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WN駆動の編集履歴

2019-02-12 09:06:49 バージョン

WN駆動

だぶりゅーえぬくどう

鉄道車両の駆動方式の1つ。

WN駆動とは内部歯車の遊びを利用した駆動方式である。

概要

高速運転に適した電車用駆動システムとして、アメリカの大手電機メーカーであるウェスティングハウス・エレクトリック社が、傘下の機械・歯車メーカーであるナタル社と1925年以降共同開発を実施、実用化した。「WN」とは、開発に携わった両社の頭文字、Westinghouse-Natal(ウェスティングハウス・ナタル)にちなむ。現在の米国ではGear-Coupring(ギア・カップリング)と呼称される方が多い。


駆動系全体は電動機と車軸を平行に台車枠に固定し、小さな偏位を許容する「WN継手」を介して電動機の出力軸と駆動歯車を接続する。日本では主電動機の荷重を全てばねの上の弾性支持とした、電車用の車軸無装架駆動方式を全般で「カルダン駆動方式」と呼称する慣例があるため、「WN継手」を使った「平行軸カルダン駆動」の一種である。もっとも「WN継手」は「カルダン継手」と異なるため、厳密に言えば「平行軸WN駆動」と称するのが正しい。


構造

WN継手は、2種類のギアと、それらを収めるケース、そしてそれを2組重ね合わせることにより構成される。


基本となるギアは、インターナルギア(内歯歯車・外側ギア)とエクスターナルギア(外歯歯車・内側ギア)の2種類。この組み合わせを2組用意し、インターナルギアは、ケース2個にそれぞれボルト留め、エクスターナルギアは各ケース内部に収納する。

内外のギアはケース内部で噛み合っており、この噛み合った構造はスプラインと呼ばれる。ギアの位置関係を一定に保つため、ケース内部にはコイルばねが入っている。

2つのケースは、外側からボルトによって結合され、WN継手(ギアカップリング)の完成となる。モータ・小歯車の軸は、ケース内部のエクスターナルギアを貫通することで継手と接続される。


その原理は、インターナルギアとエクスターナルギア、ケース同士のボルト留めが動力を伝達し、車軸とモータの変位は内外のギアの位置関係がずれることにより、継手の角度が変わることで吸収される。スプラインは普通の平歯車ではなく、どちらか一方は歯が円弧状となっており、軸が斜めになっても歯が噛み合うので、位置関係のずれをある程度許容することができる。

動力伝達は、モータ→内側ギア1-外側ギア1(ケース1)→ケース同士のボルト留め→外側ギア2-内側ギア2(ケース2)→小歯車の順である。

強度・柔軟性共に優れた金属を使う機械的な構造のため、連続的な高負荷に強く、寿命も長い。ただし、歯車を用いるので定期的な注油が必要であり、保守や管理がやや面倒である。


採用事例

日本

構造的に高出力に耐える継手の特性から、地下鉄新幹線JR西日本や私鉄各社に用いられている。加減速を頻繁に行っている地下鉄は、一部の例外を除き、ほとんどがWN駆動である。また、高速運転を行う新幹線でも、開業以来長きに渡り標準駆動システムとして使用され続けている。


日本で最初に採用された車両は京阪電気鉄道の1800系1802号である。それは、アメリカからの技術情報に基づき、住友金属工業(現:新日鐵住金)が独自開発したWN継手である。しかし、2008年の1900系の引退を最後に京阪からWN駆動方式の車両が消滅した。次にそれと同様の継手を用いた東京都電、さらにウェスティングハウス・エレクトリック社のライセンスに基づく駆動装置を備え、営団丸ノ内線開業に備えて一気に30両製造された300形電車と続いた。

丸ノ内線をはじめ、米国の鉄道と同等の1,435mm軌間(標準軌)を採用した路線のほとんど(営団地下鉄(現:東京メトロ)の銀座線丸ノ内線近鉄奈良線大阪線などの標準軌線区、および阪急神戸線宝塚線)では、継手の耐久性が高く大出力化に有利なWN駆動は早くから導入された。

一方、軌間1,067mmの狭軌路線では、装置の幅が広くなるため、WNドライブの導入には継手だけでなく主電動機の小型化、あるいはその外枠形状の工夫が必要であった。この過程では、主電動機の軸方向長さの短縮とWN継手の小型化に加え、これを補うための主電動機直径の増大も図られている。


国鉄の在来線電車においては、中空軸平行カルダン駆動が標準駆動システムとされたために、WNドライブの採用例が無いが、一部の電気機関車で採用されていた。国鉄分割民営化後は、JR西日本においては、大出力高速回転モーターを採用するために駆動系の高い耐久性が求められていたことから、整流子がない分スペースに余裕を確保しやすい、VVVFインバータ制御の交流かご形三相誘導電動機を使用する207系以降の在来線電車において、一部例外を除き、WN継手を標準採用しており、特に223系225系新快速電車をはじめとする新型電車群の高速運転に威力を発揮している。また、日本唯一のコンテナ貨物電車であるJR貨物M250系電車でもWN駆動が採用されている。


WN継手は基本的に等速継手であり、変位を与えた状態で回転しても回転角速度変動は生じない。ただし、「たわみ板継手」や「TD継手」ほど滑らかではない。


惰性走行時の騒音

WN継手の利点は、特に継手に負荷がかかっている力行・減速時は、歯車の噛み合い振動による唸り音が少なく、全体の騒音は他の駆動方式よりも小さいことである。223系と313系の通過シーンを見比べるとわかりやすいが、WN継手を装備する前者は電動車付近で少し騒音が増える程度であり、一方TD継手を装備する後者は電動車付近で「グオーン」という唸り音が響くことがあることから、WN継手の方が車外騒音が小さいことがうかがえる。

しかし、惰性走行時に発生する床振動と鈍い音(「ガー」「ゴロゴロ音」と呼ばれる)は、単純な工夫でかき消すことが難しく、特に床振動は乗客に直接不快感を与えるため、WN継手の大きな欠点としてよく取り上げられている。


WN継手では、継手に力がかかっていない惰性走行時、内部の歯車の公差によって継手が振動し、騒音と床振動が発生してしまう。このため、かつては一定以上の速度域で惰性走行時にごく僅かに回生ブレーキをかけ、継手に負荷をかけて騒音を抑制するよう制御する車両も存在した。

近年の車両では、製造時に内部の歯車の公差をできるだけ少なくして騒音を抑える努力をしており(低バックラッシュ化)、惰性走行時の騒音は大幅に抑制されている。しかし、歯車の経年劣化により騒音が徐々に大きくなるため、完全な解決策ではない。

本方式の場合、内歯のは単なる直歯インターナルギアであるが、外歯は芯ずれ変位を許容するため非常に大きなクラウニングを付与する必要がある。このような非常に大きなクラウニングを有する外歯ギアは現在の技術をもってしても研磨盤が開発されておらず、あくまでも歯切り→焼き入れ→すり合わせという工程しかとれず、歯車の高精度化によるバックラッシュの縮小は困難であり、現在はモジュールの縮小による歯型の小型化により行われている。また、無闇にバックラッシュを縮小すると焼きつきの可能性を増大させるため難しい状態である。

「TD継手」は惰性走行時の騒音や床振動は発生しないが、高速回転による耐久性ではWN継手に一歩劣る。


近年では「TD継手」が改良を重ね耐久性が高くなったことから、東海道山陽新幹線では700系C編成の途中およびN700系Z・N編成のグリーン車にのみTD継手を採用するように変更されている。


WNドライブを採用した電車

ここでは現役の車両でWNドライブを採用している車両を紹介する。

JR北海道

H5系


JR東日本

E2系E3系E4系E5系E6系E7系など。


JR東海

285系(3000番台)、700系N700系


JR西日本

223系5000番台、N700系(16両)グリーン車を除くVVVF車全車。


JR九州

N700系800系


JR貨物

M250系など。


東京メトロ

現存するすべての車両。


東京都交通局(都営地下鉄)

新宿線、大江戸線を除くすべての車両。(かつて新宿線に10-000形が在籍していたが、こちらもWNドライブだった。)


京成電鉄

3000形の一部など。


東京急行電鉄

2020系6020系など。


小田急電鉄

通勤形電車の全車。


西武鉄道

6000系9000系20000系30000系40000系など。


京王電鉄

現存するすべての車両。


名古屋市交通局

現存するすべての車両。


近畿日本鉄道

現存するすべての車両。


南海電気鉄道

三菱電機製モーター車全車。


阪急電鉄

神宝線の全車(ただし9000系はTD平行カルダン駆動と混在)と京都線の1300系


大阪市交通局→Osaka Metro

地下鉄車両の全車。(長堀鶴見緑地線・今里筋線・ニュートラムは除く)


北大阪急行電鉄

8000形9000形


山陽電気鉄道

現存するすべての車両。


北神急行電鉄

7000形


神戸電鉄

1000系1100系1300系3000系など。


京都市交通局

10系50系


神戸市交通局

海岸線を除くすべての車両。


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