概要
藤子・F・不二雄の児童向け漫画。1974年から1年間小学館の学年誌(2~4年生)に掲載されていた。単行本は2巻。FFランドは3巻、「F大全集」では1巻。1984年には別冊コロコロコミックにて新作4話を執筆。短期連載に陥った理由は当時アシスタントだったえびはら武司が作者に藤子流の技法を質問責めした結果で、彼が短期で辞めた理由でもある(当人ゲストのネットコラムインタビュー参照)。
2024年現在アニメ化はされてないが、1987年に月曜ドラマランドにて単発ドラマ化。ドラマ版ではカワルは女子高生に変更され、名前は「かわり」になっている。
あらすじ
冴えない小学生・カワルは、ある日ラジコン飛行機を「お化け屋敷」と呼ばれている謎の洋館に飛び込ませてしまう。仕方なしにその屋敷に入ったカワルはそこで実体を持たない魂だけの宇宙人と出会い、ビックリ仰天。宇宙人は脅かしてしまったお詫びと称し、惑星で活動するための人形をカワルにプレゼントする。
人形を押すことによってさまざまな姿に変身できるようになったカワルは、スポーツ万能ないたずらっ子「バケル」や天才少女「ユメ代」などに変身して様々な困難を乗り越えていく。
登場人物
須方カワル―主人公。野球は下手の横好きだったがバケルとの特訓により上達する。また、人形の能力を使えるとはいえ、北極圏で遭難した飛行機を一人?で救出に行くなど行動力はかなりのもの。
化田バケル―メイン画像の中心人物でカワルのもう一つの姿。(周囲には親友ということにしている。)運動能力抜群の少年人形。タートルネックシャツとハートマークのハンチング帽がトレードマークだが、どうやら頭のパーツと一体化している。カナヅチのカワルも、バケルに変身すればイルカのように泳げる。
化田ユメ代―バケルの姉設定のスタイルの良い女子人形。頭も良くカワルは彼女になって宿題をこなす他、ゴン太を手玉にとったりも。
化田バケ左衛門―藤子漫画おなじみの浴衣姿のパパ人形。四次元ポケットさながらの財布から出てくる無限の札束はある意味この漫画の切り札。
化田オボロ―ママ風人形。家事全般得意で服飾もお手の物。
トロン―犬人形。鼻が利く。二足歩行も可能。
ユミ―カワルの想い人。どちらかというとバケルに気があるようだが、引っ越したというデマを聞いても特に動じてない。
ゴン太―いわゆるガキ大将。ユメ代にぞっこんだが、野球に関しては彼女の誘惑でも動かせなかった。ただし、ユメ代(に変身したカワル)から、宝物にしている「野球選手のサインボール」が欲しいと言われたら、プレゼントしている。
ホー助―いわゆる腰巾着。
形の無い宇宙人―宇宙戦争スタイルの円盤型人形(※)で現れる実体のない宇宙人。地球に調査目的で来訪し、屋敷に偶然入り込んだカワルと出会い、カワルに人形と屋敷とをそのまま譲った。カワルが人形やお金で何をしていても気にしてはない様子。また、バケ左衛門が財布から偽札事件の冤罪をかけられそうになったときは、助けに現れている(その際には、シャーロック・ホームズ似の人形を用い、探偵を気取っていた)。
※ちなみにこの円盤人形は予備があるらしく、屋敷内の戸棚の中にあるものを、カワルはとあるエピソードで用いている。
変身人形
魂だけの形の無い宇宙人が、地球を研究する為に生み出した探査用プローブ。コピーロボットと同じく鼻に触れるだけで頭身サイズになって押した知的生命体の魂が入り込み、声も別人になって行動でき、触れた対象(変身人形)は魂が抜けて掌に乗れるフィギュアサイズへと縮小する。逆に人形になった対象の鼻に触れれば、成り代わる。性別の違い無く、動物でも出来る(生身同士の魂魄交換では発声器官の違いで疎通は出来なくなるが…)。鼻と耳の形状が生身の人間と異なり区別は判りやすい。
1度の変身は(劇中)指5本で5人まで変われるも、練習と努力次第によっては2人行動では別々の要件があっても自由に動けるが、3人以上では同一行動になってしまう。
種別は老若男女だけでなく、動物、妖怪、UFO等乗り物も含まれ、希に透明人間(下記参照)や、魂だけを交換する、他人の記憶ごと受け継げる特殊なモノも存在する。
1体1体は別々に特技や特殊能力が与えられており、それらを利用する事でカワルは様々な事を行える。
また、粉々に破壊されない限り、多少の痛みを感じるだけで接着剤を使い身体を補修すれば殆ど不死身に近い。あるエピソードでは、バケルが殴られた事で頭部や四肢が胴体から外れ、バラバラに分解してしまった(直後に接着剤で修復され、元に戻る)。
お医者人形に付属している診察機は瞬時に病の原因を突き止め治せられ、高度な異星文面の医療技術も持つ。
また、手先が器用ならば基の人形の髪型や、服装を簡単にカスタマイズさせられる。
化田屋敷の戸棚には無数の人形がギッシリ収まっており、専用カタログで用途がわかり易く解説されている。複数の人形を持ち込むにはベルトに挟める小型バッグに入れる。
但し、痛覚や味覚が一緒な為に同一行動を起こしやすく(魂の基本が子供なら酒を飲めば全員酔っ払う)、常に清潔に保たさせないと時間が経てば体臭が酷くなるデメリットが有り、定期的にお風呂で体の汚れを洗い落とす必要がある(これは、人形の状態で水道などで洗っても効果はない。カワルが人形を実際に洗ったが、汚れが落ちなかった)。
人形の服装や身体の状態は、カワルに戻った時に受け継がれる。あるエピソードでターザン人形を用いた際、使ったのが真冬で、しかもターザンは毛皮のパンツ一丁だったため、カワルは風邪を引いてしまった。
ただし、カワル自身の病気は、他の人形に変身した際には受け継がれない。カワル自身が風邪を引いて寝込んでいた時、バケルおよび他の人形に変身した時には、病気は受け継がれなかった。
また、人形の服は、変身時に等身大になり、他者に譲渡が可能。更に、人形サイズの服を縫製し、人形に着せたうえで変身すれば、それも人間が着る事が可能な服となる。
あるエピソードでは、この特徴を利用して服飾店を開いた。人形を服の見本としてギャラリーのように飾り、気に入った服を人形に着せ、変身し大きくする事で販売している。
ただし、生地にノミなどの虫が紛れ込んでいた場合、それらも巨大化してしまう。
屋敷の維持費に付いては、宇宙人が調査費用に星から大量のダイヤモンドを持ち込んで換金しており、全ての財産資金はバケ左衛門が所持している(バットも挿入可能な)底なし財布に札束ごと入れられている。偽札ではなくちゃんと日本銀行が発行した正真正銘の紙幣であると明言されている。
この財布は、某四次元ポケット同様に、内部は四次元空間に繋がっており、そこに紙幣が入れられている、との事。
劇中に登場した人形
バケ田一家以外にも、様々な人形が登場。それらを用いカワルは変身している。
- ターザン人形
文字通り、ジャングルの王者・ターザンの人形。腰布一つの半裸で、筋骨隆々の身体をしており、その姿に違わぬパワーを有する。これを用い、夜な夜な表れている通り魔(正体は落ち目の空手道場の道場主)を叩きのめした。
- お化け人形
バケ田家の屋敷に、無断で入り込んでいる者たちを追い返すため、カワルが用いたもの。典型的な幽霊のような姿をしており、お化けが出ると噂を流し、怖がらせる事で人を近づけさせまいとしていた。
脅かすのは成功したが、「お化けが出る」という噂を聞きつけ、かえって人が集まる結果になってしまった。
- カッパ人形、クジラ人形、ネッシー人形
カワルとバケルの事を怪しみ、二人を仲たがいさせようとしたホー助を懲らしめる為に用いた。バケ田屋敷のプールに現れ、ホー助を驚かせた。
- クマ人形
文字通り、クマの人形。カワルはこれを、押し売りや訪問販売で屋敷を訪れた者たちにその姿を見せ、追い返すために用いていた。しかしバケ田屋敷を訪れたカワルのママが、ただの人形と思い人形状態で鼻を押して変身してしまい、変身に気付かないままで帰宅。そのため周囲が大騒ぎになってしまった(後にカワルがこっそりママ人形で元に戻したため、事なきを得る)。
- サンタクロース人形
背負っている袋には、ほぼ無限にものを入れる事が出来る。上記の、北極圏で旅客機が遭難した際(ユミちゃんのパパが乗っていた)。食料や医薬品などの救援物資を買い込んだのちにその袋に入れ、円盤人形で北極圏に赴き、救援物資を飛行機に運び込んだ。
- 円盤人形
形のない宇宙人が用いていたのと、同じ形状の人形。文字通り円盤型。宇宙にも行けるが、人間を運ぶ事は出来ない様子。カワルはこれを用い、北極圏で遭難した旅客機の捜索を行った。
特殊な人形
変身人形には他の人形にはない特殊な効果を持つものも存在する
- コピー人形
藤子作品おなじみのコピーロボットと同様の形状・効果を持つ人形。鼻を押すと人形がその人の姿に変身する。
- ボール人形
野球に関する技術を極めた人形。その外観は、特徴のないまん丸な顔に目鼻が付いているというもの。守備も攻撃もプロ野球選手並みで、ジャンプして高い球をキャッチ、下ろしている相手のグローブに無造作に投げ入れるなど、超人的な技量を発揮できる。
- 透明人間人形
文字通り、透明人間の人形。人形の時点でも透明なため、カワルは発見時に苦労した。偶然ユメ代になってしまったゴン太から、ユメ代人形を取り返す時に用いられた。
- 合体人形
左右の腕がボタンになっており、同時に押したふたりのデータがコピーされる。右腕からは心が、左腕からは姿がコピーされる。
ドラとバケルともうひとつ
連載時、F先生は『ドラえもん』も同雑誌に並行連載していたため、この時の『小学四年生』では「ドラとバケルともうひとつ」というコーナーが組まれていた。現在『ドラえもん』11巻に収録されている『ドラえもん大百科』は4月号の企画の一つである。
『ドラえもん』9巻に掲載された『ぼく、桃太郎のなんなのさ』にもバケルくんは出演しているが、これは「四年生」9月号の企画であり、本作がてんとう虫コミックスに収録される際にわざわざバケルくんに関する説明が描き下ろされている。
なお、9巻収録の『ジーンと感動する話』は単行本収録時に内容が書き換えられており、本誌掲載時には『ドラえもん』と『バケルくん』がコラボする作品「スターたん生」(小四6月号の企画)のプロローグに当たる内容だった。ちなみにそのコラボは漫画ではなく小説であり、超猫目で鼻が尖っているドラえもんなどが拝める挿絵なんかも掲載されていた。
無論、「ぼく桃」でバケルくんが何の違和感も無くドラえもんと接しているのも、本エピソードが「スター」の後日談だからである。
なお、ドラえもんの世界は「パーマン」の10年後であり、「オバケのQ太郎」「エスパー魔美」と世界観を共有しており、「21エモン」の前日譚に当たる。
関連項目
ウルトラマンギンガ・海賊戦隊ゴーカイジャー:イメージしにくければこの辺を念頭に置いてくれればよい