概要
2017年10月販売開始。
従来のFRセダン型であるコンフォートやクラウンコンフォートの後継車として登場。
生産は子会社のトヨタ自動車東日本の工場で行われる。
ベース車はFFミニバンのシエンタで、従来のセダン車に比べて高い室内高を実現。
基本的に国内専用車であるが香港やマカオにも輸出されており、コンフォートの名で販売されている。
動力系はタクシーの主流燃料である液化プロパンガスと電気モーターのハイブリッド式で、ガスボンベは後部座席後ろのラゲッジスペース内に設置されている。
左側のリアドアがスライドドアになっており付属のスロープで車椅子の乗降が可能である。
しかし後部(セカンドシートとトランクの間)にガスボンベがあるため、従来の福祉仕様車のように最後尾のハッチバックから車椅子を乗せる事ができない。
従来の使用法と比べると、左側にスロープをつけるための安全なスペースが必要となり、傾斜的にも乗降に時間がかかる。
車内で向きを変えなければならない上に専用シートベルトの仕様の問題から着席までの手順がかなり煩わしいと、現場のタクシー会社から設計思想を疑う声が多数挙がった。
改良型も登場したが、基本設計が変更されていないので後部での乗降は不可能のままである。
また従来のコンフォートと比べて初期費用(330~360万円程度と、ベースとなった2代目シエンタのHVより100万円以上も高い)やメンテナンス費が高いため、2020年現在大都市の郊外や地方部では数としてはあまり普及していない模様。
元々持続耐久性の高いコンフォートやセドリック営業車の継続使用や、中古のクラウン、カムリ、プレミオ、アリオン、スカイライン、フーガなどのセダン、市販車として普及率がかなり高いプリウス、シエンタやセレナなどの一般ミニバンをタクシー用に改造する会社も多い。
さらにトヨタグループ側のプロモーションの影響などでジャパンタクシーへの置き換えをしたが、新型コロナ騒動による急激な不況で大赤字を出して休業や倒産するタクシー会社が相次いだという見方もある。
従来の日本のタクシー車両
タクシー車両が長い間FRセダンが主流であった理由として、走行性能と居住性の優位性が挙げられる。
要約すると、エンジンをフロントに置き後輪で駆動という構造は走行時におけるバランス性に優れており、小回りや加速、登坂における走行性能に優れる。
そして車高が低く乗員席とは独立したトランクルームを持つセダンは、
・重心が低いのでステアリング操作や高速走行、強風時でも揺れにくい
・リアシートがホールド性の高いものになりやすく座り心地が良い
・リアシートと荷室に仕切りがあり騒音や衝撃を拾いにくい
・エンジンルームとトランクルームのボンネットが長く衝突時の耐久性が高い
などの利点を持つ。
これらの理由に加えてFRは他の駆動方式と比べて構造がシンプルでメンテナンスもしやすいという点もあった事から、FRセダンは完全屋内型の箱型乗用車の歴史でも早い段階に登場し現在でも世界中の高級車の主流であり続けている。
もっともFF車ベースのタクシー車両も全くなかったわけではなく、1980年代前半からマツダのカペラ(GC型~GD型)、三菱自動車のギャランΣ(E13A型)、いすゞのアスカ(JJ510型)などのタクシー仕様車も開発された。
現在は日産NV200(M20型)をはじめ、シエンタやプリウス、プレミオ、アリオン、カムリなどがタクシー用に改造され、全国で稼働している。
コンフォートシリーズとの比較
- ハイブリッド化によって燃費が向上し、高速域では回生ブレーキによって減速できるためブレーキパッドの交換サイクルが伸びた。
- しかしガスボンベのサイズがコンフォート系の半分強となり、夏場などは1回の出庫で2回ガススタンドへ入る必要が生じることもある。
- FRからFFになったことで後部座席足元のスペースが広がった。またスーツケースもサイズによっては後部座席に置けるようになった。
- 塗装がカタログ掲載の深藍、黒、スーパーホワイトの3色のみとなりコンフォート系のようなカラフルな指定色での注文に原則応じなくなった。しかし名鉄交通やヤサカタクシー、両備グループ、グリーンキャブなど一部事業者では自社の整備工場や提携している板金工場の手で自社オリジナルカラーへ全塗装を行っていることがある。