Supreme Commander、Commander in Chief (CinC)、Generalissimo
最高指揮官とも。
軍隊の指揮系統の頂点に位置する。
最高指揮官の有する軍隊に対する権限を最高指揮権、統帥権という。
一国の軍の最高指揮官
国家の制度設計上、最高指揮官をどのように規定するかは、その国の政軍関係の基本となる。
元首が最高指揮官とされている国が多いが、例外もある。
近代においては、文民統制の観点から、最高指揮官を非軍人とする一方、立法府による軍隊に対するコントロールを及ぼそうとする体制もある。
国の長
国の長、すなわち国家元首が指揮権を持つ。旧G8のうち、日本、ドイツを除く国が該当。ただしイギリスとカナダは、実際には首相が行使する。さらにカナダは総督が国王の代行として最高指揮官を務めている。
政府の長
国家元首とは別の人物が務める行政府の長が指揮権を持つ。現在の日本 (総理大臣) などが該当。ドイツは有事のみ連邦首相が指揮権を持つ。
政府国防部門の長
国防大臣など政府内の軍監督機関の責任者が指揮権を持つ。ドイツは平時はこちらに該当。
政府外の軍監督機関の長
行政府とは別個に設けられた軍監督機関の長が指揮権を持つ。中国が (形としては) 該当。
支配政党の長
一党独裁制国家の場合、党首が指揮権を持つことがあった。例えば中国は、1978年から82年までは党中央委員会主席に指揮権があった (こちらも形の上でだが)。
支配政党の軍事部門の長
支配政党の内部の軍事部門の長が指揮権を持つ。多くの共産国家は実質的にこちら。中国など、歴代最高指導者はみな党中央軍事委員会主席である。鄧小平に至っては国家元首にも党主席にもならず最高指導者になりおおせている。現在のところ中軍委主席と最高指導者が一致していないケースは鄧小平に追い落としを食らった後の華国鋒くらいである。
軍の長
軍のトップが指揮権そのものも握っているケース。ミャンマーが該当。
連合軍最高司令官
例
フランス陸軍軍人。第一次大戦における連合国軍最高司令官 (Generalissimo)。
フランス陸軍軍人。第二次大戦開戦からフランス降伏までの連合国軍最高司令官 (Generalissimo)。
アメリカ陸軍軍人。第二次大戦の地中海における連合軍最高司令官、ヨーロッパにおける反攻時の連合国遠征軍最高司令官、戦後の欧州連合軍最高司令官。
・蒋介石
中華民国総統、中国軍 (国民革命軍) 最高指揮官。太平洋戦争における中国戦域軍最高司令官。
イギリス海軍軍人。太平洋戦争における東南アジア軍最高司令官。
アメリカ陸軍軍人。太平洋戦争における南西太平洋戦域軍最高司令官および日本占領連合国軍最高司令官。
太平洋戦争における太平洋戦域軍最高司令官。
Chief of defence (CHOD)
軍組織の長。所謂「制服組トップ」。役職としては最高司令官や総司令官、参謀総長。現在の日本においては統合幕僚長が該当。防衛省では例えばCHOD会議を「参謀総長等会議」と呼んでいる。
作戦指揮に責任を持つが、西側においては命令が国家元首・首相や国防大臣から出され、参謀総長はその補佐・助言を務めるようになっている。日本においては防衛大臣の補佐も、大臣から命令を受けての実際の運用も統合幕僚長が担っていたが、これでは有事に統幕長がパンクしかねないため部隊運用を担う常設の統合作戦司令部と司令官が別に置かれることとなった。
旧日本軍における最高司令官
なお、戦前・戦中の日本の場合は、軍令(いわゆる統帥権)と軍政(予算管理・人事など軍を維持する言わばお役所仕事)では最高責任者が異なっており、陸軍に関しては軍人への教育に関わる人員も膨大だった為、軍令・軍政の責任者とは別に独立した教育部門の最高責任者も置かれていた。
この内、軍政の責任者である陸軍大臣・海軍大臣は内閣の一員だが、軍令・教育の責任者は内閣より独立し、直属上司は天皇(大元帥)となる。
詳細な組織・肩書は下記の通りとなる。
また、狭い意味での陸海軍の最高司令官(軍令・統帥権に関する最終責任者)は陸軍参謀本部総長および海軍軍令部総長となる。
なお、制度・慣習上は「予備役武官が陸海軍大臣となっても良い」とされた時期も有ったが、結果的に、陸軍3人の責任者および海軍の2人の責任者に現役武官以外の者が就任する事は無かった。
陸軍
陸軍は早い時期から、下記の3人の責任者が「陸軍三長官」と呼ばれ、「教育総監はやや格下扱いされる場合も有ったが、三長官のいずれかが退任する際の後継者の人事は他の二長官の同意を得る必要が有る」事が慣習となった。
ところが、一時期を除いて「陸軍大臣は現役の陸軍将官である事」「総理大臣が変った際の新しい陸軍大臣は前任の陸軍大臣を含めた陸軍三長官が推薦した者がなる」という慣習が有った為、陸軍上層部が気に入らない者が総理大臣になった場合は「陸軍大臣に成りたがっている者が誰も居ません」と云う名目で新内閣を「流産」させる事が可能だった。
いわば、戦前の軍部は「立法府や行政府が天皇の大権である統帥権を干犯している」という名目で立法府・行政府の力を削いでいった一方で、明治憲法では天皇の大権とされた総理大臣任命とそれに伴なう組閣に干渉する、という言わば「ダブスタ」を平気で使っていた訳である。
軍令
- 最高部署:陸軍参謀本部
- 最高責任者:陸軍参謀本部総長
軍政
- 最高部署:陸軍省
- 最高責任者:陸軍大臣
教育
- 最高部署:陸軍教育総監部
- 最高責任者:陸軍教育総監
海軍
軍令
- 最高部署:海軍軍令部
- 最高責任者:海軍軍令部総長
※なお、海軍軍令部は元々は海軍省の一部局だったが、昭和になって皇族出身の軍人が軍令部長となったのを機に、海軍省と同格の独立した組織となった。また、この際、最高責任者の呼称が「軍令部長」から「軍令部総長」に変更された。
軍政
- 最高部署:海軍省
- 最高責任者:海軍大臣