毒妹子
どくいもこ
歴史パロディシリーズ『飛鳥時代近辺シリーズ』のうち『聖徳太子と小野妹子』『南船北馬』(いずれも原作版のみ)で登場。
蘇我馬子の推薦(という名の厄介払い)と妹子の応援(という名の無言の暴力)で遣隋使に参加した太子が喧嘩したり燃えたり直撃したり挟まったりへし折れたりしながら妹子と共に隋の湾岸へ漂着した後、「洛陽へ向かうためにもせめて馬が欲しい」と意見した妹子の案に従って農家から詐欺同然の手口で盗み取った農耕馬。しかし、毒妹子に対する嫌がらせに等しい太子の職権濫用の被害者となって気の毒なほど消耗してしまい、2人が離れた僅かな時間を好機と見るや渾身の力を振り絞って逃走した。
追跡を諦めて京杭大運河の一部である永済渠(えいせいきょ)から船を出した先で逃げた毒妹子と思しき馬を発見した際、太子が逃走当初に「逃げられるくらいなら馬刺しにして食べてやる!不本意ながらな!」と宣言した欲望の餌食になりかけたが、物理法則を無視した太子の類稀なやり投げ技術(馬に向かって投げた1本の槍が2本になって太子の背中と後頭部に刺さる)に救われて事無きを得た。
毒妹子そのものの由来については明かされなかったものの、太子から見れば2匹とも「万引きする時の妹子の様な目」との事。
- 参考資料:万引きする時の妹子の目 ※太子の捏造記憶
「盗(と)る」
同シリーズ『煬帝怒る』で見せた妹子の突発的錯乱状態。
成り行きで遣隋使に参加したとは言え、未だ正式な国交を持たない隋にあって倭国の中枢に位置する者が大手を振って歩くのは危険だと推測した妹子の案を聞き入れ、太子は「自分は倭国にいて妹子に国書を託した」という体を装って正体を隠す事にした。
色々あって肝心の国書をしたためる墨汁、ついでに塩を手に入れたまでは良かったが、何を書くべきか皆目見当が付かない太子は「自分のスポーティーな生い立ち」「妹子が寝言で『もっともめ』と言った」「昨日見た夢」「自分のノーパン主義」を次々と立案するものの、そんな取るに足らない私事を倭国の権威に関わる最重要文書として書けようはずもなく、ツッコミ疲れた妹子がとうとう額に青筋を浮かべながら「このバカが!」と本音を漏らしてしまった。
もはや太子に任せられないと諦めた妹子が「そもそも太子は隋の皇帝に何を求めているのか」と助け舟に等しい質問をした所、「まず高句麗や新羅や百済より優位に立つために倭国が完全な独立国であると承認してもらいたい」とする理路整然とした答えが太子の口から飛び出し、ツッコミ疲れに追い打ちをかけるあまりの正論に妹子の思考回路が異常を来たしてこれまでの鬱憤晴らしとばかりに「それだ!そういうマジメな事書いときゃいいんだ最初から!おんどりゃー!ええ コラ?!このイモムシが!!」(テレビアニメ版ではさらに「このバカが!」が追加された)と口走ってしまった。
以後、臣下の立場(太子:摂政=冠位十二階のさらに上位、妹子:大礼=冠位十二階の序列第五位、遣隋使帰還後にその功績を以って大徳=序列第一位)を忘れてあらん限りの罵詈雑言を浴びせかける「毒突く妹子」、さらにそれが転じて太子の失態を冷笑するなど「心の闇を垣間見せる妹子」を指して使われるようになった。