概要
藤子・F・不二雄のアシスタントである方倉陽二が『月刊コロコロコミック』で連載していた漫画。
てんとう虫コミックスから全2巻で発売されたが、未収録のエピソードもある。現在は絶版だが、方倉の故郷・豊後高田市の市立図書館では読むことが出来る。
これが始まってから間もなくして、『ドラえもん』はテレビ朝日でアニメ化が内定し、過去の事実から思いっきり目を背けながら、刊行されて間もない『コロコロコミック』はドラえもんの宣伝に明け暮れていた。
しかし当時2000万部を超える児童誌最大のヒットを飛ばしていた『ドラえもん』であったが、作者の多忙や並行連載の弊害などから、作品設定が初見には伝わりづらい所もあった。小学校に入ったばかりの読者は「なぜドラえもんがのび太の家にいるのか」「なぜドラえもんは猫型ロボットなのに耳が無いのか」といった、現代では常識とも言える知識すら持たないまま読み始めていたのである。
そこで本作ではSF考証(『空想科学読本』のような科学考証ではない)を行い、ドラえもんの基礎設定に関して解説している。
…のだが、この解説は方倉の持つスラップスティックすぎる悪乗りが多分に含まれており、現在「『ドラえもん百科』に書いてあることが全て藤子プロの認定した公式設定である」とは言えない状況にある。
本作では徹底的に「ドラえもんが主役。のび太はそれに巻き込まれる脇役」というドラえもん黎明期のスタンスで描かれている(ただし連載中期~後期に藤子・F・不二雄が「ドラえもんが主人公でのび太は副主人公」と明言している為、見方によっては作者が定めた設定に忠実と捉えることも出来るが)。そこには我々が知る「ドラえもんはいつだってのび太のドジを諫め優しく導く保護者」みたいな視点は無いに等しく(ただし原作中期~後期のエピソードでも、ドラえもんがのび太と同じようにひみつ道具で調子に乗ったり、のび太と共に周囲に騒ぎを引き起こす場面が度々描かれているが)、Q太郎やウメ星デンカのようなコミカルなトラブルメーカーとして描かれている。
殊にドラミちゃんの解説が始まった後半からは極端なまでにドラえもんをDisりドラミちゃんを持ち上げるような扱いをしており、作中でも「ドラえもんはドラミちゃんのことを愛しているから、このように道化を演じているのです」とまで書かれていたほどである。
他にも急に劇画風になってドラえもんが八頭身になったり、当時の時事ネタとして王貞治や口裂け女、更には○ッキー○ウスが登場したり、ヤバいネタは盛りだくさんである。初見で本書を笑わずに読める人はそうはいないだろう。
このような作風の為、現在では本作や、それを基にした方倉設定は一部が流用されるにとどまり、全肯定されているとは言いづらい状況にある。更に、本書はあくまで「原作漫画『ドラえもん』」の解説の為、大山のぶ代版アニメ、まして水田わさび版アニメなどの解説ではない点にも注意が必要である。
なお、本作ではギャグ要因としてネズミが『トムとジェリー』のようにしゃべりまくる。方倉はよっぽどネズミVSドラえもんの構図が好きだったのか、コロタン文庫などで描かれたひみつ道具解説の際にもよくしゃべるネズミを登場させている。
方倉設定
公式設定として取り入れられ、現在も踏襲されているもの
- ドラえもんの足の裏には反重力装置があって常時3㎜浮いており、これと同質の素材が皮膚にも使われているので布で拭うだけで汚れが取れる
- ドラえもんの短足には膝があり正座も出来る
- ドラミちゃんは量産機じゃなくてオンリーワン
- ドラえもんとドラミちゃんは同じ缶のオイルを使用しており、ドラえもんの方が薄い上澄み液を、ドラミちゃんの方が下の濃いオイルを使った
- ドラミちゃんの好物はメロンパン
- ドラミちゃんのタイムマシン『時空間チューリップ号』
公式でスルーされているもの
- ドラえもんは自分の名前を戸籍に書こうとして「え」のカタカナが思い出せなかったのでうっかり「えもん」をひらがなで書いて登録してしまった
- ドラえもんの役職は特定意思薄弱児童監視指導員
- ドラミちゃんの眼にはウインク光線を放つ機能がある
- ドラミちゃんはボーイフレンドが4人いて彼らを家に集めてホームパーティーするくらいのリア充
この他に「のび太がハナクソダーツのギネス級記録保持者」とか公式でスルーされているどうでもいい設定が山ほどあるが書ききれないので自分で確認してください。
公式で明確に否定されたもの
- ドラえもんの故障している機能を取り換えるにはネズミを特定の数だけ捕まえる必要があるので、事実上壊れっぱなしである(映画『のび太とアニマル惑星』の設定と矛盾する)
余談
- ドラえもんとさまざまなSF作品のロボットを比べる企画では、スターウォーズや未来ロボダルタニアスが取り上げられたが、なぜかゲッターロボの主人公のことをリョウ隼人と誤って明記している。(正しくは『流竜馬』で隼人は相方の『神隼人』)
- 連載時に公開された映画ドラえもん第1作『のび太の恐竜』に関してもタイアップ企画『ドラえもんVSティラノサウルスくん』が組まれたほか、方倉が『のび太の恐竜』のダイジェスト版を付録に掲載している(単行本未収録)。
- わさドラに於けるファンブック「ドラえもん公式調査ファイル てんコミ探偵団」では「ドラえもんはジャンク品として取り扱っていた」という方倉設定が採用されたが、それにより隠れたファンが多かったこのキャラ達が黒歴史と化してしまった。
関連イラスト
関連項目
怪物くん:このマンガの次回作として『怪物くん百科』(さいとうはるお)が始まったがこちらは未単行本化
2112年ドラえもん誕生:本作に対する藤子プロ側の設定再認識とも取れる映画。原作者もこの作品における設定を「ドラえもん誕生の決定版」と述べているが、水田版では(エピソードによるが)この作品の設定を採用していない場合がある為、基本的には大山版の設定であることに注意。