島津斉彬
しまづなりあきら
生母は斉興の正室で鳥取藩池田治道と伊達重村の娘である生姫との娘(四女)にあたる弥姫周子である。鳥取藩主家池田家は徳川家康の女系子孫であるために斉彬と同母弟の岡山藩主池田斉敏は徳川家康と伊達政宗、池田輝政、片倉重長、毛利元就の女系子孫にあたる。ちなみに佐賀藩主鍋島直正は弥姫周子の姉が生母なので母方従弟、直正の同母姉で宇和島藩主伊達宗城と再婚した益子は母方従姉にあたる。池田輝政と徳川家康の娘・督姫の夫妻は父方の女系祖先でもある。
薩摩藩第8代藩主・島津重豪
薩摩藩第8代藩主・島津重豪(斉彬の曽祖父、1745年~1833年)は洋学(蘭学)に興味をもち、江戸幕府・第11代将軍となる一橋豊千代(徳川家斉)の正室として娘・茂姫を娶せたことで結果として「外様大名が将軍の舅」となり、「高輪下馬将軍」とまで称されるほどの権勢を振るっており、曾孫・斉彬に大きな影響を与えたことでも有名な人物である。重豪は英邁な曾孫の斉彬を可愛がり手元で養育した。
お由羅騒動
嘉永4年(1851年)2月、和漢の教養に通じた異母弟・久光を擁立する実父・斉興と久光を生んだ斉興の側室・お由羅の方との間に家督争いが生じ、幕府の介入によりようやく藩主の座に就くことを許された。
斉興が長男・斉彬を疎んじた理由としては、洋学に興味をもつ斉彬が蘭癖大名・「島津重豪の再来」との異名をとったからとされている。
重豪の時代、薩摩藩は藩主の洋学研究と将軍家御台所の父として費用がかさむこと多く、500万両の借金にあえいでいた。家督を継いだ重豪の孫・斉興は膨大な借金返済に家老・調所笑左衛門を登用、琉球との密貿易や砂糖の殖産興業化など、様々な改革を行った末、250年年賦で借金を返済するという無茶を債権者側に呑ませることで決着した。
斉彬はその重豪に似ていたとされる。斉興としてはようやく借金返済にめどが立ったのに、斉彬に祖父と同じように金を湯水のように使われてはたまらないとの思惑があったらしい。
家督相続
前述のとおり、嘉永4年(1851年)2月、幕府は斉興に家督を斉彬に譲るよう命じた。これには、当時、幕政の実権を握っていた老中首座・阿部正弘、斉彬の盟友とされる越前藩主・松平慶永、宇和島藩主・伊達宗城らの意向に沿ったものとされている。
これ以降、斉彬は西郷隆盛、大久保利通らを抜擢、薩摩藩の殖産興業、洋化政策に取り組み、城内に精錬所、島津氏の邸宅・磯御前に反射炉や溶鉱炉などをもった近代的工場・集成館の設置。写真研究、洋式艦船の建造。日の丸の日本国総船印の制定を建言した。
次期将軍選定をめぐる争い
時の13代将軍・徳川家定は病弱であり、世継ぎを儲けるのは困難だったとされている。ここで次期将軍をめぐって幕閣や大名たちは対立を深めつつあった。
御三卿・一橋慶喜を推したのは12代将軍・徳川家慶、慶喜の父である水戸藩前藩主・徳川斉昭、老中首座・阿部正弘、薩摩藩主・島津斉彬、越前藩主・松平慶永、宇和島藩主・伊達宗城ら(一橋派)であり、紀州藩主・徳川慶福(後の14代将軍・徳川家茂)を推したのは13代将軍・徳川家定、彦根藩主・井伊直弼ら(南紀派)であった。
養女・篤姫を江戸城に入れる
安政3年(1856年)12月、斉彬は分家・島津忠剛の娘・篤姫を養女とし、さらに近衛忠煕の養女として13代将軍・徳川家定の正室して娶せた。幕政改革を行うための同志・一橋慶喜(後の15代将軍・徳川慶喜)を次の将軍にする工作を篤姫に行わせるのが狙いだったとされている。
斉彬死す
安政5年(1858年)7月8日、鹿児島城下で練兵の指揮を執っていたがにわかに発病、同年7月16日死去、家督は久光の子・忠義が継ぐこととなり、久光が実権を握るまで斉興が後見した。斉彬の死因はコレラと考えられているが、当時、鹿児島城下では父・斉興による毒殺説、お由羅の方による呪詛説が流れ、西郷らはその噂を信じたという。
なお、偶然ながら同年7月6日には13代将軍・徳川家定が死去し紀州藩主・徳川慶福(家茂)が新将軍に就任、慶福を推した井伊直弼が大老に任じられたことにより反対派(一橋派だけでなく尊王攘夷派も含む)に対する大弾圧がはじまることとなる(安政の大獄)。
これにより一橋慶喜を推した斉彬の同志たち(松来慶永、伊達宗城ら)は一時的に逼塞、文久2年(1862年)、異母弟・久光が幕府に幕政改革を要求するまで彼らが政治に復帰することはなかった。
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