概要
元々は優しさなど善良な心を持った普通の存在だったのだが、過去に何かしらの不幸(大切な人の死、差別、絶望等)を背負った経験や不遇な生い立ち、心を歪ませる力を持った第三者・アイテムの介入などで性格が歪んで悪の道を進んでしまったり、もしくは世界の平和や大切な人を救うためにやむを得ず悪役的立場に立たざるを得なかった可哀想な敵キャラクターの事である。
古くはギリシャ神話やシェイクスピア等の作品にも描かれており、過去の作品に多く見られた勧善懲悪に対するアンチテーゼともとれる存在である。
少年漫画や特撮、ロボットアニメにおいてはこの手の悪役は多く登場しており、逆に全く存在していない方が珍しいとさえいわれる。
主な原因は以下の通り
- 家族、友達、恋人、親友、師匠、弟子(教え子)を失った
- 大切な人が病気になった、もしくは怪我をした
- 故郷を滅ぼされた
- いじめや虐待、差別、迫害を受けて性格が歪んでしまった
- 周囲と違う力を持っていた為に化け物扱いされた
- 善意のつもりでやった行動が悉く裏目に出てしまった、あるいは周囲から評価されなかった
- 周囲の者に一方的に襲撃されて迎撃した事で加害者扱いされた
- 自身もしくは家族や恋人等の自身に大切な存在が不治の病に侵された
- 殺される等の形で命も未来も奪われた
- 黒幕に祖国や家族等の弱みを握られている
- 黒幕に洗脳、改造を受けて悪の心を植え付けられた
- 非道な計画に巻き込まれたせいで、人生を狂わされてしまった
- 誰とも仲良くなれずにずっと独りでいる事を強いられた
- 男女の友情を押し付けられ、誰からも結婚(恋愛)対象にされることがなかった
- 自分の才能、努力が認められなかった
- 信じていた相手もしくは恋人か友達に裏切られた
- 自分に自信を失い、自分も含めて(自分以外も)滅ぼしたいと考えた
- 今まで自分が信じてきたものが、全て嘘に過ぎなかった事に気付いてしまった
- 仕事も地位も何もかも失い狂ってしまった
- 自分・相手が化け物に変貌したことでおかしくなった
- 愛するものを守るためには自ら必要悪に染まるしかなかった
- クローンや破壊、悪事のための兵器などでの利己的理由で作り出された存在
- 正義感が強すぎるあまり、それが暴走してしまった
- 人間達の愚かさや醜さに絶望してしまった
- 身内が諸悪の根源である事に対する罪の意識から、(いかなる手段を用いてでも)自らがそれを贖わなければならないと決心した
- 悪の側に属する事がたった一つの生きる術
- 一番だと思う相手を一番にしようと働きかけるも、その相手が一番になる事を望まなかった
- 黒幕の命令で悪事を働いてたが、善良な人物の優しさに心打たれて悪事をやめようとするも、黒幕に逆らうことや、使命を捨てる事が許されなかった
- 悪意は無いが、それ故に行動が周りの迷惑になる
- 歪んだ教育などを受けた事で、歪んだ価値観を植えつけられたまま成長してしまった
- 元々住んでいた世界とは違う世界に迷い込み、恐怖や自己防衛から悪さをするようになってしまった
- 元々持っていた障害、もしくは劣等感を克服できなかったことで歪んだ心を持ってしまった
- 自分、もしくは周りの者に不幸が続いたことで、全てに絶望してしまった
- 実は最初から二重人格で、善の心、悪の心を両方持っていたが、悪の心を制御することができなくなるほど暴走してしまった
それ以外にも、作中での扱いが雑で因果応報とは無関係に碌な目に遭わない(或いは苦労人気質)、黒幕に利用されて用済みと判断されて始末されるパターンの敵や、改心しても自らの悪事に後悔して自殺してしまう敵も存在し、ほとんどのキャラクターはファンから同情されることが多い。一方で主人公の説得で光落ちしたり、ライバルやラスボスの特性も持つ者もいる。
こういった訳ありの悪役は善人のIFとも言えるのかもしれない。
ただし、「哀しき悪役」と呼ばれる者達は、視聴者から判官贔屓される形で同情の対象となる事が多いが、あまりにも擁護しがたい残虐な振る舞いや外道な所業に出てしまった場合等は、過去の経緯がどうであれ「自業自得」と見なされてしまう事も少なく無く、その場合は「ただの悪堕ち」扱いされやすい。
特に作中の言動に対して例えば「復讐」だとか「大事な人を守るため」などの「そうせざるを得なかった」とある程度納得できるような行為であれば同情されることも多いが、「ただまともな精神じゃなくなって狂気に走っただけ」の場合は批判されやすい(それによる被害者がその悪役が悪に堕ちる理由と無関係であればある程、猶更批判の的になりやすい)。
なお、まだ情報が出切っていない頃等は「哀しき悪役」なのか「ただの悪堕ち」なのか、特にファンの間の議論で賛否両論になることも少なくない。
更に作品外どころか作品内でも
「いくら酷い目に遭ったからって悪いことをしていいわけがねえ……!」「悪いことはやっぱり悪いんだよ!!」
「どんな過去があろうと、何をしてもいいってことにはならねえ」
「寂しいからといって、悲しいからといって、何をしてもいいなんてことはないわ」
といった感じに、哀しき悪役達の悪行を真っ向から否定する声が挙がる場合もある。
一方で、悪行そのものは否定しつつも、「そういう状況に追い込んでしまった要因を取り除かない限りは同じことが起きる」、「原因を作った側もどんなに小さなことであっても何かしらの形で報復を受けないと解決にならない」という声も存在している。
さらには、主人公サイドが哀しき悪役となる原因を作っていたというパターンも存在し、それを知った主人公が「自分にも原因がある」と苦しむこともある。
要するに「悪行そのものは許されるべきではないが、そうなった原因と向き合わなければ自分自身もまた損しかねない」ということでもある。
該当するキャラ達
哀しき悪役の一覧を参照。
関連イラスト
関連タグ
悪堕ち:似て非なる言葉。特にその悪役に対して同情をあまり得られない場合は「哀しき悪役」ではなく、ただこうとだけ言われやすい。
憎めない悪役:似て非なる言葉。悪役ではあるのは間違いないけれどギャグ要素もある、やられ役も兼ねている等の理由から一定の人気を博している悪役につけられやすい。しかしそういう言動をすることに対して同情できるような哀しい過去を持ち合わせているとは限らないため、この手のキャラが必ずしも「哀しき悪役」であるとは限らない。
極悪人、小悪党:本来は対義語だが要素要素で見ていけば兼ね合わせている事も多く、賛否が大きく分かれている。ただし、哀しき悪役に該当する者も悪と化した原因が判明するまではこういった悪役と同類と非難されている(勿論行った悪事が苛烈であればただのこれと言われることも少なくは無い)。
悲劇のヒーロー:哀しき悪役のヒーローバージョン。
悲劇のヒロイン:哀しき悪役のヒロインバージョン。
ダークヒーロー、ダークヒロイン:似て非なるものだが併せ持っている場合もある。
復讐鬼:哀しき悪役はこうなる可能性が結構高い。
毒親の被害者:哀しき悪役になる可能性が高い者達。
クズモブ:哀しき悪役を生み出す全ての元凶にして諸悪の根源となることもある存在。
そのキャラに対して視聴者が抱きやすい感情に関するタグ
哀しき悪役と言われるキャラが併せ持っていることが多いタグ
悪役 美形悪役 闇堕ち 必要悪 悪のカリスマ 悪の美学 世直し 没落貴族 …とでも言えば満足ですか?