概要
この記事は多大なネタバレを含みます。未試聴の方は注意。 |
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『トロピカル〜ジュ!プリキュア』における敵対勢力。
今作においては組織名はなく、公式サイトでも「あとまわしの魔女たち」と表記されている。
暗い海底に建つ屋敷を拠点としている。
本編開始前の時点で人魚の国・グランオーシャンに攻め込んでおり、そこの住人達の「やる気パワー」を略奪し、今度は人間達のやる気パワーを奪うべく地上を狙っている。
奪ったやる気パワーはあとまわしの魔女の部屋にある球体型の器に溜まっていき、その器がやる気パワーで満たされた時、『愚者の棺』が解放され、その力で魔女が望む「あとまわしで満ちた世界」が成就するとされる。やる気パワーについてはプリキュアも餌食になると変身解除されてしまうため、プリキュアシリーズでは珍しいエナジードレインの描写がある。
構成員は海生生物をモチーフとしており、人間からかけ離れた外見をしている。メンバーに二足二腕の人間型のメンバーが存在しない敵組織はシリーズ初。
個々の構成員は本人が名乗らなかったのもあり、プリキュアから名前で呼ばれず「あとまわしの魔女の召使い」と呼ばれる。
構成員
上層部
あとまわしの魔女(声:五十嵐麗) |
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海底の支配者。元々は破壊を目的に生まれた「破壊の魔女」。第44話で因縁のキュアオアシスと和解し、成仏した。 |
バトラー(声:小松史法) |
あとまわしの魔女に仕える執事。第44話で魔女の破壊の意思を継ぐが、最後は全てのやる気を失う。 |
召使い
あとまわしの魔女に仕える3人の召使いで、シリーズ恒例の三幹部的な存在。地上に出向く際には1人用の浮遊式小舟に乗って出撃する。
第10話からはゼンゼンヤラネーダ、第22話からはゼッタイヤラネーダ、第29話からは超ゼッタイヤラネーダを召喚するようになる。
チョンギーレ(声:白熊寛嗣) |
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あとまわしの魔女に仕えるシェフ。魔女に出す料理を作る。第43話でバトラーの真の目的を知って改心する。 |
ヌメリー(声:渡辺明乃) |
あとまわしの魔女に仕えるドクター。魔女の健康管理を担当。第45話でバトラーに反旗、改心する。 |
エルダ(声:高垣彩陽) |
あとまわしの魔女に仕えるメイド。主に留守番することが多い。第45話でバトラーに反旗、改心する。 |
怪物
ヤラネーダ(声:三日尻望) |
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あとまわしの魔女の召使いが使役する人間の「やる気パワー」を奪う能力を持つ怪物。プリキュアの個人技で浄化することが可能。 |
ゼンゼンヤラネーダ(声:三日尻望) |
第10話から登場。ヤラネーダより強力な怪物で、プリキュアの「やる気パワー」すら奪い、ミックストロピカルスタイルになった初期メンバーの浄化技レベルでないと退治できない。 |
ゼッタイヤラネーダ(声:三日尻望) |
第22話から登場。ゼンゼンヤラネーダより強力な怪物で、キュアラメールのシャボンフォームの浄化技レベルでないと退治できない。 |
超ゼッタイヤラネーダ(声:三日尻望) |
第29話から登場。ゼッタイヤラネーダより強力な怪物で、キュアラメールの浄化技も通用せずエクセレン・トロピカルスタイルになったプリキュア達の浄化技レベルでないと退治できない。生物を素体にすると更に強化する。 |
コワスンダー(声:三日尻望) |
回想シーン及び第45話で登場。かつて「破壊の魔女」が生み出したしもべ。やる気パワーを奪うヤラネーダと異なり、世界の破壊が目的。 |
やる気無き侵略者?
悪の組織としては極めて異例な「やる気のなさ」が特徴。
それは「侵略行為に後ろめたさを感じている」とかそう言う意味ではなく、単に「面倒くさくてかったるい」と言う怠惰な感情である。
当然ながら対峙するプリキュアに対しても、相手のやる気に満ちた姿に露骨に嫌悪感を抱いたりドン引きする他、最終決戦でもチョンギーレが「フン、オレたちゃ奪われる程のやる気パワーなんて最初から持ってねぇからな」と豪語する等、そのやる気のなさは筋金入り。
首領の「あとまわしの魔女」自体が、新たな脅威への対処も食事も後回しにしてしまう等(第1話)、かなり無気力な性格であり、それを取り巻く構成員も毎回ブツクサ文句を言いながら気怠そうに出撃する。
しかし、やる気がないからといってその仕事ぶりまで怠慢という訳ではない。出撃した以上は「ちゃっちゃと仕事を手早く効率的に終わらせよう」とのスタンスで戦う。
彼らがやる気パワーを奪いにやって来るのは、主に街や公園といった人々が多く集まる場所に出現することが多い。主な活動圏があおぞら市なのも、そこが館から最も近い都市だからに他ならない。
流石にあとまわしの魔女も痺れを切らしたようで、第16話にて遂に彼らはローラ狙いの作戦を決行した。普段のやる気のなさが、かえって彼等との戦いに慣れきってしまっていたプリキュアの油断を誘う結果となったと言える。
また、第27話でヌメリーが今までのやり方を省みて、プリキュア達に見つからないように緩やかに人間達からやる気パワーを収集する作戦も決行している(結局バレたが)。
このような面々で構成されている為、本編のストーリーが進んでも組織やキャラクターの変化がほとんどなく、強いて言えば怪物のヤラネーダの強化版が登場するくらいである。
これは本作のシリーズ構成を務める横谷昌宏の意向であり、彼は「 途中で敵のひとりが退場したり交代したりすると、やっぱり話が重くなる 」という理由で「 他のプリキュアシリーズにある『敵退場回』というのはあまりやりたくない 」と述べている(『Febri』のインタビュー記事にて)。
これは前作の敵組織とは対照的な要素である。
その為、当初から本編の途中で敵幹部が倒されたり、それに伴って敵の新幹部が登場するような展開はしない方向で作られており、彼らの邪悪さを薄くしつつ、今後のエピソードで見せ場を作る設計にしてあった模様。その結果敵組織の中では次回作のブンドル団同様に小規模の敵組織になった。(平成期に限ればバッドエンド王国が、半年限定も含めれば闇の魔法つかいが最小の敵組織になる)
怠惰なプロ達
魔女以外の構成員は「執事」「シェフ」「ドクター」「メイド」と言った役職を持っており、普段は「魔女の館の使用人」として日々を過ごしている。
バトラー以外の三幹部(チョンギーレ、ヌメリー、エルダ)は仕事に対する態度自体はあまりやる気をみせないが、だからといって手を抜いたりサボったりはせずキッチリと日々の業務をこなしている。彼らは自分がやるべき仕事は、やる気にならなくてもやらなくてはいけないというプロフェッショナルな意識の持ち主でもあるのだ。
なお、三幹部はあくまで「シェフ」「ドクター」「メイド」といった役職で魔女に仕えていると考えているので、地上侵略は本職以外の仕事を押し付けられているという感じが強く、それがやる気のなさに繋がっているようだ。魔女の野望も、魔女個人の好きにすればいいと考えている程。
構成員同士の仲は非常によく、仕事がない時にはテーブルを囲んで談笑するような関係である。お互いちょっとした愚痴こぼす程度で、歴代敵組織の幹部たちのように険悪なものではない。
そのため、他作品のように幹部連中に”力を蓄えて他の幹部や首領を出し抜こうとする”野心的な動向は皆無である。
ただ、彼らにも地上侵略を達成したときに得るものはあるらしく、第22話では「愚者の棺」が解放されれば自分たちの望みが叶うはずだということがエルダの口から語られている。
そして第37話にて、あとまわしの魔女の目的が「愚者の棺の力で不老不死になり、永遠のあとまわしを実現させること」だと判明した。一方、三幹部たちは「魔女様のおこぼれで自分たちも不老不死にしてもらえば、日々の労働に必死にならずとも安楽に生きていける」と、何とも俗っぽい夢を持っていることが発覚した。
アットホームな職場
今作の三幹部の仲の良さの関してはもはや家族と言っても良いレベルで、特に19話では行方不明になったエルダを探すためにヌメリーとチョンギーレが二人揃って出撃するという展開であり、プリキュアシリーズ史上でもあまり例のないことである。
続く20話ではチョンギーレのおやつのゼリーを「名前が書いて無かったから」と勝手に食べたあげく謝りもせず(しかもこのゼリーを作ったのもチョンギーレなのでは…?)、「あみだくじで決まった」と出撃をチョンギーレに押し付けるエルダとヌメリーの姿もあったが、これも決して嫌がらせのうような雰囲気ではなく、むしろ家族的な信頼関係の一部として描かれていた。
(一応チョンギーレの方はこの事を根に持っており、同じく第20話でプレミアムトロピカルメロンパンを巡る、トロピカる部メンバーの不和とその解消を目撃した際、「オレは許せねえな、おやつの方が大事だぜ!」と断言している。)
彼らの正体について
海洋生物をモチーフにしている今作の敵キャラ達であるのだが、劇中では主に冒頭や回想シーンにおいて、第1話ではチョンギーレ、第13話ではバトラーと同じ種族であるカニやタツノオトシゴ等の海底人が確認された。
単にあとまわしの魔女が、海洋生物をモチーフにして生み出した怪人の可能性もあるが、もしかしたら元海の妖精(元グランオーシャンの住人)なのでは…と予想されていた。
しかし、最終回のローラとの遣り取りから、彼等が「人魚でも海の妖精でもない存在」だと判明した上、彼等の他に深海魚が擬人化したような種族が多数確認された。単純にグランオーシャンの人魚とは異なる進化・文化に至ったマーフォークなのかも知れない。
オフィシャルコンプリートブックのキャストスペシャルメッセージにてエルダの過去について触れられ、エルダは子どもの期間がほかの生き物よりとても長い種族であると判明した。
彼らはやはりあとまわしの魔女の元に流れ着いた人類の見知らぬ種族なのだと思われる。
最終的な結末
各々の端的な結末は構成員の欄で紹介されている通りであるが、組織として一言で纏めると(ヤラネーダ等の怪物枠を除けば)首領以外全員生存エンド又はラスボス以外全員改心エンドである。次いでに両方ともプリキュアとしては初となる。
魔女が和解後に消滅し、バトラーが生ける屍と化している事態を思えば、シリーズ内で比較すると割とノーマルエンドである(ノットレイダーやクライアス社と比較すると大体そうだが)ものの……。
・唯一の死者であるあとまわしの魔女は、心残りが無くなった上で寿命により天へ還った
・バトラーが生ける屍と化したのは、あくまで自発的な行動によってやる気パワーを失った状態に過ぎない(=回復する見込みが大きい)
・プリキュアを援護する言動こそあったが、いわゆる光堕ちした幹部が居ない(決戦後の別れ際に一応、今までの行為の謝罪はしたが)
・ラスボスのバトラー以外の全構成員とは最終的に分かり合えた
……等の要素からプリキュアが直接致命的な損失を与えなかった組織とも見える(やる気パワーを取り戻して『愚者の棺』が爆発し、屋敷が崩壊する事態となった等の間接的な要因はある)。
また、多少の不和はありつつも裏切りや粛清等、身内の手によって構成員を失わなかったのも重なり、比較的原型のまま残った敵組織でもある。
その後は破壊された屋敷から幾分かの荷物を回収して、屋敷の跡地の近隣で暮らしているようである。
最終決戦後コワスンダーとの戦いによりチョンギーレは片目を負傷、ヌメリーは角が一本折れている。エルダは無傷。
尚、エンディングパートではチョンギーレやヌメリー、エルダの3人はそろって生き生きとした表情で仕事をしている風に見える為、今までの彼等の怠慢ぶりは仕事をしても無意味な日々を送っていたからかも知れない(エンディングパートでのチョンギーレの表情は「店を開いた所、思ったよりも繁盛し忙しくなってしまった……」と思っているようにも見えなくもないが)。
余談
OP映像では他の登場人物達と同じようにダンスを踊っており、割と楽しそうである。
敵幹部達が主題歌の映像中にダンスを踊るのはダークフォール以来15年ぶりである。
本作は日常パートが優先され、重要な情報が中々出てこない事実から、この組織になぞらえて良くも悪くもあとまわしと揶揄していた視聴者もいた。
放映終了後に刊行されたオフィシャルコンプリートブックによると、シリーズディレクターの土田豊は元々は怪物を召喚する悪役がいない形で進行させることを考えていたらしい。土田SDがモデルケースとして考えていたのは『カードキャプターさくら』の初期のノリであり(※)、悪意を持った侵略者と戦うのでははなく「現象としての災厄」を鎮めるような物語を想起していたとのこと。
(※土田SDの発言「初期はいわゆる悪役的な立場の存在がいなかったと記憶しているので、あんな感じにしたかったんですね」からすると、アニメ版でのクロウカード編第1期のことを指していると思われる。)
ところがシリーズ構成の横谷昌宏が「悪役がいないとドラマを作るのはちょっと難しいです」と懸念を示し、そこで悪役として考えられたのがあとまわしの魔女たちであったのだという。ただ、この初期案の名残もあって結果的に本作の敵はみんな巨悪という感じではなくなったということ。(ただ、一応はバトラーに相当するキャラを純粋に黒幕にする案もあったということ)
召使い達の立ち位置は土田SDの意向が強く反映されていて、いわく「敵にも生活感を出したいから、軍人みたいなのではなくて『怪物くん』の3人組みたいに普通の仕事をしている設定にした」「敵同士がいがみ合っている話なんて、日曜の朝から見たくないと思ったので自然に家族的な関係になった」ということ。
関連タグ
ヌメエル:ヌメリーとエルダのカップリングタグ。
プリキュア関連
- バッドエンド王国、ブンドル団:首領一人、側近一人、三幹部のみで構成された敵勢力繋り。側近の思惑を三幹部が知らされずに使役されている、野心家の幹部不在と言う共通点を持つ。
- 闇の魔法つかい、終わりなき混沌、キラキラルをうばう存在:劇中で勢力名が存在しないプリキュアの敵勢力繋り。特に「キラキラルをうばう存在」とは、力を奪う対象にプリキュアも含めている点も共通する。彼らはグランオーシャンの住人とも異なっていた為、同じくいちご山の妖精とは異なるグループだった悪い妖精にも共通する。
- ノットレイダー:女性二人と男性一人の三幹部、司令塔の大幹部一人、そして女性の首領で構成された敵勢力。こちらは戦闘員も存在する。基本力押しの戦い方も共通だが、こちらは目的においてやる気はあるが考えるのをやめている連中である。