概要
東京都荒川区の日暮里駅から足立区の見沼代親水公園駅までの路線。2008年3月30日開業。
足立区西側にろくな交通手段がなく陸の孤島と化していた事や、近くの道路に慢性的な渋滞が発生してバスの定時運行が困難な状況がしばしば発生したため、高速交通の路線として開業した。
開業後も利用者数が右肩上がりで、ラッシュ時の混雑は新交通システム(AGT)としては最悪な数値となるほど。
何かとゆりかもめと比較されがちであるが、どちらにしても新交通システムして好調なのは変わりない。
問題しかない路線
様々な面で深刻なインフラ不足を抱えている。
輸送量問題
日暮里・舎人ライナー開業当初は、元々この地帯が車社会だったのもあって、そこまで利用客の需要を見込んだものではなかった。
しかしいざ開業してみると一気に10万人近い利用者が押し寄せキャパシティオーバーが発生し、予想を大きく上回ってしまった。どれくらい混雑が深刻かというと座れないだけならまだマシな方で、車両内は押しくら饅頭が常時であるため、吊り革すら障害物になるほど。
「好調」とは書いたがあくまでラッシュ時限定の利用者の話に過ぎず、ラッシュを過ぎると利用者が激減するため、実際の収支は赤字続きである。
国土交通省都市鉄道政策課が発表した「都市部の鉄道における路線・区間別の混雑率混雑率」では2020年・2021年・2022年の三年連続で1位を記録した。
これは元々の利用者の多さだけではなく、それ以上に開発側が輸送量を完全に見誤ったことによる設計ミスの影響が一番大きい。
現在も開業当初のクロスシートをロングシートに改修したくらいで抜本的な改善はされておらず、都営が利用者に時間差通勤や自家用車やバスで分散を促すよう呼びかける本末転倒な事態になっている。
また、路線全体で乗り換えが少ないのも問題である。
起点の日暮里と隣の西日暮里を除けば、熊野前の都電荒川線ぐらいしかなく南側に集中している。つまり上りは少なくとも熊野前までは乗客が一方的に増え続ける。
加えて収支回復のために区や都営側は日中での利用者増加対策も考えているようだが、日暮里と西日暮里の両方が京浜東北線で47駅中5駅しかない快速時間帯全線通過駅に含まれているため、仮に日中利用者が増えたとしても、今度は山手線に利用客が一極集中して車両のパンク化が避けられなくなるというそれはそれで別の問題が発生するため完全に詰んでいる状況である。
単純に交通IC全区間乗り潰しで335円と高額鉄道の部類に入るため、わざわざ混雑・高額・乗り換え不便の三重苦揃ったこの路線を西日暮里以北の沿線住民以外で使いたがる人もそうそういないだろう。
商業施設不足問題
日暮里・舎人ライナーは開業15年が経過してもなお、沿線全域で大型商業施設が皆無な唯一の都心路線である。
本来都心路線は東急池上線の『蒲田』、京成本線の『上野』、西武新宿線の『高田馬場』と言った具合に、上りの起点付近のターミナルに商業施設が充実しているのが普通である。
だが日暮里・舎人ライナーの場合、起点の都市部にあたる日暮里が諸事情により再開発が大失敗に終わり、上記エリアほどの豊富なテナントを誘致することが出来なかった(JR東側としては荒川区はあくまで南千住の方にテナントを誘致したがっている)。
また郊外にしても、せっかく車非所持の沿線住民でも行きやすくなったにもかかわらず沿線の商業施設は開業前から大して変わらず、陸の孤島時代からの中規模の商業施設やロードサイド店舗が疎らに並んでいる状態が続いている。
他の路線では少なくとも一箇所くらいは存在するイオンやアリオといった大型ショッピングモールは未だに建てられず(江北からアリオ西新井が少し遠い位置にある程度)、今でも持て余しているとしか思えない広大な空き地が車窓から何ヶ所も見受けられる。おそらく休日利用にあたってこれ以上輸送が悪化したら困るからであろう。
その結果些細な買い物や飲食店へのアクセスすら日暮里・舎人ライナーからさらに+αの交通費を要求されることとなり、『自治体が商業施設の開発を放置してきたせいで、人口は増え続けているのに買い物に行く沿線住民の大半が他の自治体に流れてしまう』という荒川区特有の問題がこの路線全域にまでそのまま及んでしまっている。
駅一覧
駅番号 | 駅名 | 読み | 備考 |
---|---|---|---|
NT01 | 日暮里 | にっぽり | JR線・京成線乗り換え |
NT02 | 西日暮里 | にしにっぽり | JR線・地下鉄千代田線乗り換え |
NT03 | 赤土小学校前 | あかどしょうがっこうまえ | |
NT04 | 熊野前 | くまのまえ | さくらトラム乗り換え、東京都立大学最寄り |
NT05 | 足立小台 | あだちおだい | 都電の小台駅からはかなり離れている。23区内に希少なケーズデンキがある |
NT06 | 扇大橋 | おうぎおおはし | |
NT07 | 高野 | こうや | |
NT08 | 江北 | こうほく | 沿線では最も商業施設が多い。東京女子医科大学最寄り |
NT09 | 西新井大師西 | にしあらいだいしにし | |
NT10 | 谷在家 | やざいけ | |
NT11 | 舎人公園 | とねりこうえん | 車両基地あり |
NT12 | 舎人 | とねり | |
NT13 | 見沼代親水公園 | みぬまだいしんすいこうえん |
都営バス【里48】とほとんどの区間で並行する(起終点は同じく日暮里駅〜見沼代親水公園駅だが、バスは途中で足立流通センター方面へ迂回する)ものの、前述の通り日暮里・舎人ライナー自体の混雑が著しいこともあり、現在もそれを補完するために都営バスが残存している。
関連タグ
300形:開業時から使われている日暮里・舎人ライナーの車両。ゆりかもめ7200系に似ている。
330形:2015年製造分の増備車。ゆりかもめ7300系に似ている。
320形:2017年製造分の新型車両。2形式とは一線を画している。