「文句があるなら、私にどうぞ」
「私は死なないわよ…まだ傑作を書いた覚えはない」
概要
演:平手友梨奈
本作の主人公。神奈川県に所在する公立高校・北瀬戸高校に通学する女子高生。
普段は趣味である読書に耽り積極的に他者との交流をしないなど地味な印象が目立つが、実は常人とは一線を画した驚異的な才能を持ち、それから来る文章力は他者を圧倒する魅力を持つ。
それだけでなく、彼女は他者に対して一切妥協や物怖じをすることはなく、後述のような暴挙も辞さない行動力を持ち、その芯の強さから来る行動もまた他者を圧倒していく。
そして彼女のその才覚と行動力は史上初にして若干15歳という最年少で芥川賞と直木賞の同時受賞という前代未聞の快挙を成し遂げ(尚、現実では諸般の事情から原則としてこの両賞を同時に受賞することは不可能である。詳しくはそれぞれ当該記事を参照。)、以降も世間はこの天才少女に翻弄されていくことになる。
人物像
性格
上記の通り、普段は積極的に人と関わろうとはせず物静かであり、自分から目立つ行動を取ることもないが、他者に妥協することを一切許さない芯の強さを持ち、そのためならば如何なる手段も辞さない構えでいる。
そして彼女の他に妥協を許さない姿勢は常軌を逸していると言え、そのためならばたとえ自分に利害のある話だろうがイベントの真っ最中だろうが相手が政府関係者だろうが暴力行為も厭わない。
代表例を挙げると…
- 文芸部に入部を希望した際に、自身に「殺すぞ」と凄んで胸ぐらを掴んで来た先輩の塩崎隆也の右手の小指をへし折る(本人曰く「殺すと言われたから殺されないようにしただけ」)。
- 本を置く位置(「面白い本棚」と「つまらない本棚」)を巡って祖父江凛夏と争った挙句、片方の本棚をなぎ倒す。
- 凛夏の自宅を訪れた際、誰の許可も無しに勝手に彼女の父にして現代日本屈指の文豪である祖父江秋人の書斎に入り込んだ挙句、秋人のコラムを取りに部屋に入って来て自分を無理矢理追い出そうとする木蓮編集者の花井ふみと乱闘して書斎を滅茶苦茶にする。
- 凛夏にセクハラをしていた木蓮新人賞選考員作家の一人である鬼島仁の顔面を蹴り上げる。その後、ふみのスクーターをパクって鬼島行きつけのバーへと向かい(明らかに無免許運転。なお運転の仕方は兄の健に教わったのではないかと凛夏は推測した。なお、実写映画版では諸般の事情が原因か徒歩で向かっている)、店に乱入すると彼に対して「今のあなたの小説はつまらない」と断言する。
- 木蓮新人賞受賞式の際に、控え室で自身の手を強く握って来た挙句「文壇はガキの遊び場じゃない」と暴言を吐いた同じく新人賞受賞者の田中康平を、式の真っ只中で彼が立ち上がった際(実写映画版ではスピーチの最中)にパイプ椅子で殴打する。その後、面目を潰されたことから式の最中にもかかわらず強引に帰路についた彼を尾行して電車の車内(実写映画版ではプラットホーム)で「誰が帰っていいなんて言ったのよ」と凄んだ後、授賞式での暴行を警察に言わないよう脅迫。
- 自身に強引なインタビューをしてきた週刊誌の記者のカメラを破壊した後、彼を尾行して自宅に押し入り、自分のことを記事にしないよう脅迫する。
- 芥川賞・直木賞の授賞式の際、同伴したふみに対して彼女が自身のゴーストライターではないかと質問してきた記者にマイクを投げつけ、そのままパイプ椅子で窓ガラスをぶち破って途中退場(実写映画版ではこの記者と上記の週刊誌の記者は同一人物(演:野間口徹)になっており、それ故か質問の口調も厳かだった原作に対して挑発的なものとなっていた)。
…と枚挙に余地が上がらない。
尚、これらは飽くまで一例に過ぎず、上記以外にも彼女は劇中で様々な暴挙を敢行しており、それは留まることを知らない。詳しくは本編を参照して頂きたい。
だが上記のようにこれらの行動は飽くまで彼女の妥協を許さない芯の強さから来ており、決して感情的になって行なっているわけではない。
周囲からはその想像のつかない行動力を「爆弾」等と比喩される一方で、自分を曲げることなく時として自らを危機に晒すことも躊躇しない覚悟の強さから「カッコいい」とも評されている。
そして彼女の突出した才覚と行動力を目の当たりにした者は、己の至らなさを悟り改心して響を却って慕い憧れを持つようになるのもお決まりのパターンである。
しかしそれは裏を返せば、周囲のことを一切顧みず自分本位になっている(おまけにそのことを自覚している節がないことから、ある種の天然とも言える)とも捉えられ、現に劇中では彼女が問題を起こす度にふみといった関係者が響の尻拭いをするなど気苦労を強いられており、藤代や塚本、高梨からはそうした面から嫌悪感を抱かれている。
肩書きや名声などといった周囲からの評価にも一切無関心で、むしろ自分の作品を商業目当てで不当に扱ったり自分や友達を侮辱されたり私生活を脅かすようなことを酷く嫌う傾向が強く、常軌を逸した行動を幾度も起こすのはそれも要因であると思われる。この他、「よく知らない人が誰に向かって話しているのか分からない話をしてて全然頭に入って来ない」という理由から、人前でのスピーチも好んでいない。
また自分が気に入った作品の作者を目にすると途端に有頂天になり、物静かな態度はそのままだが喜びを露わにして握手を求めてくるという年相応な一面もある(ふみ曰く「ああ見えてミーハー」)。
能力
常人では考えられない程の才覚の持ち主で、そこから生み出される物語は他人を圧倒する(鬼島曰く「人を変える力がある」)。特に想像力は豊かと言え、様々な景色や場面を目の当たりにすることで物語を一つ生み出せ、執筆のスピードも2時間程度で短編一作を書き切る程速筆である他、達筆でもある。学力も相当高く、二学年時の担任教師曰く「国立も余裕で狙える」。他にも数ヶ月の勉強でネイティブに通用するレベルの英語力も習得している(留学当初は少々ヒアリング力に難があったが)。
苦手分野として、運動能力はそこまで高いとは言えないが、上記の通り喧嘩っ早い性分故に腕っ節は強い。また母同様絵も下手である。
容姿
セミロングヘア(三学年時はショートヘア)に黒縁眼鏡を掛けた色白肌に加え、身長154.1cm、体重42.8kg(高校2年生時)と小柄で華奢な体格と普段は身なりを着飾らないことから全体的に地味目な印象を受けるが、周囲からは総じて美少女と評されている。
その容姿端麗さを買われ、吉野(映画版では凛夏)からは原宿でロリータファッションをもらい受けたりしている。なお、このロリータ服は後日、木蓮新人賞受賞式で着用しており、田中からは「コスプレじゃねぇか」と評された。
家庭環境
公務員の父と、専業主婦の母、大阪の大学に通う兄の健と、至ってごく普通の平凡な家庭である。家族からは総出で溺愛されており、特に母と兄からは過剰なスキンシップを受けているが、当の本人はそれを鬱陶しがっている。
父は謙虚で常識を重んじており家族想いな性格だが、ふみが『お伽の庭』の収入額の説明をしに自宅を訪問した際には「この額(1億4千万円)は響の小説に対する正当な評価です」という彼女の主張に対して「正当かどうか、アンタらが勝手に決めるなよ」とその大金が響の年齢を鑑みて今持つべきではないという考えから威圧しながら反論するなど芯の強さの持ち主であり、それを目の当たりにしたふみは「確かに響の親だ」と怖気付いた。響の他に妥協しない芯の強い性格は、この父親の性分を受け継いだものと言える。
母は能天気かつ天真爛漫な天然気味の性格であり、健共々響のことを「ひーちゃん」と呼んで溺愛している他、響の正体が世間に露呈し自宅に殺到したマスコミに対してカーテンの間から自分の描いた絵(ちなみに絵心はない)を見せるという誰得なことをした。
小説に対する姿勢
幼い頃から読書家であり、本人曰く月に20〜30冊程の本を読む読書量。それ故か、無名の小説家の名前も把握している。
小説執筆に関しては、自らの感性で書くことに拘っている。作風は主に「死」をテーマにする場合が多い。作家活動については、ふみから年齢を鑑みたアドバイスで名字を伏せた「響」というペンネームでデビューし、以降「現役女子高生作家」という肩書き以外素性は一切非公表にしていたが、高校文芸コンクールの授賞式の際にファンの一人である藤代琴子がその対面に感激して大声で「私、『お伽の庭』大好きです!」と発言したことにより、正体が世間に露呈することになる(その後、北瀬戸高校を一時退学し、凛夏の伝で1ヶ月フィンランドにて隠遁生活を送った)。実写映画版では本名は伏せておらず、身バレするタイミングも『お伽の庭』が芥川賞・直木賞にノミネートされた段階に変更されている。
彼女の一切妥協を許さぬ性分は、小説(もとい創作作品全て)においても反映されている。
一つに、作品を読まずに評価されたり、勝手なイメージを付けられるのを何より嫌う。劇中では『漆黒のヴァンパイアと眠る月』のイラストを担当した業界トップクラスのイラストレーターである霧雨アメが、自惚れと著作に対する軽視から「時間がない」という理由でイメージとかけ離れたキャラクターイラストを描いてきたことに対して、その原稿を破り捨てて彼を「悪」と評し、「自分に描いてもらえるなら5割の力でも構わない作家は幾らでもいる」と霧雨が豪語すると「モノを創るのに何割とか言う奴が本当にいたのなら、そいつは作家じゃないから相手にしなくていい」と論破し彼を根負けさせている。他にも、高校文芸コンクールの授賞式に出席した文部科学大臣の加賀美祥吾が響の投稿作である『11月誰そ彼』の感想を述べようとした際には、彼がそれを読んでいないことを見破りそれを言及した上で、「読んでないなら用はない」と吐き捨ててその場を立ち去っている。実写映画版では、田中に対して「つまらないっていうのは構わない、でもちゃんと読んで判断しなさい」と説教している。
また中々芥川賞を受賞出来ず踏切で自殺しようとしていた山本春平に対しては、「人が面白いと思った小説に作者の分際で何ケチ付けてんの」、「駄作しか書けないから死ぬ?バカじゃないの」、「太宰も言ってるでしょ?小説家なら傑作一本書いて死になさい」と諭し、彼に再び創作意欲を芽生えさせいる。
本人としては、肩書きや名声よりも作者がどういった理念で小説を書くか、そして読んだ人がどのような感想を抱くかというところを重要視していると言える。
経歴
一学年時
高校入学の少し前に『御伽の庭』を執筆し、直筆の原稿用紙で「木蓮」編集部の新人賞に応募。北瀬戸高校に入学すると、諒太郎と共に文芸部に入部し、凛夏、隆也、花代子と出会い親睦を深める。
ある日、凛夏の自宅を訪れていた際に響を探し求めていたふみと出会い、彼女に引き立てられ『御伽の庭』が木蓮新人賞を受賞したことで小説家デビュー。その後、『御伽の庭』がその年の芥川賞と直木賞に同時に受賞されるという史上初の大快挙を打ち立て、一躍して世間から注目を集める存在となる。
二学年時
進級して早々に花代子が先日響が彼女に参考のために提供した小説『漆黒のヴァンパイアと眠る月』を某大手ライトノベル出版社に好奇心で響に無断で投稿し大賞を受賞したことを隆也から聞かされ、その事情説明のために花代子と共にその出版社を訪れる。
会議室に通され担当編集者と大手TV局のやり手プロデューサー・津久井淳二に上記の事実を話したのちその場を後にしようとすると、花代子が咄嗟に響の名を口走ったことで津久井に正体を感づかれる。
そして津久井は秘密裏に響の特番の製作に乗り出し、夏頃に直々に彼からその事実を告げられるという宣戦布告を受ける。秋に入り、番組の収録当日に津久井の勤めるTV局に意図せずして同行してきた同級生の笹木と共に強行突入し、社長を人質に収録現場に乱入。社長の指を折ると見せかけて自らの指を折るという奇策で番組を収録中止へと追い込んだ。
冬に入ると、花代子の部長命令で強制的に高校文芸コンクールに参加させられ、最優秀賞を受賞する。授賞式当日、時の文部科学大臣・加賀美祥吾が自身の正体を感づき、目前に迫った総裁選に利用するために彼の控え室に呼び出されそこでのやり取りを録音される。しかしそれを察して授賞式の最中にその録音データを自分に寄越すよう加賀美に要求し、彼を殴り倒す形でそれを応じさせる。
その後帰路につくと、自身に詰め寄ってきた式の参加者の一人である女子高生が自分が「響」であるかを尋ね、それを耳打ちで認めると彼女が大声で『御伽の庭』が好きであることを発言し、周囲にマスコミがいたことから世間に正体が露見する。
これによって北瀬戸高校を退学し、凛夏の計らいでフィンランドに雲隠れした。
三学年時
フィンランドでの生活から1ヶ月したのち、日本に帰国し北瀬戸高校に復学。早々、飛行機代を支払うために知り合いの芥川賞作家・山本春平の紹介で中華料理屋「来々軒」でアルバイトをする。
高校卒業後の進路を決める過程で海外に興味を持ち、卒業後はイギリス留学を決意。そのための勉強に明け暮れる。
そんな中、天才漫画家・鏑木紫が『御伽の庭』のコミカライズ化を目論み、響やふみに無断でその企画を進めていく。紆余曲折の末、漫画編集部から漫画版『御伽の庭』の印刷前の第1話の原稿用紙を盗み出し、それを餌に鏑木の仕事場にて彼女に決闘を申し込みこれに勝利、鏑木を感服させた。
その後、イギリス留学の試験も難なくクリアし、迎えた卒業式当日、生徒会長の塚本真希に卒業の言葉を述べるよう求められ、壇上にて「先のことが楽しみで仕方がない」という自身の心境を語った。
翌日イギリスへと渡り、そこでロッテとヴィヴという新たな友人と巡り合い、ラストシーンではそこでも彼女が自らの存在を轟かすことが示唆された。
10年後を描いたエピローグでは、既に日本に帰国しており、北瀬戸高校に訪れると取り壊しが決まった旧校舎の文芸部の部室にて自身に喧嘩を吹っかけてきた男勝りの女子生徒に蹴りを食らわすという、相変わらずの喧嘩っ早さを見せた。
執筆作品
- お伽の庭
木蓮新人賞投稿作。響の処女作にしてデビュー作。具体的なストーリーは不明だが、舞台は現代より百年ほど前の山間の寒村であり、その小さな社会の中で生と死をテーマに描く。ふみは響が表現したかったのは、作中の世界観と彼女自身の死生観と捉えている。響はこの作品で芥川賞と直木賞を同時受賞するという快挙を成し遂げ、彼女の出世作となった。2年後には鏑木の手により漫画化される。
- 千年楼
文芸部の部誌に載せるために執筆した短編小説。主人公はとある小さな町に住む16歳の踊り子の少女。響曰く、体育の後の国語の授業中に少し疲労を感じていた際に、5月の風に木の葉が揺らされている場面を目にして思い付いたとのこと。これを拝見した凛夏は響の圧倒的な文才に愕然とし、中原には引退を決意させた。
- 漆黒のヴァンパイアと眠る月
ヴァンパイアをテーマにしたライトノベル作品。350年に一度受肉し世界に災厄をもたらす存在を描いたダークファンタジー。元々は響が自作のラノベ執筆に奔走する花代子に参考になればと思って彼女に提供した作品だったが、花代子が好奇心から響に無断でNF文庫新人賞に投稿した結果、大賞を受賞したことで日の目を見ることになる。紆余曲折の末、最終的に響の新作として発表され、アニメ化もされた。
- 11月誰そ彼
高校文芸コンクールに投稿した短編小説。11月の黄昏時に主人公が様々な死者と出会い話をするストーリー。
- 青の城
「雛菊」の看板作品。海底都市で生まれ育った一人の少女が、成人を境に地上へと進出するという内容。