※この記事には、『トロピカル〜ジュ!プリキュア』第37話で起こった事件のあらまし、および関連したその後の展開が正確に記載されています。本編未視聴者は、ネタバレ注意。
概要
『トロピカル〜ジュ!プリキュア』第37話に判明するグランオーシャンの衝撃の事実。
人魚の女王・メルジーヌと謁見したプリキュアたちは、あとまわしの魔女たちが「愚者の棺」の開放を狙っていることを教えられる。
愚者の棺は人魚族に伝わる秘宝。やる気パワーが満たされることで開かれ、不老不死の力が与えられるのだという。
プリキュア達は魔女の野望を阻止すべく動き出すことになる。
しかし、これで話は終わらなかった。
ローラは同話において、王城の地下の隠し部屋で「記憶を吸い取る装置」と「何者かの記憶を封じた貝」を見つけていた。
そして、その貝の記憶データを見てしまったローラは、敬愛していた女王に不信を抱いてしまっていた。
ローラは女王にこの貝を見せつけ問い正す。
「待って、女王様。もう一つ、話してない事がない?」
「気付いてしまったのですね、ローラ…」
明かされる二人の知られざる過去
ローラが見つけた貝に封印されていた記憶データ。
そこには幼い頃のローラの記憶が封じられていた。
昔、ローラは『人間の世界に行ってはならない』という女王の言いつけを無視して南乃島にこっそり遊びに行った。
南乃島のビーチに辿り着き、綺麗な花を見つけて喜んでいると、人間の女の子と出会った。
その子はやけに人なつっこい性格で、ローラに対して興味津々で色々と聞いてくる。人間に人魚であることがばれたらまずいとローラは海から上がろうとせず、「海の中が好きなの」と誤魔化して会話を続けたため人魚とはばれずに済んだ。
その子から、ローラが綺麗だと思ってた花はグンバイヒルガオだと教えられ、お揃いの髪飾りにしたりして、二人は楽しいひと時を過ごした。
そして夕方になり、人間の女の子は「明日はグンバイヒルガオの花の冠を作ってあげる」と約束したのだが、二人は二度と会うことはなかった。
その人間の女の子は、せっかくできた新しいお友達と会えなくなったことで泣きながら家に帰る。
そして何より悲しかったのは、新しいお友達に自分の名前を言わなかったし、新しいお友達の名前も聞かなかったので、どこの誰かを互いがわかっていないまま別れてしまったことだ。
泣きじゃくる女の子に事情を聞いた父は「これからは後悔しないようにな。その時感じた一番大事な事をやるんだ」と慰める。それがこの女の子の原点となった。
「だから、わたしは決めたんだ。初めて会った人には最初に名前を聞こうって。いつでも今一番大事な事をやろうって」
そう、その人間の女の子こそが、幼い頃の夏海まなつであった。
まなつとローラは一話以前から出会っていたのだ。
まなつはあのときの「新しいお友達」は、てっきり島の外から遊びに来た子だと思い込んでいたため、今のローラと結びつけることがなかったのだが、問題は今のローラが「幼い頃に人間の子と出会った記憶なんて全くない」ということであった。
そして、自分の知らない自分の姿を封じた記憶データが保存されていた。
ここまでくればローラは「幼い頃に自分の記憶が奪った黒幕が自分の敬愛する女王様なのではないか」と気付き……。
明かされた真実
問い詰められた女王は、観念したようにローラに真実を語った。
グランオーシャンでは『人間の世界に行ってはならない』という掟があることは周知なのだが、それでもローラのように地上に興味をもって人間と関わってしまう人魚は必ず出てくる。
そのような人魚たちに対しては、人間と関わった記憶を吸い取り貝に封印することで、本人からはその記憶を忘却させるという処置を秘密裏に行っているのだという。
記憶を奪われた人魚達はその事実自体に気付くことができない。大切な絆や思い出が奪われていたとしても、それを悲しむことさえできないのだ。
女王曰く「人魚の世界と人間の世界は互いに関わってはならない。その古来からの掟はローラが女王になっても変えることはできない」と。
だが、本作におけるプリキュアとは人間が人魚と心を通じ合わせたときに生まれる伝説の戦士である。
いくら国を救うためとはいえ、プリキュアを探すためにローラを地上に送り込んだのは、女王が自ら掟を破ったことになる。
緊急事態だから、掟破りを辞さないと女王が考えた……のであればいくらか救いはあっただろう。
しかし現実は非情であった。女王にとって、この掟は絶対であったのだ。
ゆえに、すべての戦いが終わった後に、ローラからまなつ達に関する一切の記憶を消し、そして女王自身も責任をとるために一連の記憶を消すつもりなのだという。
これは決まりなのだから分かってくれとローラに理解を求める女王だが、ローラは「そんなの絶対に嫌!」と拒否の姿勢を崩さない。
その直後、地上にヤラネーダが現れたことでプリキュアたちは急いで地上に戻ることになり、ローラと女王との間の意見の相違は埋まることなくグランオーシャンから去ったのだった。
視聴者からの反応
ローラがいつも自慢気に語る美しく素晴らしいグランオーシャンが不都合な事を国民の記憶から消すことで成り立っているというのは多くの視聴者にとって予想外であったようで「グランオーシャンの闇」などと揶揄されている。
そしてこの話の最も大きなポイントは、第一話で女王がローラに「人間と関わるように」とけしかけてるのにそれを罪業とみなして最後に処罰のように記憶を消そうとしていることである。
このことには視聴者が少なからずショックを受けたが、女王はこれを悪意をもってやっているわけではないのは確かである。
その後の第43話では、女王はローラに対して「あなたもいずれ、わかる時が来るでしょう。自らその記憶を消してしまいたいと思う日が……」と発言している。ローラはそんなことを思う日は絶対に来ないと反論するが、女王は悲しげな表情で首を振るのであった。
なお、本話放映当時に一之瀬みのりの誕生日記念エンドカードがあったが、重たい雰囲気のお祝いとなった。
その後
今までローラ自身が引きずるような過去はないものの、グランオーシャンの掟によりいずれはまなつ達と過ごした日々の記憶を消さなければならない運命を知ってしまい、その事に思い悩む様子も見られるようになった。
第42話では「自分が女王になればこんな掟なんて撤廃する」とまなつに言い切っていたが、現女王のメルジーヌがこれは女王でも変えてはいけないときっぱり発言していたことから、そう簡単なことではなさそうだとも理解している。
そしてローラは「もし掟が絶対だと言うのなら、わたしは…」と何かの決意を固めていた。
ローラの選択
第45話で、あとまわしの魔女たちとの最終決戦が終結。
グランオーシャンも人間界も救われ、まなつ達はトロピカ卒業フェスティバルの準備をする日常に戻る。
そしてトロフェス前日の夜。人魚の女王から連絡がくる。
国を救った功績としてローラを新たなる女王に任命すると言うのだ。
これからローラに色々と専門的な教育を施さねばならないので、明日中にはグランオーシャンに帰還するようにと命じる。
明日というのはいきなりすぎると困惑するローラだが、最終決戦で元の海流から飛び出して海上まで移動してきたグランオーシャンは、これからは新しい海へと旅立つのだという。
だから、明日まで戻ってこないと、ローラが帰らぬままにグランオーシャンへ旅立ってしまいもうグランオーシャンがどこにあるかわからなくなるのだ。
一度グランオーシャンに帰ってから、後でまた地上へ遊びに行けばいい… 少し前のローラならそう考えただろう。しかし、「全てが終わった後にローラの記憶を消す」と言われている以上、このまま帰還することは躊躇がある。
ただ、女王はローラが地上に思いを残していることを知っていたので、女王の座を辞退して地上に留まるのも構わないと言った。
もしローラはこの選択をするなら、ローラは二度と故郷に帰れなくなってしまう。人魚の国と関係を切り離されたローラはただの人間として生きることになり、記憶も消されることはなくなる。ずっとまなつ達と一緒にいられるのだ。
故郷へ帰るべきか、帰らざるべきか、ローラに選択が迫られていた。
そしてこの女王との会話はまなつに聞かれてしまう。
そして最終話にあたる第46話。
トロピカ卒業フェスティバルの当日、ローラは仲間たちには黙って別れようとしていたようだが、まなつのうっかり(?)でこのことがトロピカる部のメンバー全員に知れ渡る。
観念したローラは、トロフェスで行う演劇の結末を「お姫様が故郷に帰る」という形に変えたいと皆に提案する。それは、自分がトロフェスが終わればグランオーシャンに帰還するつもりだという決意の表明であった。
仲間たちはローラの選択を尊重し、トロフェスでの演劇を最高の形で成功させようと頑張るが、なんとフィナーレでローラは自分が人魚の女王候補であり故郷に戻るということを全校生徒の前で宣言し、人魚の姿に戻って自分の正体をバラすという暴挙に出る。
これはローラが地上を気に入ったからこそ、嘘をつきたくないという覚悟の表れでもあった。
そして、あおぞら中学校のみんなはローラという個人に好意を持ってくれていたので、驚きはしても恐れたりはせず、むしろ大フィーバーであった。
かの掟ができる前は、人間と人魚の関係性はもっと身近だったという。今、この瞬間、それが取り戻されたのだ。
そしてこの日の夕方、ローラは仲間たちの前で女王から聞かされていた掟の存在理由について語る。
掟の存在理由
「人魚の一生は長いんだって、女王様が言ってた…
わたしが女王になって長い時間が経って、その頃にはまなつ達はもういなくなってる…
わたしは海の中で一人…
大昔、人間と関わった人魚が淋しさから記憶を消す道具を作ったんだって…」
人魚は人間よりはるかに長生きだ。人間と仲良くなった人魚は必ず人間に先立たれ、残された長い人生を悲しみに沈んだまま過ごすことになる。
かつてグランオーシャンでは、そうして心を壊していった不幸な人魚たちが幾人もいたらしい。
そんな悲劇を繰り返さないために、グランオーシャンはある時から人魚が人間と関わることを禁じ、それでも人間と関わった人魚たちにはその記憶を抽出して忘却させることにしたのだ。
これはグランオーシャンなりに人魚たちのことを思っての行為である。
最終話直前でのあとまわしの魔女との最終決戦においては、世界を滅ぼそうとした魔女の蛮行は親しくなった人間に先立たれたことがきっかけであることが明かされており、この掟の存在意義が間接的に示されている(尤も「人魚を守るために掟がある」はずがいつしか「掟を守るために掟がある」状態になってしまっているのはブラック校則に近いものがあるが…)。
結末
メルジーヌ女王は、次期女王の権利を捨てて記憶を保ったまま人間界にいても構わないと言った。
だが、故郷も夢も捨てて掟の対象外になる道をローラは選ぶ事はできなかった。
それでも、自分が地上でまなつたち人間と友情を育んだという事実をなかったことにはさせない。
だからローラは、仲間達と約束をする。
ローラ「まなつ、さんご、みのり、あすか…わたしのこと、忘れない?」
あすか「ああ!」
さんご「絶対に!」
みのり「忘れない」
まなつ「一生覚えてる!」
大切な約束を胸に、ローラはグランオーシャンへ帰っていった。
そして翌朝。
まなつは食卓で母と二人で朝食を食べながらつぶやく。
「…うち、もう一人誰かいなかった?」
きょとんとする母。まなつもそのまま気にせずに朝食をほうばる。
あれだけの約束をしながら、まなつはローラのことを忘却してしまった。
それどころか、ローラが地上に残していた持ち物も全て消えており、一緒に撮った写真までもローラだけ消えていた。ローラが人間と関わった痕跡そのものが徹底的に消失されたのだ。決して、まなつがローラのことを思い出すことがないように…。
そう、例の記憶消去装置は人魚だけでなく、人魚に関わった人間達にも作用する恐るべきものだったのだ。
人魚だけが記憶を忘れて人間だけ取り残されるのは不憫だからという理由で、人間側の記憶も消されるようにしたのであろうが、少なくない視聴者がこれは残酷な仕打ちだと感じたであろう。
実は第43話ですでにローラはまなつ達の記憶も消される可能性を危惧していてメルジーヌ女王を問い詰めていたのだが、メルジーヌ女王は沈黙を貫いていた。
だからローラは半ばこの結末を予想していたのだが、それでもわずかな希望を信じて、まなつ達に「わたしのことを忘れないで」と約束をしたのだ。
そんなローラの希望は見事に打ち砕かれたことになる。
だがローラがそれを悲しむことはない。なぜなら、ローラも地上での記憶を奪われたからだ。
そして、“グランオーシャンの海の妖精”で掟の対象であるくるるんも…。
こうして、人魚と人間の誰もが別れの悲しみで苦しむことがない、幸せな結末が迎えられたのである。
「その後」のその先へ
ある日のこと。まなつが浜辺の近くを散歩してると、なんと人魚を目撃する。
まなつは大興奮していつものノリでコミュニケーションを取ろうとする。
「すごい!人魚ってほんとにいたんだ!わたしの名前は…!」
だが、自己紹介する前に人魚がそれを制する。
「あなたはわたしを知らないのね。なら、わたしが探してる人間ではないわ」
そう、この人魚こそローラである。
次期女王としてグランオーシャンで真面目に勉強に取り組む日々を過ごしていたローラはある日、自室で自分の筆跡で書かれていた不思議な落書きを見つけた。そこには『魔女の所へ』と書かれていた。
ローラは落書きに従い、あとまわしの魔女の元召使たちに接触してみたのだが、すると彼らから「記憶を失う前にプリキュアであった自分」のことを教えられたのだ。実は記憶を失う前にもローラは魔女の元召使たちに接触しており、そこで「人魚でも海の妖精でも人間でもないあなたたちには記憶消去装置は干渉できない。だから、記憶を消された自分がやってきたなら今までのことを教えて欲しい」と頼んでいたのだ。
そしてローラは自分が人間の女の子と友達になり共にプリキュアとして戦っていたことを聞かされる。しかし魔女の元召使たちはプリキュアたちの変身前の名前を知らないので、その人間の友達があおぞら市にいたこと以上の情報を掴めなかった。
自分の記憶が実は消されているということは俄には信じがたかったローラだが、真実を確かめるために地上に赴くことを決意。
そしてあおぞら市の浜辺までやってきた早々に、目当てのまなつと遭遇できたのだが、互いに記憶を消されているので、双方ともに運命の相手と気付けなかったのだ。
そもそも今のローラは自分の記憶が消されていると聞かされただけで、友達になった人間の記憶も消されているという発想がないので、自分のことを知らないまなつを無関係の人間と見なしてしまったのだ。
一方、まなつはそんなローラの事情など知るよしもなく、「友達を探してるの? じゃあわたしと同じだね」と答える。
ローラが消えた翌朝、まなつは誰かが他に家にいた気がすると語っていた。記憶消去は完璧に機能していたが、それでも拭えない喪失感のようなものがまなつにはずっと残されていたのだ。
だが、まなつはその「誰か」がまさか人魚という発想はないので、目の前にいるローラが自分とかつて知り合っていたとは思いもよらなかった。
第一話でまなつとローラがであった時に互いに初対面だと思い込んでいたのと同じことが今まさに繰り返されているのだ。
まなつは「手がかりとかあるの?」とフランクに尋ねる。ローラはこの子が何か知っているならと、一つのリップを見せる。
これはローラがふと気づくと持っていたもの。自分がなんでこんなものを持っているか不思議でしょうがなかったのだが、記憶が消されたというならそれに関係するものだと踏んでいたのだ。
それを見たまなつは開口一番、
「あっ!わたしのリップ!なんでローラが持ってるの!?」
まだ聞いてない人魚の名前を反射的に口にしてしまい、戸惑うまなつ。
だがもっと驚いたのはローラだ。
「なんでまなつがわたしの名前を知ってんのよ!」
と問い詰めようとするが、ローラもまだ聞いていない人間の名前を口にしてしまった。
消されたはずの二人の記憶の一部が思い起こされたことがきっかけになったのか、グランオーシャンで記憶消去装置が不具合を起こしてしまい、その影響で今までマーメイドアクアポットで撮影したシャボンピクチャーのデータが復活。
大量のシャボンピクチャーがアクアポッドから漏れ出るように飛び出してきて、ローラとまなつの前に浮遊する。そこに写っていたのはローラとまなつの、トロピカる部のみんなとの思い出の数々だった。
それを目にしたまなつとローラの記憶は完全に蘇る。二人は手と手を合わせて、最高の笑顔で「トロピカってる~!!」と声を合わせて叫んだのだった。
装置の故障によって他の人間たちの記憶も戻ったようで、その後のエンディングではローラがトロピカる部のメンツと再会した様子が描かれている。
同じくエンディングでは、グランオーシャンで他の人魚に人間について講義するローラの姿も描かれている。装置が稼働しなくなったのでメルジーヌ女王も諦めたのか、この掟は撤廃かある程度の緩和かがされたようだ。
もしかすると、メルジーヌ女王も本心ではこの掟を撤廃する大義名分を求めていたのかも知れない。もしそうなら、「事故」の形で装置が壊れたのは渡りに船だったと言えるだろう。
これから人魚と人間がどのような関係を築いていくのか。
それは視聴者の想像に任せるという形で、本作は幕を閉じる。
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トゥインクルイマジネーション:前々作の女王達がやらかした黒い所業。こっちはグランオーシャンのそれとは違い彼女達の失態がスタプリの騒動の根本原因な上に、その対策も些か自分達本位でプリキュア達と親しくなった妖精を爆弾扱いしろという精神的な無茶ぶりもやらかした為、視聴者からドン引きされてしまった。