「百の術を操る私だ……お前達に勝ち目は無い!」
データ
概要
第十七幕「寿司侍」に登場するアヤカシで、妖怪『天狗』伝承のルーツとされる。
天狗の葉団扇を仮面の様に被った狐を思わせる顔つきをしており、両肩には翼を広げた烏の意匠が見受けられる。また腰と両の一の腕には触手状の垂れた装飾があり、両の二の腕と両大腿部には紫色の雲のような飾りがある。
ちなみに先述した葉団扇の意匠は自身の武器である「天為葉扇剣(てんいようせんけん)」の柄にも見られ、葉団扇の中央からそのまま刃が伸びた形状となっている。
アヤカシの妖術使いの一人であり、アヤカシの妖術について三途の川でも最も長けている存在だとされている。本人も「百の術を操る」と豪語しており、自身の妖術に絶対の自信を持っている。
加えて、アヤカシにしては理知的で幹部に対しても従順であり、その為に骨のシタリなどからも信頼されており、彼等から封印の文字の情報を伝えられた数少ないアヤカシの一体である。
大風を起こす「狐つむじの術」や相手の大技をやり返す「狐技返しの術」、自分が見た敵の攻撃をそっくりそのまま真似て繰り出す「真似狐」、更に無数の火の玉を飛ばす「狐火の術」や睨んだ先を爆破させる「狐つぶて」の術、そして大量の烏を放つ「ヤタガラスの術」、姿を眩ませる「狐隠れの術」と多芸な術を披露。どれも強力な上に対処しにくく、イサギツネ自身もそうした術を好んで積極的に多用する。
特に「狐隠れの術」に関しては、アヤカシ特有の気配や殺気すらも隠してしまう為、こういった気配に特に敏感な志葉丈瑠や、気配に対して回を追う毎に鋭敏になっていた他の家臣達ですら気付けない程の隠密性を持つ。
また、戦闘以外でも術を使い「鏡映しの術」で目当ての者の秘密を探る為、情報戦でも手強い。
劇中では、こうした術の数々を駆使して封印の文字の情報を探ると同時に、シンケンジャーを完封する程の実力を見せつけた…新たな戦士が参戦するまでは。
劇中での活躍
血祭ドウコクにとって、最大の脅威である封印の文字を探ろうと目論む骨のシタリの依頼を受け、イサギツネは「鏡写映しの術」によって志葉丈瑠を監視する。
一方の丈瑠は、今日折しも何者かによって屋敷に撃ち込まれた「近日見参」という矢文の事もあり、かなり神経質になっていた。
後日、矢文を撃ち込んだ犯人を捜していた丈瑠を除くシンケンジャーの四人は謎の寿司屋と遭遇。真意を問い質そうとするも、特製ワサビ入りの寿司を食わされて悶絶した所を逃げられてしまう。
そんな中、丈瑠は屋敷に書き置きを残し、単身「清浄之谷」へと赴いていた。そんな彼の事を、鏡を通して監視するイサギツネの元にシタリが現れ近況を尋ねる。「はっ!中々敏感な奴故、手間取りましたが、我が術中に在る者……私の目から逃げる事はできません」と答えると、対するシタリは「頼むよ……?奴が使うという、血祭ドウコクを封印するという文字!!それを知りたい…… 妖術使いのお前さんにはピッタリの仕事だ」と返す。
監視を継続する様に念を押されるイサギツネだが、当人は張り切って「お任せを… 奴め、人気の無い所へ来た所を見ると、稽古でもする心算やも知れませんな 封印の文字の……」と答えながら、モヂカラを行使しようとする丈瑠の様子を期待しながら見つめる。シタリもそれは同じだった。
しかし、実際に丈瑠が書いたのは「煙」の文字。あっと言う間に煙が立ち込めて視界がホワイトアウトしてしまう。「どうしたんだい?見えないじゃないか!」と文句を言われて焦るイサギツネだが、煙が晴れた時には既に丈瑠の姿は無い。ターゲットを見失った事でシタリから続け様に「…お前さんの妖術は絶対じゃなかったのかい?」と嫌味を言われ、プライドを傷付けられたイサギツネは不機嫌となり、「確かめて参ります!」と荒々しい足取りで出掛けて行く。
清浄之谷に赴いたイサギツネは先程まで丈瑠が立っていた祠の前に来ると、「この鏡映しの術が破れるはずが……!?」とぼやきながら鏡を見つめる。
すると不意に獅子折神が現れて鏡を掠め取った。咄嗟の出来事に呆気に取られるイサギツネだったが、更に泉の中からシンケンレッドが出現して斬り掛かる。不意を突かれて地面に転がるイサギツネが相手の名を叫ぶと、レッドは「覗きとは良い趣味だな」と返すだけ。
実は前日から自身を監視するイサギツネの気配に気づいていて、その存在を燻り出す為の策を張っていたのだ(切っ掛けは昨日湯船に頭まで浸かっていた時、水に潜っていると気配が弱まる事に気付いた事)。
そこへ池波流ノ介と共に駆け付けた白石茉子も駆け付け、アヤカシは三途の川の穢れた水から生まれた存在であり、そしてこの世の穢れていない水と三途の川の水は決して相容れない水と油のような関係で、それ故に「アヤカシの使う妖術はこの世の水の中ではその効力は弱まる」という、自身のアヤカシとしての特性を逆手に取られた事を明かされる。そのまま間抜けにも引きずり出された事に気付いたイサギツネだが後の祭り。丈瑠が神聖な泉のあるこの清浄之谷に赴いたのも、ここの水はアヤカシの妖術を遮断する効果がより高いからだった。
さらに結界が張られていた屋敷で丈瑠を監視出来た秘密も、丈瑠が手鏡を真っ二つに斬った事で彼の頭髪を通じて術で監視していた事が分かった。これも最初に五十八番の隙間センサーを故意に鳴らして五人を誘き出し、姿を消して丈瑠に忍び寄り、彼の髪を数本採取する事で術を施したのである(上記した通り、彼の「狐隠れの術」の隠密性は非常に高く、髪を採取された時にも丈瑠は嫌な感じの一陣の風が吹いた程度にしか感じていなかった)。
目的をシンケンジャーの撃破に切り替えたイサギツネは、「もう良い!私の術を味わえ!」と叫んで「狐つむじの術」を繰り出し実力行使に移行。術を喰らって三人での戦いを不利と見たシンケンピンクは、ショドウフォンで寿司屋を追う谷千明と花織ことはに援軍を頼むと、尚もイサギツネに立ち向かって行く。
多彩な妖術に苦戦するも、「狐火の術」や「狐つぶての術」に慣れて来たレッドはイサギツネに突撃を敢行。しかし、長い間彼の術の影響下にあった事で心身を消耗していた為、眩暈を起こしてその場に倒れてしまう。そんなレッドにトドメを刺そうとするイサギツネだったが、駆け付けたシンケングリーンとシンケンイエローに阻まれる。
そして五人揃って反撃に出るシンケンジャーは、五人の技ディスクをシンケンマルに装着し、火炎の舞、水流の舞、天空の舞、木枯の舞、土煙の舞を一斉に放つ「五重の太刀」をイサギツネに見舞うが、すかさず「キツネ技返し」を使って五重の太刀の攻撃を吸収して、シンケンジャーの背後から吸収した五重の太刀を飛ばして直撃させ、追撃とばかりに「真似狐」により「天為葉扇剣」の一振りで五重の太刀を繰り出した為、五人は自らの必殺技の威力をモロに浴びる事となり、そのダメージで変身が解除されてしまう。
絶体絶命の大ピンチに陥る五人に対して上記の台詞と共に勝ち誇り、高笑いするイサギツネは「さて、次はどの術を味わってもらおうか…?」と止めを刺そうとするが、するとそこへ突然「おてもと」型の爆弾が数本飛んで来て爆発し、
「待て待て待て~い!!よっ!危なかったなぁ、お前ら!外道衆!俺が相手してやる!」
大見得を切りながら件の寿司屋…梅盛源太が参上。
イサギツネは事態が呑み込めず困惑するばかりであり、それは五人も同様だった。
「近・日・見・参つったろ〜?こういう場面を待ってたんだよこういうの!」
「黙って見てろって!スシチェンジャー!寿司ディスク!」
「いらっしゃい〜!」
「一貫献上!俺が六人目のシンケンジャー、シンケン…ゴールドだ!!」
唖然とする五人とイサギツネの前で源太は未知の侍、シンケンゴールドに変身。
「聞いてないぞ!シンケンジャーに六人目とは!」
しかし、ゴールドの独特なサカナマルの構えを見て、勝てると踏んだのか、「なんと卑しい構えよ……貴様にはこいつ等が似合いだ ナナシ連中、出あえ!」と叫んでナナシ連中を繰り出す。しかしゴールドの、我流とはいえ見事な居合いで一掃される。仕方なく自ら倒しにかかり、今度は大量のカラスを放つ「ヤタガラスの術」で攻撃するも、レッドの加勢もあって凌ぎ斬られ、そのままゴールドからサカナマル百枚おろしを喰らって倒される。
その直後、「貴様等、よくも~!」と叫びながら二の目となって巨大化。
再び狐隠れの術で透明になり、テンクウシンケンオーを一方的に攻撃するが、ゴールドが召喚した烏賊折神の烏賊墨砲で、物理的に姿を炙り出されたところにダイシンケン・天空唐竹割りを喰らい、「無念…」と言い遺しながら爆散した。
訳も分からぬまま突如出現した寿司屋の源太。その素性を問い質そうとする四人だが、烏賊折神を見て丈瑠は相手が何者か思い出し、「お前…源太か?」と尋ねた。すると源太も「久し振りだなぁ!丈ちゃ~ん!」と駆け寄る。怒涛の急展開に五人はそのまま唖然となるばかりであった。
イサギツネが倒された次回、彼の昔馴染みが仇討ちに登場する事となる。
余談
『百化繚乱[下之巻]』にて、デザイナーの篠原保氏は「『術使い』という要素で天狗をモチーフにし、『イカ(烏賊折神)の天敵はカラス』という言葉遊びで烏天狗を選び、『天狗』は『あまぎつね』とも読む為にキツネのイメージを顔に入れ、更に面は葉扇子の形状にし、比較的ストレートな妖怪っぽい構成になっている」とコメントしている。
現代の伝承では『天狗』は数々の不思議な術を操り、手に葉団扇を携えた鼻の長い修経者の姿を持つ妖怪であるらしく、シンケンジャー世界ではイサギツネの容姿と武器と百の妖術を操る様がそのルーツとされている。一方で、『鴉天狗』に関しては大空ナナシ連中の方がそれに近い容姿をしており、彼等とイサギツネの目撃談が混合した結果、同じ種類の妖怪として伝承が生まれたのではないかと考察されている。
スーツは後にデメバクトに改造された(その為に、足はリペイントになっているのが分かる)。
声を演じた沢木氏は『救急戦隊ゴーゴーファイブ』で暗黒魔剣サイマ獣ソルゴイルを演じて以来、10年振りのスーパー戦隊シリーズ出演となる。続く翌年の『天装戦隊ゴセイジャー』ではナレーションとしてレギュラー出演しており、変身アイテムの音声やゴセイジャー達の上官に当たるマスターヘッドの声も担当している。
関連項目
侍戦隊シンケンジャー 外道衆 アヤカシ(シンケンジャー) 天狗 狐
ヒャクヤッパ:仲の良い昔馴染み。
テングモズー:『大戦隊ゴーグルファイブ』に登場した先輩。暗黒科学帝国デスダークがどのような経緯で遺伝子を手に入れていたかは不明。
テング(カクレンジャー):『忍者戦隊カクレンジャー』に登場した先輩。
妖怪テング:『手裏剣戦隊ニンニンジャー』に登場した後輩。
ボウリンゲン:『動物戦隊ジュウオウジャー』に登場した怪人。次作のナレーション&変身アイテム音声の担当声優が演じる点が共通する。
天狗のヒッ斗:次回作に登場する天狗繋がりの怪人。イサギツネ同様に同作の世界における天狗の伝承のルーツとされている存在である。
テング(魔化魍):『仮面ライダー響鬼』に登場する、天狗繋がりのライダー怪人。