決戦-フェアウェル-
けっせんふぇあうぇる
苦闘の末、メガフラシとガルベロスを撃破したネクサスとナイトレイダー。しかし、その残存エネルギーは時空の穴の中へ吸い込まれていく。その中では不気味なスペースビーストが蠢いていた。
やがて穴は消え、ネクサスも消滅した。
TLTから離反したことでフォートレスフリーダムに帰れなくなったナイトレイダーは体育館周囲を警戒していた。
石堀の解析によると青葉ニュータウンの封鎖は解かれず、住民たちは皆東へ移動しているとの事。
和倉隊長のパルスブレイガーに松永管理官から連絡が入る。ナイトレイダーの処分については現在上層部が話し合いをしており、処分が決定するまで待機が命じられた。
今度は吉良沢優から連絡が入る。ニュータウンに異常な波形を示しており、アンノウンハンドがその中に潜伏している可能性があるという。アンノウンハンドは近い将来何かを仕掛けてくる。憐にはすでにメタフィールドを張れるほどの力は残されていない。次は未曽有のビーストを相手に市街地で戦うこととなる。そしてそれが憐の最後の闘いになるということを。
疲れ果てて体育館の一室で眠る千樹憐。それを野々宮瑞生が見守っている。
意識を取り戻した憐に瑞生は自分の想いを伝える。
瑞生「私は、憐が好き。憐の未来がどんなものでも、私の気持ちは変わらない……ずっと変わらない」
扉の向こうからその様子を見ていた孤門は、静かにその場を離れた。
瑞生「何か、食べる物買ってくるね」
そう言った瑞生はぎこちない作り笑いを浮かべて、部屋を出ていく。泣きながら走り去る瑞生。
憐も天井をじっと見つめ、やがて慟哭する。
「俺は、馬鹿だ!俺じゃ、瑞生に何もしてやれないのに……!」
憐が顔を横に向ける。机に置かれた瑞生のメモレイサーが目に留まった。
体育館の外では孤門と和倉が話している。
孤門「僕には何もしてやれない……見ていることしかできないのは……悔しいんです。変わってやれるものなら……」
和倉「人の人生は肩代わりできない。家族でも、恋人でも友達でも、どんなに大切な人間であっても……だからこそ、人は心を尽くして、人と絆を結ぼうとする。見ていることしかできないのなら、見ていてやれ。最後まで……」
戻ってきた瑞生にメモレイサーの効果を尋ねる憐。理由を聞く瑞生に彼女の仕事のことをあまり聞いた事がなかったからと告げる憐。
暖かい飲み物を作ろうと瑞生が席を外した。憐はメモレイサーはビーストとウルトラマンの記憶を消せるという事はデュナミストの記憶も消せるとして、瑞生にメモレイサーを向ける。
しかし、瑞生はメモレイサーを逸らし、憐との取っ組み合いの末に、彼を押し倒した。
瑞生「ふざけないでよ!全部忘れろって言うの!?憐のこと、顔も名前も、憐がこの世にいたってことも……みんな忘れてしまえって言うの!?冗談じゃないわよ!一緒にいた時間がどれだけ大事か、どうして分からないの!?……どうしてそれが分からないの……?」
瑞生が憐から顔を背け、泣き崩れる。
憐「ごめんな……」
体を起こし、背中から瑞生を抱きしめる憐。
憐「ごめんな、瑞生……」
静まり返った部屋に、二人の嗚咽だけが響く。
フォートレスフリーダムでは、前回何者かに襲われた海本隼人が倒れていた。CICで誰かの声を聴いた吉良沢は自分のホログラムを海本の下に送り、倒れている海本に呼びかける。吉良沢の呼びかけに海本は目を開ける。
翌日、外に出られるほど回復した憐に孤門が声をかける。
孤門「何してたんだ?」
憐「考えてたんだ。“光”は、何故俺の所に来たんだろうって」
孤門「同じことを考えてた人がいるよ」
憐「同じことを?」
孤門「姫矢准…君の前のデュナミストだ」
孤門は今の憐と同じく姫矢と語り合ったことを思い出す。
姫矢「俺はこの光を得た。この光の意味が何なのか……お前を助けた時、俺は感じたんだ。過去は変えられないが、未来なら変えることができるかもしれない」
孤門「憐。“光”はもしかしたら、人に託された希望なのかもしれない。だから“光”は、人から人へ受け継がれていく」
憐「“光”は、受け継がれていく希望……」
その時、ビーストの鳴き声が響き空にアンノウンハンドの闇が広がった。同時に吉良沢からプロメテの子たちが「ラファエル」をついに完成させたという通信が入る。
吉良沢「いいか憐!この状態で戦えば……君は助からない!」
孤門「行くんだ憐!早く!」
その時、ビーストが地上に降り立つ。
その姿はザ・ワンとガルベロスの顔と角、両肩にはノスフェル、メガフラシ、リザリアスグローラー、グランテラの顔、胸と腹にはバンピーラとクトゥーラの顔、右腕にはラフレイアの花弁からノスフェルの腕が生え、左腕はゴルゴレムの頭、尻尾の先端はグランテラの尻尾、両足にはペドレオンとバグバズンの顔とこれまでウルトラマンが戦ったビーストたちが合体したものだった。
人々が逃げ惑う中、ビーストがビルを砕き、口から熱線を吐いて街を破壊していく。
進撃するビーストを睨む憐。
憐「優、孤門……俺は俺の光を走りきる!」
瑞生「憐……」
憐「必ず戻る」
憐のその言葉に頷く瑞生。
憐はエボルトラスターを取り出し走り出したが、途中で転んてしまい、膝をついた。
しかしそれでも歯を食いしばり、エボルトラスターを引き抜き憐はネクサスへと変身した。
ジュネッスブルーとなったネクサスはビーストへ立ち向かう。ネクサスとビーストが組み合うも、ビーストはネクサスをはね除ける。
再度ネクサスはビーストに向かっていき、格闘戦を繰り広げる。
やがてクロムチェスターが駆けつけ、ビーストを攻撃し始めた。ネクサスは猛攻を続けるも、ラフレイアの花粉を受けてしまう。
今度はメガフラシの顔からの電撃を受けるも、それを払いのけキックを食らわせるが、ビーストの左腕から伸びたゴルゴレム・プロボセスが背中を攻撃する。
一連の闘いを見た吉良沢は言う。
「あいつは、恐らく、過去のあらゆるビーストの攻撃能力を備えていると思われます。最強のビースト…コードネーム『イズマエル』」
イズマエルはゴルゴレムの火炎弾、ペドレオンの火球、グランテラの尻尾からの火球、リザリアスグローラーのビームの波状攻撃を行い、ネクサスを寄せ付けない。イズマエルの攻撃は空にも届き、クロムチェスターが次々と撃墜されていく。
バンピーラの糸を避けたネクサスは再びイズマエルに接近し、避難していた人々がネクサスとイズマエルの戦いを見始めた。
ネクサスは右腕のノスフェルの爪で三度切りつけられ怯む。孤門の搭乗するクロムチェスターδがイズマエルに向けてミサイルを発射するが、熱線で掻き消された上、直撃し墜落。ネクサスも遂に力尽き、倒れ込む。
CICから吉良沢が憐にテレパシーを送る。
吉良沢(憐。憐、聞こえるか?憐……“光”を信じろ!)
憐(“光”……)
邪魔者がいなくなったイズマエルは光線で辺りを破壊していた。
(“光”は、人に受け継がれる希望……)
ネクサスが拳を握り締め、そして立ち上がる。
(俺は、戦う……俺は生きる!生きて、この光を繋ぐ!!)
ネクサスはイズマエルに向かって走り出し、そして飛び上がった。
イズマエルの放った熱線を上昇して躱し、その勢いで巨大な矢状の光線"オーバーアローレイ・シュトローム"を発射。イズマエルに直撃し、ネクサスが着地すると同時に倒れたイズマエルは大爆発した。
辛くも勝利したネクサスは、瑞生とナイトレイダーに見守られながら憐に戻っていった。
吉良沢の瞳が潤む。
憐は精神世界でネクサスと向き合っていた。
まるでネクサスに返還されるようにエボルトラスターがエナジーコアと一体化し、ネクサスの姿が消えていく。
「ありがとう……さよなら…」
憐と瑞生のこれまでの思い出が回想される──
「名前、なんて言うの?ねぇねぇ、名前は?俺、千樹憐ね」
「ここ来るの初めて?」
「みーずお!」
倒れた憐を、医療スタッフが搬送する。
それを追いながら瑞生が叫ぶ。ナイトレイダーもその場に来る。
瑞生「憐!憐、目を開けて!!憐、目を開けて!!憐、憐!!お願い!目を開けて!!」
憐は死んだように動かない。
瑞生は、憐に唇を重ねた──。
そして、憐がうっすらとだが目と口を開いた。
瑞生「憐……憐!」
憐が救急車に乗せられる。
憐はゆっくりと左手を上げ、孤門たちにVサインを見せた。
瑞生も救急車に乗り、孤門たちに頭を下げる。扉が閉まり、救急車が発進する。
孤門『憐は生きる──僕たちはそう信じた。でもあの時、僕たちは憐を離れた“光”が誰を訪れるのか、まだ考えてもいなかった。そして、それに続く、恐ろしい出来事を……』
かつてデュナミストに選ばれた姫矢や憐が幻視した、石化したストーンフリューゲルの鎮座する異空間。
そこに現れたのは、凪。
凪がストーンフリューゲルに触れると、ストーンフリューゲルが光りだした……。
赤く熱い鼓動 そのプライドにかけてもう一度
強く立ち上がって 駆け出し始めてく僕を信じて