概要
アッグシリーズとは、アニメ『機動戦士ガンダム』本編未登場のモビルスーツ群、アッグ、アッグガイ、ジュアッグのことで、一般的には同じ出自のゾゴックが加えられる。
「ジャブロー攻略戦用の特務モビルスーツ」とも呼ばれ、アニメ本編でジャブロー攻撃が描かれた第29~31話に登場する予定だった。のちのMSV展開に全機が組み入れられている。
後年の漫画『機動戦士MOONガンダム』に登場したアッグジンも、アッガイの再設計機としてアッグシリーズの一つに設定された。
経緯
デザインは4体とも富野喜幸(富野由悠季)のラフデザインを大河原邦男がクリーンアップして完成させた。
ファーストガンダムで粗方の登場機体がガンプラ化されたのちに、ストリームベースの小田雅弘の提案から新企画がスタート。本編放送直後に発行された日本サンライズ『機動戦士ガンダム・記録全集4』の、いわゆる「トミノメモ」が初出。ここでアッガイのデザイン成立までに描かれたと推測される3体のモビルスーツに、同じく没デザインだったゾゴックを加え、新たに画稿が作成されたのち、『ジオン軍モビルスーツ(試作メカ)』としてキット化された。このアッグシリーズの展開が後のMSVの嚆矢となる。
アッグガイとジュアッグがアッガイの派生機という設定はこの経緯を元に生えたものと思われる。MSVに組み入れられたときに、ディテールや設定を加えた画稿が大河原邦男によって新たに描かれている。
設定
地球連邦軍総司令部が置かれたジャブロー攻略を目的として開発されたモビルスーツで、4機種共同で作戦遂行することを前提に設計された。アッグがジャブローへの侵入路を削孔し、ジュアッグの射撃支援を受け、アッグガイとゾゴックが基地内部に侵入して近接戦闘を行うことを想定している。
大規模攻撃というより、劇中のアッガイが実行していたような後方撹乱を目的とした小規模編成での作戦として立案されていたようで、作戦行動中の隠密性を高めるために4機種に共通して独特の設計と兵装が施され、主にセンサー類の強化に由来する怪物的で奇っ怪な外観を持つ。また、閉所で肉薄した戦闘が行われると想定されていたのか、アッグガイとゾゴックは射撃兵器を殆ど持たない極端な設計になっている。
水陸両用機ともされるが、アッグガイが水中戦闘にもある程度対応した武装が施されているものの、ゾゴックとジュアッグの武装は水中戦に対応しておらず(諸説あり)、そもそもアッグは潜航能力を持っていなかった。このため全機「湿地帯用」「局地戦用」とされることも多い。
水陸両用機の間で腕部の規格は同一なのか、ズゴックのアイアン・ネイルを装備したアッグガイ、ゾゴックのマニピュレーターとヒートナイフ(ヒートソード)を装備したジュアッグが存在する。
一年戦争においてジオン軍内部ではジャブローの直接攻撃を目的とした様々な作戦を立案していたが、ビグ・ザムやアプサラスなどの大型モビルアーマーによる防空能力の低さを突いた軌道上からの再突入制圧攻撃に比べて、小規模だが奇抜すぎる作戦だという意見もあったようである。しかしMA開発のみのペーパープランで終わった軌道上からの強襲作戦と異なり、シャアが指揮したMS空挺作戦に参加して実行されていたという説もある。
EMS-05「アッグ」
詳細は「アッグ」の項目を参照。
モビルスーツではなく「大型土木工作機」「重機」とも表現される。モグラの如く地中を掘り進みトンネルを穿孔するのではなく、ジャブロー基地やその周辺の地下洞で岩盤・岩壁を破壊して、進入路を切り開くことが任務だったと考えられている。
MSM-04N「アッグガイ」
詳細は「アッグガイ」の項目を参照。
アッガイ試作機から派生した設計の機体。両碗に2本ずつ装備したヒート・ロッド、あるいはズゴックと同じアイアン・ネイルにより近接格闘戦を行うことが任務である。
MSM-04G「ジュアッグ」
詳細は「ジュアッグ」の項目を参照。
アッグガイと同様にアッガイの開発途上で生まれた機体。両碗の3連装320mmロケット砲による後方射撃支援が任務。
MSM-08「ゾゴック」
詳細は「ゾゴック」の項目を参照。
ズゴックの改修機で、アッグガイと同様の格闘戦用だった。発光・発火系の射撃兵器を一切持たない割り切った設計で、特異な格闘戦兵器のみを装備する。
EMS-13「アッグジン」
詳細は「アッガイ#アッグジン」の項目を参照。
『機動戦士MOONガンダム』で設定。主戦場が宇宙へ移った一年戦争末期に、月面戦・宇宙戦用としてアッガイを再設計した機体。アクシズを経由してネオ・ジオン残党軍がムーン・ムーン一帯での戦闘で使用した。
尚、水冷式ジェネレーターを「空冷式」に変更しているとのことだが、月面や宇宙空間でいかに空気を取り入れ熱交換を行っているのかは不明。
活躍
本編には登場しなかったがその特徴的な外観は強烈な印象を残したようで、いわゆる旧キットのプラモデル売上は好調だったと伝えられるほか、様々なメディアに登場している。
個々の機体の登場はそれぞれの項目に譲って、アッグシリーズ4機が揃って登場するメディアは以下の通り。
- 近藤和久『機動戦士ガンダムTHE MSV』では、ホバーツ・ファニーズを元ネタにした独自設定を加えられて登場。
- 太田垣康男『機動戦士ガンダムサンダーボルト』では、南洋同盟がアレンジを加えられた4機種を多数運用。
- 曽野由大『機動戦士ガンダム オレら連邦愚連隊』『機動戦士ガンダム アッガイ北米横断2250マイル』でも4機種連携して登場している。
- ゲーム『ギレンの野望・ジオンの系譜』では、4機種の開発とジャブロー潜入作戦を行うシナリオが存在。