朝鮮半島の分断国家である韓国と北朝鮮の間で起こった戦争。アメリカ合衆国とソビエト連邦・中華人民共和国が介入した。結果朝鮮半島のインフラが破壊され、南北の分断が決定的となった。
この戦争は韓国内では「韓国戦争(あるいは動乱)」および「6.25(韓国語でユギオ)」と呼ばれる。また、北朝鮮内においては「祖国解放戦争」と呼ばれる。アメリカなどでは「korean war」と呼ばれ、中国では「抗美援朝戦争」と呼ばれる。
概要
第二次世界大戦が終結し、敗北した大日本帝国は朝鮮の統治権を放棄した。
朝鮮半島は半島北部にソ連軍(赤軍が、南部にアメリカ軍(米軍)が進駐し、本来朝鮮半島はヤルタ会談などではイタリアが所有していたソマリランド同様国際連合による信託統治(国際連合の信託を受けた国が国際連合総会および信託統治理事会による監督により一定の非独立地域を統治する制度)が決定されていた。しかし、これを特に南側の支配層が嫌い、結果米ソによって分割統治がされ、そのまま北部に金日成が率いる朝鮮民主主義人民共和国が、南部に李承晩が率いる大韓民国が建国された。
ところがソ連および中華人民共和国の支援を受け、傀儡のトップを立てていた朝鮮民主主義用和国(以下北朝鮮)と異なり、大韓民国(以下韓国)は政治的、経済的に不安定な状況であったため、これを好機と見た北朝鮮は1950年、スターリンの許可をえてソ連の支援を受けた朝鮮人民軍の奇襲侵攻で戦争が勃発。一気に南部の釜山にまで韓国軍を追い詰めた。
しかしそこで補給が途絶え、一時停滞、今度は米軍を中心とする国連軍(当時の国連はソ連が常任理事国であった中国の主権が中華民国に存在するか中華人民共和国に存在するかをめぐりボイコットしていた)が韓国支援に参戦。今度は逆に中国国境付近まで北朝鮮を追い詰めた。
しかしそれに反応し今度は中国の毛沢東が北朝鮮支援に義勇軍である中国人民志願軍(義勇軍は名前ばかりであり実際には正規軍である中国人民解放軍であった)を派遣。米ソ中の代理戦争と化し、両軍は一進一退を続けた。
1953年に「休戦」となり、北緯38度線付近に両国の軍事境界線が設定され、休戦ラインが実質両国の国境に定められた。しかし、飽くまで「休戦」であり「終結」はしておらず、休戦協定は停戦に過ぎない。しかも朝鮮戦争が正式に終わったことを示す平和条約は署名されていないため、両国はいまだ戦争中ということになっている。
影響
この戦争は関係諸国に複数の影響を残した。
朝鮮半島
- この戦争により国内のインフラが失われ、復興に時間がかかった
- 戦争中に度重なる占領もとの変化により家族が離散するなどの悲劇が発生する。
大韓民国
- ソウル占領時に朝鮮銀行の紙幣原版および予備紙幣の処理を忘れたたため敵の手に渡り強烈なインフレが発生(ただしインフレ自体は大韓民国の経済政策の失敗により発生していた)した。
- また、警察および韓国軍の言動により彼らが信頼を失った。
- 軍や警察の共産主義狩り、戦闘指揮中の命令混乱などによりいくつかの虐殺事件や大量の民間人を巻き添えにした事件(漢江人道橋爆破事件など)が発生。これらの事件の責任追求もすんなりとはいかず、現在に至るまで揉め事の尾を引いている。
- 慰安婦(主に戦地で将兵の性の相手をさせられた女性)制度が公私にわたり行われ、後に人権問題となった⇒韓国軍慰安婦
- また、在日韓国人の団体である在日本大韓民国民団は義勇軍を募集したものの、人口の一割に当たる6万人の見込みに対し全体で800人程度、うち150人が日本人が実際に応募した。そのうち韓国人640人程度を朝鮮半島に送り込んだ。
朝鮮民主主義人民共和国
- 中華人民共和国側の司令官であった彭徳懐(中華人民共和国の軍人および政治家、当初国民党の軍隊にいたが追放され、共産党に入党し、軍人として活躍、この戦争では朝鮮民主主義人民共和国英雄の称号を北朝鮮より授与される、後に毛沢東にたいし大躍進政策を批判したため虐待死)は金日成の特に軍事能力に疑問を持ち朴一禹(北朝鮮の軍人および政治家、中国共産党の指導下で朝鮮義勇軍を指揮していたグループの人物であり、この戦争後失脚しその後所在不明となる)を重用しさらには主席にすえようとしたため、中国との仲が険悪となった。
- 軍隊の近代が遅れていたため多数の死傷者が多数発生
- 金日成は内政に力を入れることが出来たためこの戦争の敗戦の責任をとらせる形で対立する人物の粛清を実施、国内での地位を高めることが出来た
日本
- この戦争中徹底抗戦を唱えるダグラス・マッカーサーは中国に核攻撃を行うことを提案、新たな世界大戦の発生を危惧した本国によりすべての役職を解任
- 米軍を中心とする連合国軍・GHQの占領政策の転換のきっかけとなった。具体的には当初日本を非武装の中立国家にしようとしたものの、在日米軍が手薄となり、日本周辺の共産勢力の脅威も増し、日本人自身に自国を守らせるため、警察予備隊(後の自衛隊)を創設させた。日本政府は多額の占領軍経費を「終戦処理費」として負担させられた。(いわゆる逆コース)
- また米軍の指示で海上保安庁から特別掃海隊が派遣され、戦死者も出している。
- 国内での米軍物資の生産から「朝鮮特需」が起こり、経済復興の足がかりとなった。
- 国内における在日朝鮮人と在日韓国人の騒乱、それに呼応する極左暴力集団(実際にはまだ彼らは日本共産党などから分裂していないのだが) の言動により破壊防止法が思考された。
- 朝鮮半島内より難民状態の人々が流入したといわれる
中華人民共和国
アメリカ合衆国
- 特にアメリカには経済的にはこの戦争の影響はなく忘れられた戦争と呼ばれている。
- 軍事面においてはそれまで使用していた兵器の欠点が明らかとなり(例:M26パーシング、M24軽戦車やF-80)、それを踏まえ強化した装備(パットン戦車、M41軽戦車やF-86)を開発投入した。
そのほか
朝鮮戦争を題材にした作品
- トンマッコルへようこそ
2005年の韓国映画。朝鮮戦争最中の小さな村を舞台にし、漢江人道橋爆破事件を下敷きにした設定がある。
- トコリの橋
1954年のアメリカ映画。米軍航空部隊からの視点。
メインテーマではないものの朝鮮戦争に関するエピソードが描かれている。
- レッドクロス〜女たちの赤紙〜
2015年TBSでオンエアされたドラマ。満州事変から朝鮮戦争までの間を舞台にした従軍看護婦が主人公。
関連タグ
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