拳法としての酔拳
実在する中国拳法の一つだが、「少林拳」や「太極拳」のような「酔拳」という門派があるわけではない。中国南北に存在する、酒を飲んで酔っ払ったような動きで相手を翻弄する拳法の総称であり、非常に変則的で予測困難な動きから攻撃が繰り出されるため、相手からすれば非常に戦いづらいが、同時に会得が非常に難しい拳法の一つでもある。
酔拳には酔八仙拳、武松酔拳、魯智深酔拳など、水滸伝の名を関したものが多い。
フィクション作品では、使い手が泥酔するほどに動きがトリッキーさを増し強さを増す拳法として描かれるが、実在の酔拳では飲酒は行わない。というか飲酒状態で武術を行うとか危険極まりない(RPGなどでのいわゆる混乱状態のようなもの、と形容すれば、どれほど危険かは想像がつくだろう)。
『水滸伝』の登場人物である酒好きの荒法師、花和尚魯智深が伝説上の開祖であるとも言われる。
映画『ドランクモンキー 酔拳』
1978年の香港映画。ジャッキー・チェン主演。「酔えば酔うほど強くなる」のキャッチコピーで日本でも大ヒットし、現在の酔拳のイメージはこの映画によって作られたと言っていい。
清朝末期の実在の武術家黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)が主人公だが、ストーリーはコメディータッチの完全オリジナル。ジャッキー演じる飛鴻は、拳法の才能を持ちながら自堕落な生活を送る若者。見かねた父親は、彼をクンフーの達人蘇化子(スー・ファチー)の元に預けるが、厳しい修行についていけずすぐに脱走。だが街中で殺し屋閻鉄心(イェン・ティエシン)にケンカを吹っかけて返り討ちにされたことで己の未熟さを思い知り、化子の元に帰り真面目に修行を開始するのだった……。
ハの字に脚を開き膝を曲げた中腰の体勢で手を前に伸ばし(馬歩の姿勢)、全身に水の入った茶碗を乗せられ水をこぼさずに耐える修行シーンが特に有名だろう。
クライマックスシーンでは、敵の隙をみて酒を飲みながら戦い、酔いを深めるごとにキレを増すジャッキーのアクションが見ものである。
ちなみに日本の漫画家・鳥山明の好きな映画のひとつであり、偶然その事を知った編集者の鳥嶋和彦が彼に題材として提案した末に読み切り漫画「騎竜少年(ドラゴンボーイ)」、そして『ドラゴンボール』を世に出す。のちにジャッキー・チェン本人と会談する事になるが、彼がドラゴンボールの大ファンと知り逆に恐縮した。
映画『マッハ!弐』
2008年に公開されたタイ映画。元スタントマンのアクション俳優トニー・ジャーが主演し、彼自らが原案・監督・武術指導を行った。詳細⇒マッハ弐
ストーリーはスコータイ王朝がアユタヤ王朝と統合される前後の時代である中世のタイ王国が舞台で、スコータイ王朝の東国四将軍の一人を父に持つ少年ティンが、両親を失ったのちに山賊『ガルーダの翼峰』に命を救われ、彼らから様々な武術を教わり、成長した彼は両親の仇である同じ四将軍の一人ラーチャセーナを討つべく、彼がスコータイ王を謀殺して築いた新王朝に戦いを挑んでいく…。
元々彼はジャッキーに憧れ、香港に渡ってスタントの修行を積んでいたこともあり、ジャッキーの酔拳をリスペクトしているとされる。
ただ、物語はジャッキーの酔拳とは違いかなり硬派でシリアスな内容であり、過激な描写も多くある。
また、トニーが作中で使っている酔拳は、古式ムエタイや他の武術も掛け合わせているとされる部分がある。
酔拳を使うキャラクター
漫画
ゲーム
- 舜帝(バーチャファイターシリーズ)
- 鎮元斎(KOFシリーズ)
- 雷武龍(鉄拳シリーズ)
- 南大作(龍が如く4)
- 酔拳にゃんこ(にゃんこ大戦争)
- チェンフー(ダブルドラゴン)
- 玉蘭(羅媚斗)
- ジェイミー(ストリートファイター6)
特撮
- 世界忍者 漢忍・緑龍(世界忍者戦ジライヤ)
- ファイブイエロー / 星川レミ(地球戦隊ファイブマン)※第4話で一時的に使用
- キリンレンジャー / 天時星・知(五星戦隊ダイレンジャー)※作中では「麒麟拳」の名称
- デカピンク / 胡堂小梅(特捜戦隊デカレンジャー)※第17話で「宇宙酔拳」の使い手オズチュウ星人イーアル相手に一時的に使用。なお相手共々上記のジャッキー基飛鴻よろしく酒を口にしていたせいで、その後の巨大戦ではビークル搭乗が飲酒運転になってしまうためストップをかけられ、上司のデカマスターが代行運転を務めた。「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな!」
- ゲキブルー / 深見レツ(獣拳戦隊ゲキレンジャー)