「私は霊河鉄道のホーム監視員兼案内係、番頭神の庭渡久侘歌です。頭のこの子はピヨちゃん先生。ピピーッ!」
概要
東方ロストワードのメインストーリー第4章「永遠戦線」にて登場した、地下廃区画の庭渡久侘歌。『霊河鉄道』案内係を務める。列車に乗る霊魂を整列させる役割があり、番頭神としての性質が強くなっている。
本来、久侘歌の住んでいる所であるはずの妖怪の山を「懐かしい」と言っていることから、長い間帰っていない様子がうかがえる。
仕事中ではよく迷子になった霊をおんぶすることもあるらしい。
汎異記号は『B3』。
PiPiPiホイッスル
この世界の久侘歌における、東方剛欲異聞で久侘歌が所持していたホイッスルにあたるもの。実は笛自体に特殊な効果は無く、久侘歌がこの笛を吹くことで初めて"霊魂を整列させる"効果を発揮する。
ピヨちゃん先生(後述)によるものなのか、このような安直な名前が付けられている。
ピヨちゃん先生
この世界における久侘歌の頭のヒヨコにして久侘歌の笛吹きの先生。
頭に「P」と描かれた(刺繍された?)帽子を被っていて、SD立ち絵のモーションではたまに久侘歌の帽子からヒョコッと顔を出す。ヒヨコだけに。
プレイアブル化
実装形態 | 超フェス限定 |
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式 | 技巧式 |
気質 | 東風 |
拡散 | ウイングセマフォ |
集中 | アライメントホイッスル |
スペカ1 | 長鳴『目覚めよ、葬られた幽霊達よ』 |
スペカ2 | 笛符『幽霊達よ、居るべき場所に還れ』 |
ラスワ | 『輪廻解脱の大終点』 |
テーマ曲
地下廃区画の久侘歌のテーマ曲は、荒御霊の「Echo Peak」。原曲は「セラフィックチキン」。
余談
気質は『東風』。空が東方から徐々に明るくなってくる夜明けのこと。読み方は「しののめ」「とうふう」「こち」「こちかぜ」「あゆ」「とんぷう」など様々だが、歳時記では読み方によって季語が異なり、「あいの風」は夏の季語で、「こち」は春の季語となる。
二つ名の『アライナー』とは、フランス語で「…を一列に並べる」を意味する。
衣装のデザインモチーフは駅員だけではなく警備員も含まれている。「番頭神としての特性が強くなっている」ことから、警備員がチョイスされたと思われる。
所持品のホイッスルは恐らく東方剛欲異聞で再登場した時の姿のオマージュ(もしくはこの久侘歌自体が剛欲異聞の久侘歌をベースとしているため)。立ち絵のポーズも、左手はホイッスルを持ち、人差し指を立てた右手を前に出しているところも剛欲異聞での立ち絵と似ている。
スキル名はいずれも『整列アルゴリズム(ソートアルゴリズム)』の手法の名前から取っている。整列アルゴリズムはデータの整理・並び替えを行うためのアルゴリズムであり、数字やデータを扱うバイナリデータとも無関係ではない。
スキル名 | 意味 |
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マージソート | 整列させる対象のデータが1グループごとに1つになるまで、2分割を繰り返し整列しながら戻していく手法。最速と言われるクイックソートと比べると計算量は少ない(O(n log n)、最悪の計算量はO(n))が、ランダムなデータを対象とする場合はクイックソートのほうが速くなる。 |
クイックソート | 適当な基準値を定めて「基準値より小さい値」のグループと「基準値より大きい値」のグループに分ける作業を繰り返して整列していく手法。ソート法と比べて一般的に最も高速だと言われているが、計算量はマージソートより多い(O(n log n)、最悪の計算量はO(n²))。 |
ヒープソート | 未整列のデータを「ヒープ」の性質を持つ木構造の構成にして、そこから最大値または最小値を取り出して整列、これを繰り返すことで全体を整列させる手法。別名『半順序木』。テキストの「『木』を使うと、上手く整列できるらしい。」は木構造に由来している。 |
整列アルゴリズムの種類には、他にも『選択ソート』『バブルソート』『挿入ソート』『シェルソート』があるが、「久侘歌の整列させる仕事とこの手法を照らし合わせた場合、効率的に考えると不向きである」ことからチョイスされなかったと思われる。
ちなみに東方剛欲異聞には庭渡「アルゴリズミックファントム」というスペルカードがある。
ショットは「ウイングセマフォ」「アライトメントホイッスル」という名前だが、いずれも整列・整理に関係する言葉がチョイスされている。
ショット名 | 備考 |
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「ウイングセマフォ」 | 「セマフォ」はコンピュータで並列処理を行う際、同時に実行されているプログラム間で資源(リソース)の排他制御や同期を行う仕組みの一つ。 |
「アライトメントホイッスル」 | アライメントは「整列」。ホイッスルは競技の合図として審判が使う笛という意味だが、その他にも汽笛や警笛を意味する。 |
拡散ショット『ウイングセマフォ』は「手旗でピヨちゃん先生の仲間たち『鉄道航空隊』に通信する弾幕」としている。手旗は自衛隊や警備員、海上保安庁などで用いられているが、鉄道の駅員も車両の乗務員に手信号や合図を送る時にこれを使用している(警備員などは赤と白の旗だが、鉄道業務は赤・白・緑の旗を用いている)。手旗を使った信号は『手旗信号』と呼ばれているが、日本では帝国海軍で考案された(和文手旗信号)という成り立ちから主に海上で用いられる。バレット名の『起信信号』『発動信号』『消信信号』『終信信号』『解信信号』『応信信号』はこちらにある通り、「交信を行う時の動作」として実際に使用されるものである。
そして、集中ショット『アライトメントホイッスル』のバレット名は警備員が交通誘導に使用する5種類の合図「進行」「幅寄せ」「徐行」「後進」「停止」から来ている。
採用されたスペカは東方剛欲異聞で久侘歌が使用したものから(剛欲異聞が初出のスペカをロストワードでそのまま採用するのはこれが初となり、派生系を含めるならばフランドール・スカーレット(L80)以来となる)。いずれも久侘歌の声を使う技である。
スペルカード1の長鳴「目覚めよ、葬られた幽霊達よ」の『長鳴(ながなき/ちょうめい)』は、恐らく『古事記』にて、太陽神である天照大神が天岩戸に籠った際、八百万神が常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)を集めて鳴かせ、天鈿女命に舞わせて天照大神を呼び出したという逸話が元ネタ。そこから「ニワトリは朝に鳴く」「ニワトリは時を告げる神聖な鳥」とされていった。
通常の鶏より長く鳴くように品種改良された鶏「長鳴鶏」の由来にもなっており、東方ロストワードではL1世界の久侘歌のラストワード『神鶏長鳴(みとりながなき)』の元ネタともなっている。
バレット名は『目覚まし〇〇〇』『死者蘇生〇〇〇』『岩戸開き〇〇〇』(※〇〇は木属性の場合「ボイス」、金属性の場合「ソング」が入る)となっている。
演出では剛欲異聞のプレイヤーに大きなインパクトを与えた『コケコッコー!』の弾幕も健在だが、原作がすらっとした綺麗な字体とカラフルな色だったのに対して、こちらは固い字体と錆びた鉄のような色となっている。
スペルカード2の笛符「幽霊達よ、居るべき場所に還れ」のテキストでは、『幽霊の居るべき場所』について書かれている。仏教では死後に地獄界、餓鬼界、畜生界、修羅界、人間界、天上界の6つの世界「六界」をぐるぐる廻る(六道輪廻)とされている。
バレット名は、この世界の久侘歌の仕事場がターミナルであるためか『〜の整列』で統一されている。
- 「ホーム待機列の整列」・・・プラットホームのこと。
- 「乗り換え待機列の整列」・・・文字通り、駅の乗り換えのこと。列車を降りて別の場所へ向かう列車に乗ることで、行動範囲の拡大・移動時間の短縮に繋がる。
- 「券売機待機列の整列」・・・乗車券を売る機械。
- 「案内所待機列の整列」・・・今回は案内所の方を指す。電車の時刻・運賃・料金・お得なきっぷ等の案内を行う。
- 「立ち食いそば屋の整列」・・・駅構内で麺類を立ち食い形式で提供する飲食店のこと。
- 「幽霊列車の整列」・・・偽汽車・幽霊機関車とも呼ばれる。幽霊の如く存在しないはずの蒸気機関車が鉄道線路上を走るという怪現象のこと。フィクションだと「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズの幽霊列車が有名。
この世界においては冥界や死後の世界、輪廻転生さえも『霊河鉄道』に統合化されていることから、霊魂が霊河鉄道の列車で『居るべき場所』へと導かれているのだろうか。
ちなみに原作では、久侘歌はこの直後に庭渡「見渡しのよい旧地獄」を使う。この久侘歌の立ち絵には駅名に「旧地獄」とあるが……?
ラストワード「輪廻解脱の大終点」は、仏教の目的である『六道輪廻の解脱』を意味した名前と思われる。
演出で登場した車両の元ネタはドイツ軍の80cm列車砲と考察されている。第二次世界大戦でドイツ陸軍が実用化した世界最大の巨大列車砲。製造されたのはたったの2両のみで、1両目はクルップ社会長グスタフ・クルップの名前から「グスタフ」、2両目は設計主任エーリヒ・ミュラーの妻の名前から「ドーラ」の愛称が付いた。
ホーム画面のキャラにタッチするとたまに『反応』の台詞(3種類)が聞けるのだが、このうち2つは「私の背で、すっかり寝てしまいましたね。」「仕事でもよく、迷子の霊をおんぶしますよ。」となっている。
近年実装されたキャラには、『反応』の台詞においてよく寝てしまう主人公に対して膝枕で対応していることが多い傾向にあるのに対し、こちらは例外としておんぶで対応している。
ロストワードの主人公は「小さい女の子」であるため、単に面倒見の良さが出ているのか、もしくは仕事のやりすぎで体に染み付いているのか……。