概要
中央ユーラシア(Central Eurasia)とは、ユーラシア大陸の中央部の、ウラル・アルタイ系の諸言語を話す人々が活動していた地域の事である。
中央ユーラシアに住む住民(特に遊牧民)は、近現代の国境線では捉えられない広範囲で活動していた。そのため、現在の国家の枠組みを元に作られた「中央アジア」「北アジア」などの括りで歴史を語るのには不便であった。そこで、1960年代にハンガリー出身のアルタイ学者デニス・サイナーが、遊牧民の活動していた範囲をまとめて「中央ユーラシア」と呼ぶ事を提唱し、広まっていった。
「中央ユーラシア」はあくまでも文化的な概念なので、時代によって範囲は伸縮するが、概ね旧ソ連領中央アジア・東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)・モンゴル(内モンゴルも含む)・満洲・南シベリアの一帯を指す。
地理
中央ユーラシアは内陸部に位置するため、全般的に降水量は少ない。シベリア附近には森林地帯もあるが、大部分はステップ(草原)地帯か沙漠である。「世界の屋根」パミール高原から南西方向にヒンドゥークシュ山脈が、東方向には北から順に天山山脈・崑崙山脈・ヒマラヤ山脈が聳えている。天山山脈の北には、ジュンガル盆地を挟んで、中蒙国境にアルタイ山脈が聳えている。これらの山塊は、インド洋からの湿った風を遮り、中央ユーラシアに乾燥をもたらすと共に、山に積もった万年雪は、イリ川(バルハシ湖に注ぐ)、シル川(シル・ダリヤ)、アム川(アム・ダリヤ)、タリム川などの大河となり、オアシス地帯を潤している。
アルタイ山脈の東から大興安嶺の西にある高原をモンゴル高原といい、モンゴル系・テュルク系の諸民族の興亡の舞台となった。
天山山脈と崑崙山脈の間にはタリム盆地が広がり、両山脈の麓にはカシュガル、アクス、ホータンなどのオアシス都市が点在する。天山山脈の北には、ウルムチがある。天山山脈の北西から黒海北岸に至るステップ地帯をキプチャク草原という。特に、シル川北岸の一帯をカザフ草原という事もある。
アラル海に注ぐシル川とアム川の沿岸にはオアシス都市が点在し、その住民は主に農耕や商業で生計を立ててきた。
似たような呼称
中央ユーラシアと呼ばれる地域を指す呼称には、「中央アジア」「北アジア」「トルキスタン」などがあるが、それぞれ指し示す範囲が異なる。
中央アジアは、トルキスタンとモンゴル・チベットを含む場合もあるが、旧ソ連の内カザフスタン・ウズベキスタン・トルクメニスタン・キルギス・タジキスタンの5ヶ国(中央アジア5ヶ国)を指すのが一般的である。
北アジアは、国連の区分ではロシアのウラル山脈以東の地域(シベリア)を指すが、シベリアに加えてモンゴルや満洲も含める事も少なくない。
トルキスタンは、テュルク系民族が多く暮らしている中央アジアの地域を指す。因みに、「~スタン」とはペルシア語で「~の土地」という意味である。天山山脈とパミール高原を境に東西に分かれる。現在の国や地域の枠でいうと、先に列挙した中央アジア5ヶ国の範囲が西トルキスタンで、新疆ウイグル自治区の範囲が東トルキスタンである。
関連タグ
烏孫 大月氏 エフタル カラハン朝 セルジューク朝 ティムール朝