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プラネット・ナイン

まぼろしのてんたい

プラネット・ナインとは、太陽系外縁に存在すると言われている仮説上の天体。これまでに天体の名前を変えて様々なパターンの仮説が展開されてきた。
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概要編集

かつて、地球史上何度も発生した大量絶滅が、ある特定の周期で発生してきたのではないかという説があり、その回答として「未知の大型天体(惑星もしくは赤色矮星)が絡んでいる」として展開された仮説のことを、冥王星に代わる新たな9番目の惑星という意味で「プラネット・ナイン仮説」と呼称する。

未知の大型天体が太陽系内に潜み、かつそれが人知れず地球に直接的な影響を与えてきた、というこの仮説のインパクトは非常に強く、一度否定されても名前や軌道を変えて、これまでに何度も展開されてきた。惑星Xとも言う。


やがてこの仮説は地球外知的生命体などSFオカルト系の話と組合わさり、天体の軌道や大量絶滅と無関係な所にまで話が拡大。この仮説を基にした話は今日でもサブカルチャーなどで使われ続けている。


歴史編集

全ての始まりは、天王星海王星の軌道が、発見当時の想定と違っていたことにある。そのため、海王星の更に外側に、他にも巨大な天体が存在するのではないか、と「惑星X」仮説が提唱された。19世紀末の事である。

その後、海王星の少し外側に、冥王星が発見された。しかしこれは仮説の天体と比較するとかなり小さかったこと、平成になってから冥王星のさらに外側にアルビオンという小型の天体が発見され、これを皮切りに次から次へと大量の小天体が発見されるようになる(これら小型の天体は後に矮惑星と総称されるようになる)と、徐々に惑星Xの存在が疑問視されるようになった(あまりに小さい冥王星が惑星かどうかも疑問視されていたが、当時は惑星に分類されていた)。

その後も探索は続いたが、2003年に冥王星よりも少し大きなエリスが発見され、これにより天王星と海王星の軌道は、カイパーベルトの大量の天体によって歪められていたこと、また探査機の調査の結果天王星も海王星もガス惑星のため想定よりも軽かったことが判明し、最初のプラネット・ナイン仮説はここに終焉を迎えた。


しかし今度はこれらカイパーベルトやオールトの雲の小天体群の長楕円軌道が、「大量絶滅の周期性に関係がある」とする新たなプラネット・ナイン仮説を産み出した。1984年、「過去の大量絶滅には周期性がある」として、第二のプラネット・ナイン仮説が誕生した。この天体はギリシャ神話の復讐の女神の名を取ってネメシスと命名され、ここからいよいよ地球と直接関係が出てくるようになる。

ネメシスは軌道長半径が1.5光年もある長楕円軌道を描くと想定され、以降に出てくるプラネット・ナイン仮説も全てこれに倣っている。後に発見された太陽系外惑星が長楕円軌道だったこともこの仮説を補強した。

1999年、これに関連して、ネメシスよりも内側でカイパーベルトの外縁、今で言うエリスの外側に別のプラネット・ナインがあるとする第三のプラネット・ナイン仮説が誕生し、この天体はテュケーと命名された。謎の天体がオールトの雲に分布する彗星の軌道に影響を与えている、とするこの仮説は、ネメシス仮説の提唱者からも支持され、やがて二つのプラネット・ナイン仮説は共存するようになる。


これらと直接関係はないが、そもそも天文学者ですらない人物が拵えた「非公式のプラネット・ナイン仮説」として、陰謀論作家のゼカリア・シッチンが、ネメシス仮説よりも前に発表したニビルという天体の仮説がある。5000年前メソポタミアに文明を築いていたシュメール人が遺した粘土板に記されたとされる、「船着き場」を意味するワードの天体が存在し、そこには各種創世神話のモデルとなった超高度な知的生命体の文明が存在する、とするこの仮説は、科学的根拠は限りなくゼロに等しいものだったものの、時代背景からしてノストラダムス終末論ブームもあり、後のネメシス仮説やテュケー仮説に何らかの影響を与えた可能性がある。

またこの天体は、後にこの仮説のモデルとなった古代メソポタミア神話の最高神と混同され、マルドゥクという名前でも知られるようになったが、名前が違うだけで同じ天体の仮説である。なおマルドゥク神の本当のモデルは木星であり、どういう因果か木星の英名は古代ローマの最高神ユピテルから付けられている。ちなみに話は逸れるが、これらの仮説の話でよく出てくる天王星と海王星は、それぞれギリシャ神話の天空神ウラヌスと、古代ローマ神話の海神ネプチューンから名前が取られている。



これらの仮説は、その後みんな仲良く潰えることとなった。

2009年から全天を観測する赤外線探査機が打ち上げられ、宇宙望遠鏡各機と連携して太陽系全域の観測が行われ、2014年に以上三つの仮説に出てくるような大型天体は現在太陽系内には存在しないと結論づけられた。


しかし一部の人はまだ諦めていない。ネメシス仮説、テュケー仮説、ニビル仮説の三つが仲良く倒れると、今度は第四のプラネット・ナイン仮説である「新プラネット・ナイン仮説」が誕生した。もうおふざけの域としか思えない展開に見えるが、実はこの仮説だけまだ完全には倒れていない。この天体は現在準公式に「パーチュバー」または「ヨシャファト」と呼ばれており、これもカイパーベルトの矮惑星の軌道を元に発表された仮説である。2016年、セドナなど6つの長楕円軌道を持つ矮惑星を根拠に、「天王星程度の未知の天体が存在するのではないか」とする論文が提出され、大きな話題になった。

この仮説にも粗が多く見られること、また水星よりも巨大な天体が今のところ半径1光年以内から太陽と八つの惑星、そして惑星程もある衛星、ガリレオ衛星最大のガニメデタイタン以外に見つかっていないことなどから、この仮説を疑問視する声は大きい。しかし、どこの恒星系にも属さない浮遊惑星の存在などから、大昔に太陽系から弾き出された天体を否定しきれず、過去にはそういう天体があったかもしれないという可能性はまだ完全には排除されていない。


それに、たとえ今のプラネット・ナイン仮説が否定されても、いずれまた次のプラネット・ナイン仮説が立ち上がる可能性はある。つまるところ、いつか人類が太陽系内の全ての天体を発見し尽くすまで、同様の仮説はロマンとともに、何度でも無限に復活してくるのだろう。


現在最も有力な説とその証拠の詳細編集

太陽系の外縁部に、カイパーベルト領域から大きく外れた極端な軌道の天体が数多く発見されている。

それらの天体の軌道は偏りがあって単なる偶然とは考えにくく、なんらかの影響が及んでいると考えられた。これにより、未知の巨大惑星がある可能性が浮上した。


アメリカの天文学者マイク・ブラウンは当初この説に否定的であり、反証しようとコンピュータシミュレーションを行ったが、

説のキッカケとなった天体とそっくりな軌道の天体が出現した上に、

別の特異な軌道の天体が予測され、それが実際に発見されていたなど、逆に存在を裏付ける結果が得られたことで、

未知の第9惑星が存在するとの論文が発表され、それが現在まで続く"プラネットナイン仮説"の盛り上がりの直接の源流となっている。


また、2024年にはこれを強化するような証拠が新たに提示され、これはかなり強力なものとされている。


地球の何百倍も離れるような天体の中に、海王星軌道の内側に入り込んでくる軌道の天体も数多く発見されており、

このような天体は、海王星など太陽系の内側の惑星の影響を強く受け、何処かに弾き飛ばされるか取り込まれるかするなどして安定して存在出来ないとされる。


しかしながら、現在でもこのような天体が多数存在しているという事は、何かが太陽系の外側の天体に影響を与え、このような軌道にしていると考えられ、

また、近日点の場所も海王星軌道の内側で均等に散らばっており、これはプラネットナインが存在しないと説明が付かないとされ、現時点で"プラネットナイン仮説"の最も強力な証拠となっている。


近いうちに発見されるのか?編集

現時点で発見されている(発見時の位置が)最も遠い天体はファーファーアウト(2018 AG37)で、約130AU(AU=天文単位。太陽〜地球間の距離を1とした単位)の距離だが、

理論的に求められているプラネットナインの軌道では、最も太陽に近い時ですら数百AU、遠い時になると800〜1000AUも離れている可能性もあると考えられている。


もっとも、先述の天体は直径400km程度である一方で、プラネットナインは地球より大きいとされており、発見の困難さについての単純な比較は出来ないものの、

遠いという事は、単に「暗くて小さく見えにくい」というだけではなく、見かけの上での動きが小さい(=背景の恒星と見分けが付かない)という事でもあり、その上無数の星の海からある特定の一つの天体を探し出すのは、

現代の観測技術を以てしてもかなり難しいと言われている。


ただ、このような天体は宇宙空間に熱を赤外線として僅かながら発しており、

特に最先端の大型赤外線宇宙望遠鏡である『ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡』であれば、それを捉えられる可能性があると期待されている。

とは言え、現在は深宇宙の仮説上の天体の捜索や系外惑星の観測などを主に行っているので、

かなり長い期間が必要であろうプラネットナインの捜索は当面の間後回しにされると思われる。


更に言えば、仮に見つかってもどのような天体なのかよく分からないという状況がかなり長く続く可能性が高い。

探査機を送るにしろ、現在最も遠くにあり、最速で太陽から離れ続けている人工物のボイジャー1号ですら、打ち上げから45年以上、1秒間に約17kmの速度で160AUしか進んでいない事を考えると、

少なくとも数百AUの距離にあると考えられているプラネットナインに探査機が送られ、具体的な様子が判明するのはかなり遠い将来になるだろう。


サブカルチャーへの影響編集

前述のようにニビル仮説は創作から誕生したものであるが、このような未知の天体の仮説がサブカルチャーに与えた影響は大きく、「ネメシス」「テュケー」は名前ほぼそのまま創作に登場することもある。

また名前は違うがウルトラマンキーラサイゴが出現したQ星ウルトラマンダイナで初代モンスアーガーが出現したメラニー遊星など、明らかにこれらの仮説がモデルの天体も多数登場している。最近でもウルトラマンデッカーにも間接的にだがメラニー遊星が出てきており、モンスアーガーの訪問販売をする怪しい文明として語られている。


ネメシスやニビルのおかげでこれらの仮説はすっかりサブカルチャーにおける敵勢力の拠点として便利な地位を獲得しており、今後もこのような設定の空想上の天体がいろんな形で登場することだろう。


余談編集

2017年、太陽系に謎の天体オウムアムアが飛来した。これは単なる太陽系外から飛来した天体と言うよりは公式に観測された葉巻型のUFOであり、太陽系内のどんな天体とも根本的に異なる機動を見せたことから、この天体が実はただの天体ではなく、どこかの恒星系の文明が送り込んだ探査機や宇宙船の類いではないかと話題になった(今なおオウムアムアの正体は不明)。それがプラネット・ナイン仮説に出てきた各天体とどんな関係にあるかは全くわからないが、兼ねてからあったテラフォーミング計画やプラネット・ナイン仮説などと合体して、宇宙旅行をする天体型宇宙船という設定のメカが様々な媒体のサブカルチャーに見られる。


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関連タグ編集

太陽系 惑星 赤色矮星 冥王星

カイパーベルト カイパーベルト天体

ネメシス テュケー 惑星X マルドゥク


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