概要
東アジアとは、やたらと広大なアジア地域をいくつかに区切ったときに使われる呼び方。アジアのいちばん東の、太平洋に近いあたりを指す。「極東」とも呼ばるが、この語は欧米人の立場での呼称なので、日本人や中国人が自称することは望ましくない。
広義では東南アジアを含む。この場合狭義の東アジアは「東北アジア」と呼ばれる。ふつうはロシアの極東地域を含まない。アジアのうちロシアの統治下にある部分とモンゴルは「北アジア」とされる場合もある。
国連関連などの世界的機関による地理区分では、フィリピン、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランドなどとまとめた「西太平洋地域」の一部として取り扱われることがある。
東アジアには、一般に次の国・地域を含む。
日本 中国 韓国 北朝鮮 モンゴル(北モンゴル、外蒙古) 台湾(中華民国)
※中国のうち、ウイグル〈東トルキスタン〉は中央アジアに含まれるとして除く場合もある。またチベットは文化的なつながりによって南アジアに区分されることもある。
※モンゴルは北アジアに含まれることもある。
ときには次の国・地域を含むこともある。
ベトナム マリアナ諸島 ロシア極東(ハバロフスク地方、プリモルスキー地方(外満洲)、カムチャツカ地方など)
気候など
四季の気候がはっきりしていて、東南アジアと同じくモンスーン(季節風)の影響下にあり、降水の多い期間と少ない期間とが比較的明確である。
いっぽう内陸部である中国西部は砂漠やステップなどの比較的乾燥した地域が卓越する。
千島海流(親潮)と日本海流(黒潮)の2本の海流(およびその支流となるリマン海流と対馬海流)があるので、東アジア南部はかなり暖かい(夏は暑い)が北部はけっこう寒い。またこれらの海流が潮目をつくるおかげで海洋環境は豊かであり、漁業や水産業が発達している。
中国沿岸には広い大陸棚があり、石油の採掘や海底資源の採取が行われている。
地理
東アジアは以下の海に面している。
太平洋(フィリピン海を含む) 日本海 オホーツク海 渤海 黄海 東シナ海 南シナ海
また主だった島には次のものがある。
大きな河川としては、北からアムール川(中国語で黒竜江ともいう)、黄河、長江(揚子江)が存在する。
社会
古くから文明が栄えた地域で人口密度が世界でもとりわけ高く、世界人口の3分の1が集中する。日本・韓国・台湾などは工業化が進んでおり、西欧・北米と並ぶ先進経済地域の一つ。一方、北朝鮮のような貧困地域もまだある。
文化
全体が中華文化圏、またはその影響を受けた地域である。日本や韓国などでは言語をはじめ、衣食住や祭礼、年中行事など日常生活のあらゆる部分に中国の面影が見られる。
中国本土はかつてのモンゴル帝国(元帝国)や清朝など遊牧民族の支配を受け文化的に変容しており、古の漢民族の風習が日本や韓国に残っている部分もある。
言語
言語面では多様な語族の言語が存在するが、文化同様、中国の影響を受けているものが多い。
東アジア東部には日本語、朝鮮語、アイヌ語、ニヴフ語など孤立した言語がまとまっている。日本では日本語が話され、表記には漢字と、漢字をもとにして作った文字であるひらがなやカタカナを組み合わせて用いる。語彙の面でも中国語を多く取り入れ、固有語(和語)と中国語系の単語(漢語)を組み合わせて使う。
韓国や北朝鮮では韓国語(朝鮮語)、ベトナムではオーストロアジア系のベトナム語が話される。文字表記にはそれぞれハングルとローマ字(クォック・グー)が使われており、いずれの文字も漢字との直接のつながりはないが、単語には日本語以上に中国語の語彙を取り入れたため、固有語だけでは自国語の表現が成り立たないほどになっている。
モンゴル国および中国の内モンゴル地域ではモンゴル語が話される。地域差が著しく、モンゴル国ではハルハ方言、内モンゴルではチャハル方言が標準語的な位置にある。表記にはキリル文字とモンゴル文字が使われており、これらはやはり漢字とはつながりがない。またモンゴル語には中国語から借用した語彙も少なくないが、逆に中国語はモンゴル語や満州語の影響を強く受けている。
中国青海省やチベット自治区周辺ではシナ・チベット語族のチベット語が話されている。