概要
現代社会に生きる妖怪達と人間達との、心温まる交流を描いた癒し系漫画。
元となったのは2013年10月に川西ノブヒロ氏がTwitterに投稿した「いいなまはげ」という短編漫画で、恐ろしい外見とは裏腹に悩める現代人達を優しく慰めるなまはげの姿が話題となり、2015年4月に現在のタイトルに改題して講談社のメフィストにて連載が開始された(講談社文芸第三出版部のTwitterアカウント、作者のFacebookアカウントでも並行して連載)。
2016年の4月まで約1年間連載し、その後も不定期で番外編などが執筆されている。同年6月には待望の単行本が発売された。
登場キャラクター
妖怪・宇宙人・幽霊
泣く子や悪い子を探し回っては、事情を聴いたり力になってあげる心優しい妖怪。きりたんぽが好物でいつも持ち歩いている。アパート暮らし。
涙が出ていればなんにでも反応してしまうらしく、目薬やテレビ用の嘘泣きでも現れる。
何故か、漫画のアシスタントをこなせるが、アナログ派でありパソコンでの作業は全く出来ない。
国の保護を受けている妖怪。嘴があるためか鳥扱いされることも。非力で烏に住処を奪われたりする他、寒さにも弱い。
人間を度々池に引きずり込もうとするが、この行動には実は理由があった。
- ねこまた様
かつては普通の野良猫だったが、20余年生き続けた結果妖怪となった。
普通の猫だったころは人間に可愛がられていたが、妖怪となってからは敬われるようになってしまい困惑している。
生計を立てるため、ねこカフェでバイトを始める。お年寄りの希望になったり、特徴的な尻尾を生かしてマッサージをしたり、猫達に接客指導をしたりするなど大活躍していたが、本人はそれよりも猫として可愛がって欲しいと思っておりギャップを感じていた。終盤、再び野良暮らしをしようとねこカフェを出て隣町に住み着くが、最後はねこカフェが自分の居場所だと悟り戻ってくる。
人語が話せるため動物たちの通訳を行うことがあるが、これがある事件を解決する鍵となる。
イカのような姿をした上司と部下の二人組。地球人と平和的な関係を築くために遠い星からやってきた。人の思考能力にブーストを掛けることが出来るが、大体は悪い方に作用してしまう。また人体を復元する能力も持つが、復元の過程は相当グロいらしい。
部下の宇宙人は人間の妄想を「行動を放棄した怠慢」と断じていたものの、上司の宇宙人は最終的に「自分の正直な願いを知るために悪くない」とした。
愛称は「ざっしー」。幸せを運ぶ妖怪で、一年ごとに取り憑く相手を変える。作中では新米に取り憑く。善人にしか取り憑かないという。
取り憑いた相手が外出している時は相手から離れられないが、家にいるときは自由に行動出来る。
樹上の民のごとく自在に新米の体の上を動き回り、それを生かしてひったくりを捕まえたこともある。警察としての仕事を気に入っているのか、制帽を被り手錠を見事に使いこなすようになる。金髪だが実は髪を染めている(前の主人の趣味らしい)。
終盤、たまと共にねこまた様を探して隣町へ向かう。その後新米の元から離れ、次の街へと姿を消すが…。
一年ごとに取り憑く相手を変えながら彷徨っているのには、とある理由がある。前の主人に貰ったガウンを大事に着続けている他、新米と別れる際も彼に貰った制帽をずっと被っていた。
- れいちゃん
とある事故で亡くなった女子高生。遺体は見つかっておらず世間では行方不明扱いとなっている。
生きていた頃よりも生き生きとしており、町中でスカートを脱いだり道路に寝転んだりと「生きてたら出来ないこと」をして死後をエンジョイする。
生前は夢も目標もなく生きていたが、死んだことにより逆に「生きること」を知る。そして…。
主要な人物
- アラサー
彼氏いない歴2年8か月の独身女性。さみしくて毎晩泣いていたところをなまはげに慰められる。
両親との関係が上手くいっていなかったが、なまはげのお陰で改善した。
お昼のテレビの仕事をしており、新米とざっしーの関係を取材する。それがきっかけで新米と親しくなり、一緒に行方不明の女子高生やざっしーを捜す。
彼女の幸せな姿でこの物語は締め括られる。
- 編集長
禿頭の中年男性。アラサーの父親で新卒の上司。
家庭のストレスを会社で発散したり、昼から酒を飲んで酔っ払うなどだらしない生活を送っていたが、なまはげの(間接的な)活躍で改めていく。
- 新卒
ショートボブの髪型をした女性。好物は肉まんで、特技は木登り。
なまはげと特に仲の良い人物で、目薬で嘘泣きをしてなまはげを誘き出すこともある。
当初は遅刻や仕事のミスが多く編集長からよく怒られていたが、最終的には三年目にして手際よく仕事をこなす立派な社会人となる。
なまはげに憧れており、彼の真似をして印刷所に原稿を届けた際には得意気になっていた。
- 新米
若い警察官の男性。
ざっしーに取り憑かれ、当初は困惑していたが、次第に固い絆で結ばれていく。
おばタレさんにテレビ番組で尻を触られて一時期「プリケツポリス」とからかわれた。彼女いない歴=年齢だが、その理由は優し過ぎるかららしい。
引っ越してきたばかりだったため、一人でおでんを食べるなど孤独な生活を送っていたが、ざっしーによってアラサーらと親しくなる。ざっしーがいなくなった際は連れ戻そうとしたが、最終的には旅立ちを優しく見送った。
- ボス
新米の上司で元刑事。甘いものが好きで、いつもパフェやクレープなどを食べている。ざっしーに対してはお祖父ちゃんのような心境で見守っている。
- ツンデレ
金髪の女子高生。好きな人(下記の不安定のこと)に素直になれず悩んでおり、なまはげに助けられる。最後までツンデレは治らなかったが、なんだかんだで幸せな様子。
- 不安定
ピンク髪にツインテールの女子高生。ツンデレのことが大好き。カナヅチなため池に引きずり込もうとしてくる河童は天敵。
不安定という名称には、片足で立てないというバランス感覚的な意味と情緒不安定の二つの意味がある。
- ねこ好き
青い髪に眼鏡をかけた女子高生。いつもカメラを持ち歩いては猫の写真を撮っている。
人と話すと緊張してしまう質だったが、なまはげ相手に練習した結果改善した模様。
ねこカフェにド嵌りしてしまい、終いには自作の衣装を着てアルバイトをするようになる。
- 店長
ヒッピー風の外見をしたねこカフェの店長。猫相手にギターの弾き語りをしている。
猫を使って金儲けをしているとねこ好きから警戒されていたが、実際には猫達からも心から好かれる好人物。
バイトのねこまた様にはちゃんと相応の報酬を払っている。また、ねこまた様がいなくなった時には仕事が全く手につかないほど心配していた。
- エスパー赤ちゃん
生命や宇宙など全てについて理解している赤ちゃん。だが言語能力は普通の赤ちゃんなためそれを伝える手段がなく困っている。最終的には全ての知識を忘れてしまい、普通の赤ん坊になった。インテリアが趣味のお母さんと屋上菜園が趣味のお父さんがいる。
彼の生命に関するある台詞が終盤の伏線になっている。
その他
- OL
頑張るほどに仕事を増やされ、限界を迎えていたところをなまはげに慰められる(夜中の12時まで残業していた)。その後は転職して悠々自適の生活を送っているが、残念ながらこの話は単行本未収録。
- 男子小学生
ボーダーシャツを着た男の子。悪ガキ3に虐められたところをなまはげに目撃されるが、男らしく涙をこらえる。宇宙人によって小学生にして中二病に目覚めた。前髪が特徴的な父親がいる。最後は改心した悪ガキ3と仲良くなる。
- 女子小学生
花の髪飾りをした女の子。引っ越し直後で友達がおらず寂しがっていたところをなまはげに慰められる。サングラスをかけた母親がおり、犬を3頭も飼っている。
後にリボンの女の子と友達になる。
- 愛犬家
ペットロスに悲しんでいたところをなまはげに慰められる。宇宙人の妄想ブーストによって「魔法ガールリルフィちゃん」にお金を出して貰う妄想をした結果、会社を辞めニートになってしまう。れいちゃんには「生きてるだけでご苦労様」と言われていた。
- 教育実習生
生徒にナメられ悩んでいたが、なまはげの芝居により信頼を勝ち取る。終盤には正式な教師となって登場し、「卒業式はお祝いの場だからみんな笑って卒業しましょう」と生徒たちに声をかけていた。
- ハト
「泣く子」ではなく「鳴く子」。見ていると癒される。なまはげも癒されていた。
- 悪ガキ(パワー型)
ふくよかな体系の小学生男子。下記のスピード型、インテリ型と併せ「悪ガキ3(スリー)」と紹介されている。
男子小学生を虐めていたが、彼自身も毎日両親の喧嘩を目の当たりにしており、辛い思いをしていた。なまはげによって両親の中が改善してからは改心し、男子小学生と和解した。
- 悪ガキ(スピード型)
パワー型、インテリ型とよく3人でつるんでいる。れいちゃんの弟で、行方不明になった姉を心配するあまり非行に走っていた。後に新卒の活躍や終盤のある出来事もあり改心し、男子小学生とも仲良くなる。
- 悪ガキ(インテリ型)
悪ガキ3で彼のみ悪ガキになった経緯が語られていない。最後は他の二人ともども改心する。
- マンガ家
ファッション誌「KŌJIN」でマンガを連載している男性。担当者は新卒。猫を飼っている。
- 同人作家
普段はマンガ家のアシスタントをしているが、コミケ前は本業の方に勤しむ。ブースはそれなりに繁盛している模様。
- デート老夫婦
毎日仲良くデートをしている。公園→神社→レストランのルートを辿る。
実は彼らがデートをしているのには、もう一つの理由があった。
- リボンの女の子
青い髪にウェーブのかかったロングヘアをしている。プールでねこまた様にアイスのお金をおまけしてもらう。ハムスターを飼っている。
- ネガティブ
布団に入ると昔の過ちを思い出してしまう質で、なまはげに子守歌を歌ってもらっていた。OLに似ているが同一人物かは不明。
- おばタレさん
おばちゃんタレント。海外産の猫「ニャーちゃん」を飼っている。テレビ番組の収録で新米にセクハラをした結果座敷童に手錠を掛けられる。その後はテレビでたこ焼きを食べているシーンがある。
- 不動産屋
初老の男性。ねこまた様に物件を進めるが断られる。冬場に酔って公園のベンチで居眠りをし凍死しかけたことがある。
- 就活生
連敗が止まらずなまはげに慰めて貰っていた。最終的には見事内定を勝ち取るが、この話は単行本には未収録。
- たま
ねこカフェの猫。失踪したねこまた様に会いに隣町へ向かう。
- フリーター
給料日前で水のみで生きていたが、なまはげにきりたんぽを渡される。
用語
- 美鶴町
本作の舞台。妖怪と人間が共存している不思議な町。夏には花火大会がある。
- ニャー缶
ねこ好きが持ち歩いている198円の缶詰。
- イタリアンレストラン vita
よくテレビに取材される人気店。おばタレさんも取材で訪れていた。新卒がなまはげとランチをした。メニューは明太子パスタなど。
- うさぎのドーナツ
子供向けの絵本だが三十代の心に迫るも内容で、読んだものは必ず自分を見つめ直すという。なまはげやエスパー赤ちゃんのお父さんが読んで涙を流していた。曰く「大切なことの全てはこの中に」とのことだが、真理を知るエスパー赤ちゃんが読めたらどう思っただろうか。
- 降神社
主に女性向けファッション誌を発行している出版社。編集長や新卒が働いている。
- KŌJIN
降神社が発刊している女性向けファッション誌。マンガも載っている。
- ねこカフェ
猫が可愛く、店長がかっこよく、ねこまた様が渋い。作中では多くの登場人物がこのお店に来店している。ジョッキーが馬ごと来店したこともある。2階は店長の自宅。
- 河童島
美鶴公園の池に存在する河童の住む島。たまに烏に占拠されている。釣り禁止だが、これは釣り糸に河童が絡まってしまうため。終盤でこの島が鍵となる。
- 黄金の海
全ての生命が生まれる場所。
単行本
2016年6月23日発売。お値段は定価900円とちょっと高めだが、その分フルカラーなので連載版のままの綺麗な色遣いが楽しめる。
本になったことで時系列や物語が一点に収束していく様子が分かりやすくなっている。
終盤ではこれまでに登場した人物たちがそれぞれハッピーエンドを迎えていく姿が描かれており、幸せな気分に浸れること請け合い。
しかし上述のように収録を見送られた話も結構あり、また当然ながら連載終了後に不定期掲載された話も収録されていない。