Commander-in-chief
軍隊の指揮系統の頂点に位置する。
最高指揮官の有する軍隊に対する権限を最高指揮権、統帥権という。
国家の制度設計上、最高指揮官をどのように規定するかは、その国の政軍関係の基本となる。
元首が最高指揮官とされている国が多いが、例外もある。
近代においては、文民統制の観点から、最高指揮官を非軍人とする一方、立法府による軍隊に対するコントロールを及ぼそうとする体制もある。
旧日本軍における最高司令官
なお、戦前・戦中の日本の場合は、軍令(いわゆる統帥権)と軍政(予算管理・人事など軍を維持する言わばお役所仕事)では最高責任者が異なっており、陸軍に関しては軍人への教育に関わる人員も膨大だった為、軍令・軍政の責任者とは別に独立した教育部門の最高責任者も置かれていた。
この内、軍政の責任者である陸軍大臣・海軍大臣は内閣の一員だが、軍令・教育の責任者は内閣より独立し、直属上司は天皇(大元帥)となる。
詳細な組織・肩書は下記の通りとなる。
また、狭い意味での陸海軍の最高司令官(軍令・統帥権に関する最終責任者)は陸軍参謀本部総長および海軍軍令部総長となる。
なお、制度・慣習上は「予備役武官が陸海軍大臣となっても良い」とされた時期も有ったが、結果的に、陸軍3人の責任者および海軍の2人の責任者に現役武官以外の者が就任する事は無かった。
陸軍
陸軍は早い時期から、下記の3人の責任者が「陸軍三長官」と呼ばれ、「教育総監はやや格下扱いされる場合も有ったが、三長官のいずれかが退任する際の後継者の人事は他の二長官の同意を得る必要が有る」事が慣習となった。
ところが、一時期を除いて「陸軍大臣は現役の陸軍将官である事」「総理大臣が変った際の新しい陸軍大臣は前任の陸軍大臣を含めた陸軍三長官が推薦した者がなる」という慣習が有った為、陸軍上層部が気に入らない者が総理大臣になった場合は「陸軍大臣に成りたがっている者が誰も居ません」と云う名目で新内閣を「流産」させる事が可能だった。
いわば、戦前の軍部は「立法府や行政府が天皇の大権である統帥権を干犯している」という名目で立法府・行政府の力を削いでいった一方で、明治憲法では天皇の大権とされた総理大臣任命とそれに伴なう組閣に干渉する、という言わば「ダブスタ」を平気で使っていた訳である。
軍令
- 最高部署:陸軍参謀本部
- 最高責任者:陸軍参謀本部総長
軍政
- 最高部署:陸軍省
- 最高責任者:陸軍大臣
教育
- 最高部署:陸軍教育総監部
- 最高責任者:陸軍教育総監
海軍
軍令
- 最高部署:海軍軍令部
- 最高責任者:海軍軍令部総長
※なお、海軍軍令部は元々は海軍省の一部局だったが、昭和になって皇族出身の軍人が軍令部長となったのを機に、海軍省と同格の独立した組織となった。また、この際、最高責任者の呼称が「軍令部長」から「軍令部総長」に変更された。
軍政
- 最高部署:海軍省
- 最高責任者:海軍大臣