テング(カクレンジャー)
げんだいのてんぐ
「世界一強い妖怪」を自称する、本作の妖怪の一体。作中において、ユガミ博士と共謀し悪事を働いた最初の妖怪でもある。
原典となった「天狗」は、今も昔も威張ったり得意になると鼻が伸びる点こそ変わらないが、現代においては鼻ピアスを付け、帽子を被ったりしているとされ、服装も原典に見られるような山伏姿ではなく、筋骨隆々な上半身を露出させて下に青いジーンズという、如何にも洋画に出て来そうな屈強な出で立ちをしている。前述の帽子も頭巾から、西洋じみたアウトローを意識してかギャングハットに改めていたりと、徹底的に現代化されているのが特徴である。
その一方で、原点に準じて赤い団扇を所有しており、人間を操る妖術や両目からの光線といった技を行使する。
天狗なだけあって自尊心が高く、作中でも妖怪世界の雑誌と思しき『週刊妖怪』の「強い妖怪ベスト10」にランクインしながらも、常に3位以上にはなれず不満を抱いており、このことが作中における悪事へと繋がることとなる。
前述の不満を晴らすべく、ユガミ博士と結託してカクレンジャーを打倒し、前出のランキングにてベスト1となることを狙うテングは、ピエロに扮したドロドロに子供達を黒い玉へと取り込ませ、さらにはとある街の住民を妖術で支配下に置くなど、着々と野望達成に向けた準備を進めていた。
そして目論見通り、件の街へと差し掛かったカクレンジャーは、住民等の襲撃に遭って逃走を余儀なくされたばかりでなく、街での異変を彼らに知らせてきた正夫少年をドロドロ達に拉致され、その後を追った先で待ち受けていたテングやユガミ博士と遭遇するに至る。
正夫も含めた子供達が閉じ込められた黒い玉は、ユガミ博士の発明である「妖怪レプリカ」の触媒とも言うべきものであり、博士のかけた薬品によって黒い玉はかつてカクレンジャーが退治した妖怪達(※)の姿へと変貌。これに立ち向かったカクレンジャーを増加された武装などで圧倒してみせた。
無論テングもただこれを傍観するだけに終わらず、妖怪レプリカ達と共に巨大化を果たすと、カクレンジャーが召喚した巨大獣将と戦火を交え、彼等が優勢に立ちかけたところで、妖怪レプリカを倒せば中に入っている子供達も命を落とすというカラクリを明かしてみせることで、手出しが出来なくなった巨大獣将達を一転して痛めつけ、遂には変化さえも解除させるまでに追い詰めた。
・・・が、満身創痍になりながらも、子供達を救うべくなおも立ち上がったカクレンジャーは、奥の手としてドロンチェンジャーのメダルを使い、5体の獣将ファイターを召喚。さらに再度変化して巨大獣将を召喚することで、テング達は総勢10体もの敵へと立ち向かう羽目に陥ってしまう。
素早い動きを武器とする獣将ファイターに、今度はテング達が一方的に翻弄される有様であり、彼等によって再び劣勢に立たされたところで追い打ちをかけるかの如く、獣将達も無敵将軍へと合体。単身これに向かっていったテングは火炎将軍剣の一閃によって自慢の鼻を斬られてしまい、「ベスト1の妖怪になりたかったのにぃ・・・!」と断末魔を残して爆散。
テングの敗北と同時に妖怪レプリカも消滅し、取り込まれた正夫達も無事救われたのであった。
デザインは岡本英郎が担当。本作において岡本が最初にデザインした妖怪であったことから、当初は感じが掴めず試行錯誤を繰り返したことを後年のインタビューにて述懐している。またシナリオの内容に即しつつも、企画者104の葛西おとからの「体がねじくれてるデザインにして」との注文に応える形でその要素を盛り込んでおり、同時に身体や左足に巻き付いている鎖については、「アメリカンな妖怪」というコンセプトから、当時流行していたロード・ウォリアーズなどのテイストを含めたものとなっている。
デザイン画稿では右腕は銃のような武器と一体化した形となっているが、これについては後にオミットされており、それに代わって帽子を被るスタイルへと変更された。
テングが登場した同話数の巨大戦については、『ジェットマン』や『ジュウレンジャー』などでも見られたロケ撮影でのそれとなっているが、当時助監督として本作に参加していた竹本昇はこれについて、前出の他作品でのロケ撮影が画と空気感を重視してのものであったのに対し、同話数でのそれはとにかく人数が多いという問題によるものであったことを後に語っている。
またこの巨大戦のロケ地には、『仮面ライダーBLACK RX』にて10人ライダーの特訓の舞台ともなった「アリゾナの荒野」こと、茨城県つくば市の荒れ地が使用されているという。