概要
『王様戦隊キングオージャー』の主人公・ギラの台詞。
子供達とのヒーローごっこで悪役を演じていた時の口上であり、民の犠牲を厭わない国王ラクレス・ハスティーが掲げる歪んだ正義を否定し、みんなを守る為に戦うという覚悟の誓い。
人々を良縁で結び悲しみを退治していったオンリーワンの様に、世界の悲しみを支配せんとする「邪悪の王」の決意表明である。
だが、第6話にてその立ち振る舞いを逆手に取られ、ラクレスの奸計によってシュゴッダム国民から恐れられ、ヘイト感情を向けられる事態に陥ってしまっている。
邪悪の王が往く王道(ネタバレ注意)
一方、ギラが自分自身を鼓舞する為に邪悪の王を高々と名乗っている節があるのも、所々に見受けられる。
元々、他人の目線に立って相手を助ける事を考えれる、天性の優しさを備えた『僕』の一人称が似合う人の好い青年であったギラ。「邪悪の王」の振る舞いも、育った孤児院でのヒーローごっこを成立させるべく自分から悪役を買って出た事に由来する。
しかし、いくら天性の優しさを有していても立場と感覚が一国民に過ぎないので、ラクレスの独善を思い知り実は自分が王族として世界を守る資格と力も持っていた事を自覚しても、それをよりマクロかつ効率良く使い周りへ波及させる為の術=王としての在り方や振る舞いを知らなかった。
そんなただ、類稀な優しさと力しか無かったギラが反逆者の汚名を被った際に、自分が持っている物を強引にでも扱うべく頼ったのが、“自分が辛うじて知っている『王』のイメージ=悪である事を誇示する「邪悪の王」の役柄”だったのである。
ただ、物語序盤のギラは邪悪の王を名乗る事で生じるリスクを甘く見積もっていた点も見受けられた。他の4大国を連れ回される度に自分の身柄をシュゴッダムに引き渡せと主張したのは他国に迷惑を掛けたくない配慮が感じられると同時に、「罪人になったのを逆手にラクレスと刺し違えてやる」との後先を考えない短慮な思考もあった事が想像される。
実際、紆余曲折の末に王族である事が判って罪を罷免された身分でシュゴッダムに帰還しても、自分を犠牲にしてでもラクレスを討つ事に執着した為それを相手より逆手に取られ、前述の様にシュゴッダム国民のヘイトを浴び逆にラクレスが正義を名乗る為の踏み台となる「悪役」と言う道化になってしまった。
その後、第8話で逆転を狙っての決闘裁判に挑むも、ラクレスに歯が立たず敗北。「邪悪の王」の第一印象を信じ込まされた大半のシュゴッダム国民からは死んだと思われたのを一時喜ばれて忘れ去られ、素の自分を知っている人達には消えない悲しみを背負わせる、望まない結果になってしまう。
更にこれ以降も、ギラは自分の力を独占しようとする他の4大国やバグナラクの思惑に触れた事で、自分の浅はかさや視野の狭さ等を散々に痛感。第10話で「でも僕は、王様じゃない…」との弱気な本音を漏らすに至る。
だがそれでも、ギラの優しさに少なからず感化された4大国の王達は彼を受け入れる。それに答えたギラは改めて5人で『王様戦隊』を名乗り、伝説の守護神を降臨させてチキューを守る大役を果たした以降、4大国に匿われながら自分の立場を引っ繰り返してラクレスに勝つ機会を虎視眈々と窺う事となった。
ただ立場は引っ繰り返せても、シュゴッダムへ根付いたギラの「邪悪の王」のイメージの払拭とは影響しないのも事実と思われ、そうした自分の境遇を乗り越えなければならない問題も抱えてしまっている。
そちらの解決手段は、ギラが「邪悪の王」とは別の王の在り方を得るしかないが、現状ラクレスに勝つのと並行でバグナラクの侵攻への対処があるのに加え、ラクレスが五国同盟を破棄したのも影響して国の公務にも追われる4大国王達以上にギラが前線に赴かなければならない現状となっており、結局邪悪の王を演じて自分を奮い立たせる術を取るしかない状況にしばらく甘んじる事となった。
そして第17話で、まだ王としての在り方も掴めていない状態で落命寸前の危機に陥ったヤンマを助けた事により、ラクレスに生き延びていた事を知られ再戦に雪崩れ込む。
だが続く第18話、『始祖の王冠』を持ち出して自己強化をしたラクレス/キングオオクワガタオージャーに圧倒され再び返り討ちへ遭い掛けるも、近くに居たジェラミーの助けでその場を逃れる。それからイシャバーナで怪我の治療を受けていたが、『始祖の王冠』ことオージャクラウンを見た影響で何故か忘れていた子供の頃=王族時代の記憶の一部を思い出す。
程無くして、バグナラクのイシャバーナ侵攻に乗じてラクレスがキングオージャーZEROに搭乗して出現、今度こそギラを仕留めようとする。しかしこの、チキューの守護神を模した兵器の存在を前々から危惧していたカグラギは、悪評屈辱等に塗れる腰巾着の道化を演じながらラクレスの元より重要な代物を持ち出す暗躍の仕上げとして、オージャクラウンとそれの対になるオージャランスを持ち出してギラに譲渡。それにより誕生したキングクワガタオージャーの手でエクストリームキングオージャーが降臨する。
一方、ギラは思い出した記憶の中で兄・ラクレスに聞かされていた、「“王も民も皆、小さな国”。それが成される為に民を守る王、みんなで手の届く相手を助け合う民に慕われる王になる」との考えを忘れてしまったのかと、今現在のラクレスに問う。それに対しラクレスは、そんな物は現実を知らない子供の幻想だと吐き捨てた。
「情けない…! それで王とは、笑わせるッ!! 不可能を可能にも出来ずに何が王か! 幻想も現実に出来ずして何が王か! “民の為なら、世の理をも超越する”!!それが王だぁっ!!!」
元より、自分の浅はかさ等で苦境に落ちても、そこより這い上がるべく自分の現状を受け入れつつ現実に立ち向かうギラの姿勢は飾らない強さと気高さを放ち、それが多くの人を引き付けていた。
それにかつての兄が抱き、何故か捨てていた考えを拾い上げて事実上受け継いだ事が合わさった結果、自然とギラの口より上記の口上が放たれていた。…謂わばこの瞬間を持って、彼は自分だけの王としての在り方、すなわち“王道”を掴むに至ったのである。
こうして自らの行動に気高さを宿せる様へなったギラは、いつの間にか自分の気高さを曇らせ邪知暴虐の王に成り下がった兄を打倒。更に兄の行いが裏目に出て、バグナラクへ占拠された故国を救うべく、シュゴッドや他の王達と共にシュゴッダムへと舞い戻り、『王様戦隊キングオージャー』の一員として故国を奪還する(第19話)。
第二の決闘の果て、本物の王に
城の占領中に失態を重ねたラクレスを拘束するも、あえて反逆者としての立場に戻ったギラは再度の決闘裁判をラクレスに申し込み、第20話で兄弟は再び激突。今度は以前よりも格段に強くなったギラが、オージャランスを欠いた為にオージャクラウンを落とされると武装が強制解除されるキングオオクワガタオージャーの弱点を突き、ラクレスを圧倒して地に伏せさせる事へ成功した。
「今まで貴様が積み重ねて来た邪知暴虐、その全てを晒し、シュゴッダムの民に謝れ! …そうしたら僕は……降参する」
「あなたの事は許せない。 …でも、僕の記憶の中にいるあなたは…、“僕も民も、みんなが小さな国の王様になる。そういうシュゴッダムにしたい”と言った。 僕は、そんな国に生きたい。
あなたなら、今からだって出来る筈だ…! みんなに謝って、あなたの、理想の王になってほしい…」
しかし、ギラはこれまでの邪知暴虐を反省し、人々に謝るなら自分が降参し裁判の勝ちを譲るとラクレスへ提案を申し出る。ラクレスの策略に苦しめられ対立しても、ギラはラクレス本人を憎み切れず自分の身柄と引き換えで、兄に贖罪のチャンスを与える慈悲を向けたのだった。
ラクレス「決闘の最中だ…。 甘過ぎて反吐が出る!! …甘い、甘い甘い甘い、甘いッ!! 私が頭を垂れる事など!断じて無いッ!!
お前の首を…、私が斬り落とすだけだぁぁッ!!」
だが、ここまで誰かを苦しめてでも覇道を歩まんとするラクレスが今更贖罪の道を選ぶ事が出来る訳も無く、むしろプライドを逆撫でされ激情任せに攻撃を再開し、強引にでもギラを討ち取ろうとする。
しかし次の瞬間で、乱入したサナギムに紛れてオージャランスを構えギラに突っ込んで来るボシマールが登場…したと思ったら彼の手にあったランスがクラッカーになって目の前で炸裂。以前から密かに訝しがっていたカグラギが、ジェラミーと共謀して仕掛けたトラップへ嵌ったバグナラクのスパイ=ボシマールに擬態していたカメジムが燻り出された事で、自分の謀略と野望がバグナラクに筒抜けかつ実質掌の上で踊っていたに等しい現実を、ラクレスは突き付けられてしまった。
そのまま怒りを滾らせてカメジムに向かおうとしたラクレスだが、「決闘はまだ終わっていない」とリタの制止を受けて再びギラへ向き合う。
「民を犠牲にし、国を名乗る…身の程知らずの雑魚がっ!! 雑魚は雑魚らしく、捻り潰してくれるわっ!!」
「恐怖しろ、そして慄け…! 一切の情け容赦無く、一木一掃尽く! 貴様を討ち滅ぼす者の名は…ギラ!! 俺様が…、世界を支配するっ!!!」
だが先程の弟の態度と、自分の置かれていた滑稽で残酷な現実を受けたラクレスは超然とした余裕を瞬く間に喪失。自棄を起こし、シュゴッダム国民に中継されている中で独裁者としての自分の思想を吐き散らした事で一気に信頼を失ってしまう。
そして一転し、反逆者と言う濡れ衣を着せられても兄へ慈悲を向けようとしたギラをシュゴッダム国民は一丸となって応援。その声を背負いながらギラは改めてカグラギより託されたオージャランスとオージャクラウンを用いてキングクワガタオージャーとなり、ラクレス/オオクワガタオージャーを圧倒。かつて自分がやられたとの同じく、王として一切合財を失った兄を崖下に叩き落とす形で決着を付け、決闘裁判の勝利をもぎ取ったのだった。
かくして、ごっこ遊びでは無い本物の王としての在り方を得た男は、反逆者の汚名を返上し新たな王として故国への凱旋を果たした。
ただ第21話の時点では、あくまで王としての諸々の資産を得ただけに過ぎず、それを扱うだけのノウハウ等は持ってなかった為国際決闘の名目で他の4大国王が一方的に有利な勝負を挑まされては負け、そのペナルティとして相手側の我儘全開な条約を一方的に結ばされる等と前途多難な目に合う。
だけれども、持ち前の優しさによりギラは戦友でもある王らの我儘に何とか答えようとし、かつて敵前より逃げた不義理を承知で戻って来たドゥーガを改めて臣下として迎え入れ、成り立ての王様として最初から歩み出すのを決める。
そして懲りずに侵攻してくるバグナラクへ対しては、連中の夢=人類絶滅を容赦無く邪魔する者の意味を込めて引き続き邪悪の王を名乗り、その上で子供ら未来を担う者に夢を抱かせる事を自らの野望(目標)と標榜するのであった。
「なーっはっはっはっ!俺様は邪悪の王!! 貴様らの夢を踏み躙り!子供達に夢を見せる…! それが俺様の成す野望!突き進む王道よ!! 許しを請うて、跪けぇ!!」
2つの牙が交わりし時
バグナラクをそそのかしハスティー兄弟の運命を狂わせた諸悪の根源との最終決戦にて兄ラクレスより神殺しの刃となったオージャカリバーZEROを託され因縁を断ち切るため、決意表明としてこの台詞を発している。
「俺様の名は、ギラ! 汚名をかぶり!血に塗れ!! 邪智暴虐と成りさがろうと! ただ民を救わんとした王……ラクレス・ハスティーの弟、"ギラ・ハスティー"! 俺様が、世界を支配する!」
「反逆者」達と共に
最終話においては、49話のラストのダグデドの叫びから続き、それに応じる形でメンバーそれぞれが発した口上の締めくくりとして、このチキューに生きる全ての人々からダグデドに叩きつける言葉として使用された。
ギラ「恐怖しろ……そして慄け! 一切の情け容赦なく! 一木一草悉く! 貴様を討ち滅ぼす者の名は、ギラ・ハスティー! そして!!」
チキュー人たち『王様戦隊! キングオージャー!!』
ギラ「俺様達が! 世界を支配する!!」
BGMとしての「俺様が世界を支配する!」
2023年6月7日よりリリースされた『王様戦隊キングオージャー Music Collection vol.1』にも同名の劇中BGMが収録されている。
第1話にてギラが吹っ切れて邪悪の王を名乗り、ゴッドクワガタが覚醒して目覚めるシーンをはじめとして第10話や第20話等のギラがここぞという場面で啖呵を切る場面で主に流れる。
また、曲のハイライトの部分ではシュゴッダムのテーマBGM『INFERNO』を彷彿とさせるフレーズも含まれている。
ちなみに、vol.1に収録された楽曲と本編で使用されている楽曲は若干異なっている。具体的に説明すると、本編ver.ではオーケストラ風のバイオリンやチェロといった弦楽器の演奏から楽曲がスタートするが、vol.1ver.では、本編だと中盤から入るギターの演奏がこちらでは最初から入るという違いがある。
関連タグ
- ギラ・ハスティー:シュゴッダム王族としての本名だが、同時に自分の主張を人々の総意であるかの様に飾り立てる道具として国民を見ている兄・ラクレスの手の内に有った身分を象徴しているとも読める。そこから事実上名字を捨て、ただの「ギラ」になった第6話以降が『キングオージャー』としての彼の正式なスタート地点とも言えるかもしれない。
- お前さ…(邪悪の)王には向いてないよ。:この台詞と正反対ながら、不可分の関係にあるギラの本質。邪悪の王を演じながらもこの面を滲ませていたのを感じた4大国は「邪悪の王」が自称に過ぎないのを勘付いたのに対し、ラクレスはギラの自称を誇張させるやり方で自分を正義の立場に担ぎ上げさせ、シュゴッダム国民がギラの本質を見ようともしない心のバリケードを築く様誘導、より自分を頼る状況へと仕向けた。
戦隊主人公の決め台詞の系譜
悩みなんざ吹っ飛ばせ!/今俺を見たな?これでお前とも縁ができた!/さぁ、楽しもうぜ!勝負勝負! ← 俺様が世界を支配する!→気分ブンブン、ブン回せ!