曖昧さ回避
- 東宝の特撮映画ゴジラシリーズに登場した架空の宇宙人→本稿で解説。
- pixiv内でちょーぷに言語を用いて地球人類に接触する謎の存在→X星人(ちょーぷに星人) or X(ユーザー)
概要
1965年公開の「怪獣大戦争」と2004年公開の「ゴジラ FINAL WARS」に登場する。
アニメ映画版『GODZILLA』に登場したリメイクキャラクターであるエクシフについても記載する。
怪獣大戦争
木星の13番目の衛星に住むヒューマノイドタイプの知的生命体。
外見は地球人と酷似しているが、男性は顔をサングラスのようなもので隠し、女性は皆同じ顔をしているという奇妙な特徴がある。
統制官という1人の男性によって統治され、彼らの行動はすべて電子計算機(コンピューター)によって決定される。
なお、母星の「X星」という名称は地球の天文学者がつけた名前であり、本当の名前は不明である。
戦歴
高度な文明を築いていたが、X星では生存に不可欠な酸化水素(水)を化学合成によってしか得ることができず、そのため水を豊富にたたえた地球を侵略しようと画策した。
地球人に対し、「癌の特効薬と引き換えに“怪物0”(キングギドラ)を倒すために“怪物01”(ゴジラ)と“怪物02”(ラドン)を貸してほしい」と申し出る。地球側がこれを承諾したため、彼らはゴジラとラドンを母星であるX星へと運び去り、実際にキングギドラと戦わせ、撃退してみせた。
しかし、当然ながらこれらはX星人の自作自演であり、キングギドラもX星人によって操られていたに過ぎなかった。ゴジラとラドンを手に入れたX星人は癌の特効薬のテープと偽って即座に地球に対し宣戦布告し、ゴジラとラドンを操って地球侵略を開始した。
ところが、ふとした事がきっかけで「ある波長の高周波に弱い」事が露呈してしまった上、その「切り札」を握っていた富士一夫飛行士の妹ハルノの恋人である鳥居哲男も協力し、人類は全国の民間のTV・ラジオをも駆使した不協和音による高周波放出とその兼用対策に高性能スピーカーも組み込まれたAサイクル光線車を使った両面ゲリラ作戦によってゴジラとラドンの洗脳を解いた上に円盤や鳥居の「切り札」を握り潰そうとした地球植民地挺身隊~掃討隊にダメージを与えた事などもあり、形勢が逆転。
X星人統制官は「我々は未来へ脱出する」という意味深な台詞を吐きながら、円盤と地球基地を爆破し、自決した。
ゴジラ FINAL WARS
宇宙のどこか(今回は木星の衛星ではない)に存在する惑星に住む知的生命体。
母星については一応ちゃんとした名前もあるようだが、地球人には発音できないため、便宜的にこう名乗っている。
外見はやはりヒューマノイドタイプであり、容姿も地球人とそっくりだが、本来の姿は銀色の醜悪なクリーチャーのような外見をしている。また、一切瞬きをしないという特徴がある(これが原因で、密かに各界の要人とX星人が入れ替えられていたことを見破られてしまうこととなった)。
X星人や地球人とのハイブリッドであるミュータントは「M塩基」という特殊な塩基を持つ。これはテレパシー能力に強く反応する性質があり、これを利用してX星人はM塩基の埋め込まれた生命体を自由自在に操ることができる。ただ、例外的にゴジラはこのM塩基の効果を受けなかった(G細胞にM塩基を駆逐する効果がある為とされる)。
また、ミュータントの中には何万分の1の確率でサイキック能力をもつ「カイザー」が誕生するという。(劇中では尾崎と統制官が該当する。)
今回の地球侵略の目的は「地球人のミトコンドリア」。統制官曰く、X星人はこれがなければ生きていけないらしく、地球人を家畜化しようとしていた。
戦歴
はるか昔に地球を訪れ、ガイガンを操ってモスラの守護していた古代文明を滅ぼす。
その際に地球人と交配し、「ミュータント」と呼ばれる身体能力に優れた新人種が生み出された(主人公の尾崎一真もミュータントである)。地球人と交配したのは地球に侵略用の手駒(M塩基の上述の性質及びカイザーを参照)を用意しておくという目的があったと推測される。
その後、日本列島の北海道沖にガイガンを沈めて一度地球から撤収、本編開始時に再び地球侵略を開始する。
手始めにM塩基を植え付けた怪獣たちを世界各地に同時に投下した後、苦戦する地球防衛軍の前に突如姿を現して怪獣たちを捕獲、さらに妖星ゴラスが地球に接近していることを告げてこれの破壊を約束するなど友好的な宇宙人であることをアピールする。
しかし、ゴラスが実体のない立体映像であること、さらにX星人が各界の要人を変装させた自分たちの手先とすり替えていたことが暴露されるや否や本性を現し(この際、若手の参謀が司令官を射殺、以降参謀はX星人のトップとなり、統制官を自称するようになる)、遂に地球へ大攻勢をかける。捕獲していた怪獣たちを再び世界各地に投下し、さらに地球防衛軍のミュータント兵士たちをテレパシーで洗脳することで、地球側の戦力を壊滅寸前にまで追いやった。
だが、主人公の尾崎らを載せた新・轟天号を取り逃がしてしまい、さらに彼らが逆転の切り札として南極で眠りについていたゴジラの封印を解いたため、これを倒すべく配下の怪獣たちを刺客として差し向けるが、すべて返り討ちにされてしまう。X星人は宇宙からモンスターXを呼び寄せ、さらに改造したガイガンと挟み撃ちにする作戦を展開するが、モスラが乱入してきたことにより結果的に1対1ずつの戦闘になり、ガイガンが撃破されてしまう。
その後、母艦に突入してきた新・轟天号のクルーと白兵戦を展開。当初は優位に立っていたものの、主人公:尾崎がカイザーに覚醒したことで劣勢になり、統制官は尾崎によって徹底的に叩きのめされ、部下たちも轟天号クルーおよび脱走した地球の要人たちの活躍により全滅してしまう。最早勝ち目はないと悟った統制官は旧作同様円盤もろとも自爆。X星人は全滅した。
X星人の死後、モンスターXがカイザーギドラへと進化し、一度はゴジラを追い詰めたが、こちらも尾崎からミュータントエネルギーを授けられてパワーアップを遂げたゴジラの逆襲に遭い、敗北した。
エクシフ
はるか太古の昔に「絶対的な破壊の力」によって、ペルセウス座にある母星「エクシフィカルス」を滅ぼされ、宇宙を放浪していた宇宙人。
母星を失って以降は「自己犠牲の献身による魂の救済」を教義とする信仰を広めて廻っており、ゴジラの出現で滅亡の危機に追いやられた地球人類を救済しようと、2035年にニューヨークへ飛来した。
計算に長けており、エクシフが使用する水晶状のコンピュータゲマトリア演算結晶や、祭器ガルビトリウムによる計算によって、未来を見通すことさえも可能であるという。
自己犠牲の献身を説くのは伊達や綺麗事ではなく、『怪獣黙示録』や『プロジェクト・メカゴジラ』などでも描かれた通り怪獣対策のための協力は惜しまず、時には自らが乗ってきた宇宙船さえもゴジラとの戦闘で差し出したほどであった。
ゴジラという文字通りの黙示録の獣の出現によって既存の信仰が力を失う中、エクシフの信仰は人々の心の支えとなり、着実に信徒を増やしていった。
ゴジラ出現以前にも地球へ飛来したことが示唆されており、「ゲマトロン演算」など彼らの使う固有名詞にはラテン語に類似したものがいくつも見られる。
地球ではビルサルドとともにゴジラ対策に尽力したものの力及ばず、最終的には人類およびビルサルドとともに宇宙船で脱出。
地球帰還に際しては三種族で協力関係を築きながらゴジラ討伐に挑む
……というのは建前であり、真の狙いは「エクシフが信仰する『黄金の終焉』にゴジラもろとも地球を捧げること」、すなわち「地球の滅亡」である。
かつてのエクシフは極めて優れた文明を誇っていたが、計算による未来予知の結果「どれほど栄えた文明であっても滅亡は回避できない」と悟ってしまった。そこでエクシフたちは、どうせ滅びる定めにあるならばより高次元的存在である神と合一することこそが祝福であり救いであると考えたため、自らの文明を供物として捧げてしまった。
その後、宇宙の各地に散ったエクシフたちは「種」である各地の星々の文明へ干渉し、「花」である人と文明を発展させ、最後に「果実」であるゴジラに相当する怪獣を星が作り出すと、それを惑星文明ごと神へ捧げるという行為を繰り返し続けてきたのである。
地球人もエクシフたちに目をつけられた文明の一つであり、文明の発展からゴジラの出現まで、一連の流れはすべてエクシフの目論見通りであった。
高次元的存在など観測したことがない地球人からすればその真意を知ったなら猛反発しただろうが、エクシフたちはこの一連の行為を「高次元的存在に喰われることによって大いなる存在へ合一し、今の次元を超えた存在に進化するために必要な行為」と捉えており、破滅どころか「神の祝福」「究極の献身による救済」と全員が信じて疑っていなかった。
また、言語を介さない意思疎通や相手の思念を読むことなどを可能にするテレパス能力を所持しており、地球人やビルサルドなどのテレパスを持たない種族にはそれを隠して、密かにエクシフ同士で意思疎通して自分たちの計画を進めていた。
過去作品のX星人はキングギドラなど怪獣を操って地球侵略するというのが常であったが、アニメシリーズのエクシフは逆にキングギドラに相当する怪獣に奉仕しているというユニークな設定になっている。尤も、「エクシフが勝手にそれを神格化して自らの信仰のためにその生態を都合よく利用している」という解釈も可能なので、一概に関係が逆転しているとも言い難い。
計算に長けているという設定は『怪獣大戦争』のX星人、テレパシー能力を持ち、あるものを収穫するために地球に飛来するという設定は『ファイナルウォーズ』のX星人からの引用になっている。また後述の「X星語」ではないが、彼らの神を象徴する祈りのポーズを取るという習慣を持つ。
外見は長身で金髪の白人という風にしか見えないものの、よく見ると耳の形状と位置が地球人類と異なっており、また見かけは若くても、実際は地球人類の2倍以上の寿命を持っている長命な種族である。
母星エクシフィカルスについてはその存在座標がBD+48°740系第4惑星という設定になっているが、この「BD+48°740」というのは地球から見てペルセウス座の方向に約2400光年離れた位置に実在する恒星である。現在は赤色巨星となっている。
初期のアイデアではオリジナルのX星人と同様にサングラスをかける案も出たようだが、流石にボツになっている。
余談
- 昭和版の統制官を演じた土屋嘉男は宇宙人らしさを表現するために、独特の身振り手振りを交えた「X星語」を考案。これは功を奏し、共演者であるニック・アダムス(『怪獣大戦争』の主人公:グレン役)からも大ウケだったとか。
- 女性X星人を演じた水野久美はその美貌に惚れたニック・アダムスから「今の妻とは別れるから結婚しよう」としつこいまでに迫られ、非常に困惑したという。なお、その時ニックは実際に妻と離婚調停中であり、本気であった可能性が高いと言われている。
- ちなみに、水野久美は『ファイナルウォーズ』でも地球防衛軍の司令官:波川玲子として出演。「波川」という名字は「怪獣大戦争」で地球人女性に成りすましていたX星人:波川から取られたものである。また、劇中では波川司令官はX星人に拉致され、変装した偽物とすり替えられてしまうという展開があるため、(間接的にではあるが)39年ぶりにX星人役を演じたことになった。
- 『FINAL WARS』でX星人の司令官を演じたのは『宇宙戦艦ヤマト』のデスラー総統役でおなじみの伊武雅刀。統制官を演じたのは北村一輝。また、統制官の親衛隊役として『仮面ライダーカブト』の乃木怜治/カッシスワーム役で有名な坂口拓や『ウルトラマンネクサス』の海本隼人役で有名な北岡久貴といった特撮作品と縁の深い俳優、さらには後に羞恥心のメンバーとして活躍することになる上地雄輔など何気に豪華なメンバーがそろっている。
- 『FINAL WARS』のX星人が着用しているサングラスは、実は『怪獣大戦争』で使われた小道具そのもの。北村監督によれば、「倉庫を色々探していたら出てきた」「あるんだったら使おうよ」ということになったらしい(DVDオーディオコメンタリーより)。というか40年近くよく残ってたな…。
- なお2018年に開催された『特撮のDNA展』にて地球基地のX星人が着用していたサングラスと彼らが使用していた光線銃が展示されており、2018年時点でも『怪獣大戦争』当時の小道具のいくつかはまだ現存している模様。
- 上記二作品のほか、人形劇である『ゴジラアイランド』にもX星人が登場している。
- 『ゴジラアイランド』はVSシリーズをベースにしているため、間接的にではあるが昭和・VS・ミレニアム・2010年代の全てにX星人が登場していることになる。
関連項目
ゴジラ ラドン キングギドラ ガイガン モンスターX(カイザーギドラ)