では、わざとこの尺の都合を利用し、散々引っ張った後に下らないオチで笑わせるという手法が存在する。
引き延ばし
本来はあっさりと終わるはずが、後に控えた内容の制作に間に合わなかったり、想定した以上に反響が大きかった場合に発生するパターン。
原作付きのアニメの場合、長期放送になると原作に放送採用が追いついてしまうことがよく起こってしまう。その場合に、オリジナルエピソードを追加したり、本来は一話で収まる内容を数話ぐらいまで引き延ばしたりして、原作が再びアニメ放送より一定以上リードできるようにすることが多い。
またバラエティー番組などで、見せ場でCMを跨がせたり、「CMの後」「この後すぐ!」と銘打って番組の後半までメインとなるコーナーの登場を引き延ばすことは、もはや常套手段となった。
尺余り
昨今は無くなったが、特にお笑いバラエティーなどの検証コーナーで取り上げた問題が、思った以上にあっさりと解決したり、無計画にシナリオを汲んだ結果として放送時間を余してしまった場合に起きる。
特典映像化
本来は描かれるべきエピソードが、放送時間の尺の関係で挿入できずに終わったしまった場合に起き得る。
特に本編の切っ掛けとなったエピソードなどで、主人公や周辺人物が登場しないものの、そのエピソードを語るには必要な話等が多く、ビデオ映像として作製し、売上にも貢献させようとする手法で使われる。
放送する国の違い
これはテレビアニメで起こる現象だが、日本では30分枠が基本となっている一方で、海外では15分がメインだったり、それよりも半端な時間だったりするケースも存在している。
こうした影響もあり、海外で放送されていたアニメが日本で放送される際は2話分を1本にまとめる等の対策が取られる。そうした対応が出来ない場合は、ミニコーナー等で尺を稼ぐ場合もあり、実験品家族では出演声優陣やスタッフ等による裏話で30分尺を何とか埋める方な方式を取った。
日本でも異世界かるてっとなどのような15分作品やヤマノススメのように、クールによって3分枠などの時期もあった作品は30分に埋まるように複数話セット放送を行うケースが、再放送などで行われている。
放送局の違いの都合
上記とは少し事情が異なるパターン。
例えば民放では下記するように30分番組の場合はCMなどを含め20分弱の放送時間だが、NHKではCMが基本的にないため30分丸々使った番組も存在する。もしNHKのその番組を民放で放送する場合にはCMを挟む都合上、どうしても尺の都合で再編集が必要になってくる。代表例としては「未来少年コナン」がある。
短編作品の都合
短時間という尺が決まっているためにストーリー面を除いても長編物とはまた違った尺の都合がある。
例えば円谷プロの『ウルトラファイト』系列の作品では、
- ウルトラファイト:初期の『ウルトラマン』『ウルトラセブン』本編の戦闘シーン映像を使うバージョンでは2分40秒持たせられる本編映像の数が限られていたため(特に戦闘パートが地味だったり2分もない場合が多かった『ウルトラセブン』パート)、あっという間に本編映像を使い果たしてしまった。そのため以降は、ウルトラセブンと怪獣たちが野外で殴り合う超低予算特撮に移行することに
- ウルトラファイトビクトリー:本編を3分30秒前後に抑えなければならないため、ウルトラマンビクトリーの変身シーンが短めに。ただし玩具宣伝もあるためかウルトラマンビクトリーナイトへの変身シーンはフルバージョンが何度か流された。
- ウルトラファイトオーブ:同様に3分30秒前後に抑えるため、ライトニングアタッカーやオーブトリニティは変身シーンを一部短縮及び省略、その他本編登場のフュージョンアップ形態は変身シーンがカットされた。
と短く抑えなければならないため、それに応じた工夫がなされている。
大体の目安
※あくまで目安なので、諸所の都合によりバラつきがあります。
ジャンル | 尺の加減 | 備考 |
---|---|---|
30分アニメ番組 | 20~22分 | OP・ED、CMを挟むと大体このくらい |
60分ドラマ・バラエティー番組 | 40~45分 | 特にゴールデン枠は実質50分前後 |
東映アニメ映画 | 90分 | 子供の集中力の限界が45分ほどと言われており、そこに休憩をはさむと大体このくらいらしい |
週刊少年誌 | 20~30P | 雑誌の容量的に概ねこのくらい |
月刊少年誌 | 30~40P | 雑誌の規模や作者の作業量に左右されやすい |
4コマ漫画 | 4コマ×2行×10~20P | 一ネタの尺と本数の加減で大体この程度で収まっている |
コミック | 190~200P | 3~4ヶ月分ほどをまとめるとこれくらいに収まる |
文庫小説 | 150~∞P | この界隈は鈍器職人が割と多い |