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超兵器R1号

ちょうへいきあーるいちごう

『ウルトラセブン』第26話のサブタイトルにして、同作におけるノンマルト事件に並ぶ地球防衛軍の最大の失策。

概要

 ウルトラセブン』第26話のサブタイトル。脚本は若槻文三、監督は鈴木俊次。

 円谷監督の代表作『ゴジラ』を思い起こさせる、非常に重く暗い物語が特徴。

超兵器R1号とは?

 幾度となく宇宙人宇宙怪獣からの攻撃を受けてきた地球防衛軍が、遂に完成させた「恐怖の破壊兵器」(原文ママ)。新型水爆8000個分の破壊力を持ち、惑星そのものを完全破壊することも可能な超強力宇宙弾道弾

 これにより「防衛力」を保持することで、他の惑星による侵略をけん制し、更には報復攻撃としての全滅も厭わなくなった…という、誠に過激な兵器。

 ウルトラ警備隊は性能テストの為、6カ月もの検討の末に地獄のような環境でとても生物の住めそうにない、シャール星座第7惑星「ギエロン星」を破壊目標として定める。実験は成功し、ギエロン星は宇宙から消滅した。

惨禍

 ところが、ギエロン星には生物がいた。その生物はR1号の放射能で異常進化を遂げ、ギエロン星獣として復活。そして、母星を、仲間を滅ぼした地球人への復讐のためにシャール星座から太陽系まで飛来したのである。

 地球防衛軍とウルトラ警備隊は当然ギエロン星獣を迎撃するが、不死身の肉体を持った星獣は何度も蘇り、遂に日本に到着。そして、R1号のせいで手に入れた放射線をまき散らしながら、自分から全てを奪った地球へ報復を開始した。

モロボシ・ダン「僕は絶対にR1号の実験を妨害するべきだった。本当に地球を愛していたのなら…。地球防衛という目的のために、それができたのは、僕だけだったのに…」

 

 生き返る度に強化されていくギエロン星獣を、最早兵器で倒すことはできない。

 ダンはウルトラセブンに変身し、憎悪の塊と化した星獣へ挑みかかる。光線を放ち、放射性ガスを吐きながら暴れ回る星獣。躊躇するセブンだったが、遂に覚悟を決め、太陽エネルギーを浴びると星獣に体当たりを喰らわせる。そして右翼をもぎ取って星獣に叩き付け、星獣は仰向けに倒れ伏す。

 セブンは倒れる星獣の上に乗ると、意を決してアイスラッガーを振り抜き、喉元を斬り裂いた。不死身の星獣も、喉だけは生身だったのだ。

 金色の血飛沫を噴き出して、星獣の動きはやがて鈍くなっていった。そしてその眼は瞼を下ろしていき、二度と開くことは無かった…。

 戦いは終わったが、代償はあまりにも大きすぎた。

 この大惨事によりR2号以降の惑星弾道弾の開発は凍結された。いずれ敵がさらに強力な兵器を作り上げるだけだからだ。

 まさにそれは血を吐きながら続ける哀しいマラソンだった。

 最後、除染を終えて基地に戻ってきたダンが、滑車の中で走り続けるリスを見つめて、この物語は幕を閉じている。

 『ウルトラセブン』の中でも名作として知られるエピソードだが、実はツッコミ所が多い

  1. なぜ星獣は、自分の星を破壊したのが地球人であることや、地球の場所を知っていたのか。
  2. なぜ星獣は、空気のない宇宙で羽ばたいて飛んでいるのか。
  3. フルハシ隊員は、最初の遭遇時にウルトラホーク1号のミサイルが通用しない星獣を「恐ろしい奴」というが、それまでにホークのミサイルで倒せた怪獣や巨大宇宙人などいない(円盤を撃墜したり、アイアンロックスの動きを止めた実績はあるが)。
  4. アマギ隊員の台詞ミス。「ホーク2号に新型ミサイルを取り付けた」と報告するが、実際にはホーク3号。
  5. 「新型ミサイル」というが、使用されたのは投下式の爆弾。
  6. 猛威を振るう星獣に対し、「この危機を救うものは超兵器R2号だけだ」と言い出す科学者。仮にR2号が完成していたとしても、使用したら星獣ごと地球が吹き飛ぶのでは(宇宙に誘き出して使用することを想定していたのだろうか?)。
  7. なぜ星獣は、血管を切られただけで死亡したのか。肉体を粉砕された場合と何が違ったのか。

上記のようなつっこみ所が生じたのは、限られた放送時間の中で、宇宙版『ゴジラ』として可能な限りの表現を盛り込んだ結果といえる。

 以下はファンによる考察

  1. 「星獣は本能で地球人の仕業だと分かった」などと説明すると、かえって嘘臭い。まして、ギエロン星に知的生命体が住んでいてR1号の飛来を観測していた、という設定にすると「被爆者が核実験の抗議に赴いたら殺害された」(!)というとんでもないエピソードになってしまう。最後にセブンに倒されるという都合上、星獣は知能を持たない怪獣でなければならなかった。 なお、この疑問点の答えにはもう一つの切り口がある。それは「星獣には復讐の意志などなかった」というものである。つまりは星獣は復讐ではなく、宇宙空間を直進した結果、偶然地球にたどり着いたということである。根拠としては、劇中での星獣が、復讐が目的であるにしては大して暴れていないこと。初めて地球に降り立った際も、暴れるどころか周辺の様子を見るように飛び跳ねるのみ。武器である放射能煙やリング状の光線も、ウルトラ警備隊に攻撃されるまでは使っていない。ウルトラセブンに対しても、放射能煙やリング状の光線を使いこそしたが、格闘戦を仕掛けるどころか、自ら近づくということすらしていない(ついでに言うと、先に仕掛けたのはウルトラセブンである)。唯一ギエロン星周辺の宇宙観測艇から「攻撃を受け――」との報告があるが、具体的な描写がないため定かではなく、もしかしたら星獣の進路上に運悪くいただけかもしれない。このことから、星獣の真の目的は失った故郷の復讐でなく、失われた故郷の代わりとなる安住の地ではなかったのだろうか(星獣の鳴き声も、聞きようによっては「タスケテ」と叫んでいるようにも聞こえる)。だがこの解釈をしてしまうと「被爆者が核実験の被害から命辛々逃げ延びてきたら殺された」という上記以上の鬱エピソードとなってしまう。やはり最後にセブンに倒されるという都合上、星獣は復讐者でなくてはならなかった。
  2. 空気がなくとも、羽を動かすことによって推進力を発生させている可能性がある。
  3. 星獣の強大さ(通常兵器は通用しない)を示すための描写。
  4. 理由不明。
  5. 後半(Bパート)の戦闘シーンと演出に差を付けるため。後半は、大型ミサイルを取り付けたホーク1号・3号と星獣が戦う(通常のミサイル攻撃と映像上の差は無い)。
  6. 超兵器が産んだ惨状を、更なる超兵器の使用によって解決しようとする泥沼の状態を示す描写。地上で使用できないことは当たり前なので、「宇宙に誘き出して~」などとは言及せず、またそうした台詞を入れる時間的余裕がなかった可能性。
  7. 理由不明。考察としては喉に再生能力を司る何かがあったとする説や、夜間に合体復活した姿から本体はスライム状の液体生命日光に弱く、怪獣の姿は鎧や外骨格のようなものという説、単に一度目で再生力をすべて使い果たしてしまっていたからという説もある。なお、後年ギエロン星獣が再登場した『ウルトラマンジード』では、細胞が気化して再び集合して怪獣の姿になるという描写が見られる。日光に晒されても特に問題はなく、それどころか細胞を焼却処分しても復活してみせるという驚異的な再生能力を見せている。ただし、新たに「低温化では生命活動が停止し、再生できなくなる」という弱点が設定されており、最終的にこの弱点を突かれて封印されることとなった。

余談

 このエピソードの事件を受けたにも関わらず、これから後もウルトラシリーズに登場する防衛チームは惑星破壊兵器を所持するケースがみられる。

 しかし防衛チームに起因する無実の犠牲者は『ウルトラマン80』に登場するガウスのみ(地球に接近する無人惑星「レッドローズ」を核ミサイルで爆破した際、やむなく巻き添えにしたガウス星に住んでいた)。

 平成ウルトラセブンヴァルキューレ星人は地球防衛軍の急進派が進めていた(本当にそう考えてるかは別として)地球侵略の意図がありそうな星を先制攻撃で滅ぼす「フレンドシップ計画」の対象になり、無実を訴えるのではなく「やられる前にやる」を選んでしまったため本当に侵略者となってしまうという皮肉な結果となってしまった。

 報復により地球を滅亡の危機に追いやった被害者ムルロアにいたっては、防衛チームとは無関係に某国が開発・実験したトロン爆弾による犠牲となった(ムルロアの名の由来はフランスが核実験場としていたムルロア環礁であり……)。

 TACが使用したマリア1号・2号は、地球と衝突するコースを進む妖星ゴランを破壊するために急きょ開発されたもので、他の惑星に使う意図はなかった(南太平洋国際本部の高倉司令官が持ってきた超光速ミサイルNo.7の用途は不明だが、開発を主導したと思われるのが、ウルトラシリーズの中でも随一のタカ派で名高い高倉司令官なので……)。

 MACが保有し、ババルウ星人の陰謀により地球と衝突しそうになったウルトラの星に向けて使われそうになったUN-105X爆弾は、前々作の妖星ゴランの件もありやむを得ないとも判断できる。

 平成シリーズに入っても、超兵器を使用しようとする人類と、それを止めようとする主人公ウルトラマンの苦悩を描いたエピソードは多い(中には、敵に兵器を奪われて悪用されるという最悪の事態に陥ったケースも)が、その原点は正にこの『超兵器R1号』だったと言えるだろう。

 ちなみに31世紀が舞台の『ウルトラマン超闘士激伝』では武器のインフレが進み続け、もうただの核兵器みたいな扱いになっていた。ハイパーゼットンに向けて打ち込まれかけるが、エネルギーを吸収されたら手に負えなくなると闘士ウルトラマンが制止している。

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