作品解説
エニックス(後のスクウェア・エニックス)発行の月刊少年ギャグ王の1997年2月号から1999年1月号にて連載された兼本あつこのギャグ4コマ漫画で、主人公であるマリオが悪行三昧を繰り広げながらクッパにさらわれたピーチ姫の救出に向かう話である。
上記のあるように本作の特徴として、マリオは粗暴かつ狡猾で悪事も平気で行う極悪人として描かれており、その一方で悪の大魔王を謳うクッパは善良な上、ピーチ姫とのどかな日常を送っていたりと、悪と正義の性格が逆転してしまっている。どうしてこうなった?…ていうか、公式もよくこの漫画の連載をOKしたな……
単行本は第1巻まで刊行されたが、本巻が発売してまもなく連載が終了した為、残り3話分が未収録となっている(まぁ、一応はピーチ姫を救出しているけど…)。
登場人物
主要キャラクター
本作品の主人公。この作品におけるマリオは超が付くほどのクソ外道なので、詳細はリンク先を参照。
マリオの双子の弟で、本作屈指の人格者の一人。
マリオとは対照的に温和で優しい性格で、犬好きである。マリオにいつも振り回されており、彼の横暴を度々窘める苦労人だが、なんだかんだで兄弟仲は良好(尤も、不満がないという訳ではなく、こっそりとマリオの人形に釘を打ち付けて日頃の鬱憤を晴らしている)。一方でぶちギレると怖く、その怒り方は普段が温厚な分、マリオや敵キャラをビビらせるほど。
ヒーローと言う言葉に弱く、14話でマリオが風邪でダウンした際は彼の代理を勤めた。余談だが「不調のマリオに代わって活躍する」と言う展開はマリオ&ルイージRPGにて描かれている。
最終話では、カメックとフェンシング勝負(ただしピーチから真剣では危険という理由で短剣での勝負となった。それも十分危険な気がするけど…)を展開、見事勝利する。その後、マリオに敗北したクッパを説得し改心させた。
4話から登場したマリオの仲間の恐竜。
基本的に真面目で正直な性格だが、マリオから「食うことしか頭にないのか!?」とツッコまれるほどの食いしん坊で、お化けに関しても「食べられない」という理由で苦手としている。
初登場の4話にてタマゴから孵って早々マリオに焼肉にされかけた。最初はマリオからは同行することを極端に嫌がられていたが、6話からは普通にマリオたちと旅をしていた。
マリオから頻繁に暴行されるなど、ルイージと比べて扱いが最もぞんざい。そのため、普段から自身を邪険に扱う彼を若干疎ましく感じており、彼に対して文句や不満をぶつけることも多いが、マリオにボコられる原因はマリオに対する失言だったりする。
最終話では、ピーチ姫と綱引き対決をするが、ピーチ相手に本気になれず敗北する。
クッパにさらわれてしまったキノコ王国の姫で、本作のヒロイン。
本作でのピーチは囚われの身だがそんな状況なんざどこ吹く風な超絶マイペースなおとぼけ姫なので、詳細はリンク先を参照。
クッパ軍団を率いる悪の大魔王で、マリオたちの宿敵。本作におけるクッパはマリオと対照的にホントに悪のボスか?って疑うくらい優しい人格者なので、詳しくはリンク先を参照。
クッパの側近の魔法使い。
生真面目な性格の常識人で、クッパに様々な助言を行うが、クッパの悪人らしからぬ性格やピーチ姫の天然ぶりに振り回されることが多い苦労人。
連載当初は悪に徹しきれないクッパに対して苦言や意見を言い放ったり、ピーチの天然さに困惑するなど、融通の利かないカタブツとしての面が強かったが、話が進むに連れてツッコミが絶えない苦労人の面を残しつつもクッパとともにピーチの作ったケーキを食べたり一緒にピクニックに行くなど、彼らに対する態度も軟化していった。
23話ではマリオたちがクッパ城に侵入したことをクッパに報告しようとするが、(ピーチが無断で作動させた)トラップに行く手を阻まれるなどの災難に見舞われる。その後、なんとかクッパに報告できたようで、最終話ではルイージとフェンシング対決を行うが、敗北する。
ちなみに、カバー中表紙のイラストでは不満げな表情を浮かべるマリオブラザーズとクッパたちを差し置いて幸せそうな笑みを浮かべながらピーチの膝の上に座っている様子が描かれている。
その他のキャラクター
クッパ軍団の一般兵。
四足歩行の個体が多く登場している(その代わり、靴を履いたやつは一人も出ていない)が、顔の形がハニワ顔だったり口元がどこぞのカバ…もとい妖精みたいに隆起していたりと統一性がない。ちなみにパタパタの方も顔の形は不定形だが、こちらは一貫して口元が隆起しているという相違点がある。
どちらかといえばモブキャラクターとしての登場が多い。
クッパ軍団に組みする元キノコ王国の住人。
ノコノコと比べると目立った登場が多く、特に13話ではマリオに踏まれ「家には妻とかわいい子供達がまってるんだッ」と多くのマリオゲームプレイヤーに突き刺さるセリフを言い放った妻子持ちの個体や、21話ではピーチ姫に自身の畑に花を植えてもらおうとクッパに変装した個体が登場している。
雲に乗ったクッパ軍団の一員。
動向調査や情報収集に長けた軍団一の情報屋で、2話では突如現れた二人の女戦士(実際は女装したマリオブラザーズ)の写真を提供し、13話ではマリオたちの秘密を探るカメラマンとして活躍した。
マリオの幼馴染で自称・マリオのライバル。
短気かつ感情的な性格をしており、原作での「下品でナルシスト」な面は全く無く、寧ろマリオやクッパに対して忙しなくツッコミを入れる気苦労の絶えない常識人として描かれている。
マリオを倒して世界中を悪人だらけにしようと企んでいるが、幼少時代はマリオにいじめられていた。
初登場の5話では、クッパを倒してクッパ城を武器生産の拠点にすべく、挨拶代わりに爆弾を投げ込もうと目論むが、カメックに「ポイ捨てはダメ」と注意され、そのままクッパの許へ招待される。クッパの悪人らしからぬ行動やピーチの天然さに終始苛立たされる羽目に遭う。
その後、クッパから得た情報を基にマリオの現在地を探り当てマリオたちと遭遇。幼い頃の仕打ちの仕返しとしてルイージを人質に取るが、マリオが非情な提案を持ち出したことでなぜかルイージから(ついでにヨッシーも)協力を持ちかけられ、その行為に怒ったマリオに硫酸入りの水鉄砲を発砲されたり、爆弾入りキノコを投げつけられたばかりか、自身の全財産を寄越すよう恐喝されるなど散々な目に遭う。
20話で再登場し、(影で報復を目論みつつも)マリオと共に宝捜しをするが、結局はレジャーランドのアトラクションを攻略しただけだった。
ラリー・モートン・ウェンディ・レミー・ロイ・イギー・ルドウィッグの7人からなるクッパの子供たち(連載当時はまだクッパJr.は登場していない)
ウェンディ・モートン・ラリーはクッパを就職させるための資金集めに尽力するが、協力を装ったマリオにより全部奪われた(しかもマリオ本人はコイン集め中に乱暴に指図するだけで手伝おうともしなかった)。
その後、ウェンディに頼まれたルドウィッグ・イギー・ロイ・レミーはマリオに仕返しを目論むも、思い付いた作戦に悉く致命的な欠陥があったため、結局は失敗に終わる。
お化け屋敷を拠点にするアンデッドコンビ。
ゾンビガメのカロンはクッパから受けた指令に忠実な生真面目な性格だが、やたら乙女チックな振る舞いを見せる相棒のテレサに気苦労を抱えている。テレサは乙女チックで惚れっぽく、一度惚れた相手には素性に関係なく只管一途な一方、怒ると怖く、そのときの形相はさながら洋ホラー並の迫力。ルイマンに彼女が出てたらルイージはどうなってたことやら…
クッパからマリオたちの迎撃命令を受け、屋敷に入ったマリオたちに宝の在処をでっち上げてテレサに始末させるという算段だったが、肝心のテレサがマリオに一目惚れしてしまい、最終的にはカロンがテレサに攻撃され失敗に終わった。
キノコ王国の住人。
性格は基本的に真面目なのだが、話の途中で内容が吹っ飛ぶほど物忘れが激しく、そのひどさたるや、マリオたちの旅の目的を何度も聞いたり、ピーチ姫が作ったケーキを完食したにもかかわらず「ケーキはまだですか?」と強請り、(ピーチ姫もピーチ姫でその事を指摘せず作ってあげ)果てしないお茶会を展開するほど。
ピーチ姫がクッパにさらわれたことを知り、マリオたちの力になるためにアイテムを渡すが、間違えて偽者(特に最後に渡したやつはもはやアイテムという代物ではなかった)を渡してしまい、まともなアイテムを届けようとするが、最終的には目的を忘れてピクニックに行ってしまい、マリオたちはアイテムもといモンスターに襲われる羽目に遭った。
かなり強気な子供のヨッシー。
余所見をしている間に母ヨッシーが先に行ってしまったところをマリオたちと出会い、マリオたちは彼の思わぬ行動(ワンワンの鎖を外す、ハナチャンの花を抜くなど)に振り回されるも何とか母ヨッシーと再会に漕ぎ着けた。
ペンギン。
風邪を引いたマリオに代わってヒーローをする事になったルイージの前に現れ、彼から薬草の在処を問われ、相棒の雪だるまに勝ったら薬草を渡すと条件付けるが、当の雪だるまは闘志すら感じられないとんでもなく無気力な性格でルイージからの勝負も挑もうとせずにあっさりと薬草を渡した。
仮面を被った花畑の番人。
休日を利用してピクニックを楽しむクッパたちに花畑へと案内した(この際、ハナチャンが耕す畑に連れていくというギャグをやらかした)他、彼らの前にマリオたちが鉢合わせしないようにカメックから迎撃要請を受ける。最初こそ果敢にマリオたちに挑むが軽くあしらわれ、仲間のデブホーとヤリホーに救援を求めるが、彼らも揃いも揃ってマヌケばかりであっさりとマリオに反撃を喰らう。
その後はマリオの追撃から逃れようとプロペラヘイホーとなるが、マリオの攻撃が充分届く位の高さしか飛ばず、最終的にはクッパ城前まで執拗に追い回される羽目に遭った。
マリオたちが旅先で出会った犬っぽい生き物。
マリオには懐いてくる(ただし、犬嫌いなマリオからは嫌がられている)一方で、ルイージには必要以上に塩対応であしらうなど、良くも悪くも人の好悪がハッキリとした性分をしている。
- 死神さん
死神の姿をした幽霊。
骨の素晴らしさを世に広める商売を営んでおり、商品も骨に関連したアイテムが揃っているが、その肝心のアイテムの効能・使用法はと言うと…、
・聖なるドクロ・・・被るとスーパースター以上の無敵効果を得られる→ただ単に忠告の書かれた看板で脅して近寄れなくしてるだけ
・骸骨のツボ・・・「遥か昔、勇者によって海底に封印された悪魔の呪いがかかっている」という伝承がある→ただの花を生けるだけ
・栄養ドリンク・・・16種類以上の骨をブレンドして作られており、身長促進・恋愛成就効果を持つ→雇用者の嘘証言を用いたやらせ
・ドクロの斧・・・いかなる悪人を性格改善させる力を持つ→言い換えれば「悪人が死ねば悪さはしなくなる」
…といずれも触れ込みばかりで何の役にも立たない開運商法紛いなインチキ商品という代物である。
巨岩の怪物。
マリオたちが雨宿り目的で屋敷に入ることを予見し、部下のベトベトさんとけめくじを嗾け、自身は屋敷の奥でマリオたちを待ち受ける。
本人の作戦の計画ではベトベトさんたちがマリオたちの戦意を削いで自身はその隙に踏み潰すというものだったが、当のマリオは梅雨続きで不機嫌だったこともあり、ベトベトさんたちの攻撃(というより滅茶苦茶な機嫌取り)でさらに機嫌が悪化したばかりかルイージとヨッシーまでもが機嫌を悪くし、最終的には彼らを倒そうと意気込んでいたところを苛立ちが限界点を突破したマリオたちに「なんだこの石ころは!!」「通行の邪魔だよッ!!」と罵倒と共にフルボッコにされた。
ゴーグルを着けたイルカ。語尾に「~でヤンス」をつける。
夜中に何者かの襲撃を受け海岸で座礁していたところをマリオたちに発見され(この時マリオに生き埋めされかけた)、宝島へ案内することを条件に犯人探しを依頼する。
襲われたのが夜中だったこともあり、犯人の特徴は最初は「丸くて赤い」という朧気な手がかりしか掴めず、マリオたちと行動するうちに「体が大きく目つきが悪い」というところまで思い出す。
しかし、最後で「ヒゲが生えていた」という証言をルイージに話したことで実はリフトンを襲った犯人がマリオだということが判明。ルイージに昨夜のことを聞かれたマリオは「見つかってよかったなァ」と悪びれることなく平謝りをするが、勿論リフトンはそれに許すはずもなく「うれしくもなんともないでヤンスーッ」と憤慨するが、彼に「犯人を見つけたお礼」として脅される形で宝島へ案内された。
- 王様
マリオたちが訪れた町の王。
普段は長い眠りについているが、4年に一度に目を覚ますと謂われ、彼の目覚めの日は幾つかの競技を行い、MVPには王様に願いを一つだけ叶えてもらえるという祝祭が開催されるという。
マリオは彼に願いを叶えてもらおうと祝祭に参加し課された種目をクリアしていくが、そのほとんどが不正による勝利(綱引きで対戦相手の空手家を転ばせる、二人三脚で自身は足を一本だけ結んでハナチャンの上に乗って1位を取るなど)だったりする。
- クッパ・アオ
クッパの弟。後に公式からクッパとの関係を否定されたけどね…
クッパ城に侵入したマリオたちの前に立ち塞がり、火炎放射やハンマーでマリオたちを苦しめるが、ピーチ姫が勝手に作動させたトラップに掛かりマリオたちの反撃がないまま倒れた。
余談
本作を手掛けた兼本は、同出版社のアンソロジー漫画『4コママンガ劇場』でもマリオシリーズの4コマ作品をいくつか執筆している。
こっちの方のマリオは、本作のような極悪人ではなく、「熱血的だがおバカ」といった性格となっており、クッパの方もやや原作よりの性格になっている。(但し、「ゲームボーイギャラリー」の4コママンガ劇場ではマリオ・クッパ共に本作準拠の設定になっている。)ピーチ姫とワリオは本作とあまり変わっていないが、ピーチの方は寧ろマリオから「スター並みの威力」と言わしめるほど、天然っぷりがパワーアップしてしまっている。
『スーパーマリオくん』や『ボンボン版スーパーマリオ』のマリオも、本作のマリオほどではないが悪い一面を見せることも多々ある(前者は仲間を武器・盾代わりにしたり、危機的状況になると自分だけ逃げようとしたり(だが、本人も仲間たちに見捨てられかけたり、仲間がちょくちょく敵側に寝返ろうとしたり、仲間にボスの打倒を押し付けられる形で逃げ出されたり、危険なコースを選ばされて悲惨な目に遭わされることも多い)、敵に対して騙し討ちをする他、自身の活躍を鼻に掛けて相手を見下したり、弱い敵に対して強気な態度で接するなど、あくどい一面や少々傲慢で調子に乗りやすい面も見せることが多く、後者は女たらしでおっちょこちょいな面に加えハートが脆い)が、あっちはいざという時は仲間との連携や打開策を練って突破口を切り開き、強敵を打ち破ったり、宿敵のクッパに対しては共闘したり労いを見せる一面がある文句無しのヒーローであるため、本作のマリオとは対照的といえる。
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