ウマ科
うまか
概要
奇蹄目ウマ科の哺乳類の総称。野生種(家畜が野生化したものではない、本来の野生種)はシマウマ、ノロバを除き絶滅している。
主に競走馬、農耕馬など、家畜として馴染み深い一般的なイエウマの祖先も現存しない。モウコノウマが、シマウマやロバではない野生種の「馬」とされていたが、近年の研究で古代に家畜化されたのが逃げ出し野生化したものだと判明した。
走るのに適した1本指の四肢(後述)、長いタテガミと尾(実際は短い尻尾に長い毛が生じている)が特徴。牛とは違い反芻を行わないため、食料を牛より多く必要とする(牛飲馬食)。
かつては乗用(乗馬)に用いられることが多く、ユーラシア大陸やアフリカ大陸では騎兵の乗り物としても使われていた。
馬の飼育に適した草原地帯の遊牧民の軍事力を支えていたが、自動車の普及とともにその優位は失われていった。
また、食用にもなり、肉は桜肉と呼ばれる。アメリカ合衆国やイギリスなど食のタブーとする地域も多く、日本でも競馬関係者にとっては馬肉食はタブー。遊牧民でも「食べるなんてとんでもない」派と「貴重だから大切に食べる」派に分かれている。
一般的に大型の動物とされるが、アルゼンチン原産の種「ファラベラ」は子犬ほどのサイズである。
矛盾する身体構造
偶蹄目は複数の胃を持つことで、胃に細菌を飼って彼らに草を発酵してもらうことでタンパク質やミネラル類を得ているが、奇蹄目の馬にそうした器官はないため逞しい見かけによらず体組織の再生能力が弱い。
このため重度の骨折を負った時点で死が確定する。予後不良の競走馬に安楽死の処置がなされるのは、骨折が治せない時点で歩行能力を欠いて運動不足となり、そこから芋づる式に疾病を併発してさらなる苦しみを味わわせることになることへの、せめてもの救済といえる。
特に走るために改良された競走馬は、自然界にない過酷な走行環境に晒されるため、より骨折のリスクが付きまとう。ゆえに「ガラスの脚」と呼ばれ、細心の注意が払われる。
自動車で言えばF1並みのエンジンを積んでいるに等しい心臓も、この脚を損ねればポンプ機能が停止してたちまち機能不全に繋がり、四肢をはじめとした末端の壊死に繋がる。
その原因は歪で歪な消化器の構造も関係しており、胃と腸の比率が【1:20】と大変に極端で、体を維持するために小さな胃をフル稼働させざるを得ない。「牛飲馬食」と言われるのは、そもそも胃の小ささゆえなのだ。
さらに腸を体に固定する腹膜の一種である「腸間膜」も未発達なため、ふとした衝撃で簡単に腸の位置が動いてしまい、腸捻転や腸閉塞といった腸に関する物理的な疾患にもかかりやすい。加えて胃の入り口である「噴門」の筋肉が非常に発達しており、げっぷも嘔吐ができないため胃にガスを溜めがちで胃破裂も起こしやすい。
総括すると心肺機能と筋肉にステータスをガン振りして後がぐずぐずという、凄まじき特化型。
抜群の身体機能を誇る馬だが、その進化の過程で犠牲にしたものも多い歪な生き物でもある。