概要
自ら制作・刊行する冊子で同人誌即売会や委託販売で入手するのが一般的。
解説
本来は複数人(同人サークル)で集まって制作する合同誌、アンソロジーを念頭に置いていた言葉だと思われるが、現在では個人サークルが出す本(個人誌)が多数を占めている。
体裁的には同人サークルの会誌であり、サークル仲間の内のためのものだが、活動に参加する代わりにお金を払うことで分けてもらっている、という体である。そのため、「販売」ではなく「頒布」という言葉を用いる。
同人誌と言えば「成人向け」や「二次創作」というイメージもあるが、少なくとも数の上ではオリジナル創作や全年齢向けに該当するものの方が多い。
基本的には趣味で頒布するもので、企業などが利益を目的として刊行する商業誌の対義語だが、商業誌で連載を打ち切られた漫画や文芸 作品の続編を同人誌形態で刊行することもある。また、大部数の出版が望めない古い作品を同人誌形態で復刻することもある。自費出版との違いは、版下の作成・デザインや印刷の手配を著者自ら行うところにある。
利益を目的としない実費負担という建前で有料頒布されるものが多いが、無料配布される同人誌もあり、フリーペーパーとの境が曖昧なことがある。
種類
大きくわけて一次創作と二次創作、全年齢向けと成人向けになる。
種類は
- 漫画をまとめた「漫画同人誌」
- イラストを集めた「イラスト本」(イラスト集・画集とも)
- 詩や小説を集めた「文芸同人誌」
- 批評や研究成果をまとめた「批評誌」・「評論誌」・「資料集」
- 作者及びその周囲での出来事をまとめた自伝・エッセイ
などがある。
また、原稿をそのままコピー機にかけてホチキスなどで留めたコピー本、デジタル印刷機などで数十部程度の少数を印刷するオンデマンド本、商業クオリティのオフセット印刷により数百部〜数千部を刊行するオフセット本といった区分もある。
人気サークル以外はオンデマンド本かコピー本が多いが、印刷品質にこだわって100部未満の少部数でもオフセット本を刊行するサークルもある。また、箔押し、ラメ入り、活字を使った活版印刷、レーザー彫刻やツヤ盛り、小口染めといったこだわりの印刷を依頼するサークルもある。
入手方法
過去においてはその種の雑誌などに広告が掲載され、そこから郵便にて通信販売を行うことが主であったと思われ、現代でもこの手法をとっているところも存在する(さすがに宣伝はインターネット上のWebサイトに移行している)。
即売会
コミックマーケットに代表されるような「同人誌即売会」で入手することができる。
通信販売(自家通販)
BOOTHやその他自家通販を行なえるサービスを利用し、自宅から発行物を発送する方法。エアイベントの場合も実際の頒布物の頒布手段は通販に頼ることになる。
ネット配信
データ化した原稿をSNS等で掲載する、電子書籍として配信するなど。pixivでも、漫画形式で複数原稿をまとめて掲載展示することが可能である。
委託販売
同人誌を作ったはいいが、通信販売も即売会へ行く余裕もない場合や、頒布の手段を増やす場合に用いられる。同人誌即売会の委託サークル枠に申し込むパターンと、委託販売を行う業者や委託書店に販売をお願いするパターンに分かれる。
また即売会の場合、知り合いのサークルのスペースに頒布物を置かせてもらうという方法もある(信頼関係がしっかりしていないと難しいが…)。
特にコミックマーケット100などコロナ禍以降となった同人誌即売会ではサークルの当選数自体が少なかったり、リスクを回避するために行かない参加者も多く、それに伴い委託販売がかなり一般的になった。
同人誌を委託で扱う書店
メロンブックス らしんばん とらのあな ゲーマーズ アニメイト まんだらけ K-BOOKS
同人誌の委託販売または電子書籍形式でダウンロード販売をしてるサイト
DLsite DL.Getchu.com DiGiket DMM.com Gyutto.com
メロンブックスDL とらのあなDS dd-style.com 駿河屋 2.D
同人誌の処分
読まなくなった同人誌の処分は長年多くのオタクを地味に悩ませている問題である。
紙の冊子のため古紙回収に出すこと自体は一応可能ではある。が、同人を知らない層の目に触れるような処分の仕方は暗黙のマナーでタブーとされている。
多くの場合、一ページずつ切り取ってシュレッダーにかけたり、外から見えない袋に入れて可燃ゴミとしての処分が一般的。
送料のみ自己負担だが、エコサリオといった同人誌の古紙回収が可能なサービスもあるので検討してみるといいだろう。
駿河屋やらしんばんのような中古同人を取り扱っている業者もいるが、在庫状況やジャンルにより全ての同人誌が買い取りできるわけではないため注意。
フリマアプリに同人誌を出すことについて
当然だがメルカリなどで扱っていることもある。
ただし、同人誌や二次創作について詳しくない人が多く、公式のものだと信じてR18のものに未成年が手を出してしまう等のトラブルが絶えない。あまりオススメはされない処分方法である。
歴史
同人誌のはしりは明治時代に刊行された文芸誌『我楽多文庫』である。最初は原稿をまとめて綴じた回覧誌という形式であった。ごく一部だが活版印刷されて書店にも出回る同人誌も現れた。無名だった頃の太宰治や芥川龍之介、菊池寛など、現代に名を残した作家たちは作品の発信媒体が限られていたこともあって同人誌からの出発が多く、そこから注目を集めていった。
コピー機が普及していなかった時代の同人誌は、原稿を綴じた冊子を漫画研究会などのサークルの仲間内で直接回覧したり(肉筆回覧誌)、ガリ版で印刷した小部数を仲間内に配布したりといったものが多かった。有名になった漫画家がアマチュア時代に作っていた回覧誌は非常に貴重かつ重要なものとして扱われる事がある。
1967年に手塚治虫が立ち上げた雑誌「COM」の読者投稿コーナー「ぐらんどこんぱにおん」(ぐら・こん)を担当していた真崎守は、全国の漫画ファンを組織化する壮大な構想を抱き、各地方にぐら・こんの支部を作った。1971年のCOMの休刊によって構想は挫折したものの、「全国のまんがファンが相互の交流を図る」というコンセプトに共鳴した支部員たちが「日本漫画大会」に結集し、各地の多種多様な同人誌が頒布された。これに参加した団体の一つに迷宮というサークルがあり、この迷宮が1975年に立ち上げたのが「コミックマーケット」である。
頒布の方法
個人向けのコピーや印刷が容易でなかった時代の同人誌の頒布の手法は「回覧」しかなかった。
後にミニコミや同人用の少部数印刷を請け負う同人誌印刷所が現れ、数十部から数百部程度の部数のイラスト・漫画本の複製が容易になると、郵便による通信販売が可能となり、雑誌等の媒体で宣伝が行われた。同人誌即売会は当初は同志の親睦が目的であったが、やがて「金銭を対価とした頒布の手段」ということが主体となり、かつ店舗による委託販売を利用することによって、大部数を店舗や通販で常時頒布することも可能となっている。
インターネットの普及に伴い、データ化した原稿を個人サイトに掲載する、SNS等で発表する、電子書籍として配信サイトで流通させるなど、展示/頒布の幅がさらに広がっている。