概要
ラクレス・ハスティーが第1話で発言した『民は道具、私が国だ。』を縮めた言葉で、同じく特撮発祥の『瞬瞬必生』と同様、創作の四字熟語である。読みは『みんどうしこく』が一般的。
放送開始前のスペシャル動画では『私が国だ。』の部分のみ発言していた為、1話試聴後との印象のギャップに衝撃を受けた人も多く、Twitter上でこのミームが誕生した。
しかしながら『瞬瞬必生』と比較して日常的に用いる場面が少ないとの指摘もある。
自らの発言を体現した、『邪知暴虐の王』の動向と足跡
「力あっての王。 飾りだけでは所詮道化だ」(第18話)
その後のラクレスの行動を追って行くと、この言葉の意味合いは彼が『民は自分を絶対な存在として担ぎ上げ、自分のエゴを正しい事の様に飾り立ててくれる存在』と考えている為と推測される。
最も分かり易い例が第6話でのギラとの対立シーンで、彼がヒーローごっこの悪役の延長で「邪悪の王」を名乗ってラクレスが正義と主張するのに張り合うと、それを遠巻きに見ていた民の一人が被害妄想を暴発させたのを切っ掛けに、“バグナラクへ与する人類の裏切り者ギラ”と言うデマが瞬く間に発生。これへラクレスは便乗しより誤解を煽る様振舞った事で、ギラを悪役にする反面で自分がシュゴッダムを守る“正義の王”として担ぎ上げられる様誘導、よりシュゴッダム国民が自分を盲目的に信じる状態へと持って行った。
更に言えば、デマの切っ掛けになった民の一人はラクレスの表向きな名君の顔に心酔し切っていたのが示唆されていて、そうした人物が出しゃばるのも見越した上でギラが自称を民衆の前で放言するのを計算していた可能性すらある。
一方、見方を変えるとラクレスは自分が担ぎ上げられるべく民が理想的と感じる名君を嫌でも演じる、“道化”とも言えるだろう。あるいは同時に、自分の暗い・汚い等の面を民に見せるのを極度に恐れて心の殻に閉じ籠もった、心理的に孤独かつ臆病な人物とも取れ、その反動として全てが自分の思う様に動く世界を求め、より自分を担ぎ上げてもらうのへ執着する、悪循環に陥っている面もあるのかもしれない。
なおこの面は、天性の優しさを持ち他者と仲良くなりやすいギラの本質と真逆に当たり、癖のある性格でありながらも自国民とある程度の繋がりがある4大国王らとも鏡合わせの関係になっている。そして特に、ラクレスの腰巾着であるかの様な態度で彼へ接してくる、カグラギ・ディボウスキに至っては自分の腹黒さを武器として巧みに使いこなしており、ラクレスよりもよほど自分自身と上手く付き合えている人物とも評せる。事実、15年前での取引で妹のスズメ・ディボウスキを介して彼を操るパイプは出来た物の、当のディボウスキ兄妹はそれを逆用して悪評屈辱等を被る道化を演じながら暗躍を重ね、ラクレスの元に在ったゴッドカブトやオージャクラウン・オージャランスを手に入れてギラに渡す事で、守護神の力が一ヶ所に集まるのを手助けした。
「私は認めない…! 私こそ王、私こそ国だっ!!」
ギラ「“王も民も皆、小さな国”。…覚えているか? ……その夢の、成れの果てがそのザマかっ!!」
「……! 所詮は子供の、幻想だ!!」
ギラ「情けない…! それで王とは、笑わせるッ!! 不可能を可能にも出来ずに何が王か! 幻想を現実にも出来ずして何が王か!
民の為なら、世の理をも超越する!!それが王だぁっ!!!」
(※第18話、互いに守護神を操縦して対峙した際のハスティー兄弟の遣り取り)
その結果、第18話でラクレスはキングオージャーZERO諸共、ギラ/キングクワガタオージャーの降臨させたエクストリームキングオージャーに大敗する形で、ギラや他の王達に強いた横暴の報いを受ける羽目に。更にバグナラクが結んだ筈の不可侵条約を踏み倒してシュゴッダムを占拠、これまで国民に信じ込ませて来た平和の幻想が瞬く間に崩れ去ってしまった。
そして、第19話でギラを中心とした『王様戦隊キングオージャー』にシュゴッダムを奪回される成果を挙げられるも、それを棄却しあえて反逆者の立場となった弟に再度の決闘裁判を申し込まれる。これに対し第20話でスズメとの政略結婚で表向きの国民感情を回復させる、ボシマールへカグラギが持っている筈のオージャランスを取り返す命令を下す等の工作を仕込み、改めて弟との決闘に臨む。
今回は以前よりも強くなったギラに翻弄され、オージャランスを持たないが故のキングオオクワガタオージャーの弱点を突かれた形で変身解除に陥り地に倒れるも、当のギラは「自分の邪知暴虐な行いを人々に謝れば決闘の勝ちを譲る」と持ち掛けた。ラクレスの横暴は許せずとも彼本人を憎み切る事は出来ない、ラクレスの都合で反逆者の汚名を押し付けられた自称「邪悪の王」が持つ慈悲の心はラクレス当人にも向いていたのだった。
が、ここまで覇道を突き進んだラクレスがその言葉を受け入れられる訳も無く、生身で弟との鍔迫り合いに発展。その隙を見計らって乱入したボシマールが取り返したオージャランスでギラを貫こうとするが、そのオージャランスはカグラギとジェラミーが共謀して製作したフェイクのクラッカー。これにまんまと引っ掛かった結果白日の下に晒された、ボシマールに擬態していたカメジム=端からラクレスの間近に潜んでいたバグナラクのスパイと言う重大な真実は、結局ラクレスの謀略と野望がバグナラクに筒抜けかつその掌で踊っていたも同然の状態であった事を、ラクレス当人へ悟らせるには十分過ぎる物だった。
「お前がスパイだったのか。…いつからだ? 本当のボシマールは、殺したのか…?」
カメジム「とっくに骨になっている頃でしょうかね~。 操られていた気分は最悪でしょう~?」
ギラ「まだ戦うのかっ!?バグナラクが!!」
「民は道具っ!…私が国だ…!! 道具は国に仕え、物を言わず考えない…! 扱き使われ、壊れるまで働く…! それこそ道具の、民の幸せだろうっ…?
だから私が、私こそが!…国であり続けなければならないのだっっ!!!」
ゴローゲ「ラクレスは、極悪人だぁぁぁっ!!!」(持っていたラクレスのプラカードを怒り任せに叩き割る)
この二つの結果を突き付けられた結果、これまで上位に立っていた筈だったラクレスの余裕は瞬く間に霧散。自棄を起こしてひた隠しにしていた独裁者としての考えをぶちまけた事で、決闘の様子を観戦していた国民から一気に信頼を失い立て前の名君としての顔も喪失。
代わりに一転して国民全員から支持の声を背負った、ギラ/キングクワガタオージャーとの一騎打ちに負け、以前の弟同様崖下に転落する結果を持って全てを失い完全敗北と言う結末と相成った。
なお、王族としての頃の記憶を少し思い出した弟・ギラは、かつての兄・ラクレスが「王様が、国民全員を守る。 国民はみんなで、手の届く大切な人達を守る」と言う考えを胸に王へなろうとしていたと他の王様戦隊に語っている。
その事をギラは兄へ改めて問うたが、対してラクレスは「現実を知らない子供の幻想」と子供の頃の考えを吐き捨てる言葉を返すも、逆に兄が捨てた考えを昇華させた「民の為なら世の理を超越するのが王である」と言う、自らの王道を掴んだ弟に敗北を喫する。更にその上で、自らの手の内にあった筈の自国も他者の手に渡ってしまった、いや最初から他者の手の内で自分が踊っているも同然だった現実が発覚した結果、「謀略と奸計等で現実を乗り切ろうとした名君を演じる独裁者」から、「ひねくれた思考に執着し、周りを真っ直ぐに見れなくなったのを現実と勘違いした道化」になってしまったとも評せよう。
だが第34話で、宇蟲王ダグデド・ドゥジャルダンの配下へ下って『シュゴ仮面』を名乗り、シュゴッダムの王に舞い戻っていたラクレスは欠員の出た宇蟲五道化に入るべく、再び弟を嵌める策略を仕掛ける。
その内容は『ギラはダグデドに忠誠を誓った証に賜った人類を守る為の道具(兵器)』という告白と、『そのギラが暴走し王様戦隊と共に人類を虐殺する怪物=邪悪の王となった』との嘘を交えた国内放送を喧伝。今度は最初からギラを言う事を効かなくなった道具兼悪役扱いするやり方で、事前に贅沢品をタダで流通させ堕落・懐柔させていたシュゴッダム国民が一斉に自分を支持する状況へと持っていた。
しかし、この状況の後ろ盾になっているダグデドは「侵略者の本性を隠した自分の代わりに自棄になったギラ達が人類を虐殺してくれる」のを望んでいる一方、ラクレスは「邪悪の王ギラを倒して自分がチキューを救う」と放送の締めで発言しており、両者の目的が明らかに食い違っている。そもそも人類を虐殺してチキューを滅ぼせば、自分を担ぎ上げてくれる道具としての民もいなくなりラクレスの王としての自負や地位等も意味を成さなくなる上、宇蟲王の正式な配下に加入したとしても“かつて王だった『暴虐』の道化”という、恥にしかならない経歴が残る事になり、よくよく考えたらラクレスの得になる要素がまるで無い策略であった。
そしてこの策略を始める予兆を、秘密裏に接触していたカグラギにも伝えていたらしく、彼を介してギラの元にあったオージャクラウンランスを再び手にする事となる。
邪知暴虐の道化を演じた、『孤高の王』の戦いの真実(第41~42話)
「立て、ギラ! 『宇宙を救う時』だ!!」
それもそのはず、ラクレスの真の目的は不死身の身体を持つダグデドを討つ為の力=奴が持つ不死身の身体を貫通する能力を掠め取る事。その為に『不死身の身体を持ったギラを自分が討つ』状況を作ってダグデドが能力を使う様誘導していたのだ。
もっと言えば、その状況へダグデドが乗ってくれる下地を一より築き上げる為に17年の時を捧げてまで演じていたのが、民を道具と蔑み事実を知る他者より嫌悪される立場『邪知暴虐の王』として積み重ねて来た、これまでに本記事等で挙げられた言動と所業の全てにして真実であった。
“これは人類の、絶望の歴史だ…”
“私はこの時、決意した。『宇蟲王を倒さねばならない』。…その為には、邪悪に身を堕とすしかない。 長い長い、計画が始まった……”
(※後の裁判における、証言の語り出しと〆の言葉でもあった)
17年前、神の怒りを引き起こしチキューに憎悪と悲劇の連鎖を広げようと企てるダグデドへ強引にシュゴッダムの王へ即位させられ、被害が広がるのを黙って見ていろとの命令に屈服せざるを得なかった少年時代のラクレスは、たとえ地獄を味わおうとも宇蟲王を討つ決意を固めた。
“『五王国平和会議』の目的は、キングオージャーの力を独占し、五王国を支配下に置く事。無論、バグナラクを滅ぼす為だ。…表向きは宇蟲王に従順であり続け、秘密裏に力を付ける必要があった”
だが、生物として絶対的な差を持つダグデドへ対抗する為の力はそう簡単に得られるはずもない、ましてや表向き宇蟲王に服従しながら事情を知らない他の国とも向き合わなければならないと、果てしなく計画を進めるのが不利な状況下に立たされる。しかし歴代のシュゴッダム王=ハスティー家も、宇蟲王に一矢報いようとオージャカリバーZEROの復元を極秘裏に進めており、それを完成・発展させる方向で少しずつだが計画を推移させる。
更には予言に従い甦った地帝国バグナラクの進行による情勢も利用し、バグナラクを排除しながら強引に他の四大国も平定して計画を有利に進められる状況へと持ち込もうともしたのが、本編第1話が始まった時点でのラクレスの思惑だった。
“予言通り、バグナラクは甦った。だが想定外の事態も起こった。…一目で、ギラと判った。もう、後戻りは出来ないと悟った”
“ギラの中で、宇蟲王から受け継いだ力が覚醒していた。あまりにも早過ぎた。 ……戦いに備え、私が開発させたのがキングオージャーZEROだ。ダグデドが創造した、他のシュゴッドとは違う、人造の神。故にダグデドの支配を受けない、切り札となるはずだった。 …だが、ギラに敗北した。ギラは常に、私の計画を潰していった”
当初はオージャカリバーZEROのデータを元として開発した人造の守護神・キングオージャーZEROを中核にダグデドに反抗する力を得ようとしたラクレスだったが、ヘイトクライムの一環兼計画に巻き込ませない様に汚名を着せる形で指名手配にしていたギラはシュゴッドや他の王達と繋がり、その流れの先でキングオージャーZEROを凌駕するエクストリームキングオージャーを降臨させZEROを撃破した事で、ラクレスの想定していた宇蟲王への反抗計画は根本から崩れる結果を迎える。
が、同時にこれを持って、ラクレスは宇蟲王を倒すにはその力を受け継いでいる弟・ギラが必要であると痛感し、現状で自分の手元にある力を全て彼に託す方針転換を決めた。
「ギラは、常に私の立てた策をぶち壊し、私の力を踏み越えて来た。…しかし、それこそが私が求めていた力だ。 私の本当の望みは、『ギラを強くする』事。宇蟲王を倒せるとしたら、その力を引き継ぐギラしかいない」
“ゴッドカブト、オージャクラウンランス、キングコーカサスカブトは、宇蟲王と戦う為にギラへ託す必要があった。 その為にカグラギとスズメを利用させてもらった”
兄として、ギラの現実を見据えた優しさを知っていたラクレスは、二度目の決闘裁判を申し込む形で自分に改心の機会を持ち掛ける事、そしてそれを突っ撥ねられても急所を狙わずにこちらを倒そうとするのを見越していた。
そこにディボウスキ兄妹の暗躍も逆手へ取って、シュゴッダムにある力を玉座ごと弟へ明け渡す手筈を整えた上、偶然にも獅子身中の虫を炙り出す事が叶った瞬間を持って、自分が邪知暴虐の王を演じて決闘裁判で負ける形式を持ち、ギラに力を託す事へ成功。加えて婚姻関係となったスズメに真実の一端を明かし、決闘裁判後に転落した崖下で彼女と再会。一度目の決闘裁判前でカグラギより渡されたゴッドスコーピオンの麻痺毒を服用して仮死状態となって死亡を偽り、表舞台から一時姿を消すのだった。
「ギラに力を託すには、玉座を明け渡す必要がある。ギラに申し込まれた決闘裁判は、絶好の機会だった。 ギラは民と、王と、時に敵すらの心をも掴む。私の様な口先でなく、自らの行動で信頼を勝ち得て行った。…玉座に座る準備は出来ていた」
「だが唯一の懸念は、宇蟲王から派遣されたスパイの存在。 私の言葉に誘われ、バグナラクは動いた。つまり、人類とバグナラクの戦いを激化させようとする、ダグデドのスパイが城内に居る事を意味する。 それを排除するまで、私は玉座を譲る訳にはゆかなかった。どんなに惨めな姿を晒そうとも…。 (二度目の)決闘裁判も、私が勝つつもりだった。…だが、珍しく神が味方をし、スパイの正体は暴かれた。 これで私は『邪知暴虐の王』としての醜態を民に晒し、ギラに玉座を譲る事が出来た」
「しかし私は、死ぬ訳にはいかなかった。 次の計画は、2000年積み上げた宇蟲王への信頼を利用し、懐へ潜り込む事。 …その為に、スズメに掛けた」
宇蟲王を倒すべく、ラクレスが策略を練り続けて重ねた17年の年月は孤独との戦いだったが、そこには彼を支えていた人物も僅かだが居た。
秘密を守る為に処刑される未来を受け入れて、オージャカリバーZERO関係の研究を生涯を掛け完成させたベダリアと、彼女の意思等を受け継ぎギラ達にその事を伝えてゴッドコーカサスカブトの復活へ貢献したコフキ。
最初は相互利用の関係から始まるも、真実の一端を知って『人類の裏切者』の役割を共有し“出会えた事を人生最大の幸運”と評したスズメ・ディボウスキは、ラクレスが公に宇蟲王の手先として表舞台へ帰って来た時に真っ先に彼の傍へ赴き、彼が反逆を成功させるバックアップを兄のカグラギと共に務めあげた。
いやもう一つ、自分と表向き敵対する形で王の力と玉座を引き継がせた弟・ギラが、子供の頃に語った自分の王としての理想を引き継ぎ、それを自らの行動で形にしようとしているのを第18話で知れたのは、ラクレスに取って何物にも代え難い希望になっていたのかもしれない。
「それから秘密裏にダグデドと通じ、私は宇蟲王の忠実な下僕としてチキューを支配した。……全ては、不死身のダグデドを殺す力を、手に入れる為に…!」
「力は揃った。 だがそれだけでは、ギラは宇蟲王には勝てない。 民を思い、悪を許さず、自ら立ち上がり、決して折れない…!真の強さを持つ王に成ってもらう為に私はギラに仇なす、『邪悪』であり続けた…!」
「私は、弱い…。 己で戦う覚悟が、無い…。 ただの卑怯者だ……。自らの悪を正当化する、愚かな道化となり、全てをギラに託した。 そして…」
(ダグデドを斬り付けながら)「痛みを知るのは初めてか? …逃げるなよ、全生命が受けた痛み…、思い知れ!!」
(倒れ伏したギラに対し)「卑怯・卑劣・最低、それが邪悪の王のやり方だろう!!」
「やれ、ギラ!! シュゴッダム2000年の呪縛を!永劫続く戦いと滅びの歴史を!終わらせろぉぉっ!!」
そして遂に、ダグデドを討ち滅ぼす力を手に入れたラクレスは長らく封じ込めていた真意を吐露しつつ、第42話でギラと共にダグデドを討ち取る事に成功。
その過程で命に係わる程の重傷を負うも、弟が改めてハスティーの姓を名乗り自分の遺志を受け継いで民を護ろうとする誓いを聞いて満足し、弟に抱きかかえられて息を引き取る…、がそれを止めたのが、ギラに引き寄せられる形で国同士を超えた関係を構築した他の王様戦隊の面々。
宇蟲王に対抗すべく弟の良さをあえて無視し、苦境に落とすやり方でギラを鍛え上げるやり方を選んだラクレスだったが、同時にそれは他の王達へ弟の良さを隠さず伝える機会にもなっていた。そしてディボウスキ兄弟の証言も合わせて、彼の本質と背負っていた物を察した王達はラクレスの命を救い真実の全てを聞く方針で一致。
図らずも、ラクレスが守れず自分の袂から零してしまった、弟の優しさに遠回りで救われたとも取れる結果を迎えるのだった。
孤独なる暗闘を続けた兄王は、弟王の紡いだ希望に救われ未来を切り拓く
続く第43話、ゴッカンで開かれた裁判の場で被告人となったラクレスは隠す理由が無くなったのも相まって、自分達シュゴッダム王室=ハスティー家の真実を滔々と語り出す。
2000年もの間、ダグデドの侵略行為の手先として繁栄の裏で宇蟲王に服従していたハスティー家。だがその横暴に甘んじている筈も無く、服従の裏で反逆の刃を研ぎ澄ますのとその機会を窺う意思を、代々に受け継がせながら忍従していた。
そしてハスティー兄弟の実父、コーサス・ハスティーが具体的な反逆の先鞭となる行動を起こす。宇蟲王の従僕者の証として力の下賜を請い、妻である王妃(ラクレスの実母でもあり、この当時第二子となるだろう受精卵を胎内へ宿していたのが示唆される)を連れてダグデドに謁見、願いを聞いたダグデドが王妃へ自身のBNA=「滅びの力」を打ち込む行動を誘った。それにより突如として妊娠した王妃は出産後命を落とすも、それと引き換えに宇蟲王の力を持つ『奇跡の子』、第二王子・ギラは誕生した。
事実上、異能を持つ実子を得る為に妻を生贄へ捧げたにも等しい真似をしたコーサスの目論見は、成長したギラを宇蟲王への反逆の中核に据える為だった様子。しかし王室の外へ秘匿しつつギラを実子としても育てた結果、妻に犠牲を強いた上でその忘れ形見のギラに重責を生まれる前から事実上押し付けた自分の所業へ対する罪悪感に苛まれたらしく、せめてもの情けとして幼いギラにゴッドクワガタのシュゴッドソウルを使った料理=レインボージュルリラを食べさせる事で人としての意思と記憶を失わせ、対宇蟲王の兵器=道具としてラクレスへ使われる身分にしようとする非道へと走ってしまう。
だが、純粋に兄としてギラを傍で見守っていた少年時代のラクレスが弟の変調に気付いて騒動を起こした事で、秘密裏にシュゴッダム王家を監視していたカメジムに謀反の前兆を察せられてしまう。その結果、謀反を企んだ報いとしてコーサスは宇蟲五道化の襲撃に遭い、土壇場でオオクワガタオージャーへと王鎧武装する事に成功しこれを迎え撃つも、病身かつ強大な力を持つ五道化の前に抵抗むなしく戦死という形で抹殺されてしまい(そのついでにカメジムの隠れ蓑として、人知れずギラを守るべく1人でカメジムに立ち向かったボシマールは返り討ちに合う形で殺され、成り代わられてしまった)、その上ラクレスも死んだ父の後釜として強引に即位させられた挙句、二度とシュゴッダムが謀反を起こさない為の見せしめとして宇蟲王一味がチキュー全土規模の災厄=神の怒りを引き起こす様を見せ付けられた上で改めての服従を強要された。
だが、ギラにシュゴッドソウルを食べさせてから父が討ち死にし、神の怒りを起こされるまでの僅かな時間の内に、たった一人残った肉親である弟を王室より逃がす事に成功した少年ラクレスは、ハスティー家の悲願と弟を守る事を叶えるべく邪知暴虐の王を演ずる道化をやり切る覚悟を決めたのだった。
「それからギラは、町の児童養護園に送った。 ダグデドから隠す為というのもあるが」
リタ「…ギラに一人の人間として、生きてほしかったんじゃないのか?」
「戦う使命を押し付けた。 …所詮独り善がりだ」
リタ「戦う事を選んだのはギラ自身だ。 お前は関係ない」
「……そうだな。 ギラは、ギラだ。道具じゃない」
見事に道化をやり切った結果、当初の想定とは大分違う形になったが遂に宇蟲王を討つ事へ成功したラクレス。しかし、道化芝居に無関係のシュゴッダム国民を付き合わせた事実もラクレスは認識していた。その落とし前として、道化の裏で繰り広げた暗闘の記録も残さずに暗君としてこの世から去るという、奇しくもトウフの先代大殿と似た末期を迎える事をラクレスは望んでいた。
「頼みがある。 私がここで話した記録は、全て消し去ってほしい」
リタ「何故だ?」
「私は、多くの民を自らの意志で犠牲にして来た。 その悍ましい事実が、宇宙を救うと言う大義や、私への情けで正当化される様な事は、未来永劫あってはならない…。 私は、最悪の王として語り継がれるべきだ」
リタ「考慮する。 ……これより、判決を言い渡す。被告人ラクレス・ハスティーは、…有罪。死罪とする」
リタ「…だが、それでは足りないと、被害者からの嘆願があった」
カグラギ「…最悪の事態が、起こりました」
しかし裁判の裏側で、本性の一端らしき物を見せるミノンガンを迎撃したギラ達が「人々の時間を錯綜させる」異変に巻き込まれ、子供の姿に戻ってしまった。何とか元の姿へ戻ったものの、その際の副作用によりギラはシュゴッドソウルを取り込んだ影響で失った幼少期の記憶を取り戻す(また、このタイミングで自身の食べたレインボージュルリラの正体についても気づいた模様)。しかもミノンガンの体内を通して、ラクレスが遠大な道化芝居の末に辛くも倒した筈のダグデドが復活。彼のここまでの苦労を無駄にされてしまった。
リタ・カニスカ「取引だラクレス。刑の執行まで、猶予を与える。 代わりに、宇蟲王を倒す為王様戦隊の“道具”として生きろ。」
ヒメノ・ラン「貴方の全てを差し出しなさい。」
カグラギ・ディボウスキ「あらゆる汚れ仕事を、担ってもらいましょう。」
ジェラミー・イドモナラク・ネ・ブラシエリ「償いの物語を、始めるんだ」
ギラ・ハスティー「何より民を思うあなたなら、答えは決まっているはずです」
ラクレス・ハスティー「……私は……、戦う…! この命、民を救う為に捧げる!!」
ギラ・ハスティー「王は国民全員を守る。国民は手の届く大切な人を守る。 …今こそ、あなたの理想を叶える時です…!」
だがこの事態を逆手に取り、ギラ達王様戦隊はラクレスに罪人の名目で『宇蟲王を倒す手掛かりを持つ存在』として尽力出来る役割=“道具”と言う建前を与え、味方として引き込む事に成功。この妙案に辿り着いた王達の姿こそ、ラクレスが本来望んでいた「チキューの災厄に立ち向かわんと王達が手を取り合う理想」そのものとも言える。それは、決して叶わないと諦めていた可能性を、弟が導き、見事つかみ取った光景でもあった。
この、自分に陰ながら守られつつもギラが導いていた自分の想定を遥かに超える結果に、ほぼ一人で暗闘を続けていた孤高なる兄王は遂に王様戦隊と向き合い、共に戦う事を決意。僅かな微笑みと共にギラの差し出した手を取り、握手する形で協力の意思を示したのだった。
ギラ「やっと、届いた…」
そして宇蟲王に半生を玩ばれつつも、互いに肉親の身を案じた始まりの国の王族兄弟はこの瞬間を持って本当の意味で再会を果たす事に。それを証明する様に、少年時代のハスティー兄弟が抱擁するイメージがギラの脳裏に映るのだった。
セミファイナルとなる第49話では側近のひとり、ボシマールがハーカバーカより一時帰還し本台詞の意趣返しとなった。
ボシマール「右腕に剣を!左腕には大剣を!」
ドゥーガ「我らは道具!王の殺意の具現なり!」
ラクレス「戦士達に、シュゴッドの加護があらん事を!」
余談
実は、上記の彼の計画において最大の障害となっているのはゴーマ・ローザリアである。
理由としては、
- 公式サイトで明らかになった「千里眼の術」で、味方と練っている謀略や邪魔されては困る状況を遠方から覗かれる危険性がある
- いざダグデドを倒そうとしても、ゴーマの「入れ替わりの術」で身代わりと入れ替えられ、不発に終わる(下手をすれば住民や味方と入れ替えられ、同士討ちになる)
- 顔面の印への攻撃で解除こそできるが、発動自体はノータイム・ノーモーションであるため、妨害は非常に困難
- ヒルビルの洗脳能力と違って耐性を持つ人物・防ぐ手段がない
それ故にラクレスがヒルビルを利用して真っ先に排除対象としたのはゴーマだったのだろう。