概要
敵対する勢力同士が直接戦争するのではなく、代わりの勢力を利用して間接的に争う状況。
資本主義と社会主義の覇権争いであった冷戦時代によく見られた形態で、例えば朝鮮戦争は韓国の背後にアメリカ合衆国が、北朝鮮の背後に中華人民共和国が付いて支援した、典型的な代理戦争と言える。
ベトナム戦争も当初は植民地の独立を巡る争いであったものが、南ベトナムにアメリカが、北ベトナムに中国やソ連が付いて代理戦争と化している。
一般的に冷戦体制は第三次世界大戦を避けるための当時なりの努力とされていた一方、「局地的にでも敗北すればその周辺も連鎖的に敵勢力に落とされてしまう」とする「ドミノ理論」が信じられていたため、介入はむしろ積極的に行われ正当化された。
更に、韓国は朝鮮戦争の膠着打破を狙ってベトナム戦争に介入し、北ベトナムも南ベトナムに勝利した後の世界を見据えてカンボジア内戦に介入するといった、代理戦争の当事者が次の代理戦争の支援者になる現象まで発生している。
そのため戦火が連鎖的に広がりかえって必要以上の被害を生んだとの批判も根強い。
とは言え、代理戦争は冷戦特有のものでもない。
例えば17世紀に発生した三十年戦争は、諸勢力の宗教や領土を巡る対立が複雑に絡み合い、信仰的に相容れない相手であっても世俗的利益のために手を結ぶ者も出るなどして混沌を極めた。
また、アメリカやイギリスが日本をけしかける、有名な日露戦争の風刺画は、日本が両国の代理戦争に使われたという指摘に他ならない。
詰まるところ、国家レベルで対立煽りを図る輩は割とどこにでもいるという事である。
派生した用法
資本主義や社会主義それ自体が政治や経済を巡る代理戦争になっていた節もある(手段の目的化)。
西ドイツと東ドイツは戦争こそ引き起こさなかったものの、やはりそれぞれの背後にはアメリカやソ連が付いて互いの繁栄と相手の堕落ぶりを喧伝し合ったものだった。
そのために多くの支援が投下されて第二次世界大戦からの復興が早まった側面がある一方、明に暗に内政干渉を受けて傀儡に育てられた側面も否めない。
そういう意味では明確な敵こそいなかったものの、戦後アメリカの強い影響下に置かれた日本も決して例外ではなく、多方面で冷戦の禍根が指摘されている。
ともあれ、このように間接的な争いも戦争でない場合であっても「代理戦争」に含める事がある。
例えば届け出上は全員「無所属」であるが、実際には与党が支援する候補と野党が支援する候補がいた選挙があった場合、それは政党同士の代理戦争と扱われる。
それらの政党の背後に諸外国の影が見え隠れする事ももちろんある。
また、大手のコンビニや飲食店等には大抵関係の深い商社がいるものであり、大手の商社は大抵(「アメリカの強い影響下」で解体されたはずの)財閥の流れを汲んでいる。すなわち、それらのシェア争いはしばしば旧財閥同士の代理戦争と読み替えられる。
自動車やコンピューターのように市場が世界規模であれば、やはり母国の介入も指摘されてくる。
フィクション上の代理戦争
ダンボール戦機WARS
神威大門統合学園地下10kmに広がる世界地図を模した巨大ジオラマ「セカンドワールド」にて行われる「ウォータイム」がそれ。
表向きは戦争のシミュレーションという名目であるが、実際はERP(要は国連が世界平和を維持しようとするプロジェクト)加盟国で穏便に外交を済ませ、戦争を抑止する為の「代理戦争」である。
仮想国に所属するLBXとプレイヤーが兵士として扱われ、機体が爆散(ロスト)すると戦死と見なされるが、処刑されるわけではなく、退学という形で島を去る事になる。制限時間があり、15:00になると開始され、作戦途中のLBXはそのままの状態で停止し、再開されると再起動する仕組みになっている。救済手段としての「エスケープスタンス」も存在し、無防備の状態で5秒間耐えきれば戦線から離脱できる。一方で、完全破壊ではないブレイクオーバーは戦死としては見なされない。現実の国家同様に「同盟」も存在する。
なので、無用な血を流さない良いシステムなのかと思いきや、仮想国が壊滅するという事は対応した国家も消滅することを意味している(但し、現実の国家がすぐ消滅するわけではなく、ウォータイムの結果に応じた外交手段が成される)。
つまり、ぶっちゃけた話、神威大門統合学園は「LBX関連職を目指す人材を育成する」事を謳い文句に都合のいい少年兵らを集める為の餌も同然なのである。ウォータイムは戦争シミュレーションとしか教えられていない中高生らに各国の命運を握らせるのはあまりにも酷すぎやしないだろうか。(尤も、そうした人材を育てる実績は確かなようである)。
なお、LBXを行き来するデータキー「パラサイトキー」を3つ集める事で入れるセカンドワールド中枢には「グランドマスター」というコンピュータが存在し、そこには世界各国の軍事バランスを収めたメモリーカード「アンダーバランス」や開発者の美都博士が生体ユニットとして組み込まれている。
一方で、国際テロ組織ワールドセイバーのように一部の権力者達による「欺瞞」と評してよく思わない派閥も存在する。
機動武闘伝Gガンダム
これまでのガンダムシリーズではMSなどの兵器が殺し合いを繰り広げる本当の意味での戦争が行われていたが、本作では製作当時の格ゲーブームを反映してガンダムファイトという各コロニー国家代表のガンダムが格闘技で競い合う大会が開かれているが、その実態は各コロニーが覇権を争う代理戦争であり、コロニーの代わりに地球がリングになる為、荒廃が進んでしまっている。
詳しくは該当記事を参照のこと。