概説
この言葉は政界( 政権党である場合と政権奪取を目論む攻撃的な野党の場合とがある )・官界・宗教界・財界など各界各級の権力者、政府機関ではないものの公認された政党の幹部などの上層部、あるいはすでにそれらの地位から引退したフィクサーなどの実力者などによる不当な圧力により、国民全体または一部の国民が、言論の自由を奪われる行為および状況をを指し、また彼らが直接手を下すのではなく、それらと協力関係、支配・従属関係にある団体( 多くの場合、私兵や事実上の私兵を有する )によってこれらが行われることがある。
言論統制との使い分け
この言葉に類似した言葉としては言論統制という言葉が存在し、狭義では「政府による言論等をコントロールし、時には弾圧を行う」ことを言論統制といい、「政府以外のものによる弾圧」を言論弾圧というといい、また別の定義としては、前述の者の推奨する1つの思想・言論のみを優先して、それ以外の思想・言論を一切禁止する、または意にそぐわない言論に検閲・修正を求めることは『言論統制』というともされ、字面から分かる通り言論統制よりも強圧的なニュアンスとして用いられる。
実例
不都合な主張やそれを行う人々に対し通達や命令だけでなく、その主張の広報の手助けとなる印刷所や放送局を制圧する、デモや演説に対し警官を不当に対処させる( 法令等の範囲以上に行動を制限する、適当な罪状で逮捕するなど )あるいは私兵を突入させる( 突入以外にも罵声を浴びせる、参加者を襲撃する、帰路に暴行を加える、路上に座り込み進路を妨害する、カウンター行為例えば違法デモをぶつけるなどの行為で混乱させるなど )など様々な方法が取られ、実働部隊を用いて実力行使を行った場合にこの表現が行われることが多い。同時に行われることも多々ある。
国家の特直
特に独裁が行われていたり、共産主義・全体主義国家や軍事政権下ではその傾向が強いとされるが、例えば「ベトナム戦争時代のアメリカ合衆国」など、切羽詰った状況においては民主主義国家でも発生し、当時のアメリカにおいてはFBI長官であったジョン・エドガー・フーヴァー( 1924年にFBIの前身組織の長となり、そのまま1972年に死去するまで長官の職にあった )のもと、東側の秘密警察に近い違法行為を行いキング牧師らの反戦運動家を弾圧していた。
政府以外による言論弾圧
特にフィクションなどにおいては支配構造が表の政府と裏の組織( ギャングやマフィアなどの犯罪組織に限らず教団や巨大企業、あるいは特定のメディアなど「合法的な団体」のケースも存在 )などが結託している、あるいは表の政府の政府の力が及ばない場合、表の政府の法律等により言論の自由が認められているにも関わらず、「組織の掟」によって非合法とされ弾圧( 拉致され拷問を受けたり、隠蔽のため殺害されることが多い )を受けるケースが多いとされる。
フィクションにおける例
後述するデスパーシティのように犯罪組織が支配していたり建設した都市、カルト教団のコロニーと化した自治体など( 創竜伝第5巻に登場する海東市など )ではこの傾向はいっそう顕著となっている。
インターネットにおける言論弾圧
インターネットは中枢が分散しており、例えば「放送局を押さえる」などといった方法での弾圧はかなり困難を極めるものの、行いにくいというだけであり不可能ではなく、ホストサーバー側に圧力をかけたりプロバイダやサーチエンジンなどのサービスにそれらの情報に接続しないよう求めたりするなどの方法で都合の悪い情報を扱っているWebサイト、ブログや電子掲示板などを閉鎖に追い込むなどの手段で弾圧を行うことは十分に可能であり、中華人民共和国などの一部の国家では実例もある。
フィクション
SFなどのフィクション作品にもこうした弾圧はしばしば描かれており、ニンジャスレイヤーのようなコンピュータの発達した世界を扱った作品ではこれらの弾圧を行う部隊が敵役として登場することも多く、ハッカーを電子的攻撃によって直接殺害するなどの方法で弾圧を行うシーン、これらの部隊との電脳空間での戦闘などがよく描かれたりする。
ネットスラングとしての「言論弾圧」
上記の通り本来は政治的、社会的な意味で使われる“言論弾圧”という言葉ではあるもの音、最近ではインターネットの掲示板やツイッター、メールなどのコミュニティサイトおよびツールでの対人間の交流において、“自身の発言( 投稿 )が同じコミュニティの他の利用者から否定あるいは反論されたり、そこの管理人の判断で削除されたりした際にその発言の投稿者がそれに反発して「言論弾圧だ」と主張する”というケースも散見されている。
実際には
こう主張される場合、基本的にその「主張」が社会的、政治的思想に基づくものかどうかはあまり関係なく、そのコミュニティごとの基準およびルールから見てその投稿文がそこにそぐわない内容や文面であるというのが削除の理由であることが多く、また投稿の内容に不具合などが存在するため反論や否定される場合も多く、ネットでは自分の意見が撥ね付けられたことに納得できない人間が「言論の自由に反する」とばかりにこの“言論弾圧”という言葉を使ってそのコミュニティ側を非難、攻撃したりレッテル貼りを行おうとするというような事態も少なくなくなりつつある。
作品等
クライシスダイバー - 原作:二枚矢コウ、漫画:戸舘新吾による漫画作品であり、中南米のマフィア支配国をモデルにした国を舞台とする作品であり、作中では盗掘団「スカーレットバッズ」が権力を掌握しており、一般市民を弾圧している。
サイバー教皇領 TRPG作品の一つTORGに登場する侵略者の一つ、サイバーパンクと中世暗黒時代が融合した世界であり、サイバー教皇による弾圧が行われている。
デスパー・シティ - イナズマンFに登場する悪の秘密結社、デスパー軍団が日本の地下に作成した都市であり、約5万人が収容され改造人間の素材などに使用されている。
関連タグ
ゲシュタポ - 政府による言論弾圧を描く時使われることの多い題材。
禁酒法時代 - 政府以外による言論弾圧( 主としてギャング )を描く時使われることの多い題材。
マフィア - 1920年代以外にも第二次世界大戦前後のマフィアを扱った作品、中南米のマフィア支配国をモデルにした国を舞台とする作品で弾圧側として多く登場する。