株式会社近鉄百貨店(KINTETSU Department Store Co., Ltd.)は近鉄グループの百貨店。本社・本店は大阪市阿倍野区阿倍野筋1丁目1-43(あべのハルカス)。関西地区に8店舗、三重県四日市市と愛知県名古屋市に1店舗ずつ、合わせて10店舗を構える。
近鉄グループホールディングス傘下だが、完全子会社ではなく、H2Oリテーリングと並んで私鉄系の百貨店では数少ない上場企業(東京証券取引所)である。当然ながら株主優待制度もある(但し近鉄パッセでは使用不可)。
概要
前身は京都市が発祥の「丸物」をルーツとする京都近鉄百貨店と近鉄の直営百貨店部門が分離した旧近鉄百貨店となっている。
旧京都近鉄百貨店
1910年1月、中林仁一郎が京都駅前に京都物産館が開業。2月には合名会社を設立。1930年には岐阜市に支店を開店、1931年には合名会社丸物、そして株式会社丸物に社名を変更し、豊橋に進出した。
太平洋戦争後は、1949年に大阪証券取引所と京都証券取引所に上場。舞鶴市、大垣市、福岡県八幡市中央区(現在の北九州市八幡東区)にも進出し、1955年には東京の新宿に新宿丸物、1957年に池袋に東京丸物を開業した。しかし、経営が苦しく、1966年に近畿日本鉄道の出資を受けてリストラを進めることになる。1969年に東京と八幡から撤退し京都と岐阜の2店舗になった後、1975年に枚方丸物を開業。1977年には創業者の息子と近鉄から派遣された幹部の合意で「京都近鉄百貨店」に改称、枚方丸物も枚方近鉄百貨店となった。
1995年には京都店を拡張したり、1997年、草津駅前に草津近鉄百貨店を開業したが、ジェイアール京都伊勢丹オープン後は京都店に栗人が減って赤字になった。社員の数を減らし、1999年には岐阜店が閉店した。一方、枚方近鉄百貨店は近鉄になってから経営が軌道に乗ったものの、京都近鉄百貨店との関わりはほぼなくなり、1998年に近鉄百貨店に吸収合併された。
旧近鉄百貨店
近畿日本鉄道の前身となる大阪電気軌道が1936年9月、大阪市の上本町に大軌百貨店を開業した。1937年11月には大阪鉄道の子会社が大阪阿部野橋駅に大鉄百貨店を開業した。1941年に大軌が参宮急行電鉄を合併して関西急行電鉄に改称し、大軌百貨店が関急百貨店に改称した。1944年4月1日に関急が大阪鉄道を合併し、大鉄百貨店が関急百貨店阿倍野店、関急百貨店が関急百貨店上本町店として再スタート、同年6月1日には南海鉄道を合併して近畿日本鉄道が発足、百貨店事業は近畿日本鉄道上本町百貨店と近畿日本鉄道阿倍野百貨店に改称された。1948年に近鉄百貨店に店舗名を変更し、その後1960年に別府近鉄会館が開業(翌年に別府近鉄百貨店に改称)、1972年には奈良店を開業し、6月1日、近鉄から百貨店事業が4月設立の株式会社近鉄百貨店に引き継がれた。1974年には東京都武蔵野市の吉祥寺駅前に東京近鉄百貨店(のちに近鉄百貨店東京店となり、2001年に閉店。現在のヨドバシカメラ マルチメディア吉祥寺)を開業し、様々な店舗を展開していった。資金調達のため、1980年代から上場することが目標だったが、ひょんなことから実現することになる。
2001年2月28日、京都近鉄百貨店が近鉄百貨店を合併し、株式会社近鉄百貨店に改め、本社と本店を大阪の阿倍野に移すという特殊な合併が行われた。これは経営が悪化した上場企業の京都近鉄百貨店を非上場企業の近鉄百貨店が救済するためで、「逆さ合併」と言われている。このため、近鉄百貨店の企業沿革(創立日、歴史など)は「丸物」がベースとなっている。
合併後
京都店は2000年に無印良品やソフマップなどの専門店を入居したショッピングモール「プラッツ近鉄」に転換したが、赤字の状態が続き、開業から87年後の2007年2月28日に閉店した。跡地には京都ヨドバシ(ヨドバシカメラ)が建てられた。
2003年に「京都近鉄百貨店」系の草津近鉄百貨店が中部近鉄百貨店と合併し、2009年3月1日には中部近鉄百貨店と和歌山近鉄百貨店を合併し、四日市、名古屋、草津、和歌山の店舗を直営化した。
同年3月19日に阿倍野本店の西側(旧館)を閉鎖し、あべのハルカスを建設、2013年6月13日にタワー館開業と同時に「あべのハルカス近鉄本店」に店舗名を変更、2014年2月22日にあべのハルカス近鉄本店は全館開業となり、売り場面積が10万平方メートルとなった。
また上本町YUFURAの開業に合わせ、上本町店の全面改装も行われ、2010年8月26日に完了した。
特徴
他の電鉄系百貨店(特に京王百貨店、東武百貨店)が高齢者向け路線を取っている中、「Hoop」「and」や「近鉄パッセ」など若者向けの施設の運営にも強い。百貨店にも比較的若い客は多いが、上本町店については近隣のリッチな高齢者をターゲットにして、あべのハルカス近鉄本店と棲み分けしている。
また、東急百貨店や大丸が専門店の導入で場所貸し業に転ずる中、専門店を単に導入するのではなく、東急ハンズなどのフランチャイズ運営を柱として、百貨店の接客を維持する独自の政策を取っている。2021年春には台湾の輸入食品を売る「神農生活」の海外1号店があべのハルカス近鉄本店にオープンした。
また、子会社「ジャパンフーズクリエイト」が直接、魚を仕入れて加工するので、同じ大阪の高島屋などに比べて生鮮食品、特に魚が安い。このため、食品売場も人気である。
店舗
- あべのハルカス近鉄本店: 大阪市阿倍野区阿倍野筋1丁目1-43
- 上本町店: 大阪市天王寺区上本町6丁目1-55
- 東大阪店: 東大阪市長堂1丁目1-1
- 奈良店: 奈良市西大寺東町2丁目4-1 ならファミリー
- 橿原店: 橿原市北八木町3丁目65-11
- 生駒店: 生駒市谷田町1600 アントレいこま
- 和歌山店: 和歌山市友田町5-18
- 草津店: 草津市渋川1-1-50
- 四日市店: 四日市市諏訪栄町7-34
- 名古屋店(近鉄パッセ): 名古屋市中村区名駅1-2-2
商業施設
- Hoop: 大阪市阿倍野区阿倍野筋1丁目2-30 あべのハルカス南側
- and: 大阪市阿倍野区阿倍野筋2丁目1-40 Hoop南側
- 上本町YUFURA: 大阪市天王寺区上本町6丁目5-13 上本町店南側
過去の主な店舗
- 枚方店: 枚方市岡東町12-2 現・枚方T-SITE(TSUTAYA)
- 京都店: 京都市下京区烏丸通七条下る東塩小路町702 現・京都ヨドバシ
- 岐阜店: 岐阜市柳ヶ瀬1-12 現・中日新聞社岐阜支社
- 桃山店: 京都市伏見区桃山町山ノ下32
- 東京店: 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-19-1 現・ヨドバシ吉祥寺
- スターアイランド: 四日市市諏訪栄町6-4 四日市店と通路で連絡していた
関連タグ
大阪阿部野橋駅 大阪上本町駅 布施駅 大和西大寺駅 大和八木駅 生駒駅 和歌山駅 草津駅 近鉄四日市駅 近鉄名古屋駅