概要
ハーバート・ジョージ・ウェルズ(Herbert George Wells, 1866〜1946)は、イギリスの著作家、社会運動家。小説家としてはジュール・ヴェルヌとともに「SFの父」と呼ばれる人物。社会活動家としても活発に活動した。
SF小説家として
教職を経て1893年に作家活動を開始。1895年の「タイムマシン」で一躍人気作家になる。同時代にフランスで活躍したヴェルヌと共に後世に与えた影響は大きく、SFを一気にメジャーにした。
SFの基礎やその要素を確立した事からSFの父とも呼ばれる一方で、その偉大すぎる影響力から、「SFを書きたければ、ウェルズは読むな。彼は全てのテーマを書いている」とまで言われるほどである。
主に現実の科学技術を元に、実現可能性を考慮したヴェルヌの作風と対照的に、ウェルズの作風は「タイムマシン」や、「宇宙戦争」に代表される様に、天才科学者や宇宙人などによってもたらされたオーバー・テクノロジーが話の根幹にある事が多い。
宇宙人の侵略、動物の改造、透明人間など、SFの主要なアイデアがウェルズにより考え出されている。特に文明批評色が強いユートピア小説を多く発表した。
また、後世の人々が驚くほどの先見の明に優れ、遺伝子操作や核兵器、レーザー兵器、インターネットなどを作中に生み出し、ウェルズの作品が様々な研究者にインスピレーションを与え、後に実現した技術も多い。
代表作品
社会運動家として
彼はユートピア思想家として、新しい生活を支持していた。人権思想を支持する一方、主権国家と民主主義による政争や戦争を嫌ったともされる。
1914年に発表した『解放された世界』の中で、近未来世界は英独に分かれた世界最終戦争が起こり、軍用機や戦車の使用、さらに原子力を使った兵器の出現を予言。そしてその戦後は各国が主権を廃絶し、「新世界秩序」の下に平和な世界が築かれると締めた。
彼の構想通り第一次世界大戦が起ると、彼はこれが予言の実現と考え、「戦争を終わらせる戦争」と呼んで支持した。しかし、戦後に自らも実現に尽力した国際連盟は各国がいがみ合う場となり、人権は政争の具に堕し、第二次世界大戦の勃発を止められなかった。第二次大戦では第一次大戦に倍する殺戮と破壊が行われ、予言通り原子爆弾も出現した。
このように、ウェルズの予言は最悪の形で実現したため、最晩年には悔恨の念にとらわれ「もはや人類に望みをかけるのをやめる」と宣言するに至った。
現在、ウェルズが提唱した「新世界秩序」は資本家と官僚による全体主義的な世界支配を意味する言葉となっている。
余談
ウェルズが「タイムマシン」を発表した十年後に、アインシュタインによる相対性理論が発表された。
アインシュタインの相対性理論が脚光を浴びたのは、物理学の常識を覆した以上に、世界的ベストセラーとなったこの作品の影響もあると言う見方が出来る。
別名・表記ゆれ
H.G.ウェルズ ← こちらの方が用例は多い。