キ100形除雪車
国鉄の前身にあたる鉄道省が1928年から1956年にかけて製造した除雪車(ラッセル車)。
国鉄初の単線用鋼製ラッセル車で、製造は国鉄苗穂工場、大宮工場、浜松工場、土崎工場、郡山工場、飯野産業、立山重工業。
176両が新造されたほか、1953年に苗穂工場と新津工場で木製ラッセル車キ400形18両を鋼体化改造し本形式に編入した。
貨車扱いであり動力はなく、機関車による推進で運用する。
くさび型の前頭部は下部が鋤のような形の延鋤形(キ100 - キ143)、曲面状の流線形(キ144 - キ172)、平板の直線形(キ173 - キ293)の3タイプが製作されたが、後にほとんどが優位性が認められた直線形に改造された。製造・改造された工場によって形態に差異があり、ラッセル上部の雪返し部分の長さや先端部の形状、ラッセル面と雪返しの接合部の曲面のRの大きさなどが車両ごとに細かく違っていた。
キ273は除雪抵抗の減少を図るべく前頭部をパラボラ形に改造している。
主力の除雪車として運用されていたが、DD15・DD21・DE15形など除雪装置を有するディーゼル機関車や除雪用モーターカーの普及により大部分が廃車になった。
国鉄分割民営化後もJR北海道にキ176・276の2両が継承され、標津線で運用されたが、同線の廃止により1989年に廃車となった。
以下の車両が保存されている。
- キ116:新潟県新潟市南区月潟・新潟交通月潟駅跡
- キ132:岐阜県高山市昭和町・昭和児童公園
- キ134→キ115:秋田県鹿角郡小坂町・小坂鉄道レールパーク
- キ165:京都府与謝郡与謝野町・加悦SL広場
- キ172:福島県耶麻郡西会津町・如法寺
- キ182:鳥取県米子市日ノ出町・後藤総合車両所
- キ209:石川県白山市新田町・金沢総合車両所松任本所(原則非公開)
- キ228:岩手県北上市立花・北上市立公園展勝地
- キ229:北海道北見市常盤町・オホーツク鉄道歴史保存会(個人所有)
- キ270:北海道小樽市手宮・小樽市総合博物館
- キ274:北海道三笠市幌内町・三笠鉄道記念館
- キ277:北海道紋別郡滝上町・滝上町郷土館
- キ287:福島県喜多方市熱塩加納町・日中線記念館
- 三菱石炭鉱業大夕張鉄道キ1:北海道夕張市南部大宮町・南大夕張駅跡
譲渡車両
1968年5月に新潟交通にキ116が譲渡された。車両番号は変更されず1999年の同社線廃止まで運用され、前述のように現在も月潟駅跡で保存されている。
同年に弘南鉄道にキ104が譲渡された。こちらも車両番号は変更されず、現在でも現役で稼働している。1975年にはさらにキ157が譲渡された。こちらは車両番号をキ105に変更している。
さらに同年に津軽鉄道にキ120が譲渡された。譲渡に際し車両番号をキ101に変更している。
1969年に小坂鉄道にキ134が譲渡された。国鉄時代の配置が新津だったことから「えちご」の語呂合わせでキ115に改番され、車体塗装をエメラルドグリーンに変更した。2008年の同線休止に伴い廃車となったが、前述のように小坂鉄道レールパークに保存され、ウィング部が稼働する動態保存が行われている。
私鉄の同型車
このほか苗穂工場で道内の私鉄向けに2両の同型車が新造された。
美唄鉄道キ101:1929年製造。1972年の同線廃止に伴い廃車。
三菱石炭鉱業大夕張鉄道キ1:1940年製造。1987年の同線廃止に伴い廃車。南大夕張駅跡に静態保存。